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最果ての戦艦  作者: Alc
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2話 巨大戦艦

 ライドさんと軍の船で移動すること約2日。ゲートを幾つか通り、かなり遠くまで来た。今までの人類の宇宙での移動手段は最短距離を出来る限り速い速度で進むしかなく、移動にはとてつもない時間が掛かっていた。それこそ何十年、何百年単位で。しかし、近年やっとゲートと呼ばれる、遠い場所にある一点と別の場所にある一点を空間を捻じ曲げる事によって繋げることに成功した。この移動革命により人類の距離という概念が変わっていった。

この2日間の移動距離だけでも、昔の人だったら生きて辿り着く事は難しいのだろうなぁ。そんな事を考えながらライドさんと少し話をする。


「随分遠いんですね。まだ掛かるんですか?」


「ちょっと待ってくれ……、ふむ最後のゲートを通って3時間ほどか。そろそろ見えてくる頃かな」


僕の席の隣で書類仕事をしていたライドさんは、艦内時間を確認するとそう言って船のコントロールルームに案内してくれた。この船は物資の輸送用みたいで、コントロールルームもテニスコート2面程もあり、20人程が機械をモニターしている。その中の1つ、外の映像が見られる席の担当の人に外の映像を見せてもらった。


「なにこれ……これが船!?」


そこに映し出されていたのはとてつもない大きさの建造物だった。宇宙船の中でも最大級の大きさを誇る移民船と呼ばれる船があるが、それよりも大きいだろう。隣にある惑星の2倍、いやもっとあるだろう。巨大な船は葉巻型のような形をしているが、中心より端に行くにつれて細くなっている。船の外側で活動しているロボットや人影などはなく、ほぼ完成しているようだった。戦艦の周りにはぐるりと囲む様にリング状の造船ドックが5つ等間隔に並んでおり、それぞれが戦艦や他のリングと繋がっている。その中でも真ん中にあるリングは、隣の惑星から伸びている宇宙港へと繋がっていた。


「あぁ、これが完成すれば人類史上最大の船、いや戦艦になるだろうね。これが君のご両親が造っていた物だよ。ちなみにアルベルトはこの建造計画の総責任者だったんだ」


「凄い!まさかこんな大きな物を造っているとは思いませんでした。でも、あんなに大きな物が繋がってて宇宙港は大丈夫なんですか?」


惑星より船の方が大きいと、重力や引力で惑星の軌道がおかしくなるのではないかと思ってライドさんに聞いてみる。


「あれは一時的に繋いでいるだけだからね。普段は宇宙港とは繋げないんだけど、重要人物が来てる時なんかは繋ぐんだよ。着いたらあの船を少し見せてあげよう!」


僕の驚き様をみてライドさんは満足そうに言った。


------------


宇宙港に着き、疫病検査など諸々の手続きを済ませて移動すること3時間。食堂や遊戯室などを見せてもらいながら指令室に向かう途中で、ふと思う。どうしてこんなに大きな戦艦が今まで見つかる事が無かったんだろう?ライドさんに聞いてみる。


「この辺は人類の支配領域からかなり外れた果ての果てだからね。こんな所に来るもの好きは探索者位のもんさ。それに、ここから一番近い植民星の近くには()が出るのさ」


「……なるほど。聞かなかった事にしておきます。」


「そうだね、賢明な判断だ。賢くて助かるよ。」


そんな話をしていると、他とは違う一際頑丈そうな丸い扉の前に着いた。ライドさんが扉の横についているパネルに手をかざすとシュッという音と共に扉が開く。扉の先には10メートル程の廊下になっていて、その先にも同じような円形の扉があった。僕達が廊下に入ると静かに後ろの扉が閉まる。僕は閉じ込められるのかと一瞬ドキッとしたが、扉が閉まると同時に向こうの扉の近くの床から柱の様な物が迫り上がって来てライドさんはそれに向かってゆく。僕は少し不安になりつつも置いて行かれないようライドさんの後をついて行く。ライドさんが柱の上面のパネルにコードを入力するとそのパネルが開いて、その下にある金属の様な光沢がある液体の中に手を入れた。


「大丈夫なんですか?それ?」


水銀のようにも見えるその液体に手を入れているライドさんが心配になり問いかける。


「これかい?体に害のあるものじゃないから大丈夫だよ。これは最新鋭のセキュリティシステムなんだ。だからあんまり詳しいことは言えないけどね。さあ、ここが指令室だ!」


そう言って液体から手を出すと、その手には一滴も液体は付いていなかった。柱が床に戻っていくと同時に目の前の扉が開き、僕達は指令室に足を踏み入れる。中は体育館程の広さがある空間で、まだ数人の作業員が機械の調整をしていた。その人達に軽く挨拶をして艦長席に向かう。艦長席は他の席とは違い一番高い所にあるのですぐにわかった。


「さぁ、ここが艦長席だ。君のお父さんが一番力を入れて作っていた場所でもあるんだ。試しに座ってみるかい?」


僕は頷いて席に座ると予想以上に座り心地が良く、肘掛けに両腕を乗せる。すると突然、義手である左腕を乗せた肘掛けが光り、席の周囲に所狭しと並べられているコントロールパネルや計器類が起動する。


「すいませんっ!どこか押しちゃったみたいです……」


「いや?どうやらあいつからの、君のお父さんからのメッセージみたいだよ。多分、君の義手に細工でもしていたのだろうね。アイツのやりそうな事だ」


ライドさんがコントロールパネルの1つを指さす。そこには僕宛てのメッセージが表示されていた。


『息子の為にこのメッセージを残す。突然こんなメッセージが表示されて驚いている事だろう。

実はアルクの義手はこの艦を動かす為に必要な鍵となっているんだ。義手は取り外したり、他の人が着けても作動しないようになっている。この戦艦を何とか完成まで持ってきたが、軍内部に惑星連邦のスパイが入り込んでいるようで信頼出来る者がいなかったんだ。

近年、共和星連と惑星連邦の関係は悪化の一途を辿っているのは周知の事実だろう。このまま悪化していけば確実に戦争になる。

それでも私はこの戦艦を造らなければならなかった。

済まないがよろしく頼む。』


僕はそのメッセージを時間を掛けてじっくりと読んでいると先に読み終わったライドさんが言う。


「なるほど。君にしか戦艦を動かす事が出来ないとなると君にもこの艦に乗って貰う事になるかも知れない。取りあえずこれを上の連中に報告しよう。幸いにも上の連中はこの艦にいるようだからね」


「僕も戦争に行く事になるんでしょうか……?」


まさか父さんがこんな所にメッセージを残しているとは思っていなかったので僕はそれが嬉しかった。だけど戦争にはいきたくない。


「それは上の人達が決める事になるだろう。だがもし君がこの艦に乗りたくないなら、出来る限りの事はしよう。それじゃあ報告してくるからここで少し待っていてくれ」


そう言って、ライドさんは指令室を出て行く。いつの間にか作業していた人達の姿もなく、指令室には僕一人となっていた。僕は手持ち無沙汰に計器類を眺めていると、いきなり眼前に「インストールが完了しました」という文字が出現する。すぐに義眼と義手の機能だと分かったが、何かをインストールした覚えはないしスパムかと警戒しつつ成り行きを見守る。


『はじめまして!』


横から声を掛けられてそちらを向くと、いつの間にか僕と同じ位の年の女の子が隣に立っていた。

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