過剰少女とストーキングキャット
彼女の話をしよう。
素直で、健気で、愛が重過ぎる。
これは、そんな彼女の物語。
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談話室で小説を読んでいると、ミルテが深い青色の髪を揺らしながらじりじりと近づいてきているのが視えた。
「……ねえ、ジョゼ」
「なんですの?ミルテ」
「ちょっと、ちょっとだけよ?ええ、本当にちょっとだけのつもりなんだけど」
「ハイ」
いつも通りの言葉から、いつも通りになるなと察して小説を閉じる。
「ジョゼ、その小説、好きなの?」
そう問いかけてきたミルテの目はキラキラしていて、コレはまた長くなりそうだと苦笑した。
「ええ、今結構気に入ってるんですの」
「そう……タイトルは?」
「シビアゲーム」
「あらすじは?」
「ゲームで全てが決まる世界で、勝てば賭けたモノを得るコトが出来、負ければ賭けたモノを失うっていう設定ですの。
で、親の負債によって地獄みたいな経験をした主人公はあんなクズにはなるまいと思ってるんですけれど、親譲りのギャンブル狂なせいで一回ゲーム始めると自分の体とか賭け始めたりするんですのよね」
「勝つか負けるかのドキドキ感がある小説なのね」
「ええ。しかもこういうのって主人公が勝つパターンが多いハズなのに、結構負けるんですのよねこの主人公」
「あら、体を賭けてるのに?」
「そう。既に耳と左腕を無くしてて、最近は右脇腹の肉が抉れましたわ」
「結構負けるって言ってたのに、無くした体は案外少ないのね?」
一般的に考えると耳と左腕と右脇腹は結構な出費だと思うが、実際負けた数と失ったパーツの数が一致していないのでそう思うのも無理はないだろう。
そう思いつつ、ミルテに座るようジェスチャーで促せば、ミルテは素直に隣に座った。
「この世界線だと、十連勝するコトで体のパーツを取り戻せるんですの。だから時々弱そうなのをカモにして資金をゲットしつつ、体を回復してますわ」
そうじゃなかったら主人公は脊髄と脳と心臓くらいしか残らない気がする。
ちなみにこのシビアゲームという小説、記憶もチップに出来るのがまた面白かったりもするのだ。
……めっちゃ殺伐としてるのに、主人公が良い子だから読みやすいんですのよね。
もっともその主人公自身めちゃくちゃギャンブル狂なのだが。
ゲームの最中のヤベェヤツっぷりがヤベェのが、人気の一端なのだろう。
「……ふふ、ジョゼ、本当にその小説が気に入ってるのね」
「ええ、面白いですもの」
「じゃあ、少しだけ、ちょっとした興味で聞きたいんだけど」
ミルテはキラキラした表情で、胸の前で手を緩く組んだ。
「ジョゼは作者が好きなの?キャラが好きなの?その小説の作風が好きなの?それとも設定?世界観?
小説の中でゲームをするっていうのが好きなのかしら?それとも主人公がギャンブル狂なトコロ?
あと他にも聞きたいのだけど、作中にはどんなキャラが出て来るのかしら。ジョゼが好きなキャラを知りたいわ。ああ、私の好きなキャラはまだ出来ていないけれど、でも後で読むから、その時はまたお話しましょうね?
その時には私も好きなキャラを見つけれると思うから、その時に好きなキャラについてや好きなシーンとかを語ったりしましょう!ソレはきっと楽しい時間になるわ!」
「ですわね」
つらつらと語るミルテの頭をぽんぽんと軽く撫で、頷いて肯定しておく。
……ミルテ、相変わらずフルスロットルですわねー。
ミルテは幼少期、引っ込み思案な性格だったらしい。
けれど言いたいコトは沢山あったらしく、学園に入学して引っ込み思案が改善された結果、自分が聞きたいコトや言いたいコトを怒涛の勢いで語るようになった。
……んでもって、知りたがりの聞きたがりなんですのよね。
まあミルテはちょっと距離感がわかっていないだけの良い子なので、今のような一言の返答でも嬉しそうな笑顔を見せてくれるが。
要するに彼女は他人との距離感に対する匙加減が苦手なのだ。
「とりあえず雑な返答になりますけれど、何故好きなのかと言うと登場キャラがやたら濃いから、でしょうか。あと伏線が多いから続きが気になっちゃうんですのよ」
「成る程」
「ちなみに作中でわたくしが好きなキャラは、十連勝するコトで体のパーツを取り戻せる裏ルールがあると主人公に教えた師匠ですわね。主人公の為に十連敗して死にましたけど」
「あらま」
「で、好きなシーンとかは……ミルテが読んでから語った方が面白いでしょうから、保留というコトで」
「ええ、そうね!そっちの方が楽しそうだし、素敵だわ!」
そう微笑むミルテは、可愛らしい普通の女の子だ。
ただちょっと人付き合いの匙加減がわかっていないだけで。
……ホント、良い子なんですけれど……。
良い子なのだが、ミルテは匙加減がわからなかったせいで婚約破棄をされていたりする。
まあ、婚約相手に百枚の便箋が入った手紙を三十通送り、ソレにはミルテのプロフィールから始まり思い出語りがあり、そして相手に聞きたいコトや自分の知っている相手の情報全てを書いたらしいので無理もない、とは思う。
……しかも百枚の便箋入りレター三十通でようやく一回分で、内容違う手紙をまた何回か送ったそうですしね……。
ミルテ自身は単純に、親の決めた婚約だとしてもキチンと夫婦として愛し合う為に、というつもりで手紙を送ったらしい。
ただその匙加減がわからず全力で実行した結果、その重さに相手の心が折れたワケだが。
……素でわかってないんですのよね、ミルテは。
婚約者相手だろうが、友人相手だろうが全力で重い。
つまり友人である自分の読んでいる小説についてをやたら聞いて来たりしたのも、友人が気に入っている本を自分も理解したい!という一般的な気持ちなのである。
……ただ、その重さが完全に友人相手にするような重さじゃないんですのよねー……。
その為、ミルテは友人もあまり居ない。
ミルテから発される友情が過剰過ぎて重いとはいえ、ミルテ自身は一言か一文でも返事があれば喜べる良い子なのだが。
……ホンットーに、匙加減がわかっていないのが勿体ないですわ……。
「あっ、そういえばね、この間ジョゼに教えてもらった小説読んだのよ」
「この間、というとドラゴン退治の家系の跡取り息子がドラゴンと恋に落ちて駆け落ちしてめっちゃ追いかけられるヤツですわね」
「そう!」
ちなみにラストは追っ手により恋ドラゴンが目の前で殺された主人公が、自分を押さえつけていた父親の武器を奪って自殺というエンド。
「アレ一冊で終わりだから構成しやすいってコトで、劇にもなってますわよね」
「ええ。ジョゼも前に見に行ったって言ってたでしょう?ラストのシーンがとても感動的だった、って。
ジョゼの場合は舞台の裏側も見えちゃうから中々のめり込めないって前に言ってたけど、でもそんなジョゼが感動的だって言ってたからつい気になっちゃって。
本当は出来るなら誰かお友達と行けたら良かったんだけど、皆忙しいみたいだったから一人で行ったの」
「誘ってくれれば一緒に行きましたわよ?」
「でも、その時フェリシア先生の研究室に行っていたでしょう?本当は誘おうかとも思ってたんだけど、ジョゼの知識を提供してる真っ最中みたいだったからやめたの。
あ、えっと、ソレを知ったのは盗み聞きで知ったんだけど、別に悪意とか悪気があったワケじゃないのよ?
ただあまりヒトが多いと緊張しちゃって話せなくなってそのまま逃げちゃうかもしれなくて、ソレだと不審人物みたいになっちゃうから、先に中の人数を確認しておこうかなって思っただけなの」
「ああうん、別にアソコのメンバー盗み聞き程度で怒るようなヒト達じゃないから大丈夫ですわ。というかそんなコト気にし始めたら、わたくしなんて常に覗き見してるようなモンですのよ」
「……ふふ、ソレもそうね」
納得したのか、そう言ってミルテはクスクスと笑う。
「あ、えっと、それでね?その劇なんだけど、すっごく素敵だったわ!原作小説のちょっとした一文とかもちゃんと再現されてたし、追っ手が迫ってくるシーンはドキドキハラハラして!
特に恋ドラゴンが主人公に対して、「命を狙われているのは私なのだからお前はあちらに行くと良い。あいつらはお前を取り戻そうとしているのだから。お前が不要な怪我をするのは私の本意では無い」って距離を取るシーンも凄く胸がぎゅうってなる感じで!」
「うんうん、アソコ良いですわよね。ソレに対して、主人公がソッコで「お前と共に居る以外に、俺に必要なモノは無い」って返してたのとか原作通りで」
「やっぱりジョゼも、ソコが良いって思うわよね!」
ミルテは嬉しそうに頷きながらそう言った。
「他にも沢山沢山凄くて、見て良かったって思って、ジョゼがあの作品を教えてくれて良かったわ」
「ソレはわたくしも良かったですわ」
教えたというか、聞かれたから答えただけだったが。
しかしミルテは相手に合わせ自分も理解しようとするからか大体の作品を好意的に捉えてハマってくれるので、こちらとしても教えて良かったと思えるからありがたい。
……うん、まあ、ミルテの性格に慣れてないと怒涛の質問攻めにビビッて距離取られるコトが多いみたいんですけれどね。
確かに質問攻めされたり、そしてミルテがあそこ行ってこれこれこうでこういう経験をした、という報告をつらつらされたりというのは、ヒトによっては苦手だろう。
まあ自分の場合はやたら暴露されたり相談されたりが頻繁にあるので、ミルテ自身に可愛げがあるだけ一部の厄介タイプに比べればずっと楽だが。
「アッ、そういえばね?劇の時なんだけど、始まる前にうっかりチケットを落としちゃってたの」
「あらま。大丈夫だったんですの?」
「ええ。最近よく会う猫系の魔物が拾ってくれて、キミのだろう?って持ってきてくれたから」
「猫系魔物?」
「そうなの!ちょっと前に公園で屋台で買ったホットドッグを食べてたら、お腹を空かせてるみたいだったからちょっと分けてあげたのね?
そしたらソレからよく会うようになって、道に迷った時とかに必ず現れては助けてくれるのよ!」
「成る程、ありがたいですわね」
「本当、結構助けられちゃってるのよね」
恥ずかしそうに苦笑しながらも、ミルテの表情は嬉しそうだった。
「でも、チケットなんてよくわかりましたわね。ああ、でも探し物してるヒトってあからさまにナニか探してる動きをしてると考えると」
「ううん、ヒト多かったから探すのはソッコで諦めてたわよ?」
「あら」
「だからもう受付のヒトに無くしましたって言って、どうにもならなかったら諦めようかなって。そしたらその猫の魔物が渡してくれて、本当に助かったわ」
「……ちなみに、チケットに名前とか書いてたり?」
「アハ、流石にしてないわよそんなコト。自己紹介もしてないし」
「そうなんですの?」
「ええ。まあいつの間にか向こうは私の名前を知ってたみたいだけどね」
「……んん?」
「あ、もしかして私の落とし物だって特定出来た理由を不思議に思ってるの?」
「まあ、ちょっと」
猫系魔物は沢山種類が居る。
が、その中でなんとなく引っかかる猫系魔物が居るのだ。
……いやまあ、あの魔物は特に害魔でもありませんし、ミルテの性格からすると良い感じに噛み合いそうだから問題はありませんけれどね。
「私もちょっと不思議に思ったから、彼に聞いたの。どうしてわかったの?って。
そしたら、彼は種族的に魂を目視するコトが出来るらしくて、私の魂を記憶してたみたい。だからチケットにあった痕跡からすぐにわかった、って言ってたわ!」
「あー、成る程」
……成る程、というか、魂を目視ってコトはやっぱあの魔物ですのねー……。
惚れた相手をストーキングするというのが種族的な特徴であり、魂が目視出来るからこそ一途にその相手のみを追いかける魔物。
魂を目視出来る為ドコに隠れていようとストーキング可能だし、相手または自分が生きている限り永遠に追いかけるし、惚れた相手が先に死んだら後を追って死ぬという、ストーキングキャットという魔物だ。
「……本当にね、彼は素敵なの。颯爽と現れて助けてくれるから、もし迷ったらまた会えるのかしら?って思って地図無しで慣れない道を歩いたりしちゃってね?
そうして迷子になるとやっぱり現れてくれて、最近ではそういうの無しで会えたらって思ってドキドキしながら王都に出て、でも会えなくてつい自分から道に迷いに行っちゃったり」
「恋してますわねー」
「エッ!?こ、恋!?やっぱりコレって恋なのかしら!?」
「いや確証は無いから断言する気はありませんけれど、出会えたら良いなって思ってソワソワするのはそういう系だと思いますわよ?まあ、わたくし個人の意見ですけれどね」
そしてパートナーが居ない独り身の意見はあまり参考に適さないと思う。
「……やっぱり、コレって恋なのね」
ミルテは真っ赤になった頬を両手で押さえ、その瞳をキラキラと輝かせた。
「ドキドキして、ついお礼や聞きたいコト、そして私のコトを知って欲しいと思ってつい便箋を五百枚くらい使っちゃったけど、恋ならもっと使うべきかしら」
「んん?」
ナニやら雲行きがオカシイような。
「ねえジョゼ!友人として聞きたいんだけど、好きな相手に手紙を渡して告白ってしても良いと思う!?」
「まあ、テンプレートだと思いますわ」
ミルテの場合はその重量が桁違いだが。
「……わ、渡したら、読んでもらえるかしら」
「ちなみに便箋何枚入りを何通くらい送るつもりですの?」
「元婚約者だった相手に百枚入りを三十通送ったら重いって拒絶されちゃったから……本当はもう少し多めにしたいけど……五十枚入りをニ十通くらいかしら?」
充分に重い。
が、しかし自分の考えが合っているならその相手魔物はストーキングキャットであり、図鑑の説明には必ず書かれるレベルで愛が重い魔物。
……とすると、多分余裕で受け取ってくれるし、喜びそうなんですのよねー……。
「…………うん、我慢はよくありませんし、普通に送りたいだけ送ると良いと思いますわ。
我慢をしてパートナーになれたとしても、後から全力出して重いって言われるより、初っ端から本気見せた方が向こうもまだ耐性出来ると思いますし」
あともしストーキングキャットじゃない種族、かつまともなメンタルの魔物だった場合、五十枚入りニ十通と百枚入り三十通を受け取った時の反応はあまり変わらないと思う。
三つ以上は全部沢山に見える、みたいなアレだ。
「……そうね!私が最初からぐいぐい行っても離れるヒトは離れたし、ジョゼみたいに普通に接してくれるヒトは友達になってくれたもの!きっと大丈夫よね!」
大丈夫とは言っていないが、良い結果になるのを友人として祈っておこう。
天使が誰かの為にと願う祈りは神に届きやすいらしいので、きっと良い結果になるだろう、多分。
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コレはその後の話になるが、件の魔物はやはりストーキングキャットだったらしく、匙加減がわからない故に激重なミルテの手紙に大喜びして告白をオーケーしたそうだ。
まあストーキングキャットと言えば影からストーキングするわ魂覚えてるからどこまででも追跡してくるわ知らない内に室内に侵入して匂いつけてたりするわ、というタイプの魔物。
つまり愛が重くてヤベェモン同士、そりゃ上手く行くわな、という感じ。
「……あ、あら?」
「どうしたんですの?」
魔法の授業で、本日は座学となっているので教室に生徒が集まっているのだが、隣に座ったミルテが持ち物をひっくり返す。
「……ペン、忘れたみたい」
「あらら。良かったらわたくしペン沢山持ってるから貸しますわよ?」
「あ、ありがとうジョゼ!でもどうして沢山?」
「ペンを忘れがちな友人とか、ペン先がやたら壊れる友人とか、そういう子用に……」
「それもう、本人達が複数持ちするようにすれば良いんじゃないかしら」
まったくもってごもっともな言葉にうんうんと頷く。
こうやってまともな返答が来る辺り、やはりミルテはちょっと愛の匙加減がアレなだけの常識人だ。
……ええ、狂人は微妙に会話が通じませんものね!
特にアルティメットレベルの狂人は意外とまともに思えるのだが、会話が噛み合わないコトが多いのだ。
しかも微妙に意思疎通がしにくいな?レベルなので、本当アルティメットレベルの狂人かちょっと意志疎通苦手なタイプの常識人かがわかりにくい。
「さて、そういうワケでわたくしは複数のペンを持ってるワケですけれど、どのペン使います?」
「選べるの?」
「女子受け良さそうなのと男子受け良さそうなのと普通のとナンか変わってるデザイン」
「バリエーション豊富過ぎないかしらコレ」
「女子向けと男子向けと常識人向けと狂人向けで、気付いたらこんな感じに……」
「ううん……普通に女子向けを借りようかしら」
「その必要は無いよ」
そう言ってひょいっとテーブルの上に乗ったのは、ストーキングキャットだった。
彼はミルテの前にペンを置き、笑みを浮かべながら胸を張る。
「忘れているみたいだったから、困るんじゃないかと思って持ってきたんだ」
「ストーキングキャット……!ありがとう!」
「わあ、熱烈だなあ」
感激のあまり抱き着いたミルテだが、ストーキングキャットは抱き締められても特に動揺する様子は無い。
寧ろ嬉しそうにゴロゴロ喉を鳴らしながら、尻尾をミルテの腕に絡めているくらいだ。
「とりあえず、ペンの貸し出しは不要そうですわね」
「ええ!」
ミルテはストーキングキャットを抱き締めながら、嬉しそうなニコニコ笑顔で頷いた。
実際ミルテは自分から愛を捧げるコトが多いから、こうして愛を感じる行動をしてもらえるのが嬉しいのだろう。
……うん、まあ、普通のヒトはミルテの重過ぎる愛にビビッて、受け取る前に去りますものね。
「本当にありがとう、ストーキングキャット」
「気にしなくても良いさ。こうして僕がキミに会いに来る理由になったワケだし、昨日の夜遅くまで頑張って勉強していたからね。きっと忘れるんじゃないかと思ってたから気付けただけさ」
「うふふ、ストーキングキャットは本当に私をよく見てくれてるのね」
忘れるんじゃと思っていたならその時言うか、部屋を出る前に指摘すれば良かったんじゃと思うが、まあ同棲しながらも待ち合わせデートをしたがる恋人みたいなモノだろう、多分。
己も異世界の自分も恋愛事にいまいち縁が無いので、その辺の心境はあまり理解出来ないが。
……自分以外の恋愛事になら、やたら縁はあるんですけれど、ねー……。
「……にしても、アナタ方ってパートナー関係なんですのよね?」
「ええ、そうよ?」
「見ての通りさ」
「でも一緒に行動はほぼしてませんわよね」
周囲を少し見渡すだけで、パートナーが居る同級生の殆どはパートナーと一緒に行動している。
行動していないのは相手が大理石の彫刻であるサムリみたいなタイプばかりなので、特に別行動する必要も無いのに別行動、というのは珍しい。
……基本的に皆、一緒に行動してますものね。
「だって僕はストーキングキャットだからね」
「ソレ関係ありますの?」
「うーん……一緒に居れるのは嬉しいし、是非共一緒に居たいんだけど、ソレはソレとして一歩引いた場所からミルテを見守りたいっていうのもある、みたいな。
一緒に居てイチャイチャするのは自室でも出来るからね」
「成る程」
ナニも理解出来ていないので成る程では無いのだが、ソレを聞いたミルテが嬉しそうに頬を真っ赤にして照れているので良いというコトにしておこう。
今まで中々愛に応えてくれる相手が居ないミルテだったからこそ、応えてくれる相手が居るというのは良いコトだ。
ミルテ
引っ込み思案から積極的になれたものの、今まで引っ込み思案だった為に他人との距離感がつかめていない。
好きなヒトにも好きになるべきヒトにも友人にも全力で接する為、距離を取られがち。
ストーキングキャット
惚れた相手をストーキングし、魂を目視出来る為逃がすコトは無く、死ぬまで見守るし相手が死んだら一緒に死ぬ、という魔物。
相手と相思相愛になれると、ストーキングは続けるものの接触が多くなる。