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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 14 ゴミが消えた日  作者: 石渡正佳
ファイル14 ゴミが消えた日
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表紙の謎

 不法投棄現場で拾った証拠はどんなに小さな紙切れ一枚でも、それぞれが辿ってきたあなどれない運命があった。しかし廃切符と一緒に出た雑誌の表紙の束は特別に興味深い調査となった。伊刈は雑誌の表紙を調べている夏川を呼んで調査状況を確認した。

 「雑誌の表紙だけ集めてるなんて変な趣味のやつだと思ったんですが、面白い特徴があったんです。これ見てください」夏川は数百枚あった表紙をすべて出版社別雑誌名別に分類していた。

 「すべて中綴じの週刊誌だね」

 「さすが班長鋭いです。糊綴じの月刊誌やファッション誌はありませんでした」

 「どうしてだと思う」

 「さすがにそこまではわかりません。ただですね、同じ雑誌の表紙が何枚か重なっていたし同じ出版社のを集めてあったんです。これって読者が捨てたんじゃないですね」

 「古紙のプロが扱ったものってことだな」

 「それはもう間違いないです」

 「調査はどこまで進んだんだ」

 「とにかく手がかりは表紙だけですから、まず雑誌社に問い合わせてみました」

 「出版社は何社あったんだ」

 「五社です。全部に電話してみましたが答えは同じでした。出版社は雑誌を売ったら終わりで古紙の回収には関係してないそうです」

 「本は売れ残ったら返本されるんじゃないか」

 「それも聞きましたが雑誌は出版社には戻らずに古紙問屋に回ってしまうそうです」

 「なるほど。じゃ流出元は売れ残りの雑誌が返本された古紙問屋じゃないのか」

 「たぶんそうだと思います。だけど出版社は古紙問屋がどこか知らないって言うんですよ。取次に任せてるって言うんです」

 「取次ってトーハンと日販のことか」

 「さすが班長ですね」

 「常識だよ」

 「取次に聞いたのか」

 「それはまだなんです。そのかわり犬咬にも古紙を扱っている業者がありますので、ちょっと予備知識を仕入れました」

 「そこが関与してたらどうするんだ」

 「それはそうなんですが地元の業者が地元の穴に捨てるとも思えなかったし」

 「それで結果は」

 「雑誌の表紙はコーティング紙を使用してるから古紙に再生できないんで、どこの古紙問屋でも分けてるっていうんですよ」

 「すごいじゃないか。外した表紙はどうするんだ」

 「焼却処分するかRPFの工場に出すかだそうです」

 「RPFってことは廃切符と同じルートに乗った可能性があるってことか」

 「ええそうです」

 「そこまでわかればもう流出ルートは特定できたも同然じゃないか」

 「どうしてですか。どこの古紙問屋でも表紙を外しているとなると特定するのはほとんどムリじゃないですか」

 「そうじゃないよ。最初の推理に戻ってみろよ。普通の古紙問屋は読者が読み捨てた雑誌を駅とか自治体のごみ収集とかから買ってくるんだろう。だけどそれじゃ同じ出版社ごと同じ雑誌ごとにわざわざそろえてあった理由が説明できない」

 「つまり売れずに返本された雑誌ってことですよね」

 「そういうこと。返本された雑誌は取次を経由して古紙問屋に回される。そこで表紙は古紙にならないから外されたってことじゃないか」

 「でも班長なんかしっくりこないです。返本のときは確かに同じ雑誌を集めてあったかもしれませんが、それを同じ袋に詰めたってことがわかりません。しかもあんな小さな袋にですよ」

 「なるほどそれはそうだな。焼却に回すんならもっと大きな袋を使うよな」

 「そうですよ。一枚ずつ丁寧に重ねる必要ないですよ」

 「だけど雑誌を回収した業者が古紙にならない表紙を雑誌から外したってことは動かないんじゃないか」

 「ええまあそうですが」

 「五社のなかに知ってる出版社があったから返本された雑誌を集荷している古紙問屋を知らないか聞いてみるか」

 「ほんとですか」

 「あてにしないで待ってて」

 伊刈は取材を受けたことがある毎朝新聞の記者に相談した。すると取次との取引関係があるかどうかわからないとしながら永田紙業という古紙問屋を紹介してくれた。永田紙業に電話をすると驚いたことに社長が直接に会ってくれることになった。

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