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ヒトと魔物のキューピッド  作者:
一年生
16/300

薬屋少女とキャンドルオウル



 彼女の話をしよう。

 家が薬屋で、よく薬草を摘んでいて、心優しい。

 これは、そんな彼女の物語。





 入学したばかりの頃に比べると利用者が増え、そして声テロ率も高くなった図書室で、魔眼の種類が多数載っている魔眼事典のページを捲る。


 ……やっぱここが落ち着きますのよね。


 談話室で読むのも良いが、アソコだと何故かよくナニかを頼まれるのだ。

 しかし図書室ならば、大体の生徒はランヴァルド司書の低音を警戒して長居する生徒は少ない。

 時々襲ってくるランヴァルド司書の声テロの流れ弾さえ受け流せれば、快適に読書に集中出来る空間なのだ。


 ……魔法で空間広めですしね。


 壁には本棚が埋め込まれており、あちこちに本棚が置かれている空間。

 天井は高く、閲覧頻度の低い本などはそっちの高い位置に収納されている。

 そして机だが、元々はここで勉強会などをする為だろう、結構大きい机があちこちに置かれている。

 本棚の近くには居心地の良さそうなソファなどもあるので、居心地自体はとても良い。


 ……ランヴァルド司書の低音で腰が砕かれさえしなければ、ですけれどね。


 そう思いながらページを捲り、邪眼についてが書かれているページを読む。



「……ねぇ、ジョゼ。ちょっと良いかしら?」



 邪眼の種類どころか、邪眼についての説明を三行目まで読んだ辺りで、控えめな声が掛けられた。

 結局図書室だろうが談話室だろうが声は掛けられるのかと思いつつ、本を閉じる。



「ええ、構いませんわ。どうしましたの?マルタ」



 声を掛けてきたのは、王都にある薬屋の娘であるマルタだった。

 彼女は茶色の髪を揺らして周囲を、恐らくランヴァルド司書が居ないコトを確認してから、隣に座って小声で言う。



「私、これから薬草を摘みに森に行こうと思ってるんだけど……今日、ちょっと多めに摘みたくて」


「ああ、人手ですの?それならわたくしよりも良い方が居ると思いますけど……」



 確かに自分は天使の子なので頼みやすいかもしれないが、人手目当てなら他にも選択肢はあったんじゃないだろうか。

 やはり天使の遺伝か?遺伝のせいで一番初めに手伝ってくれそうなヒトとして浮かんだのだろうか。

 そう思っていると、マルタは眉を下げて苦笑した。



「ソレもあるわ。ただ他にも理由があって……いつも摘みに行く場所、ちょっと摘み過ぎちゃったから、違う場所を探したいなって思ったの」


「ああ……」



 成る程、確かに摘み過ぎると次また採取するコトが出来なくなる可能性がある。

 いつも行く場所にはクールタイムを設け、その間は別の場所で採取、というコトか。

 そして新しい場所を開拓するならば、この目があれば薬草の群生地を()つけるのもすぐだろう。



「……あと」



 マルタは、頬を染めて恥ずかしそうに言う。



「前にうっかり摘むのに夢中で夜になって、迷子になっちゃったから、目が良いジョゼが一緒なら安心っていうのと……聞いて欲しい話があって」



 その顔は、恋する乙女が友人に恋愛相談する時の顔だった。





 森の中、()つけた薬草の群生地で薬草を摘んでカゴに入れつつ、マルタの話を聞く。



「ついこないだ、森の中で迷子になってしまったの。いつもの場所の薬草の数がちょっと少なくて、足りなかったから、別の場所にもうちょっとないかしらってうろうろしてたら夜になっちゃって……」


「あら……ソレは心細かったでしょうに」



 自分は夜でも暗視可能な上、遠視も可能なので問題は少ない。

 が、ソレでも夜は怖いモノだ。

 夜行性の魔物などは夜に活発になるモノだし、肉食系魔物は大体夜が活動時間なので普通に怖い。



「ええ、怖かったわ」



 マルタはへにゃり、と困ったような笑みを浮かべた。



「大人しくしていれば管理人さんが夜のパトロールで見つけてくれるってわかってても、やっぱり怖いは怖いもの」


「ですわよね」



 この森は学園の敷地内だからこそ、管理人が存在する。

 そして安全の為、毎日パトロールも行われているのだ。


 ……まあ、時々抜け出す子も居ますしね。


 迷子になっている子は保護一択だが、夜の森を探検しようと抜け出して来た子の場合は一緒にパトロールするコトもあるらしい。

 そうすれば安全に夜の森を見て回れるからだ、と聞いたコトがある。

 危険だからと学園へ連れ帰るよりは、キチンと納得出来るよう対応をしてくれるので、生徒からの管理人への好感度は高い。



「……その、そしたらね?」



 先程相談があると言った時のように、マルタは頬をピンクに染めた。



「迷子になってて、心細くて、寂しくて、怖くて、もうホントに涙が出そうになった時……魔物が助けてくれたの」


「まあ」



 魔物が助けてくれる、というのは結構よくある話だ。

 言語が通じるので話が出来るというのもあるし、魔物はワリと真っ当な思考をしているモノも多いので、泣いている子を慰めたり、迷子を道案内してあげるコトも前例は多い。

 まあ他種族と言語が通じない地球であっても、迷子を野良犬とかが案内してくれたりという事象はあるらしいので、そういうモノなのだろう。



「「大丈夫か?」ってね、まず声を掛けてくれたの。とっても格好良い声だったのだけど、私、その時怖がってたから、誰?って返しちゃってね?なのにその魔物は、「ああ、驚かせてしまったか」って言って、驚かせないように少し離れた位置に降りて来てくれたのよ!」


「優しい方ですのね」


「そうなの!」



 ポポポ、と興奮したようにマルタの頬が赤くなっていく。

 というか彼女は結構内気というか、大人しい印象だ。

 しかし今は興奮気味にキャーキャー言っており、やはり恋した乙女にはパワフルさが付与されるものなのだろうか。


 ……いやまあ、恋してなくてもパワフルな方多いですけれど。



「でね、その時声を掛けてくれたのはフクロウの魔物だったの。黄緑色にぼんやり光る羽で、すっごく綺麗で、思わず怖かったのなんて忘れて見惚れちゃったわ」



 気恥ずかしそうにクスクス笑いながらも、マルタはキチンと丁寧に薬草を摘み、カゴに入れる。



「見惚れてたら、「迷子なのか?」って聞かれて、頷いたら「案内しよう」って言って導いてくれたのよ!」


「でも、フクロウって音も無く飛びますわよ?見えましたの?」



 ……ああ、そういえばぼんやり光っていると言ってましたわね。


 自分がそう思い出すが早いか、マルタは言う。



「確かにぼんやり光ってるだけだったらすぐに見失うかもしれなかったわ。だって辺りが暗いから足元が見えなくて、そっちに気を取られている間に行ってしまうかもしれないものね」



 でも、とマルタは誰かへと……恐らくそのフクロウの魔物へだろう、想いを馳せるような目で言う。



「でも、その魔物は時々枝に留まって、羽を時々落としてたの。そしたら、落ちた羽がロウソクみたいにぼんやり光ってね?足元を照らしてくれて、無事に学園まで帰ってこれたのよ」



 ふふ、とマルタは苦笑する。



「ただ、結局帰りが遅くなったのは事実だから、お父さんには怒られちゃったわ」


「そりゃまあ娘が帰り遅いわ森で迷子だわってなってたら、安心と共に心配からくる怒りも出てきちゃいますわよね」



 事故が起きる確率はけして低くないこの世界だ。

 学園の生徒にも生まれつきはモチロン、事故が原因による障害者も多数通っており、腕が無い子や足が無い子は普通に見かける。


 ……イェルンも事故で片腕無くしてますものね。


 本人達はワリとサッパリ割り切っているのか普通に生活しているが、保護者としてはそう割り切れないコトでもあるだろう。

 寧ろここで心配のし過ぎで怒るくらいがまともな親でもあるだろうし、そう考えると我が子を心配出来る良い親だ。



「それにしても、ぼんやり光る黄緑の羽で、抜けても光るというコトは……多分その魔物、キャンドルオウルですわね」


「キャンドルオウル?」


「ええ。抜け落ちた羽などが一定時間……そう、まるでロウソクが燃え尽きるまでの時間分光り続けるという種族。伝記小説などでも、時々主人公が夜の森で迷子になった時などに、次の町まで導いてくれたりする魔物ですわね」


「タイトルを是非教えてちょうだい!」


「モチロン、よろしくてよ」



 今まで呼んできたタイトルの中から、キャンドルオウルが出てきたタイトルを伝える。



「ところで」



 大体カゴも埋まってきたなと思いつつ、タイトルを伝え終わってから自分は言う。



「マルタ、そのキャンドルオウルに惚れましたの?」


「エッ……と……」



 頬だけではなく目元まで赤らめながら、マルタはもごもごと口篭り、最後に無言のままコクンと確かに頷いた。



「成る程、だからあれだけ熱く語ってたんですのね。納得ですわ」


「そ、ソレだけで気付いたの?」


「いえ、話してる時の顔が完全に恋する乙女だったのと、わざわざそのキャンドルオウルという種族が出てくる小説を教えて欲しい、とまで言ったので……」



 暗に、恋でもしていなかったらソコまでの興味は持たないだろうと伝えると、マルタは真っ赤な顔を手で覆った。



「……内緒にしててくれる?」


「告白しませんの?」


「……ふ、フラれたくないもの……」



 小さく唸りながらそう言うが、そう心配しなくても大丈夫だと思う。

 コレは適当に言っているのではなく、本心だ。



「………………」



 ……何せさっきから、件のキャンドルオウルと思われる黄緑色の羽を持つフクロウが、すぐ近くの木の上から視線送ってきてますもの。





 先日読みきれなかったので借りた魔眼事典を中庭のベンチに座って読んでいると、思いっきり腕を掴まれた。



「ジョゼ!相談があるの!」


「いやいきなりナンですのって目ぇ赤っ」



 泣いていたのか目元を真っ赤にしているマルタに驚き、ハンカチを魔法で濡らしてマルタの目元に当てる。



「とにかくまずは冷やしなさいな」


「ありがとう……」



 大人しく濡らしたハンカチで目元を冷やすマルタに一安心しつつ、問い掛ける。



「で、相談ってナンですの?目元真っ赤になるくらいに泣いた理由とも関係が?」


「……その、ジョゼからしたら凄くどうでも良いと思うけど……」



 目元を冷やしたまま、マルタは言う。



「キャンドルオウルに告白したいのだけど、断られたらどうしようってなって、そしたら他のヒトがキャンドルオウルとパートナーになる夢を見ちゃって……そんなの嫌って思ったら、ずっとその考えがぐるぐるして、涙が止まらなくなっちゃったの……」


「ナンでそう自分で自分を要らん追い詰め方しました、の……?」



 少女漫画か。

 このアンノウンワールドではワリとサッパリしたヒトが多いので、そう思いつめるのは逆に珍しいコトだ。


 ……いえまあ、その分まともというコトにもなるんでしょうけれど。



「……で、相談とのコトでしたけど、ソレに対してわたくしはどういう反応をすれば良いんですの?」


「告白したいけど、失恋はしたくないわ。でも誰にも奪われたくないからどうしたら良いか聞こうと思って……」


「わたくしに聞かれても困りますわよー……?」



 やたら相談こそされるが、こちらはパートナーが居ない独り身だ。

 しかし、相談された以上は答えるべきだろう。



「もう、告白したら良いんじゃありませんの?」


「断られたくはないわ!」


「ならお友達からでもって申し込みなさいな。スタートでまごついてたら、他のヒトがそのキャンドルオウルの良さに気付いた時、スタートダッシュで負けますわよ?」


「う……」



 目元の赤みがそれなりに引いたからか、マルタは目元からハンカチを下ろす。



「……そうよね、彼、とっても格好良かったもの。早くに伝えないと、きっと他の誰かだって好きになって告白しちゃうわ」


「そうそう、世の中早い者勝ちな世界ですわよ。倍率高いなら尚更ですわ」



 倍率が高いかは知らないが。



「ジョゼ!」


「はい?」



 必要の無くなったハンカチを受け取り、魔法で乾かしてポケットに入れたら、再びマルタに腕を掴まれた。



「今からキャンドルオウルに告白しに行こうと思うの」



 まだうっすらと赤みの残る顔で、けれど覚悟を決めたような真面目な顔で、マルタは言う。



「だから、付き添ってくれないかしら」


「嫌ですわよ?」



 何故ヒトの告白に付き添わなくてはならないのか。

 異世界の自分の知識の中にある、フラれた子を慰める友人枠としてのアレだろうか。

 それとも友人が見ているから、という気合入れの為だろうか。



「そう言わないでちょうだい!確かにコレは、勇気を振り絞って私一人でやるべきコトなんだとは思うけど……」



 ギュ、と自分の腕を掴むマルタの手に力が篭もる。



「私一人じゃキャンドルオウルを見つけられないかもしれないわ!」


「あ、成る程」



 つまり必要とされているのは自分では無く、相手を見つけ出す為の目だと。

 成る程、納得した。

 というか正直そっちの方がメンタル的に安心する。理由がわかりやすいし。


 ……でも、あのキャンドルオウル、森を出るまで付いて来てましたのよね……。


 先日話を聞いた時に木の上に居たキャンドルオウルは、学園までストーキングはしてこなかった。

 しかし森を出るまでは思いっきり視線を向けてきていたのだ。

 ソレも、その視線はマルタへと向いていた。


 ……多分森の入り口に行けば居ると思いますのよねー……。


 チラリとそちらを向けば、思った通り、キャンドルオウルが居るのが()える。

 ソレだけ伝えていってらっしゃいと言っても良いのだが、こちらが到着するまでにキャンドルオウルが動かないという確証も無い。


 ……つまり、どの道付き添う必要があるんですのね。


 仕方が無い、さっさと腹を括ってしまおう。



「わかりました、付き添いますわ。とりあえず既にそのキャンドルオウルかはわかりませんが、一羽のキャンドルオウルが森の入り口の木に留まっているのが()えていますの。まずはソコに行ってみませんこと?」



 違うのであれば他のキャンドルオウルを探すし、合っていれば告白タイムだ。

 ()た限り、先日マルタを見ていたキャンドルオウルと同一魔物のようなので、多分告白タイムになるのだとは思うが。





 森の入り口の木に留まっているキャンドルオウルに、マルタが声を掛ける。



「あ、あの……先日助けてくれたキャンドルオウル、よね?」


「……ああ」



 マルタの言葉に、キャンドルオウルはそう頷き、マルタのすぐ近くの枝へと降りてきた。



「確かに先日、迷子になった貴殿を案内したキャンドルオウルのコトを言っているのであれば、私で間違いないな」


「やっぱり!」



 安心したようにそう言って、マルタは微笑んだ。


 ……というか、やっぱうっすら区別付きますのね。


 魔物は魔物だとわかるように、ヒトはヒトだとわかるように、パートナー持ちはパートナー持ちだとわかるように、魔物もワリと区別が付く。

 というか同じ種族の区別が付くのと同じだ。

 ヒトの顔は似てる似てないこそあるものの、かなり違う。

 そして犬を飼っているヒトや猫を飼っているヒトなども、犬猫の顔の違いはかなり目に見えてわかるだろう。

 ソレと同様、こちらの世界のヒトは魔物の個体差はそれなりにわかる。


 ……まあ外人の区別は付きにくいみたいな感じで、うっすらと、ではあるが。



「お礼を言いたかったの。先日は助けてくれて、ありがとう」


「……いや」



 笑顔でお礼を言うマルタに、キャンドルオウルは首を横に振る。



「先にソレを言うのは私の方だ」


「え?」


「大分前のコトなので、忘れてしまっているだろうが」



 そう言い、キャンドルオウルは右の翼を広げた。



「数年前、興味のままに王都の方へと出かけた私は、ここに怪我を負った。飛べなくなっては戻れないと困っていた私を貴殿は拾い、手当てをし、看病してくれた」



 傷はすっかり治っているようだが、よく()てみれば、確かに治療されたのだろう痕跡が()えた。



「あ……!」



 キャンドルオウルの言葉に思い至るコトがあったのか、マルタが驚いたように声を零す。



「確かに昔、怪我をした黄緑色の羽の鳥を拾って、看病したコトが……!」



 その言動からすると、恐らく当時はフクロウという鳥を知らなかったのだろう。

 だから、助けてくれたフクロウとその鳥は、イコールで繋がらなかったのだと思われる。



「王都に住んでいるのであれば、きっとこの学園に通い、森に来るコトもあるだろう。そう思って私は、ずっと貴殿を待っていた」



 ふ、とキャンドルオウルの目元が優しく緩む。



「そして入学し、森に通うようになってからは、ずっと貴殿を見ていた。ナニか困っている時、かつて私が貴殿に助けて貰ったよう、助けれるようにと」



 ……こう、真っ当そうな方が言うと真っ当な言葉に聞こえるの不思議ですわよね。言動ワリとストーカーですのに。



「私は貴殿に礼を言われるようなコトはしていない。私はただ、貴殿に礼を返しただけだ」



 そう言って微笑むキャンドルオウルに、マルタは言う。



「……そうなのね。なら、受け取るわ」


「ああ、恩は返すとも。モチロン、これからも」


「なら、もう一つだけ言いたいコトがあるのだけど、良いかしら?」


「?ああ、ナンでも言ってくれ」



 確かに頷いたキャンドルオウルに、深呼吸をして息を整えてから、マルタは真っ直ぐにキャンドルオウルに向かって口を開く。



「私、アナタのコトが好きになったの」


「…………は」


「どうか、私のパートナーになってくれないかしら。モチロン、返事はアナタの気持ちのままに……危ない!」



 魂が抜けたかのように枝から落ちたキャンドルオウルを、マルタが咄嗟の動きでキャッチした。



「あ、あの、そんなに嫌だったの?落ちる程?」


「いや、そうではなく……」



 キャンドルオウルを抱きかかえながらマルタはオロオロと涙目になり、そんなマルタに対し、キャンドルオウルはまだ放心しているのかマルタに抱きかかえられながら、答える。



「……ずっと恋をしていた相手に告白されたので、現実感が無いだけだ」


「へ」


「あー……」



 キャンドルオウルの言葉にマルタの顔は発火したかのように一瞬で真っ赤に染まり、完全に観客状態だった自分は、コレは双方回復に時間が掛かりそうだと苦笑した。





 コレはその後の話になるが、マルタとキャンドルオウルは相思相愛だと発覚しパートナーになった。



「本当に、本当に私で良いのか?私は羽が光る程度の魔物で、もっと良い魔物は沢山居る」


「良い魔物じゃなくて、アナタが良いわ。だって、私が好きになったのはアナタだもの」


「だが、私は貴殿をずっと見ていただけで」


「マルタ」


「……私はマルタを見ていただけで、助けたのは私がマルタをストーキングしていたからだ。もし助けられたのが好きになった理由だというなら、ソレは私が行ったマッチポンプに等しい」


「迷ったのは私の問題だとはいえ、確かにそういう意見もあるかもしれないわ。でも、アナタが他の誰かのパートナーになったらって考えるだけで私は凄く落ち込むし、涙が出る。キッカケはアナタの言う通りかもしれないけれど、コレまでアナタのマッチポンプの結果かしら?」



 回復した後、そんな感じのやり取りがあった。

 自分の想いは揺らぐコトは無いと断言するマルタに、キャンドルオウルは嬉しそうに頷き、パートナーになると宣言したのだ。


 ……お互い、自分に自信が無いモノ同士なのでしょうか。


 だがお互いへ向ける愛はそれなりに重いようなので、バランスとしてはお互い丁度良い重さだろう。

 薬草摘みの為に一緒に森に行く一人と一羽を中庭から見送りながら、そう思った。




マルタ

薬屋の一人娘であり、童話の赤ずきんちゃんのような危うさがある。

でも言いたいコトは言うし、覚悟さえ出来れば主張も出来る。


キャンドルオウル

優しく触れてくれた手や愛らしい微笑みが忘れられず、マルタが入学するのを森で待ってた。

影ながら助けるコトが出来ればソレで良いと思っていたので、パートナーにと言われてキャパオーバーにより一瞬気絶した。


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