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ヒトと魔物のキューピッド  作者:
五年生
148/300

おかめ少女とジェットクロウ



 彼女の話をしよう。

 皮膚感覚が優れていて、敏感過ぎて情報が処理出来ないからと全身に包帯を巻いていて、顔をおかめの面で隠している。

 これは、そんな彼女の物語。





 廊下を歩いていたら、ぐいっと袖を掴まれ引き留められた。

 振り返らずとも、真後ろにおかめの面を被った同級生、レンミッキが居るのが()える。



「……どしたんですの、レンミッキ」


「アレ?振り返ってないのにどうしてわかっちゃったんですか?」


「振り返らなくても後ろくらい()えますし、同級生でおかめの面被ってるのアナタくらいですもの」


「流石はジョゼですね」



 クスクスと笑い、レンミッキはその薄い緑色の髪を揺らした。



「で、ナニか用ですの?」


「そうなんです。あの、ちょっと相談があって」


「…………談話室、わたくしの自室、中庭。どの選択肢を選びますの?」


「いえ、移動する程のコトじゃないです。移動するにしてもその三つじゃない場所ですし」



 移動する場合ドコに行こうというのか。



「あのですね、私の相談は、その……この皮膚についてなんです」


「言っときますけれどわたくしの目は事実しか見抜けないのでどうしたら良いかとか聞かれても困りますわよ」



 レンミッキは生粋の人間なのだが、その皮膚感覚が凄まじく優れている。

 しかしそのせいで服に擦れるだけでも結構な負担になるらしく、ソレを防ぐ為に全身に包帯を巻いているのだ。


 ……負担というか、処理し切れない情報量が全身から入って来るようなモノですものね。


 だからこその包帯である。

 とはいえ一応制服に外界と遮断されるような効果を付与してもらったらしく、制服は普通に着れるようだが。


 ……昔は本当に全身に巻いてたから、制服部分に巻かなくて良くなったと一年の頃ははしゃいでましたわねー。


 ちなみにおかめの面は、かつてルームメイトだったレンカがくれたらしい。

 とりあえず外界と遮断されれば良いならお面とかどうか、と極東土産として買ってきてくれたのだとか。


 ……ソコでどうしておかめの面を……。


 いや、翁の面やひょっとこの面よりは良いと思うし、お多福とも言うから縁起が良いと思ったのかもしれないが。

 まあ実際お面のお陰で顔に包帯を巻かなくてもよくなったらしいので、良いコトだろう。



「ああいえ、この皮膚はもう生まれつきですし、薬とかで鈍らせたりも出来ないのはわかってますから」



 おかめの面の向こうで、レンミッキは仕方がないというような笑みを浮かべてそう言った。

 確かに薬というのは一時的なモノだし、異常を治すならともかく、優れた部分を鈍らせる効果のある薬を常用するというのは良くないのだろう。


 ……ソレ、ほぼ毒でしょうしね。



「ですがこの通り、制服に遮断系の効果を付与してもらえば大丈夫だとわかってます!

お面で顔を覆えば良いというのもわかったので、とにかく覆って皮膚に擦れたりしなければオッケーなんです!」


「……擦れるようなのでも、遮断系の効果が付与されていれば不要な情報も入ってこないし、と?」


「そうです!遮断系の効果が無い時は音の振動にも酔うくらいだったので小声で耳打ちしてもらわないとってくらいでしたが、お陰でこうして自分の声に酔ったりもしなくなりました!」


「良いコトですわね」


「ハイ!」


「で、わたくしへの相談というのは一体?」


「そう、ソレなんですが」



 レンミッキはお面の向こうで真面目な表情になる。



「制服に覆われている部分は大丈夫なんですが、そうじゃない部分はやっぱり包帯を巻かないと駄目なんです。

でも包帯だと消耗品で勿体ないですし、巻くのも手間がかかって……異世界知識に良い感じの装備とかありませんか?」


「ハイネックやタートルネックのインナーとか、手袋とか、タイツとかでどうにかなると思いますわ」


「エ、でも擦れたりしませんか?」


「…………どうしてソレを新しく制服に取り入れてもらおうってなりませんの?」


「アッそっか!そのデザインにしてもらった上で効果を付与してもらえば良いんですね!?」



 思いつかなかったのか。



「同級生にも結構デザイン変えてる子居ますのに……」


「エヘ、皆似合ってるし、最初からソレが当然みたいな感じだったからデザイン変更っていうのが思いつかなくて……そっか、その手があったんだ」



 確かに左上半身からキノコが生えるヒメノなどは最初からあのデザインの制服にしてもらっていたし、そうじゃないと無理だろうなというビジュアルだ。

 なので違和感が無く、デザインを変えてもらうという選択肢が浮かばなかったのだろう。


 ……というか改めて考えると、全員分オーダーメイドな制服って結構凄いコトなのでは……。


 テーマカラーが使用されていないブラウスなどは据え置きとはいえ、毎年新しいのが用意されるワケだし。

 そして一学年二百人前後となると、相当に相当大変そうだ。



「相談は以上ですの?」


「あ、待って待ってまだもう一つあるんです!」


「いや、うん、わかりましたわ。だから袖引っ張ってまで止めなくても立ち去りませんから」



 そう言って、ぐいぐいと袖を引っ張るレンミッキの手を離させる。

 伸びたりしないようになっているから良いが、そうじゃなかったら困っていたトコロだ。



「で、もう一つというのは?」


「あのですね、コレなんですけど」



 レンミッキがポケットから取り出して見せたのは、黒い宝石で出来ている羽根だった。



「コレは?」


「この間森で拾ったんです。そしたらナンだか、少し皮膚の感覚が落ち着いて……いつもなら包帯でもソコまで感覚を遮断するコトは出来ないのに、いつもより落ち着くっていうか」


「ふむ」


「ソレで、コレはナンの羽根なのかをジョゼに判断してもらおうと思ったんです」


「フランカ魔物教師に聞きゃ良いじゃありませんの」


「居なかったんです」


「またですのね、あのヒト……」



 どうやらフランカ魔物教師はまたフィールドワークに出ているらしい。

 まあいつものコトだ。



「その羽根、見せてもらってもよろしくて?」


「ハイ」


「……んー」



 羽根を借り、じっくりと()る。



「コレ、ジェットですわね」


「ジェット?」


「宝石のジェットですわ。黒い宝石なんですけれど……ジェットでこの羽根となると、恐らくジェットクロウだから……成る程」


「ナニが成る程なんですか?」


「ジェットクロウは結界を張るのが得意な魔物なんですの」



 そう言ってレンミッキに羽根を返す。



「多分その羽根だからこそ効果が少し残留していて、持つだけで軽度の結界効果が出たんですのね。

基本的に結界というのは外界との遮断に近いモノなので、結界効果で自分と他全てが少しだけ遮断され、皮膚で認識している情報量が少し減ったんだと思いますわ」


「もっとわかりやすくお願いします」


「窓越しだったので外の温度の影響が少なくなった」


「成る程!」



 理解出来たのか、おかめの面の向こうにあるレンミッキの顔が笑みへと変わった。



「ジェットクロウ……そんな魔物が居るんですね」



 そう言ったレンミッキは、おかめの面の向こう側でナニかを思いついたような表情になる。

 嫌な予感がするので立ち去ろうかと思ったが、遅かった。



「ジョゼ、その魔物を探すの手伝ってください!」


「ヤですわ」


「そう言わず!皮膚感覚が優れ過ぎているせいで大浴場に入るのはおろか、シャワーすら浴びれない私を可哀想とは思わないんですか!?毎日魔法と濡らしたタオルでどうにかするしかない私のコトを!」


「同情引きたいならもっと他にも言い方あったでしょう、レンミッキ……」



 どうしてそんな箇所をチョイスしてしまったのだ。





 仕方が無くレンミッキと共に森を歩いていたら、ジェットクロウはすぐに見つかった。

 そして自分はあくまで付き添いだからというコトで様子を見ているのだが、レンミッキはジェットクロウを口説き落とすのに難航していた。



「どうかお願いします!私のパートナーになってください!」


「だーかーら!俺は特にそういう予定は無いの!」



 手が届かない位置の枝に留まりながら、ジェットクロウは黒い宝石で出来た翼をバタバタさせて言う。



「俺はパートナー作るなら超絶好みの美人ちゃんって決めてるし、大前提として今んトコはその辺あちこち飛び回ろうってくらいしか思ってないし!

大体こちとら人間に宝石ガラスって言われて追いかけ回されたりまでしてんだからな!?そして俺と!アンタは!初対面!」



 ごもっともな意見だなと思いつつ、外野の自分はポケットに入っていたクッキーを齧る。

 元々は自室でゆっくりコレを食べようと思って廊下を歩いていたのだが、まさか結果的にこうして自然豊かな森の中で食べるコトになろうとは。



「確かに事情聞いて大変だなとは思ったよ?!ええ思いました!めっちゃくちゃ思いましたー!

女の子にそんな大変な運命課すかね普通!とかも思いましたー!でもソレはソレだし俺の結界で助かるかどうかとか不明だし!」


「でもでも!ジェットクロウのこの羽根でちょっぴり楽になったんです!」


「気のせい!プラシーボ効果!気の持ちよう!というかさあ!」



 ジェットクロウはその翼でズビシィッとレンミッキを指す。



「そんな怖い面被った子とパートナーになるの、俺イヤッ!」


「怖い!?」


「まあ確かに、おかめの面は縁起が良いとはいえ夜中に見たらただのホラーですわよね」



 夜中で無くともお面系はホラー色が強めな気はするが。



「じょ、ジョゼまで……酷いコト言わないでください!コレは前にルームメイトだった極東の子が、私の為にってお土産で買ってきてくれた面なんですよ!

コレのお陰で私は頭部を包帯で覆わなくて良くなったんですから!」


「そうは言っても怖いモンは怖いの!うっすら笑ってるのがまた怖いし!俺は美人なカワイコちゃんが好ーきーなーのー!

せめてパートナー頼むにしたってソレ取ってからにしてくんない!?ホントに怖い!」


「取ったら顔面の皮膚からこの森の情報とかジェットクロウの羽ばたきの動きとか全部がわかっちゃうじゃないですか!ソレはイヤです!」


「なら俺だってそんな怖い面被ってる子はイヤ!」



 ……子供みたいな言い合いしてますわねー。


 クッキーも食べ終わって喉が渇いたし、そろそろ帰りたいのだが。

 しかしこのタイミングで立ち去るのは空気が読めないにも程がある。

 もしこの言い合いが女同士バトルで自分が男だった場合、女二人が一気にこっちを敵と認識して手を取り合って罵ってくるだろうレベルで空気が読めていない行動だ。


 ……でも、とりあえずジェットクロウは美少女なら良いんですのよね。


 そしておかめの面が怖いからじっくりと話し合う気も無く、しかしレンミッキの事情が事情だから立ち去る程の非情にもなれないと見た。

 なら簡単だ。



「あ、ジョゼ!クッキー食べ終わりました!?ちょっとジェットクロウを口説き落とすの手伝ってください!」


「美少女ちゃん来たぜヤッホウ!っていうかキミちょっとお友達ならこの子ナンとかしてくんない!?さっきから話通じないしお面怖いしアレで口説いてるつもりとかあり得なくね!?」


「あーハイハイ、とりあえず両方黙りなさいな」



 面倒なのでそう言えば、一人と一羽は素直なのかスンッと黙った。

 とても助かる。



「えーと、ではまずジェットクロウ。一時的で良いので一旦レンミッキに……彼女に結界張ってくださいませんこと?」


「エ、俺が?ナンで?」


「あら、パートナーじゃないと張れないとかですの?図鑑などにそんな記述は無かったと思いましたけれど」


「や、まあ、確かに出来るけどぉ~……」


「やってくれたら多分アナタ好みだと思われる美少女紹介しますわ」


「ハイオッケーハイ結界一丁あがりィ!」



 軽くニンジンぶら下げたらカラスが一瞬で釣りあげられた。

 助かるしありがたいが、少しチョロ過ぎやしないだろうか。



「よっしゃカワイコちゃん、お望み通りに結界張ったぜ!ところで紹介してくれる美少女ってどんな感じ?

可愛い系?美人系?元気系でもおしとやか系でも俺としては可愛ければぜーんぜんオッケーなんだけど!もしくはもしかして、キミだったり?」


「わたくしではありませんわねー」


「返答クール過ぎじゃね?」


「ジョゼ!ジョゼ!凄いですよ!今私ナニも感じません!いえ感じはするんですけれど情報量が全然無い!風がただの風!包帯越しでもいつもなら風一つで周辺の地形丸わかりだったのに!」


「ハイハイ、レンミッキははしゃいでジャンプせずにこっち」


「はーい?」



 手招きすれば素直に近づいて来たので、レンミッキのお面を外す。



「エッ!?ちょ、ジョゼ!?」


「今なら結界あるから大丈夫ですわ。ナンの為に結界張ってもらったと思ってんですのよ」


「エ……?」


「さて、ソレではジェットクロウ」



 意味がわからないと言いたげな困惑した表情のレンミッキの肩を掴んで、その顔がジェットクロウに見えるようにする。



「こちらが約束の美少女ですわ」


「ヒッッッッッッエ…………」



 きょとんとした表情のレンミッキの素顔を見たジェットクロウは、息を呑んだ。



「ウッソだろマジだマジかよエッ……ナンでそんな超絶美少女顔をあんな下膨れ系微笑み面で隠してんだよ勿体ねえなっつかハァ!?ホントにナンでそんな美少女顔なのに隠してたの!?」



 そう、レンミッキの素顔はめちゃくちゃ美少女なのである。

 ただ今までは包帯とかお面とかで隠されていた為、知っているのは自分のような透視可能系くらいだろうが。


 ……自分からするとお面の向こう側も()えてるから普通に違和感ありませんけれど、肉眼で見てるタイプからするとおかめの面から美少女登場っていうのは、結構ギャップが凄く感じられるんですのね。


 ()えるジェットクロウの脈拍やらが凄いコトになっている。

 普通のカラスサイズなのにその心拍数は大丈夫なんだろうか。


 ……心臓とか破裂しないか心配ですけれど、まあ魔物は基本的に頑丈だから多分大丈夫でしょう。


 羽とか宝石だし、多分きっと平均より大分頑丈のハズだ、多分。

 そのくらいで命は潰えん。



「えーえーえーすっごい美少女すっごい好みなんだけど!?」


「ジョゼ、ナンかジェットクロウが凄い勢いで近付いて来たんですけど……」


「うん、とりあえずわたくしのやるべきコトはやったので、後は当人と当魔でどうにかなさいな」



 ジェットクロウが結界を張ればジェットクロウ好みの美少女の顔が見れるし、レンミッキは優れ過ぎた皮膚感覚が通常レベルになって普通に生活が出来る。

 要するにレンミッキの素顔をジェットクロウに見せれば大体丸く収まるというコトだ。

 ミッションコンプリート。





 コレはその後の話になるが、あの後立場が逆転して迫りまくったジェットクロウにより、レンミッキは無事彼というパートナーをゲットした。

 そしてレンミッキの素顔をいつもいつでも見ていたいジェットクロウが常に結界を張るようになった為、レンミッキは包帯を装備しなくても良くなった。

 もっともおかめの面はお気に入りだからなのか、斜めに装備したままではあるが。



「まあさ、俺もオスなワケよ。だから女湯とか普通に興味あるっちゃあるのね?」



 ジェットクロウはレンミッキの肩に留まりながら、そう語る。



「でもだからこそ!駄目だと思うワケよ!」


「別に一緒に入っても大丈夫だと思いますけど……」


「駄目!絶対駄目!男女で一緒のお風呂なんて不健全なのお母さん許しませんよ!」


「いきなり知らないお母さん誕生しましたよ!?」


「おいジョゼフィーヌ!お前ならわかんだろ!?性行為とかが普通にあるという異世界の知識があるお前なら、俺の言っているコトの重要さが!」


「ああ、まあ、わたくしの場合は知識だけに近いのであんまりその感性を理解出来てるワケじゃありませんけれど、あまり推奨されないコトではあるっぽいですわよね」


「そうなんだよ!」



 その宝石で出来た両翼が腕だったなら机をドンドンと叩いていたであろう勢いでジェットクロウは頷く。



「レンミッキにも大浴場に浸かってみたいっていうささやかで可愛らしい夢があるって知ってんのよ?

俺もさ、そんくらいは知ってんの。そして俺の結界は一定以上の距離が開くと効果切れるってのも当然知ってんの」


「羽根持っててもソコはどうにもなりませんものねー」



 ジェットクロウの羽根を身に着けていると結界の力が倍増するという効果がある為、レンミッキは宝石の羽根を加工したピアスをつけている。

 しかし距離がどうにかなるワケではないのが問題だった。



「でも!駄目なの!俺だって女湯気になるなーとかレンミッキと混浴!とか思うよ!?思うけどさ!駄目なんだよ!俺がオスだから! オ ス だ か ら !」



 声がやかましい。



「うーん……混浴が推奨されないっていうのは、裸体を見た結果発情して性欲に負けて衛生的な部分への気遣いを忘れて勢いのまま性行為を行うという危険性があるから、ですよね?

でも種族的に性行為で子供作れたりはしませんし、裸体云々とかはよくわからない……というかジェットクロウは普段から裸体のようなモノですし。問題とされる部分はクリアしてるんじゃありませんか?」


「そういう部分じゃない!確かに合ってるけどそういう云々じゃないんだよ!欲情しなかろうが裸体を目撃するコトがアウトなの!ギルティなの!

他のオスは自分のパートナーの裸体を他の魔物に見られたら確実にそいつの目を抉る!何故なら俺もそうするから!つまりかなりアウトなんだよ!」


「ええ……まったく理解出来ません……。石像とかだって裸体だったりするコト多いですよ?アレがセーフなら問題無くないですか?」


「石像と人間の裸体じゃ色々と違うでしょうがもー!コレだから性欲が無い子はもー!」


「ええぇー……ジョゼ、結局どういうコトなんですか?」


「わたくしに聞かないでいただけます?」



 いきなり話を振られると思わなかったのでお茶を吹き出すかと思った。



「んーと、まあ要するには性欲がある種族からすると裸体を見るだけで欲情するワケですの。で、オスからすると自分のパートナーに他の魔物が欲情するのはアウト」


「ん、んん……?まあ、欲情っていうのは性行為の前提部分で……エ?パートナー以外に欲情なんて出来るものなんですか?裸体だけでアウトとか、裸体なんてソコら中にありますよ?男湯だって普通に裸体ですし」


「種族的なアレコレとか同性的なアレコレとかわかんねーのかなー現代っ子はもー……」



 手があったら顔を覆っていたであろう力の無い声でジェットクロウは小さくなる。



「…………面倒なので掻い摘んで言うと、オスにもメスにも独占欲があるんですのよ。そして自分からするとパートナーの裸体は欲情する対象。

だからパートナーの皮膚をジロジロ見られるだけでも嫉妬する場合があって、つまりはソレですの」


「見たなと嫉妬されて目を抉られたくは無くて、そして他の魔物が便乗して混浴した結果私の裸体が見られるようなコトも許せない、ってコトですか?」


「ザッツライト」


「ああそうだよ簡単に言うと大体そうだよ……」



 ようやくレンミッキが理解し、ジェットクロウは叫び疲れたのかぐったりしながら頷いた。



「畜生、人間側は性欲皆無だからいつでも入り込める女湯があるってのに……あるってのに入れないっていう地獄。

俺には一時のロマンと夢の為に命を捧げれるような度胸は無い……ふふ、笑って良いぜ……」


「別に笑いませんし、目玉どころか命の危機レベルなんです、か……?」


「まあ独占欲強めなパートナー持ちの裸体を見た、または鉢合わせたとかになったら命くらい()られる可能性はありますわねー」



 というか一応ジェットクロウに目隠しをさせるなりすれば一緒に入れはすると思うが。

 しかし一部過激派なパートナーが実際に居るコトを考えると、目隠しをしていようが裸体のパートナーと同じ空間に居たというだけでギルティ扱いとなり処刑対象になるコトは確実だろう。

 とりあえずこのお茶を飲み終えたら、使い捨てでも良いから入浴の間皮膚感覚を鈍らせてくれるようなモノはないかと教師に聞きに行くのをオススメするか。




レンミッキ

皮膚感覚が優れ過ぎているが、覆えばどうにかなるのでおかめの面に包帯装備という不審者コーデだった。

ジェットクロウが結界を張ってくれるようになってからはそういうのが不要になった為、包帯を過剰消費せずに済むようになって嬉しい。


ジェットクロウ

黒い宝石で出来ていて結界が張れる為、時々狙われるコトがある。

しかしそういうのあんまり気にしてないお気楽な性格であり、美人な女の子が好きなのでレンミッキの素顔を見て全力でアタックした。


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