魔道合体ゲオルギウス
この物語は、
「魔法 × ロボット × バディ × 熱血」
という、自分の“好き”を全力で詰め込んだ作品です。
国の一都市がワイバーンの群れに襲われ、
混乱の中で奮闘するジオとギース。
軽口を叩きながらも、互いを信じて戦う二人の姿を描きました。
そして、二人の魂が重なり合う魔道合体“ゲオルギウス”。
巨大な敵に立ち向かう熱い戦闘と、
少年漫画のような勢いを楽しんでもらえたら嬉しいです。
「「「~~~ッ!!」」」
人々の逃げ惑う声が聞こえる。
辺り一面が、真っ赤な業火と鮮血に包まれ、
地獄絵図と化していた。
「魔法騎士団の到着はまだか?!」
「それが、彼らとの連絡が途絶えており、
行方が分からなくなっています!!」
「クソッ!!政府の犬め、肝心な時役に立たん!!」
党首と思わしき男性の怒声が建物内に響き渡る。
「避難民の数も多く、避難所が溢れかえる事態!!
いかがなさいますか?!」
「ええい、うるさい!!今考えておろ―――」
バコーンッ!!
右手の壁が砕け散った。
爆音とともに、モクモクと砂煙が上がる。
「イタタタッ……。」
やがて、一人のシルエットが浮かび上がった。
「着地失敗か~。
この靴、また調整してもらわないとだなぁ。」
カツカツとかかとを鳴らし、煙の中から少年が
現れた。
「ッ?!な、何者だ?」
即座に、臨戦態勢へと入る男達。
「えっ?待って待って!!
僕は味方、敵じゃないですっ!!」
大きく手を振り、戦意が無いことを示した。
「改めて、魔法騎士団精鋭部隊所属、
“ジオ・グルーブ” です! 」
一呼吸置く。
「―――あなた達を助けに来ましたっ!!」
***
「お母さん、どこ?どこにいるの?」
人形を抱えた少女がとぼとぼと歩いている。
服には所々に煤がついていて、
多少の擦り傷を負っていた。
ーーーザザッ
「っ!!お母さん!!」
後方からの足跡に、少女は振り返った。
「ギィ?」
「あ、あれ?お母さんじゃ、ない?」
翼の生えた異形の怪物がそこにはいた。
口には、先ほどまで喰らっていたであろう、
市民の肉片がこびりついている。
「グゲッ、グギャギャギャッ。」
気味の悪い声をあげ、少女の元へ歩みを寄せる。
「こないで、来ないでよぉ……。」
恐ろしさに腰が抜ける。
下半身が機能せず、まともに逃げる事すら
叶わない状況。
少女は後ずさる事しか出来なかった。
「うわっ?!」
不意に、右手を冷たい感触が走った。
「な、なにこr―――」
正体に気が付いた時、背筋は凍り付いた。
無惨にも食い荒らされた女性の頭部。
黒一点の空虚な瞳が、彼女だけを見つめていた。
「いやぁぁぁぁ!!」
その光景が、自分の近い未来を想起させた。
激痛の中、貪りつくされ、
幼い体は骨すらも残らないだろう。
目の前の女性と同じ運命を辿るんだ。
(しにたくない、しにたくない、しにたくないっ!!)
地面を掴むように、土を握りしめた。
「誰かっ―――」
泣きそうな声で彼女は叫んだ。
「助けてっ!!」
その時だった。
―――シュイーン
「ギョエッ?!」
空気を切り裂くような音と同時に、
肉が弾ける音がした。
しばらくして、周囲にパチパチと
燃える音だけが残る。
少女が目を開けた時、腹部が破裂したかのように
絶命した怪物が横たわっていた。
「すまんっ!!助けるのが遅くなっちまった!!」
気が付くと傍に、ゴーグルをかけた青髪の青年が
立っていた。
「大丈夫―――じゃねえよな。
“ロウヒール” 。」
たちまち、少女の傷がふさがっていく。
「気休め程度で悪いな嬢ちゃん。
さぁ、あそこに行けばもう大丈夫だ。」
青年が指す方向には、魔法騎士団による結界と
避難民達の姿があった。
「あっ、お母さんっ!!」
「ミネアっ!!」
少女は、母と思わしき人物のもとへ駆けていった。
「良かった!!本当に生きてて!!」
「うわーん、お母さん!!怖かったよーー!!」
二人は力強く抱きしめあって、
再会の喜びを噛み締めている。
「娘を本当にありがとうございます。」
「当然の事をしたまでだ。それより、
その子を連れてとっとと行きな。」
身を翻して、足を踏み出す。
「あれっ?お兄ちゃん、行っちゃうの?」
少女の心配そうな声が聞こえる。
「あぁ、そうだな―――」
精一杯の笑顔で答える。
「最後の大仕事が残ってるからな。」
巨大な怪物の親玉を前にして、
青年は啖呵を切るのだった。
***
《ジオ、聞こえるか?》
「び、びっくりした?!聞こえてますっ。」
《オーケー。それで、そっちの状況は?》
眼前には剣先を向け、今にも襲い掛かろうとしている男達がいた。
「こっちの人、かなり殺気立っててヤバイです!!」
『魔法騎士団精鋭部隊だとっ?!
ホラを吹くのも大概にしろよ!!』
《あぁ、なるほど……。理解した。》
魔法通信の中で、彼のため息が聞こえてきた。
《とりあえずこっちに来い、目標の “飛竜王” 見つけたぞ。》
「っ!!流石ギースさん。分かりました、
すぐそっちに向かいますっ!」
―――ドゴンッ
地面を強く踏みしめ、大きく飛び上がった。
―――プツンッ
通信が途切れた。
「さてと……まずは雑魚共を蹴散らさないとだな。」
ブーツに触れると、どこからともなく
風が吹き抜ける。
「“アイテムボックスオープン”」
そして右手の魔法陣から、筒状の武器を取り出した。
自分の身長ほどのそれを、肩に担いで構え始める。
「そんじゃあ、いくぜっ!! “マギア・レイ” 」
―――シュインッ
瞬間、空へと無数に放たれた紫炎の光が、飛竜の群れを焼き尽くした。
飛び散る残骸、浮かぶ黒煙。
弾ける火花はまるで、満開の花火のようだった。
「よしっ、命中っと。これで大将もくたばってんなら話は早いんだが―――。」
やがて、煙の中から巨大な黒い一体と、
迫りくる飛竜達の姿が見えてきた。
「まぁ、そう上手くはいかねぇよな。」
続けて今度は、猛々しく燃える
蒼炎の剣を取り出した。
「火加減丁度良し、っと。そんじゃ、
バーベキューといこうか!!」
右後方へ振りかぶり、一気に地面を蹴り上げる。
「ギェッ?!」
空中で回転しつつ、目の前の飛竜を一閃する。
「まずは一匹ィィィィ!!」
踏みつけて飛び上がる。
「グギャッ?!」
続けて二匹目、今度はその両翼を刈り取った。
そして三匹、四匹、五匹……。
次々と減っていく飛竜達。
「おいおい、さっきまでの威勢はどうしたぁ?
俺はまだまだ物足りねえぞぉ!!」
「グルァァァァ!!」
大きく口を開け、急接近してくる。
「そうこなくっちゃな……って?
オイオイ、まさか―――」
剣の刀身から炎が消え、
黒光りのなまくらへと変貌した。
「このタイミングで魔力切れかよ……。
ったく、ツイてないぜ。」
飛竜の顔が目の前に迫る。
獰猛な牙で襲い掛かり、ギース絶体絶命。
―――かに思われた
「 “マギア・インパクト” !!」
「ゲェァッ?!」
強烈な破砕音と共に、飛竜が吹き飛ばされる。
荒々しい風圧と、魔法の余波だけがその場に残った。
「ハァ、ハァ……。間一髪、ですね!!」
ゴーグルを上げるとそこには、
赤髪の少年 “ジオ” がいた。
急ピッチで来たからか、額には汗が滲み、
肩で息を切っていた。
「……やるじゃねえか。流石は俺の相棒だ。」
アイテムボックスから水筒を取り出し、
彼に向かって放り投げる。
「……あ、ありがとうございます。」
そのまま一息に飲み切る。
「だが、遅刻は減点だな。罰として、
この後なんか奢れよな。」
「勘弁してくださいよ~。僕今、お金無い―――」
「グォォォォ!!」
前方から、地を這うような唸り声が聞こえてきた。
「って、話してる場合じゃなかった。あれが例の?」
「あぁ、 “飛竜王” だ。
あの大きさ、王都の倍以上はあるな。」
そこらの山々よりも、遥かに大きな巨体。
移動するだけで、周囲に甚大な被害が出るのは
目に見えている。
ましてや、他の飛竜を引き連れているとなると
尚更だ。
「碌な攻撃はまず入らない、
羽虫みてぇに潰されるのがオチだ。」
靴紐を結び直し、頭のゴーグルを下げた。
「だから、あれをやるしかねぇ。
俺らだけのとっておきをよぉ。」
拳を突き出す。
「準備はいいか、ジオ?」
「もちろんです!!
僕らの力、見せてやりましょう!!」
拳と拳が重なり合い、赤と青の光が混ざり合う。
互いの魔力の共鳴が、肌と空気を震撼させた。
「「来い!! “ゲオル・ギウス” !!」」
―――キュイーン!!
瞬く間に、二人を淡い光が包み込んだ。
周囲全体に広がった燐光が、
糸のように紡がれ形を成していく。
「グゥ?グラァァァァ!!」
異変に気付いた飛竜王が、
灼熱のブレスを吐き出した。
巨大な爆発が彼らを飲み込み、
一面を黒煙が覆っていく。
「グゥ……。」
疲弊したのか、ブレスを吐くのを一旦止め、
様子を伺う飛竜王。
《やいやいやい。名乗りの前に攻撃たぁ、
良い度胸してるじゃねぇか。》
声の先に、人型の魔道兵器が姿を現した。
体は禍々とした深い紫。
至る所で交差するように燃え盛る蒼炎に、
マグマのごとく赤い双眸。
体長約30m程あるそれが、一歩踏み出すごとに
大地を揺らした。
《そのクセェ口塞いで、よぉく聞きやがれ―――》
ゆっくりと右腕を持ち上げ、天を指す。
《漢のロマンを力に変えて、》
《脈打つ拳で明日を穿つ!》
《《二つの魂燃えるとき、
古代の魔道が目を覚ます!!》》
《《魔道合体、 “ゲオルギウス” !!》》
旋風が巻き起こった。
「グルルルル……。」
《覚悟しな、このトカゲ野郎!!》
右手を降ろし、左手で包み込むように握る。
―――ギギギッ、ゴキン!!
関節ユニットから鈍い音が轟き、
二色の火花がバチリと跳ねた。
「ウガララララァァ―――!!」
飛竜王は、即座にブレスを溜め始めた。
《ギースさん!!さっきよりデカいのが来ます!!》
《おうよっ!!ここらで一気に決めるぞ!!》
「ガァァァァ!!」
白色の炎が放たれる。
何十、何百、何千度。
計り知れない熱の光線が、二人目掛けて襲い来る。
周囲の水分は蒸発し、灰すら残らず絶命する
―――はずだった。
《効かねぇんだよぉぉぉぉ!!》
―――ギュルルルル!!
光の粒が右腕を中心に超高速回転し、
炎を巻き取っていった。
凄まじい速さで消失する爆炎。
「グルッ?!」
飛竜王から、明らかな動揺が見て取れた。
「グ、グラァァ!!」
皮膚をぴりつかせる、桁違いの魔力量。
得体の知れない脅威に、逃亡を図った飛竜王。
―――が、時既に遅し。
鋭利な螺旋の先端が、その後姿を捉えていた。
《行くぜジオ!!》
《ハイッ、ギースさん!!》
《《ひっさぁぁぁぁつ!!》》
赤い加速の魔法陣が、前方に幾重も展開されていく。
機体が宙に浮き、足元の瓦礫が舞い始めた。
《マギア―――》
湧き上がる魔力をジェットのように噴射。
次いで体が回転し、薄紫のドリルへと変貌した。
《オーキッド―――》
正面の円の中を猛スピードで駆け抜けていく。
残り約10メートル。
みるみるうちに、距離は縮まっていき―――
《《ストライクゥゥゥゥ!!》》
「ギィィィィッ?!」
彼らの一撃が、鱗だらけの土手っ腹に突き刺さる。
苦痛に顔を歪めた、飛竜王。
「ギ、ギギギ―――」
ドリルが硬い鱗を砕き、深々とめり込んでいく。
《《ハァァァァ!!》》
―――キィィィィン!!
鮮やかな赤と、断末魔の声が上空に飛び散る。
黒光の鱗が熱を帯びて緋色に変色する中、
とうとう内部の魔石にまで到達した。
《決めるぜっ、ゲオルギウスゥゥ!!》
亀裂が入り、ひび割れが広がっていく。
回転は加速し、いよいよ亜高速の域へ〜〜〜っ!
《《 “フル・バースト” だぁぁぁぁ!!》》
刹那、アメジストの魔石が粉々に砕け散った。
「グギャァァァァァァ!!」
突然、外部から耳をつんざくような叫びが聞こえた。
ほどなくして音は止む。
静寂と、魔力の光が彼らを包んだ。
《ギースさん、終わったみたいですね。》
《あぁ。つっても時間は、
かかりすぎちまったがな。》
そうこう話しているうちに、
今度は飛竜王の体が崩壊し始めた。
《こいつぁ上官に、どやされそうだ……って、
おい外見てみろよ。》
《えっ?うわ、めっちゃ星綺麗じゃないですか。》
コックピットから見えたのは、
夜闇に浮かぶ星々の数々だった。
《成功報酬でこの景色か。
……中々、悪くないんじゃねぇの。》
《同感ですね、さてと―――》
ジオは下の景色、もとい避難所で手を振る
人々を見た。
《彼らの元へ急ぎましょう。
やらなきゃいけないことが山積みですよ。》
《だな、もう一仕事していきますか。》
《はいっ!》
二人の声が、夜風に乗って広がった。
~~~ ~~~
こうして始まった “ジオとギースのドラゴン退治” は、
大成功の末に幕を閉じたのだった。
二人の冒険は、まだまだ続く。




