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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 14 ゴミが消えた日  作者: 石渡正佳
ファイル14 ゴミが消えた日
8/31

保税倉庫

 一週間後永田から連絡があった。

 「この間の話ですけどやっぱり輸出に回ってる切符があるみたいですよ。今横浜の保税倉庫に荷が入っているそうですが、ご覧になりたければ荷主に頼んでみますよ」

 「ええお願いします」

 「そうですか。それじゃ今週中に行ってみましょう。来週には船積みしてしまいますから」

 さっそく翌日永田社長と本牧埠頭のコンテナターミナルで待ち合わせることにして、伊刈と夏川は車で横浜向かった。

 高速道路からも目立つ横浜港のコンテナクレーンだが、間近から見上げると圧倒的な巨大さだった。荷役を人手に頼っていた時代は博徒の時代だったが、今はこのクレーンが荷役の主役だっだ。コンピュータ制御で船のバランスを維持しながらコンテナを積み込むこの巨大なクレーンがなければコンテナ船は接岸することができない。クレーンの数が港湾の取扱高を決め、港湾の格付けにもなっていた。

 「すごい数のクレーンですね」

 「横浜は日本最大のコンテナ港です。二番目は神戸」永田が伊刈に答えた。

 「すごい」

 「船にも乗ってみませんか」

 「いえ時間がないので保税倉庫のほうに」

 「そうですか。じゃ倉庫に行ってみましょう」

 永田紙業の車の先導で広大な保税ヤードを移動し大きな倉庫に入った。

 「ここです」

 永田社長は倉庫の管理者に説明して案内を請うた。倉庫の管理人はノートパソコンで台帳を確認しながら歩き始めた。倉庫は意外にがらんどうで、所々に天井までうずたかくパレットに載った荷物が積まれフォークリフトがひっきりなしに移動していた。

 「このあたりですねえ」

 「ああこのベールだ」永田が先に古紙を見つけた。「二百五十馬力のプレス機で固めるんですよ」永田が立ち止まったのは古紙をプレスしたベールを積み上げた一角だった。

 「袋詰めじゃないんですね。これじゃ切符があるかどうか確認できませんね」

 「袋詰めじゃ空気を運んでいるようなものです。輸出用の古紙は全部このベールですよ」

 「これをもう一度ばらしてもプレスの後がつきますね」

 「ええそうですね。ぐちゃぐちゃです」

 「現場で出た切符はきれいでした」

 「きれいな切符なら輸出玉じゃないですね。でもプレスする前に流出したかもしれない」

 「プレス会社からの流出ですか」

 「そうですね」

 「どこでプレスしているかわかりますか」

 「ちょっと待ってください。当社の取引先であれば」永田社長は電話をかけ始めた。

 「いくつかありますが最近問題があって取引を停止した会社があるそうです」

 「問題というと」

 「ミックスペーパーの破砕処理を依頼していた会社ですがマニフェストが帰ってこなかったそうです」

 「どこですか」

 「ここから近いですよ。川崎です」

 「社名を教えてもらえますか」

 「いいですよ。しかし当社が教えたことは内密に願えますか。産廃業界は複雑なので取引がなくなってもいろいろ面倒がありますから」

 「わかりました。お約束します」

 ますます永田という人物が不思議に思えた。わざわざ不祥事を起こした会社を役所に教えてくれるなど普通ではありえないことだった。だがとにかく永田の情報に頼るしかなかった。

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