毒舌少女とリセットスイッチ
彼女の話をしよう。
可愛らしい見た目で、口が悪くて、毒舌が酷い。
これは、そんな彼女の物語。
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頼まれていた本が無事購入出来たので渡そうと思い、ルチアを探す。
周囲を見渡しながら歩いていれば、廊下の前方にルチアの薄い青紫色の髪が見えた。
「ルチア!」
「…………あん?」
とても可愛らしいが、同時に深窓の令嬢かと思うような美しさを持つルチア。
しかし振り向きざまの言葉は肩ぶつけてきたヤツに対してメンチ切りながら威嚇する不良と同じような声だったし、こちらを見るその目は折角の愛らしい目の面影も無い睨みだった。
……ま、いつものコトですけれどね。
初対面やルチアとあまり関わらないヒトからはそのまんまヤベェヒトと認識されるコトが多いルチアだが、実際は違う。
いやあんまり違わないのだが、彼女は彼女で色々と事情があるのだ。
「おうソコのぐり目、ナニ俺様のコトをジロジロジロジロ見てやがんだ、ああ?んなドコ見てっかもわからねえ目で無言のまま俺様を見るなんざ喧嘩でも売ってんのかぐり目女。つぅか声掛けておいてシカトかテメェは?」
めちゃくちゃメンチ切られてるし喧嘩売られてる感じだが、しかしコレは彼女なりの理由あっての行動&言動なのである。
庇っているワケでは無く、心拍数や目の動きからそういうのがハッキリとわかってしまうので、暴言を吐かれているとわかっていてもどうしても面倒を見てしまうのだ。
……面倒事イヤだって言ってんのに、どうしてこう、自分から接してしまうんでしょうか。
異世界の自分がそういうトコやぞとやかましいが、どういうトコだ。
「言いてぇコトがあんならその口を開けや、おい。あんだろうがテメェ如きにも俺様と同じように言語を放てる口がよぉ。ソレともナニか?テメェの口はお飾りってだけの意味のねぇ部位かナニかか?」
「ああ、すみません、ちょっと色々考えてましたの」
「喋れんならとっとと喋れやぐり目女。この俺様の時間はテメェと違ってそう安かねぇんだよ。ちんたら喋って俺様の時間潰そうとでも考えてやがんのか?ああ?」
「まあそう喧嘩腰にならないでくださいまし」
というか相変わらずぐり目呼びなのか。
手紙などの筆記系ならこういう口調にならないので普通にジョゼ呼びをしてくれるのだが、こうして口頭での会話ではやはりぐり目呼びらしい。
まあ自分の目はリスのように目全体を一色で塗りつぶしてハイライトを入れたのかなという目なので、ぐり目呼びもわからなくはないが。
「ホラ、コレ」
「ああん?」
睨みつけるように首を傾げたルチアに、頼まれていた本を見せる。
「前に頼まれた本ですわ。絶版だったしそれなりに古いので本屋にも流石に無く、お取り寄せ注文をしてもらったから遅れたんですの」
「……ああ、アレか」
トゲトゲしかった気配が一瞬静かになり、ルチアは本を受け取った。
「だが礼は言わねぇぞ、ぐり目」
だが本を受け取って確認した直後、いつも通りのトゲトゲしい気配に戻る。
否、先程の静かな状態が素に視えるので正確には戻るでは無いのだろうが。
「確かにコイツを頼んだのは俺様だし手間を掛けさせたのも俺様だ。だが俺様は待たされた。そもそも俺様はそう簡単に礼を言う気もねぇんだよ。随分と無駄なコトに時間を使いやがったな」
ハッ、と鼻で笑うようにルチアはそう言うが、本の抱き締め方が優しいので口調の攻撃力が少し軽減だ。
……ただまあ、この話し方は敵を作りますわよね。
ソレを目的としているし、敵云々以前に誰も近寄らないようにというモノだそうだが、ソレにしたって口が悪い。
前に根気強く話を聞いたコトで知った真相からするとルチアの父親による教育らしいが、何故その方向性になってしまったのやら。
「別にお礼を言って欲しくてしたワケじゃありませんし、ルチアが喜んでくれるのであれば無駄ではありませんわよ?」
「……俺様は喜んだなんざ一切言ってねぇぞ、ぐり目。耳がイカれたか?ソレとも脳がイカれて、んな幻聴が聞こえでもしたか?いっつもいっつも誰かの手足になってこき使われてっからどっかの線が切れたんじゃねえのか、テメェ」
「心配しなくても天使ってそういうモンだから、まあ、あんまり好きでやってるワケじゃありませんけれど、どんだけ疲れてようが絶対に死なないのが天使なので大丈夫ですわ」
「テメェの大丈夫の定義がイカれてんだろ」
吐き捨てるようにそう言われたが、しかし言動や脈拍からルチアが自分を心配してくれているのがわかるので特にダメージは無い。
喜んでいないとは言わなかったから喜んでいるのだろうし、イカれたんじゃないかというのは疲れで思考回路がおかしくなっているんじゃないかという心配からの言葉だ。
言い回しが敵を作る仕様ではあるし、実際他人全てを下に見ているかのような言動が目立つが、ルチアは良い子なのだ。
……手紙とかでの会話なら、普通に良い子どころか超礼儀正しい丁寧な文ですしね。
父親の言う通りの言動と行動を実践して定着してしまった辺り、素直なのだろう。
暴言を吐く度にヤッベというような目の動きをしているし。
「…………チッ。ま、良いや。テメェはそういうヤツだしな」
舌打ちをして、本を抱き締めながらルチアはこちらに背を向けた。
「テメェ如きがこの俺様の役に立てたんだ。光栄に思ってむせび泣いてろ。そしたら指差して笑ってやるぜぐり目女。……ただし」
ルチアは自室へと向かおうとしていた足を止め、顔だけでこちらを振り返る。
「テメェ如きが俺様の役に立つ為に動くのは当然だが、テメェ如きが無茶したって俺様からすればナンの意味もねえ無駄な行為だ。
あと俺様はテメェ如きをいちいち気にする程みみっちくねえんだよ。俺様を待たすなんざ許されねえ愚行だが、せかせか慌てて俺様の視界をウロチョロすんな。わかったら見苦しくねえよう部屋で大人しく丸まってやがれ、ぐり目」
そう言ってルチアは立ち去った。
どうやら今回の本探しで手間を掛けさせたし慌てさせたかもしれないから今度からはそう慌てなくて良いし、疲れてるかもしれないから部屋で休むように、という意味らしい。
筋肉の動きなどで大体察せるし、あまりにも理解が難しい言い回しであれば場合によって字幕も出るので自分はあの言動は特に気にしていないが、冷静に考えるとやはり敵を作りがちだと思う。
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あの後ルチアからの丁寧な感謝の手紙が届き、本当にあの口調じゃ無ければなあと思う。
手紙には暴言の謝罪も書かれていて、ナンかもう、そんな口調にさせたのはルチアの父親であってルチアでは無いのだから気にしないでと言いたくなった。
「おい、ぐり目」
そんなコトを考えながらぼんやりと中庭を散歩していると、そう声を掛けられた。
自分をぐり目と呼ぶのはルチアくらいであり、振り返るまでもなく視えた姿は間違いなくルチアだった。
「ハァイ、どうかしましたの?」
「テメェは確か魔物の授業での成績がテメェ如きには勿体ないレベルだったよな」
「ああ、確かに成績は上の上ですわね」
「……ぐり目、時間はあるか?」
そう言うルチアからは、口調だけではなく態度にもナニやらイラつきが視える。
「時間が無かろうが俺様の為に献上しろ」
「いや別に時間あるから問題ありませんけれど……そんなレベルで急を要するんですの?」
「付き纏われててウゼェんだよ」
ルチアは腹立たしそうに視線を逸らしながら舌打ちをした。
「とにかくぐり目、テメェは今すぐ無駄に蓄えてやがる魔物に関する知識を俺様の為に」
「ずゥいぶんと酷い言い方をするねェ麗しきレディ」
「!?」
自分の正面から、つまりルチアの背後から聞こえた声に、ルチアは驚愕した様子で振り返った。
ソコには、四角の板の上に「押すなよ?絶対に押すなよ?」とばかりに鎮座するドクロマークのボタン……要するに、アウトっぽいスイッチが浮いていた。
「だがキミは後悔しているのだろゥ?暴言を吐くコトで友人を傷付ける度に弁解をしようと試みて、けれどそんな言動は出来なくて」
スイッチはふよふよと浮きながら、さあ押せとばかりにドクロマークの入ったそのボタンをこちらに見せる。
「さァ、私を押してリセットしたまえ。キミには他の人間には無い、やり直しの機会があるのだから!」
「チッ、うざってぇんだよボケ」
ルチアはそんなスイッチの言葉を舌打ちしてからキッパリと切り捨てた。
「昨日からやいのやいのと鬱陶しい、テメェは発情期に入って腰振るタイプの獣系魔物かオイ?大体ヒトの言動に口挟んでくんじゃねえよ。俺様はテメェみたいなクソ以下の精神してやがりそうな魔物に関わる気なんざ毛頭ねぇんだ」
そう毒の混じった言葉を放ちつつ、ルチアはシッシッという動きで手を払った。
「うゥん、キミは随分と酷い言動だねェ……だが、私が現れたというコトはキミは後悔しているのだろゥ?」
「だから……!」
「おや、押すかィ?私はソレで構わないよ。キミが後悔している思い出、その後悔するようなコトが起こる直前までリセットしてあげようじゃァないか」
ククク、とスイッチの魔物は悪役のように笑う。
「ククク、もっともそのチャンスをどう扱うかはキミ次第。後悔しないよう言動を変えても良いし、同じ言動のまま変わらぬ後悔を抱いても良いし、はたまたもっと酷いコトを言って後悔ではなくトラウマにしてしまうというのもアリだ」
「アリなワケねえだろ思考回路イカれてんじゃねえのか?ああ、見る限り無機物系魔物か機械系魔物だもんな、思考回路以前に内部の回路がイカれてんのか。ご愁傷さん、ヒト様や特に俺様に迷惑掛けねえように自殺しろよ」
「いや本当に酷くないかいキミの言動」
まあコレに関してはスイッチに同意だ。
というか、そろそろ説明しても良いだろうかと思いつつ挙手をする。
「えーと、とりあえずそちらの魔物についてなんですけれど」
「おう、テメェ如きでもこの俺様の役に立てるんだ、無駄に蓄えたその知識をひけらかしやがれ」
ひけらかすというのは結構な悪口の気もするが、本人に悪意が一切無いのでまあ良いか。
少なくとも目の前の魔物に対するような意図的な毒素では無いし。
「その魔物はリセットスイッチという、困っているヒトの前に出現してはそうなる前にリセット……困る原因が発生する前の時間に戻るかと問いかけてくる魔物ですわね」
「俺様はんな魔物、初耳だが?」
「神出鬼没だから記述はほぼ噂話レベルですもの」
この魔物の場合一体だけなのか複数体居るのかも不明という、謎が多い魔物なのだ。
そもそもリセット方法もよくわからないので、困るコトになる直前という時間軸のパラレルワールドに移動するような能力じゃないかとか色々言われていたりするし。
……そして後悔しないように過去を変える時点でもう未来が変わるから、その時にはもうパラレルワールド状態なんですのよねー……。
まあ神だの概念だのという存在もあるのであまり真面目に考えても意味は無かったり理解不能だったりするので、考えるだけ無駄なのだが。
「基本的には相手をリセットスイッチ自身が固定するらしく、リセットスイッチが自分を押させる相手と認識さえしていればそのヒトは何度でもリセットが可能ですわ」
「……その言い方は、ただし、っつー注釈があるヤツじゃねぇのか?」
「ええ」
どうやらリセットスイッチを苛立たせてくるストーカー魔物から危険魔物と認識を変更したのか、ルチアの雰囲気が素のような静かな状態になっている。
というよりも敵かどうかという思案に集中しているのだろう。
「ただしリセットスイッチが……主と仮称しましょうか。その主と認識していないヒトでは押せませんの。
そしてその認識はリセットスイッチ自身の任意ですので、リセットが出来るからと調子に乗ってたらリセットスイッチが主という認識を外した為リセット出来なくて痛い目見たりしますわね」
「…………」
ルチアは凄まじく冷たい目でリセットスイッチを見据えていた。
「……リセット、つまりは時間を巻き戻すっつーコトらしいが」
「ハイ」
「そいつは因果だの運命だの、そういう重要なアレコレにも干渉すんのか?」
「いえ、基本的には大まかな運命って決まってんですのよね。なのでまあ……他国に行く時に歩いて行くか馬車で行くかみたいな程度の差なので、目的地が変更になったりはしませんわ」
ナンバーナンバーの場合は数という概念だった為干渉力が凄まじく高く本気で世界崩壊の危機だったが、リセットスイッチはヒト一人の移動方法を少し変える程度なのでソコまでの干渉力は無い。
「まあ、なのでヒトによってはどれだけ変えようとしても結局同じ後悔をするコトはありますけれどね。親の死を回避しても違う死因で死ぬ、みたいな」
「……そりゃ他人の人生だし、寿命っつーのは神が定めてるモンだしな。その程度のコトもわかんねえのはバカかアホか、親の死で頭がイカれてるヤツくらいだろ」
意訳すると「親が死んだら正常な判断出来なくなるくらいショックだよね」という意味だと思われる。
「で?ぐり目、コイツはどうしたら俺様の目の前から消えるんだ?」
「おやおや、酷い言い草だねェ。私はキミを救う為の愛に満ちた魔物だよォ?」
「愛に満ちた魔物がんなトラップ染みたビジュアルしてるワケねえだろ。せめてそのドクロマークを隠しやがれボケ」
ごもっとも。
「まったく酷い子だなァ……ねェそっちのキミ、キミもそう思うだろゥ?キミも中々に酷い言動を浴びせられていたようだし、嫌じゃァないのかい?
キミが一言イヤだと言えば、彼女だって私を押してリセットして、その過去を変えようとすると思うんだけどねェ」
「消し方なんですけれど」
「エッ無視?」
ダシにされたのが腹立ったので、リセットスイッチの言葉を完全無視してルチアへの説明を続ける。
「リセットスイッチを押す、そしてリセットスイッチが主と認識している相手に飽きている、という条件が必要ですわ」
「詳細」
「要するに主と認識する、という部分がキモなんですの。リセットスイッチを押してリセットしない限り、リセットスイッチはその主から違う主へと対象を変更出来ませんわ。
そして主に飽きていなければまた主をその対象のままで固定しているでしょうから……やはり飽きさせた上でリセットをしないと他のターゲットのトコへは移動してくれませんわね」
「俺様はリセットする気なんざねえぞ。そもそも俺様はこの生き方に後悔なんざしてねェ」
「ホントにそうかい?」
ニヤニヤと笑っているのを幻視するような声色で、リセットスイッチは言う。
「私は困っているヒトを主と認識するんだ。つまりキミは困っていたんじゃァないのかい?その、敵を作るような言動とかで」
「…………だからナンだ」
苛立ちを隠さず、ルチアはそう返した。
「俺様のこの言動は、この俺様のあまりに美しく可愛らし過ぎる見た目のせいで俺様の意思を無視して近づいてくるような不届きものが居るんじゃねえかと大層にも心配しやがった親父様の仕込みだよ」
「……仕込み?」
「この見た目からこんな毒舌が放たれたらこの美貌目当てのクズ共はすぐに散るだろうってよ」
そう、要するに変なのから付き纏われたりしない為の自衛行為なのである。
幼少期はソレはもうおしとやかなお嬢様だったらしく変なのが発生し、心配した父親により自衛の為にとこの喋り方を襲わったらしい。
……何度あの時聞いた話を思い返しても、方法を色々間違っているように思えますわね……。
まあとにかく、幼少期だった結果その口調がルチアに染みついてしまい、現在では口が勝手に自動翻訳みたいな感じで動いてその口調になってしまうらしい。
だからこそ手紙では謝罪してたり書き方が丁寧だったりするのだ。
……多分、手紙の丁寧な方が素なんですのよね……。
毒舌暴言作戦は実際他のヒトから距離を取られる理由になっているので自衛としては大成功なのかもしれないが、中身は結構まともであるルチアからすると不本意なのではないだろうか。
まあ自分は流石に心を読んだりまでは不可能なので、ホントにそうかは知らないが。
「……とにかく、俺様はリセットする気なんざねぇんだ。口が勝手にほざきやがるせいで後悔なんざ無限にありやがる。そんなモンを回避しようとしたら、そもそも俺様がこの口調になる前までリセットしなきゃならねぇだろうが」
チッ、とルチアは舌打ちをした。
「俺様はそんなモンに頼らなきゃやってらんねえ程耄碌しちゃいねえんだよ、ボケ」
「そう言われてもねェ……一回で良いから押してみないかい?じゃないと私は私で次に行けないんだよ」
「知らねえよ。テメェが勝手に押しかけてヒトの人生を歪めてんだろうが。俺様はテメェを押す気なんざねえんだ……」
ソコまで言って、ルチアはふと思いついたような表情でこちらを見る。
「おいぐり目、よくよく考えたら俺様がこのままコイツを押さねえまま死んだらどうなんだ?」
「エ?そんな前例が無いし本魔自身に前例があるかどうか聞かないと確証はありませんけれど、まあ主固定のままただのポチポチして遊ぶだけの魔物になるか、主の存在が消滅したコトで主の枠が無人になって別の主を認識するか、という感じじゃありませんの?」
「ちなみに実際は?」
「え、いや、私にそんなコトを聞かれてもねェ……大体皆死ぬ前に私を押してリセットしてるワケだし、死に掛けても死ぬ理由が発生する直前にリセットするし」
「なら前例を作ってやろうじゃねえか」
「ハ?」
ルチアは可愛らしい顔に似合わない凶悪な笑みを浮かべた。
「俺様はテメェにどんだけうざく絡まれようが、絶対にテメェを押さずに人生を全うして前例を作ってやるっつってんだ。
クソみてえな魔物相手に珍しい前例を作ってやろうとするこの広大な心の持ち主である俺様に感謝しろよ、リセットスイッチ」
「……ヘーェ?じゃあ私は私で頑張ってキミに私を押させてみせちゃおうかなァ?」
……ナンですの、この険悪なムードは。
スマイルハーネスに絞められてキレたアッサールの圧を思い出すピリピリ感に、こっそり一人と一つから距離を取った。
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コレはその後の話になるが、今日もルチアとリセットスイッチはぎゃいぎゃいと押す押さないで言い争っている。
「だから押さねえっつってんだろうがスットコドッコイ!俺様に後悔するようなコトなんざねえんだよボケ!」
「あのねェ!キミ毎回毎回私に対して酷くないかい!?ソレに後悔してくれても良いんじゃないかと思うけどねェ!?わかったら私を押してさっさとリセットして謝ってくんなァい!?」
「リセットしたらテメェも一緒に巻き戻るんだろうがテメェ相手の暴言回避とか意味ねえだろボケが!」
「気分だよ気分!キミはもう少し私に対する当たりを優しくしてくれても良いと思うよ!
というかリセットするにしろしないにしろ私相手に謝罪しようとか思わないワケ!?他の子には謝罪やお願いをあんなに丁寧に書いた手紙とか送ってるクセに!」
「ナニ見てんだテメェ!相手への束縛が強いパートナーかナニか気取りか!?そもそもテメェ如きが俺様が手紙を出しても良い友人と認識したヤツと同じ土俵に上がってるとか思い上がってんじゃねえよカス!」
「本っ当に酷くないかい!?」
談話室の端っこで最早定番のBGMの一つになったそんな会話を聞きつつ、ルチアからの手紙を貰う自分はルチアの友人枠に入れていたらしいと嬉しくなった。
止めても続行されるので言い争いに関しては知らん。
ルチア
とても愛らしく美しい深窓の令嬢的な見た目だが、とんでもない罵詈雑言を放つ毒舌。
しかし言動の全ては自動翻訳の結果みたいなモノなので、手紙などは普通に丁寧。
リセットスイッチ
明らかに怪しいドクロマークがあるスイッチの魔物。
ヒトの人生を狂わせるタイプの魔物なので暴言を吐かれたり敵意を向けられたりするコトは多々あったが、ルチアのようなとんでもない暴言は流石に初体験。




