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ヒトと魔物のキューピッド  作者:
五年生
160/300

封印少女とゾンビマッシュルーム



 彼女の話をしよう。

 遺伝で絵の中に描いたモノを封印するコトが可能で、画家志望で、害魔とも共存出来るようになりたいと思っている。

 これは、そんな彼女の物語。





 モデルを頼まれて美術室に来たハズなのだが、モデルを頼んできたヴェーラは実に嬉しそうな顔で自分に抱き着いてぐりぐりしてきていた。



「……あの、ヴェーラ?ナニしてんですの?」


「懐いている!」


「や、まあ、でしょうねえ」



 そうじゃなくて絵を描きたいからモデル云々はどうした。

 そう思いつつ、ヴェーラの灰色の髪を梳くように撫でる。



「絵のモデル云々はどうしたんですの?」


「ああ、そうだったな!私は元々そのつもりで頼んだのだった!いやあ最近喜ばしいコトが多くてすっかりうっかり忘れてしまっていた!」


「忘れてたんですの、ねー……」


「うむ!」



 そんな堂々と頷かれても困るのだが。



「というか、ナンでわたくしに頼んだんですの?」


「聞いてくれジョゼ!」


「エッ、アッハイ」



 ナニか琴線に触れでもしたのか、ヴェーラは真面目な顔でこちらの両腕を掴んだ。



「ジョゼしか私の絵のモデルになってくれる相手が居らんのだ!」


「でしょうねえ」


「でしょうねえではない!酷くないか皆!」


「だってアナタ、絵に描いたモノを封印するじゃありませんの」



 遺伝した能力だし、任意で発動するモノだから害は無いとわかっているが、それでも普通は怖いと思うモノだ。

 特に狂人の場合は封印されてもおかしくない言動やら行動を頻繁にしているから、尚のコト避けるのかもしれない。



「何故皆そう言って避けるんだ!私の能力は対象を描くコトで!ソレをキャンバスの中に封じ込めるという!そういうモノだというのに!」


「同じコトですわよねソレ」


「描いたモノを封印では無く、絵として描くコトでキャンバスの中に封印、だ!ちょっと違う!」



 ソコそんなに細かく言う部分だろうか。

 いやまあ芸術家は常人にはわからないこだわりがあるコトも多いようなので、そういう系統なのだろうが。


 ……常人というか、イージーレベルなだけの狂人ですけれどね、わたくし。



「さておき私は絵に描けばソレをキャンバスの中に封印出来る。つまりフルーツが入ったバスケットを描き、リンゴのみを封じようとすればバスケットの中からリンゴが消えるワケだ!」


「ですわねえ」


「そしてコレは生き物にも使用可能!」


「ですわねえ」



 ヴェーラの語りを聞き流しつつ、爪チェック。

 昨日整えたばかりだからか伸びているというコトも無く、良い感じだ。


 ……あ、でも左の中指にささくれ出来てますわね。



「聞いてくれジョゼ!」


「聞いてる聞いてる聞いてますわよー」


「では続けるが!」



 自分で返しといてナンだが、ヴェーラは今の適当な返答で良いんだろうか。



「その能力のせいで誰も私の絵のモデルになってくれんのだ!私は画家になりたいというのに!ソレも出来ればこう、幸せを描く系の画家!」


「具体的には?」


「ヒトとか風景とか、ナンかこう、アレな感じのヤツだ!」



 ……まったく伝わってきませんわねー、その説明。



「…………日差しが差し込む公園で楽しげに遊んでいる子供と野生の魔物と見守る大人達、みたいな?」


「そうソレ!」


「近い近い」



 あと指を差さないで欲しい。

 目と目の間に指を差されるとナンかこう、みょーって感じの気分になる。



「というワケでこう、風景やらモノやらを描くのは良いが、人物も練習したいのだ」


「確かにそういうの描くなら人物の練習も必要ですものね」


「だろう!?なのにモデルをやってくれるのはジョゼ以外だとカメーリア先生くらいなのだ!」


「あー」


「そのカメーリア先生も自分が作業に夢中になっている時なら勝手に描いても良いが他の時はちょっとって言ってくるし!」


「作業中なら集中してるから良いけど、他の時だと気になっちゃうんでしょうね」


「んでもって最近までここの常連だったサムリはガラティアスタチューが嫉妬するからって!心底嬉しそうにとろけた顔で自室で作業するようになりおってあの野郎!」


「どーどーどー」



 サムリとガラティアスタチューに関してはその方がヴェーラの安全の為だ。

 なにせガラティアスタチューは自分がサムリの一番で居続けたいからという理由でサムリの腕を潰した前科があるワケだし。


 ……ラブラブなだけ、良いコトですわ、うん。


 サムリも今は作業も出来る高性能な義手を装備してまた彫刻出来るようにとリハビリしているようなので、放置で良いだろう。

 というか色々ヤベェ感じのラブラブカップルなので関わり合いになると轢かれて最悪死ぬ感じの勢いがあるのだ、サムリとガラティアスタチューは。


 ……腕潰しの前科と、ソレを笑顔で受け入れたって事実は重いですわよねー……。



「というワケで、モデルになってくれと頼めばソッコでオッケー出してくれるジョゼに頼んだワケだ」



 別にソッコでオッケー出した記憶は無いのだが。

 というかいつも通りにナンで自分がとかグチグチ言いながらのオッケーだったし。



「で、ソレを忘れてたと」


「ハハハハハ!」



 笑っても誤魔化されんぞと思うが、ヴェーラだしなと思うと誤魔化されても良いかとも思えてくる。

 ヴェーラはこういう性格だし。



「いやすまん!喜ばしいコトがあった上にジョゼが自分から訪ねてきてくれたぞわーい!という感じになってな!」


「ああ、だから抱き着いてきたんですのね……」



 自分から訪ねたというか、ヴェーラに頼まれたから訪ねてきただけなのだが。



「というか、喜ばしいコトって?」


「おお、聞いてくれるかジョゼ!」


「モデルとして大人しくしている間、暇ですもの」


「うむ、では話そう!」



 ガタガタと音を立てながら慌ただしく絵を描く準備を終わらせたヴェーラは、真面目な顔で筆を動かしながら語り始める。



「私の親は魔物と人間だ」


「混血ならそうでしょうね」


「ああ。そして魔物側である父は害魔なのだ。分類的に」



 そりゃ絵の中に封印するという遺伝があるならソレが出来る魔物というコトなので、不思議という程でも無い。

 言わないが。



「しかし父と母は仲が良い!そりゃもう、私は将来両親のラブラブで幸せ満載なこの感じを絵に描いてみせよう!と思うくらいには!」



 ……真顔タイム、短かったですわねー……。



「だが時々、害魔である父を偏見の目で見てくる輩も居るのだ。なので私は、害魔とヒトも普通に共存可能な世界になれば良いなと思っている!」


「ワリとなってきてると思いますわよ?」



 混血が増えてきている為、害魔とされる魔物と一緒に居ても平気、というヒトが増えているのだ。

 そして同時に頭イカれた狂人も増えている為、より一層ハードルが下がっている。


 ……下手すりゃ害魔の方がまともなメンタルしてるコトもありますしねー……。



「そう!ソレだジョゼ!」


「ドレですの?というか筆こっちに向けない。絵の具垂れますわよ」


「おっと」



 もうちょっとで床に絵の具が垂れるトコだったので危なかった。



「その害魔とヒトが共存出来る世界になってきている、という部分だ!

同級生達は結構パートナーが出来始めていてちょっと寂しい気分だったりはするんだが、ソレはソレとして害魔をパートナーにしている生徒も結構な数居たりする!」


「居ますわねえ」



 パッと思いつく限りでも複数人の顔が出てくる。

 友人達でこうなのだから、他の学年も足すと思った以上の数が居そうだ。



「ソレに気付き、流石はヴェアリアスレイス学園!と喜ばしくなったのだ!いや本当に流石だ!

普通とはちょっと違う生徒をスカウトしまくっているだけはあり、生徒達も皆「全部平等」の精神が育まれている!」


「アナタの場合、混血かつちょっと変わった性格ってのもスカウトされた理由な気がしますわよね」


「ソレはちょっと自覚があるぞ!」



 あるのか。





 図書室に本を返した帰り、森の方からヴェーラが走ってきた。



「おお!ジョゼ!丁度良いトコロに丁度良い人材が!」


「アッ、ナンか凄いイヤな予感が。具体的には面倒事に巻き込まれる予感」


「大正解だ!」


「詳しく話聞かずに要件断ってもよろしくて?」


「駄目だ!」


「でしょうねー……」



 知ってた。



「で、都合の良いわたくしにナンの要件ですの?」


「うむ、ちょっと都合の良いジョゼに頼みたいのだが」



 ソコはツッコミを入れて欲しかったというか、素直に復唱しないで欲しかった。



「ジョゼはゾンビマッシュルームを知っているか?」


「ハ?ああ、あの害魔ですの?ソレが?……まさか食ったとか言いませんわよね!?あれ程拾い食いはすんなと言いましたわよ!?」


「食ってはおらん!私をなんだと思っているんだ!」


「バカ!」


「あながち間違いではないせいで言い返せん!」



 ……うっかり本音で言っちゃいましたけれど、まさか肯定されるとは……。



「さておき、そのゾンビマッシュルームについての詳細を知りたい」


「図書室行きなさいな」


「生き字引に聞いた方が適格だし確実だし速いだろう」


「誰が生き字引ですのよ。否定はしませんけれど」



 やたら聞かれるコトが多い為、無駄に雑学豊富なのは事実だ。



「……ゾンビマッシュルームとは、寄生系の害魔ですわ。見た目はキノコですし基本的にはただのキノコなんですけれど、食べた生物の脳に寄生するコトで知能や自我を得て魔物化する害魔ですの」


「思ったよりヤバい生態だな」


「ヤバい生態ですわよ」



 まあ見た目が明らかに食用キノコじゃないので、誤食はそうそう無いが。

 食べるのは知能が低い害魔か、幼くてキノコ類の知識が足りていない箱入り魔物くらいである。



「ちなみにゾンビマッシュルームによって寄生されたらもうアウトで全身を操られますわ。

その時点で生物としては死亡するので腐り始めて、そのボディを苗床としてキノコが増えて……見た目は完全にキノコ生えたゾンビになりますわね」



 だからこそのネーミングだ。



「なので基本的にはボディごとファイヤーして焼きキノコにして討伐、ですわ」


「だがゾンビマッシュルームは寄生先の脳によって知能や自我を得るのだろう?」


「エ?まあ、そうですわね?ソレが?」


「つまり寄生先が穏やかな性格だった場合、穏やかなゾンビマッシュルームになったりするのだろうか」


「…………うーん」



 ヴェーラの表情からすると真面目な話題っぽいので、こちらも真面目な返答を返したい。

 だが正直知っている前例の中にそんな話は無かったので、どうにも難しい話だ。



「んー、前例が無いんですのよね。

でも確かに殆どのゾンビマッシュルームは知能が足りない害魔に寄生していたので、その結果ソッコで討伐しないと、みたいな感じになった可能性はありますわ」



 ゾンビマッシュルームは寄生すると同時に寄生先を殺す為害魔認定されているが、もう一つ理由があるのだ。

 それこそが今話した、害魔的行動である。


 ……でもソレが害魔に寄生した結果害魔の行動をトレースしたというのであれば、共存は無理ではないという可能性もあり得るっちゃあり得るんですのよねー……ん?



「…………ヘイ、ちょっと待ちなさいな。そういう可能性を示唆するってコトはまさか」


「む、もう気付かれたか!」



 ヴェーラはニパッと明るい笑顔になり、森の方の茂みに手招きをした。



「すまん、気付かれた!」


「みたいだね」


「ワーォ……」



 茂みから現れた魔物に、頭を抱えるしかない。

 なにせ現れたのはゾンビマッシュルームに寄生された牡丹猪だったのだから。


 ……というか、すぐソコに居たんですのねー……。


 敵意やらが無かったせいで、()えてはいたハズなのにまったく気付けなかった。

 視界が広いからこそ特定のモノ、それこそ敵意やナンやらで対象を特定するようクセ付いていたせいだろう。


 ……今度から気を付けるようにしなくては。



「…………エー……ゾンビマッシュルームですわよね。ソレも食用系魔物である牡丹猪に寄生してる……」


「む、よくソコまでわかったな!私は食用系魔物としかわからなかった!」


「そりゃキミには僕が説明したから。でも確かに、結構原型無くなってるのによくわかったね。目玉とか腐って落ちかけてるくらいなのに」


「見た目というか、体内の細胞的に」



 食用系魔物だからこそ、肉は結構食堂で見るし。

 ちなみに牡丹猪とは牡丹の香りがする芳醇な肉、を提供してくれる食用系魔物である。

 食用系魔物にしては珍しく自殺欲が無いタイプなので、初心者にも育てやすいと評判な食用系魔物だ。



「……というか、こうも普通に会話可能なゾンビマッシュルームとか初めて見ましたわ」


「この宿主はちゃんとした知能があったからね!」


「でも食べたんですのね」


「うん、牧場からうっかり脱走しちゃったみたいで、お腹空いたからって」



 で、寄生されたと。

 まあ牧場育ちはイコールで世間知らずな箱入りとも言えるので、キノコ知識があるハズもない。

 そう考えれば当然っちゃ当然ではある。



「…………で、ヴェーラ?都合の良いわたくしにこのゾンビマッシュルーム関係でナニか頼みたいコトでもあるんですの?」


「うむ、よくわかったな!」



 今までの会話を総合すれば大体そうなる。



「私が頼みたいのは、ゾンビマッシュルームと一緒に居るにはどうしたら良いか、だ!」


「ソレ頼みってか質問ですわね」


「では言い換えよう!質問だ!」



 ……言っといてナンですけれど、そういう問題では無い気が……。



「……んなモン、一緒に居たいなら好きなように一緒に居りゃ良いじゃありませんの」


「ソレはそうなのだがソコでは無く!ゾンビマッシュルームと安全に共存したいのだ!」


「はあ」


「僕からもお願い出来るかな」



 ゾンビマッシュルームは、死んで濁ってはいるがまだ腐っていない方の目でこちらを見ながら言う。



「僕みたいな寄生タイプの種族にも、人間と共存したいって気持ちはあるんだ。

まあコレは僕という種族というよりは、寄生先であるこの宿主がそういう精神性だったっていうのが大きいから、他のゾンビマッシュルームがそうかと言うとアレなんだけど」


「つまり?」


「キノコが繁殖すると危険度高いし、ボディ腐るから長持ちしないしで困ってる」


「成る程」



 わかりやすい。



「確かにボディを苗床にしてキノコが繁殖すると、胞子から周辺にゾンビマッシュルームであるキノコが生えたりしかねませんものね。

そして腐っているボディのままだと活動が出来なくなるし、大前提として衛生的にもあまりよろしくはありませんし」


「そう!ソコなのだジョゼ!」


「近距離で叫ばないで欲しいんですけれど……」



 というか一気に距離を詰められて圧が強い。



「私はゾンビマッシュルームに今のようなコトを説明され、害魔として扱われていようと共存出来る個体であるならば共存出来るという、あの、アレだ!」


「個体によって差があるから、共存不可能と思われていた害魔相手でも共存可能な個体が居れば可能なのだという前例を作りたい」


「ソレだ!流石ジョゼ!」


「アハハ……」



 ……我ながら、どうやって察したんでしょう今の……。



「……で、衛生的な部分とかをどうにか出来るよう案が欲しい、と」


「そう!」


「ならアナタの能力活かしなさないな。折角概念的なモノでも封印可能なんですから」


「む?」



 あからさまに複数のはてなマークを浮かべているヴェーラに苦笑を零しつつ、言う。



「彼を描いて、キノコの繁殖性と腐食している部分をキャンバスに封印すりゃ良いってコトですわ。そうすればキノコが繁殖し過ぎるコトは無くなるし、腐食部分も安全に削るコトが出来る」


「成る程!」


「エッ、そんなコトが出来るのかい!?僕としては痛覚無いから腐食部分を削るのは物理的でも良いと思っていたけど、そんなビックリな方法が!?」


「や、封印による部分削りで痛みがあるか無いかは流石に知りませんわよ?」



 体験したコト無いし。



「ただまあ、ソレやったら後は無事な部分に防腐処理を施して、腐食部分を削った結果抉れた部分などは包帯でも巻いときゃビジュアル的嫌悪感はどうにかなりますわ」


「エ、今の僕そんなにビジュアル的嫌悪感酷いの?」


「普通ならトラウマでしょうねえ」



 キノコが生えてる腐ったゾンビイノシシとか、完全にホラーの中の化け物だ。

 自分がイージーレベルの狂人であり、ヴェーラがちょっと頭アレな感じだったお陰で特にそういう嫌悪感を抱いたりはせずに済んだが。





 コレはその後の話になるが、キノコの繁殖性やらが無くなって比較的安全になったゾンビマッシュルームは、ヴェーラのパートナーになった。

 流石に最初は事情を聞いたフランカ魔物教師も「マジ?」と引いていたが、寄生先の脳云々の説明をすれば興味深そうに聞いてくれ、最終的には「まあ死人出なければ良いんじゃない」というコトで纏まった。


 ……纏まった、って言えるのかはアレな気もしますけれど、まあ纏まったというコトで。



「ハァイ、ヴェーラ」


「む!?ジョゼ!?どうした美術室にナニか用か!?」


「いやいやヴェーラ、まさかとは思ってたけどやっぱり忘れてたのかい?」


「む?」


「モデル、頼んできたのはヴェーラじゃありませんの」


「…………そういえばそうだったな!すまん!また忘れていた!」


「ハイハイ、いつものコトだから構いませんわよ、っと」



 そう言って、美術室の椅子に腰かけさせてもらう。



「……ゾンビマッシュルームを描いてたんですの?」


「ああ!世の中にはこういう平和的で害魔っぽくない害魔も居るのだと世界に伝えたいと思ってな!というワケでゾンビマッシュルームにモデルになってもらっていたというワケだ!」


「四分の一くらいの肉が無いから恥ずかしいけど、まあ共存したいって思ってるのは僕の気持ちなワケだし」



 そう言ってゾンビマッシュルームは照れたように笑った。


 ……確かに腐食していた部分を削った結果四分の一くらい減りましたけれど、ソレって恥ずかしいモンなんですの?


 食用系魔物特有の感性だろうか。

 牡丹猪の脳から知能やらをトレースしたゾンビマッシュルームなので、可能性はある。



「さてではそういうワケなのですぐ仕上げるから少し待っていてくれジョゼ!」


「ソレは別に良いんですけれど……ヴェーラの望みって、害魔だからと拒絶したりしない共存世界、でしたわよね」


「そうだ!」



 ……元気な肯定ですわねー。



「……前から思ってたんですけれど、害魔にも色んなタイプが居るからもうちょっと詳しく言った方が良いと思いますわよ」


「どういう意味だ?」


「アナタが言ってる害魔って、要するに人間と共存したいと思っている害魔と、でしょう?」


「他にナニがある」


「や、害魔って言ったら普通はヒトに害を及ぼすタイプのコトを言うんですのよ」


「成る程!ソレは誤解を生みそうで非常にイヤだな!どうするゾンビマッシュルーム!」


「エ、ソコで僕に聞く?僕の宿主であるこの牡丹猪は完全に牧場生まれ牧場育ちでそういう知識とか無いから、ジョゼフィーヌに聞いた方が良いんじゃないかな」


「らしいがどうしたら良いと思うジョゼ!」


「自分で考えなさいな」


「無理だ!」


「無理ですの、ねー……」



 そうハッキリと言い切らんでも良いだろうに。



「……とりあえず、この学園には害魔とパートナーになってる生徒が結構な数居ますわ」


「うむ、居るな」


「んでもって結構ラブラブだったりもしますわよね」


「談話室で人形の害魔に尽くしまくっている生徒も居たしな!」


「同級生のレフと、そのパートナーであるカラクリ舞人形、ですわ」


「ジョゼではないのだからそう関わり無い相手の名前など憶えているハズが無いだろう!同級生ですら二百人前後も居るのだぞ!?」


「や、わたくしだって関わり無い相手の名前とか憶えてませんわよ?」


「私もそうだが」



 ……まあ確かに、五年間同級生してるとはいえ、普通は決まった友人としか話しませんわよね。


 自分の場合はやたら頼まれたり、ついつい助けたりした結果友人になっていた感じだが。



「とにかく、そういう子とかにモデル頼んだ方が良いと思いますわ」


「断られるからイヤだ!」


「いやいやヴェーラ、多分ジョゼフィーヌが言ってるのはソコじゃないんじゃないかな」


「む?そうなのか?」


「ゾンビマッシュルームの言う通り、ソコじゃありませんわよ。

単純にヴェーラの理想像なんですから、そっちをモデルに描いた方が描きたいモノ描けるんじゃありませんこと?って話ですの」


「……確かにヒトと害魔のパートナー関係というコトは、私が描きたい絵そのままだな!?」


「でしょう?だからわたくしにモデル頼むのではなくそっちに」


「ではモデルになってくれるよう交渉を頼むぞ、ジョゼ!」


「…………ん?」



 自分は座りっぱなしのモデルをやりたくないなーという気持ちで違う方向にシフトさせようと思って言っていたのだが、何故結局関わる感じの結果になっているのだろうか。



「エ、わたくしが交渉すんですの?」


「私が交渉すると能力のせいで怯えられるからな!」


「あー、まあ、確かに」



 特に害魔からすると、封印系とか天敵でしかない印象だろう。



「そして相手の名前や種族もよく知らんので、知っている、かつ友人であるジョゼが適任だろうと判断した結果だ!」


「ソコを自分でやろうとかは」


「思わん!」


「思わんのですね……」



 ヴェーラの言葉に肩を落とす。

 しかしヴェーラが描く絵は温かみがある優しい絵なので、その良さが広まれば良いと思っているのもまた事実。

 他の生徒がモデルをやればソコから絵の良さや、描かれても別に封印されたりはしないというコトが広まるかもしれないので、そのくらいは必要経費のようなモノ、と思うコトにしよう。




ヴェーラ

遺伝で描いたモノを概念だろうがナンだろうが封印するコトが可能な画家志望。

ちなみに封印したモノは燃やせば永久に消滅するが、破いたりすると封印解除になってしまうのでそれなりに注意が必要。


ゾンビマッシュルーム

基本的にはただのキノコだが、自分を食べた生き物の脳に寄生して知能を得て魔物化するヤベェ魔物。

寄生した時点で宿主は死んでいる為ボディは死体だが、腐食を封印してもらったし色々処置もしている為今後は腐らない。


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