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最果ての戦艦  作者: Alc
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3話 艦載AI

『はじめまして!あなたがアルクね?』


いつの間にか僕の横に立っていた女の子が僕に話しかけてきた。その女の子は幽霊のように透けていて、多分僕の義眼にしか映っていないのだろう。髪は長く、銀河美少女選手権に出場出来る位の可愛らしい顔立ちしている。僕はすぐにその女の子が出現した理由に気が付いた。


「うん。……君は?」


『私はあなたのお父さんに作り出されたこの船のAIなの。アルターと呼ばれているわ。アルクのサポートをするように言われてるの』


「僕のサポート?」


『そうよ。この船の事は何も分からいでしょ?だから私がサポートするの。この船の事なら何でも知ってるのよ!』


アルターという少女は自信に満ちた表情でそう言う。だけど僕は。


「確かにこの船は凄いけど、この船って戦艦だよね?争い事はあまり好きじゃないんだ」


『でも、お偉いさん方はどうしてもこの船にアルクを乗せたいみたいよ。会話を少し見せてあげましょう』


アルターはそう言い残して消えて少し経つと、僕の視界が別の部屋の俯瞰した映像に切り替わる。そこは上級士官や部隊長等が入る予定の部屋なのだろう。8畳程の広さでベットが1つあり、机やクローゼットも備え付けられている。その部屋ではライドさんの他に軍の高官と思われる3人が立ったまま話をしていた。


「……ではあの子にこの戦艦の艦長を任せると言うのですか?何の訓練も実績も無い子に?そんなの危険過ぎます!」


ライドさんが珍しく語気を強めている。僕が艦長?どういう事なんだろう?


「これは前から決まっていた事だ。丁度良いじゃないか。艦長になる予定の者が艦の鍵を持つ。何処に問題がある?」


「……この事はアルベルトは知っていたんですか?」


「いや、アルベルトには言っていない。あいつの事だ、感づいていたのかも知れない。さて、視察が遅れているから私達はそろそろ行くとしよう」


3人の内の一人、スキンヘッドの男が答える。共和星連の総司令官は就任時に慣例でスキンヘッドにすると聞いたことがある。恐らく総司令官なのだろう。体つきもがっしりとしていて少し怖そうだ。

ライドさんはなおも言い募ろうと口を開くが、スキンヘッドの男達は意に介さずそのまま出て行ってしまった。そこで僕の視界は司令室に戻った。


『うーん、もう少し調整が必要みたいね。少し調整してくるわ』


アルターがそう言ってしばらくすると、ライドさんが少し疲れた様子で戻ってきた。


「お待たせ。今上の人達と話しをして来たんだけど、どうやら君をこの戦艦の艦長にするつもりみたいだ。僕は反対したんだけど……ごめん」


「仕方ないですよ。スキンヘッドの男の人って多分総司令官ですよね?」


「あれ?見てたのかい?」


僕はアルターがインストールされた事を説明する。ライドさんは少し驚いていたが、アルターの事は知っていたらしく納得してくれた。ついでに気になった事を聞いてみる。


「あの、僕が艦長になる事が前から決まってたって言うのはどういう事なんですか?」


「悪いけどそれは言えない。でも、いずれ分かるさ。そろそろ帰ろう。君も入学式には出ないといけないんだろう?」


はぐらかすようにそう言うと、僕達が来た時の道をさっさと行ってしまう。僕は慌ててライドさんを追いかける。そうして行きと同じ2日程を掛けて学舎惑星に戻った。



---------------------------


学舎惑星には宇宙エレベーターが何本かあり、それぞれに宇宙港がある。僕は学校に一番近い宇宙港に送ってもらい、父さんのやっていた仕事を見せてもらったお礼をしてライドさんと別れる。父さんと母さんの死の原因については、何か分かったら連絡をくれるそうだ。


宇宙港で検疫等を終わらせて宇宙エレベーターを使い地上に降りる。この星は人類発祥の星である地球と非常によく似た星で、生命維持装置無しでも外を歩ける。その為にこの星を調査しようと研究者達が集まり、学舎惑星と呼ばれるようになった歴史がある。

宇宙エレベーターの建物を出ると、この建物を中心に半径3Km程は更地になっている。これは宇宙エレベーターに問題が起きた時に備えてのものだ。何かあった時の為に距離を開けるのは分かるけど移動が面倒だ。そのまま人の流れに乗って歩いていくと卵を横にした様な形の車が沢山並んでいる所に着く。無人タクシーだ。そのまま列に並び、順番が来るのを待つ。そうして自分の番になり車に乗り込み行き先をいう。


「アイアリー学校第1地区まで」


アイアリー学校は学舎惑星に27か所にも分かれている最大級の学校だ。車内のスクリーンになっている部分に幾つかのルートが表示される。最短ルートでもいいけど、外を見て回りたかったので少し遠回りになるルートを選んだ。無人タクシーが動き出し景色が流れてゆく。

街には人が溢れていて、亜人も多くいる。ホログラムの広告もそこら中にあり、今流行りの服なんかを投影していた。そこまでは僕のいた星でも見られる光景だ。でも、義眼をこの星のネットワークに繋ぐと全く違う景色に変わる。


「おぉ、流石学びの聖地と言われるだけの事はあるなぁ」


無人タクシーの内装や外の建物こそ変わっていないものの、僕の服装は地味でダサい物に変わり、外を歩いているのは怪物や個性溢れる人達になっていた。AR空間だ。この星は企業の研究施設も多いのでどこにいてもすぐにこの星に来られるよう、この星を丸々コピーしたオープンなAR空間を設けてある。

僕のシンプルな服装は初期アバターなのだろう。あまり面白く無かったので、周りを見ただけですぐに現実の景色に戻す。ふと、投影されている服を見ている家族に目が止まる。


「家族、か。もう1人になっちゃったよ」


父さんと母さん、それに妹ととの家族で過ごした何気ない日々を思い出して無性に悲しくなった。叔母さんと妹はいるけどこの星にはいない。思わず1人で呟くとそれに答えるように突然女の子の声が返ってきた。


『ちょっと!私を忘れないでくれる?』


「アルター?なんでここにいるの?」


アルターはあの巨大戦艦のAIだったはずだ。調整すると言ったっきり今まで一切出てこなかったからすっかり忘れていた。それに戦艦から離れて大丈夫なのだろうか?


『思ってたよりも調整に時間が掛かっちゃったわ。すごく複雑なんだもの。私をインストールしたでしょ?忘れたの?』


「ごめん、あの船の中だけにしかいられないのかと思ってた。それよりも戦艦に居なくて大丈夫なの?」


『こっちの私は分身のようなものなのよ。だから何処にいてもアルクをサポート出来るわ!あ、見て!あそこのスイーツ美味しいらしいわよ!』


通り過ぎる時にアルターが指を指した。どうやら「ジャスミン」と言うお店らしい。甘い物好きだから今度行ってみようかな。


『あぁ、私にも味覚があったらなぁ……』


そんな話をしていると無人タクシーが止まった。どうやら目的地に着いたようだ。左手を読み取り機に翳して支払いを終え、車の外に出る。


「凄いな」


外は学校を出入りする人々で溢れ返っていた。一人が通れる程度の大きさのセキュリティーゲートが横一列に並んでいて、それを通って学校の中に入るようだ。


『人が多くて端まで見えないけど、この出入り口は1kmも続いているのよ!』


聞いてもいないのにアルターが喋り始める。それを聞きながら、人の波に乗って一定の間隔で設置されている駐在所に向かう。


「すみません、今年入学する予定なんですけど……」


「はい、では身分証と入学証明書を貸してください」


身分証と入学証明書を出して確認が取れると、金属製のブレスレットを渡された。このブレスレットは学校に出入りする時だけでなく、学校内の施設を利用する時にも必要になるそうだ。


「そのブレスレットは無くさないようにしてください。これで手続きは終了になりますが、最初に寮に行く事をお勧めします」


僕はお礼を言って学校を出入りする人の流れに身を任せる。ここから僕の新しい生活が始まるんだ。未来に対する期待感と緊張で体が震える。僕の前にいた沢山の人達がどんどん学校の中に入っていく。いよいよ僕の番だ。セキュリティーゲートを問題なく通り抜けると僕は学校に足を踏み入れた。

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