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ヒトと魔物のキューピッド  作者:
四年生
115/300

首取れ少年と処刑の首桶

オリジナル歌詞が作中で出ます。



 彼の話をしよう。

 遺伝で首の取り外しが可能で、スペアの首を持っていて、新しい首を欲しがっている。

 これは、そんな彼の物語。





 談話室で歴史的に見てもヤベェくらいに被害が出た国についての本を読んでいると、ふとリーアムが背後から本を覗き込んできた。



「あ、良いよねえその本」


「リーアム……今日はその首なんですの?」


「中々スゴイ言葉だよね、ソレ」



 そう言いつつ、リーアムは明るい青色の髪を揺らして笑った。



「ま、確かにここ最近はガードディアーの首で居るコトが多かったから仕方ないかな」



 微笑みながら、つつ、とリーアムはその首にある繋ぎ目を指でなぞる。



「でも僕の生まれながらの首はコレだから、やっぱりこの首が一番フィットするんだよね」


「フィットというか、アナタの場合はめ込み式ですものね。他の首は加工したものだから合わないんじゃありませんの?」


「ソレもあり得る」



 リーアムは苦笑して自分の隣に腰を下ろした。

 その腰には左右に一つずつ、首がアクセサリーかのようにつけられている。

 片方はイノシシの魔物の畑荒猪(はたあらいのしし)で、もう片方は鹿の魔物であるガードディアーだ。


 ……見慣れたからもう驚きませんけれど、初期は二度見しましたわねー。


 剥製とはまた違う加工をされた首を腰に下げているのだから二度見もやむなしだと思う。

 ちなみにそれぞれ、リーアムの首にカチリとハマるように首の付け根部分に細工がされていたりする。



「この首達、入学前にゲットした首だしね」


「というかよくまあ魔物の首とかゲットしましたわよね」


「畑荒猪は害魔で討伐されてたヤツの首を貰って、ガードディアーは怪我による出血多量で死んだ個体の首だったかな。僕の場合、母がこういう……首の取り外しが出来るタイプの魔物だったからさ」



 そう言ってリーアムはカチリという音と共に、自分自身のその首を取り外して見せる。



「母はそういう魔物だから他の首と相手の首を入れ替えたりも出来て、気に入った首が居たら手持ちの首と交換したりして自分の首を結構沢山持っててね?」


「手持ちの首を交換」


「だからソレが羨ましくて仕方がなかったから、チャンスを逃さないように「僕も首欲しい!」って喚いて騒いで粘り勝ちでゲットした首なんだよ、この二つは」


「うーん全ての発言がパワーワード」



 デュラハンのように抱えられた生首が生き生きと喋っているのも中々の光景だ。

 まあワリといつものコトだが。



「でも出来れば他の首ももっと欲しいんだけどね……今のトコロは魔物の首しかないし」


「言語通じるだけ良いじゃありませんの。わたくしにINしてる異世界知識曰く、その異世界には人語を話す人外はトータルで数えるとほぼ皆無のようですわよ?」


「エッ、そんな状態でどうやって共存してるの?人語を話せないとかソレもう発声機能が無いタイプなんじゃない?」


「まあ言っちゃうと大体そうなんですけれど」



 鳴き声は出せても人間のような発音は出来なかったりするのが異世界である地球の動物達だ。

 一部の鳥などは喋れるらしいが、まあ意志疎通が出来るかと言われると微妙っぽいので異世界だからこその差なのだろう。



「でもやっぱり首は沢山ある方が嬉しいし憧れない?」


「うーん、わたくしって首が取り外し不可能だし取り外したら死ぬタイプなので……極東にかつて居たという首狩り系の戦士なら同意したかもしれませんわ」


「遠回しに自分には理解不能って言ってるよねソレ」


「遠回しというかワリと直球で言ったつもりですわ」


「そっかー」



 中々に頭のオカシイ会話な気もするが、このくらいはアンノウンワールドにおいてただの談笑でしかない。

 普通に笑い合いながらきゃっきゃうふふとする会話枠だ。



「……取り外し不可なのが残念だなあ」


「?」


「だってジョゼフィーヌって髪とかとても艶々してるし」


「まあ手入れしてますもの」


「目は茶色に塗り潰されてて、他のヒトとは違う目だし」


「遺伝ですから……というかアナタの持ってる魔物の首とあんま変わんないと思いますわよ?」


「肌は白くてきめ細かくて……ああ!」



 リーアムは膝の上に自前の首を置いたまま、心底悔しそうな表情で強く拳を握った。



「その首すっごく羨ましいし欲しいのに!」


「褒め言葉なのはわかってますけれど、慣れてないヒトが聞いたら殺害予告ですわよねー」



 コレは彼なりの賛辞だが、ソレを知らないヒトからすると妖怪置いてけ堀首バージョンにしか見えないと思う。



「でも普通欲しくならない?」


「首はちょっと……」


「うーん、他のヒト風に言うなら服みたいな感じかな。素敵な服があったら欲しいなーってなるし、どうせなら沢山あると嬉しいでしょ?」


「あー、ソレなら納得ですわ。確かに羨ましいし憧れるし、可能なら手に入れたいと思いますわよね」


「ちなみにジョゼフィーヌ、その首を僕にくれる気って」


「取り外したら普通に死にますわー」


「だよねえ」



 リーアムはわかっていたように苦笑しながら溜め息を吐いた。



「戦争は無い方が良いけどさ……こうも首が手に入りにくいと、戦争とかがあった時代ならソコらにゴロゴロ首が転がってたんだろうなってちょっと憧れるよね」


「いえまったく」



 寧ろソレは戦争を厭う理由の上位に入ると思う。



「あ、ジョゼフィーヌちょっと持ってて。うっかり落としたくないし」


「ハイハイ」



 リーアムの自前の首を手渡されたので普通に受け取る。

 生きた生首を渡されるなど異世界である地球じゃただのホラーだろうが、残念ここはこの程度の狂ったコトは日常なアンノウンワールドだ。

 正直言って、既に卒業した先輩と同じ名であるアリスという少女が夢見た不思議な世界よりもよっぽど頭イカれてると思う。



「……ふう」



 ガードディアーの首を装着して鹿頭になったリーアムは、落ち着いた様子で首を動かして感触を確かめていた。



「よし、問題は無いな。助かったぞジョゼフィーヌ」


「わたくしナニもしてませんわよ、っと」



 手を出されたのでその手にリーアムの自前の首を置いた。

 既に意識はボディに接続されたガードディアーの首に移動しているのか、自前の首の方は死んでいるかのように目を伏せている。

 ちなみに魔物の首とはいえ今は中身がリーアムだからか、生前は違う色だったのだろうガードディアーのその目は茶色へと変化していた。



「しかし先程までの私の言動は、ジョゼフィーヌが相手でなければかなり距離を取られるような言動だったな」



 リーアムは先程とはまったく違う落ち着いた様子でそう言いながら自前の首を腰に下げた。



「悪かった、許せ」


「まあ、リーアムの価値観的に違和感は無いのでわたくしは構いませんわよ」


「ジョゼフィーヌはそうだろうが、他の生徒からするとドン引きじゃないか?」



 声こそ先程のリーアムと同じだが、音程が微妙に違う。

 言うなれば同じ声優が違うキャラを演じているかのように。


 ……まあ、要するに首を取り換えたからなんですけれど。


 首が違うというコトは脳が違うというコトであり、考え方もまた違うというコトだ。

 どうも思考や口調などは首に引っ張られるらしい。


 ……異世界知識のお陰でコスプレイヤーがキャラになりきるようなモノ、と考えれるから他のヒトよりも柔軟に受け止めれるだけ良かったですわ。


 他のヒトだとその差にちょっと戸惑うらしい。

 まあ大半の狂人は「あ、今日はその首なんだー」と受け入れるらしいが。

 自分もイージーレベルの狂人なのでリーアムの変化は普通に受け止めれる。


 ……というか違和感を感じないから、どうやったら戸惑えるのかって感じですわねー……。



「ところでジョゼフィーヌ、お前に話しかけた本題を思い出したんだが」


「エッ、本題ありましたの?」


「あったんだ」



 ガードディアーは要するに護衛の鹿であり、守りに長けている。

 その分頭を回転させるのも上手なのでリーアムは授業中はよくガードディアーの首をはめ込んでいたりするのだが、こういう時にそりゃこの首を選ぶよなとも納得する。

 リーアム自身は別に頭が悪いワケではないがガードディアーの方が頭が良いと言えるし、畑荒猪の方は荒っぽいコトしか得意としていないからだ。


 ……まあ、だからこそ体術の授業とかでは畑荒猪の首をはめ込んで良い成績を維持してますけれどね。



「私が話しかけたそもそもは、その本だ」


「あー、そういえば」


「ソレはもう読んだコトがあるのだが、その中に首についての記述があっただろ?」


「ああ、ありましたわ」



 クーデターが発生したが国民は敗北し、大量に処刑されたという部分だろう。

 見せしめとしてギロチン処刑をされたらしく、その首は首桶に入れられて親族に送られたとか。



「ソレと似たような記述の本をしらないか?」


「読みたいんですの?」


「首に関する話は大好きだからな」


「あー……」



 まあ服好きなヒトが服について詳しく書かれている本はあるかと聞いているようなものだろう。

 服の本はモチロン、服についての詳細な解説が載っている小説とかでも、みたいなヤツだと思われる。



「そうですわねー……とりあえず処刑に限定してみるとして」


「いや別に処刑というより首に関しての本を読みたいだけだぞ」


「縛り首と生首ではどっちが好きですの?」


「縛り首は無い」



 真顔で言われた。



「無いんですの?」


「だってアレ、首と胴体が繋がってるだろう」



 普通はそうだ。



「んじゃ生首関係は……極東の歴史とかオススメですわ。生首晒したり首実検とかいうのしたりしてたらしいですから」


「ふむ、面白そうだな。よし」



 笑みを浮かべながらリーアムは頷き、立ち上がった。



「礼を言うぞ、ジョゼフィーヌ。では私は少し図書室へ行ってくる」


「ハーイ、行ってらっしゃい」



 わくわくしている様子のリーアムに苦笑しながら、自分はヒラヒラと手を振って見送った。





 そんなコトを話して数日後、出会った魔物の話を聞いてコレはリーアムに伝えた方が良いなと判断し、中庭で自前の首をはめ込んだ状態でガードディアーの首のブラッシングをしているリーアムに突撃した。



「ハァイ、リーアム。今ちょっとよろしくて?」


「え、今ブラッシング」


「首がゲット出来るかもしれないんですけれど、今ちょっとよろしくて?」


「全力で暇だよ!」



 うむ、欲望に忠実なその姿勢は実に良し。

 リーアムの隣、ベンチに腰掛けてまずはと説明を始める。



「ではまず説明ですけれど」


「うん」


「森を歩いていたら魔物に出会いまして、端的に言うと弔いたいから荼毘に付して欲しいと言われたんですの」


「弔い?」


「ええ、まあ、ナンというか……無実かと言われるとうーんって感じですけれど、まあ弔いくらいはしてあげたら、って感じで……」



 煮え切らない自分の言葉に、リーアムは不思議そうに首を傾げた。



「……もう面倒なのでアナタから話します?」


「あらっ!?そういう感じなの!?というかここで私が喋っても良いのでしょうか?」


「ワッ、魔物!?」



 今まで自分が抱えていた蓋付きの桶が喋り始め、リーアムは驚いたように一瞬身を跳ねさせていた。

 そう、今まで実は血のように赤黒い桶を抱えていたのである。

 相手が狂人だからか自分がイージーとはいえ狂人だからなのかまったくツッコまれなかったが。



「こちら先程話した件の魔物で」


「人間から呼ばれる名称は処刑の首桶でーす!よろしくね!」


「え、ああ、どうも……というか中々の種族名」



 ソレは自分も思ったが、事実なので仕方がない。



「ええと、ソレでどういう……?」


「んーと、要するに私って処刑で落とされた首を入れられた首桶なのです」


「ワオ」


「ホラ、先日話してたクーデター云々の」


「エ、あの、アレかい!?」


「そうそう」



 語彙力ドコ行ったという感じの会話だが、通じているのでモーマンタイ。



「そのクーデターでね?大半は親族のトコに首が送られたんだけど……親族が居ないヒトの首は邪魔だし、でも適当に扱うのは駄目でしょう?」


「だね」


「だから一つの首桶に魔法を掛けて空間を広げて沢山の首を仕舞えるようにしたんだけど、その魔法の効果なのか私は魔物として目覚めちゃったのです」


「え、あ、そっかそういうパターンも……」


「だからなのかナンというか……」



 処刑の首桶は自立移動が出来るタイプだからか、ふわりと浮いた。

 そして浮いたままリーアムの方へ行き、その蓋を留めていた木の棒を抜いて蓋を開ける。



「……血?」



 処刑の首桶の中には、タプンと新鮮な血が満ちていた。



「ええ、血よ。処刑されたヒトの首から流れ落ちた、ね」



 その言葉と共に血は桶の底に染み込むかのように減っていき、しかし同時に構築されるカタチがあった。

 桶の中から血が無くなると同時に完全に構築されたのは、ヒトの生首だった。



「私の中は魔法と魔物化の影響でよくわからないコトになっているのです。魂が残っていたりはしないけれど、生首が沢山収納されているわ」


「エ、この首凄いイケメンじゃないかい……?」



 シリアスな会話のハズだし展開としてはホラー染みているというのに、首桶から現れた生首にリーアムは憧れの俳優を生で見た女子中学生かのようなソワソワ感を滲み出していた。

 というかソレは今言うセリフか。



「私は正直彷徨うしか出来なかったし、死者っていうのは弔うモノでしょう?私がオリジナルだから他の処刑の首桶にどうしたら良いか聞いても微妙だし……そもそも私は内包している数が異常なのよね」



 処刑の首桶は、ハァ、と溜め息を吐いた。



「そんな色々があって、私は思ったのです!」


「ほう」


「いっそ大きい炎を誰かに用意してもらってダイナミックに焼身自殺するか、誰かの手を借りて一首一首燃やしてしまいましょー!と!」


「変な方向に吹っ切れてないかなソレ!?」



 自分もソレを森で聞いた時まったく同じリアクションだったので、うんうんと頷く。



「で、適当に彷徨ってたらあの森に行きついて、丁度良いトコに来た彼女に軽くファイヤーしてって頼んだら「生首欲しがってる友人が居るから、魂も入っていないようならせめて中古の服を譲る感じで……!」って説得されたのよね」


「グッジョブジョゼフィーヌ!」


「イエーイ」



 リーアムとハイタッチ。



「正直言って弔い云々と言われても、ソレ欲しがっているヒトが居たらそっちに渡す方が良いのでは?と思ったんですのよね」


「私としても罪の無いヒト達が命を終わらせる為だけに首を落とされて……だから弔おうと思っていたけれど、その首が役立つというのならソレはとっても素敵なコトだわ!

だってソレってアナタの体のお陰で、アナタという存在が居てくれるお陰でこの首達が活きるってコトだもの!ええ、文字通りね!」


「僕の場合この首にはめ込む為にはちょっと加工したりが必要なんだけど、ソレでも良いかな?」


「ええ、構いません。寧ろその腰に下げてる首、私の中に収納したらどうですか?」


「出来るのかい!?」


「モチロン!だって私は首桶だもの!」


「新入生には二度見されるし観光客には「エッ犯罪者?」みたいな目で見られるから収納出来るっていうのは凄く、凄く凄く助かるよ!ちなみに既に収納済みの首って何首ある!?」


「三十を超えてまーす!」


「凄い!毎日首を変えても一月は持つよ!?」



 どういう計算だと思いつつ、盛り上がって処刑の首桶の中に収納されている首を取り出して確認をし始めたリーアムを見守る。

 ああ、首を取り出す度に処刑の首桶から香る血の匂いが中庭のほのぼのした光景に超ミスマッチ。





 コレはその後の話になるが、処刑の首桶によってリーアムの首はよく変わるようになり、首のおしゃれをとても楽しんでいるらしい。



「夢を見てるのアレもコレも

 やりたいやりたいやりたいだらけ

 好きなモノが溢れてて

 夢がまったく決まらない」



 中庭に出ると、歌声が聞こえた。



「パンを焼くのが好きなんだ

 パン屋さんって素敵だね

 花ってとっても可愛いよ

 お花屋さんも良いかもね」



 見れば、中庭のベンチに座って処刑の首桶を膝の上に抱えながらリーアムが歌っていた。



「あそこのコーヒーは飲めちゃうの

 カフェっていうのも憧れる

 本を読むのが好きなんです

 小説家とか素敵で素敵」



 ……あの首、歌うのが好きなんでしょうね。



「世界には好きが溢れてて

 夢がいっぱい止まらない

 一つに纏められなくて

 夢の箱が弾けちゃいそう」



 リーアムは、処刑の首桶の中から取り出してリーアムのボディにはめ込めるよう加工した首になっていた。



「服を作るの憧れる

 洋服屋さんってどうだろう

 大好きな先生と一緒も素敵

 勉強教える先生も良い」



 声帯はリーアムのモノなので男の声だが、リーアムは現在生前は女性だったのだろう首をはめ込んでいる。



「うーんと唸るとコツンと感触

 頬膨らませた彼女が立ってて

 まずはコツコツやりなさい

 そう言ってから立ち去った」



 可愛らしいあの首を結構気に入っているのかあの首をよくはめ込んでいるのを見かけるが、その度に歌っているのであの首は歌うのが好きだったんだろうな、と思う。



「パン屋さんもお花屋さんも

 カフェ経営も小説家だって

 洋服屋さんや先生にでも

 コツコツやればなれるかな」



 合いの手を入れるように処刑の首桶が蓋をカタカタ鳴らしているが、アンノウンワールドじゃなかったらホラーだ。



「そんな夢見てコツコツコツコツ

 ある日お前の夢はナンだと聞かれ

 胸を張ってこう答えるよ

 好きな全部が夢だって」



 歌い終わり、リーアムは満足そうに息を吐いた。



「ふふ、こうして歌うと楽しいですね」


「リーアムの歌、大好きです!今の歌は初めて聞いたけれど、ソレもとっても素敵な歌ね!」


「処刑の首桶もそう思いますか?私も好きな曲だから、嬉しいです!あ、でもこの首が好きだと感じるだけなので、他の首だとそうでもないかもしれませんけれど……」


「今の首が好きだと思うならソレで良いと思いまーす!」


「そうですよね!」



 女性、というか少女にしか見えない、というか少女のモノだろう首でリーアムはニコニコと微笑んでいて、ナニも知らない純情な少年辺りが見たら初恋を奪いそうだな、と思った。



「リーアム、処刑の首桶」


「あ、ジョゼフィーヌ」


「どうかしましたか?」


「どうか、というか……昼休みの昼食タイムがもうそろそろ終わるから、移動した方が良いですわよ?」


「エッ!?もうそんなにも時間経っちゃってましたか!?」


「そういえばついつい何曲もリクエストしちゃったわ!ごめんなさいね、リーアム」


「いえ、処刑の首桶が謝るようなコトじゃ」


「その前に移動しませんこと?次は体術の授業だから遅れるとヨゼフ体術教師によって見本の相手として選ばれて投げられちゃいますわ」


「そうでした!」



 リーアムは慌ててカチリと首を外した。



「処刑の首桶、首出してください!」


「オッケー!どの首が良いかしら?」


「うーん、処刑の首桶の中に収納されてた首の戦闘センスとかはまだ確認し切れてませんからね……いつも通りに畑荒猪の首をお願いします」


「了解でーす!」



 ゴポゴポと処刑の首桶の中の血が引いていき、魔物の首が構築された。

 リーアムは片手で畑荒猪の首を取り出しつつ、もう片方の手で先程までの首を大事に処刑の首桶の中へと置いた。

 置くと同時に首はゆっくりと溶けて血へとその姿を変えており、正直アンノウンワールドにしても中々の光景じゃなかろうかと地味に思う。



「……いよっし、準備完了だぜ!」



 畑荒猪の首をカチリとはめ込んだリーアムはニヤリと笑い、高めの声だった先程とは真逆の低い声でそう言った。



「んで?ジョゼフィーヌ、今日はいつも通りに外での授業か?」


「ええ、今日は相手が小人だった場合の想定だそうですわよ」


「あー、アレちょこまかされっから好きじゃねえんだよな。真正面からだと俺も楽なんだけどよ」



 リーアムは溜め息を吐きつつ乱暴に頭を掻く。



「ま、良いや。んじゃ行こうぜ処刑の首桶、ジョゼフィーヌ!」


「行きましょう!」


「ハァーイ」



 最初の頃は戸惑ったが、今ではコロコロとリーアムの首が変わっても驚かなくなったなと思いつつ、苦笑しながら頷いた。




リーアム

首がシートベルトみたいな感じの作りになっており、カチリと取れるし同じような加工をすれば違う首もカチリと嵌めれる。

その首が欲しいとかその首が羨ましいとかの褒め言葉を使用するので、その生態を知らないヒトからすると殺人予告。


処刑の首桶

見た目は普通の桶なのに中が不思議な亜空間になっており、老若男女を問わず大体三十くらいの首が仕舞われている。

自分ごと燃やすなりして彼ら彼女らを弔う気だったが、リーアムがその首をとても喜んでいるのでコレも弔いよね、と喜んでる。


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