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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 14 ゴミが消えた日  作者: 石渡正佳
ファイル14 ゴミが消えた日
27/31

特集番組

 JHKの看板番組「ズームイン現代」に伊刈をゲストデビューさせた本郷ディレクターはゴミの面白さに魅せられて、今度は九十分の特集番組を企画していた。

 取材協力を求めるためにやってきた本郷に、伊刈は市庁近くに最近出店したコーヒーチェーン店ドールカフェの禁煙席で取材に応じた。十数年前、このチェーンが全国展開を始めたときは、イタリアではありふれたバールやシアトル発祥のスターバックスなどを真似たイタリア風カフェ文化のパイオニアとして伊刈も歓迎していた。そのころは高級品種のハワイコナをブレンドに使っていたが、店舗数が増えるにしたがって豆の品質が落ちてしまった。最近では暇潰しに寄ることはあっても、ベトナム産ロブスタ種のえぐみが残るコーヒーは決して飲まなかった。この日も伊刈はロイヤルミルクティーを頼んだ。

 ベンチシートにかけて伊刈は本郷に対面していた。チェーン店らしく椅子の座り心地はちょうどよく計算されていた。フランチャイズ店のオーナーになるには、豆や什器はもちろん、内装も指定の工務店を使わなければならない。そのバックマージンで創業者だけが潤うシステムだとわかっていると、あまりいい気持ちはしなかった。

 「どんな方が番組に登場するんですか」伊刈は登場人物が気になるようだった。

 「輸出業者としては大安商会の馬代表と洲屋の杉林社長に登場してもらうつもりです」本郷が答えた。

 「お二人とも存じていますよ。JHKならこの二人は必ず押さえてるだろうと思いました」

 「さすが伊刈さんだな。それなら話が早いですよ」本郷は目を輝かせた。「輸出業者だけじゃなく国内業者も登場してもらって対比させようと思っています。国内業者はTRSの三善社長に出てもらいたいと思っています」

 「三善さんなら講演会で名刺交換したことがありますね。ペットボトルのリサイクルをしているトータル・リソーシング・システムでしょう」

 「ほんとですか。だったら紹介してもらうことはできませんか」

 「そんなに親しいわけじゃないんですが、今度また講演会を頼まれています」

 「いつですか」

 「来月です」

 「それじゃ放送予定日より先ですね」

 「講演会の前に工場を視察させてもらうことになっています」

 「その視察に取材班が同行することできないでしょうか。中国を相手に国内リサイクルの火を消すまいとがんばる三善さんのインタビューは胸を打つと思うんです。いけいけの大安商会の馬代表とは対照的ですから」

 「聞いてみますよ」

 「ありがとうございます」

 「中国の画も撮りますか」

 「もちろん撮ります。中国だけじゃなくベトナムとフィリピンにも行きます」

 「ミャンマーと北朝鮮は」

 「そこまではちょっと広げられないです」

 「金属リサイクル汚染で有名な広東省の貴嶼グイユはどうですか」

 「実は真っ先に貴嶼の画を撮ろうと思ってもう行ってきたんです。スチールカメラならなんとかなりそうでしたが、ビデオカメラを回すのは危なくてだめでした。ほんとにひどいとこです。小学生くらいの子供に板焼き(プリント基板から鉛を除去する工程)をさせてましたからね」

 「スチール写真じゃ放送できないですね」

 「ここだけの話なんですが地元のメディアからテープを買いました」

 「それってやらせかもしれませんね」

 「そうかもしれません。外国メディア向けに映像を演出するのは中国では常識ですからね」

 「反日暴動の映像だって全部学生アルバイトを使ったやらせだそうですよね」

 「あれは確かに外国メディアに売るためのやらせだと聞きますね。警察に賄賂を渡して撮影させてもらってるそうですよ。撮影が終ったら学生たちにバイト代を配って解散らしいです」

 「買ったテープは大丈夫なんですか」

 「そこは十分に検証してから使いますから大丈夫です。テープに映っていた場所も確認しています。実際の貴嶼の映像に間違いないです」

 「それならいいですけど。それだけお金をかけて取材していたら僕にお手伝いできることは何もないでしょう」

 「インタビューさせてもらえる廃棄物輸出業者はほかにいないでしょうか。まだ物足りなくて。本音で話してくれるアウトロー系の方とか存じないですか」

 「知らないことはないけどどんなコメントがほしいんですか」

 「廃棄物問題が国内から中国へと舞台を移しているってことを視聴者にもっとインパクトのあるコメントで印象付けたいんです。名の売れた社長のスマートな話より、メディアに登場したことがないアウトローの方の泥臭い話のほうが真実味を出せるじゃないかと思うんです」

 「それはあるかもしれないですね」

 「お願いできないですか」

 「話はわかりました。探してみますよ。それより逆上陸の話題はないんですか」

 「どういう意味ですか」

 「日本のゴミが世界に行くってことが今回の特集のテーマですよね」

 「そうです」

 「その反対に世界の廃棄物メジャーが日本に上陸して市場を乗っ取ろうとしてるってことです」

 「伊刈さんの興味はもうそこまで行っちゃってたんですか。それは次の話題ですよ。まだそっちは全然取材してないんです」

 「SMGは知ってますか」

 「上海・シドニー連合のサウルス・マテリア・グループですね。噂は聞きます」

 「大安商会にも接触してるみたいですよ」

 「インタビューのあと馬代表がオフレコで話してました。もう日本にはプラのぎょくがないから、これからは金属だって。SMGはスクラップメジャーですよね。日本のスクラップが欲しんでしょうけど業界が閉鎖的ですからね。それでたぶん日本のゴミ業界に食い込んだ実績のある馬代表と組もうとしてるんじゃないですか」

 「さすがにいいとこをついてますね。SMGのこともっと探ってみたら面白いと思いますよ」

 「わかりました。今度の特集がうまくいったら次はSMGで行きます。その時は伊刈さんにゲストで来てもらってもいいですか」

 「その頃まで無事ならね」

 「無事に決まってるじゃないですか。縁起の悪いこと言わないでください」

 「いろいろ居心地が悪くなってきてますからね」

 「三善社長のアポもお願いします」

 「来週、打ち合わせの予定がありますら聞いてみます。外国はあとどこへ」

 「明日からドイツです。来週には戻ります」

 「ドイツも調べるんですか」

 「たぶん画を撮っても流せる時間はたぶんないんですが一応向こうの状況も知っておかないと」

 「なるほど」JHKの取材費のかけかたは尋常じゃないと思いながら伊刈は本郷を見送った。

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