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 私がリアに魔法を教え終わってから四日がたった今日は定期試験当日である。リアはゲームと同じようにイケメン三人組とパーティーを組んで参加するようだ。

 私もゲームと同じように一人でサバイバルに挑むつもりだ。

 この先の展開を考慮して学校から試験会場に向かう私は分身体だ。この分身体は私の強さを反映しているのではなく現段階でライラ・ソルテットが持っていてもおかしくない程度の強さしか持っていない。

 本体の私は一度攻略したダンジョンの最下層で待機中である。

 試験会場であるカクロメル大森林の立ち入り禁止領域はそこまで遠いわけではなく馬車で四時間程度の距離にある。そのため始業時間とともにシトラル教育機関から幻覚の森に向けて移動を開始して現地についてから食料と簡易テントを配り生徒の装備点検を教員が済ませると区切りのいい時間になる。

「皆さん、現在時刻は午後一時三分です。皆さんはこれよりカクロメル大森林の立ち入り禁止領域に立ち入ってもらいます。立ち入り禁止領域までは教員が案内します。しかし教員は立ち入り禁止領域までは立ち入りません。また立ち入り禁止領域とそうでない場所には明確な境界線が引いてありますので境界線の外に出た時点でそのパーティーは失格となりますので、十分に気を付けるように。では、先導の先生お願いします」

「わかりました」

 ハーライト教員の説明を聞きながら私は森の中に入ってからのことを考える。

 ゲームと同じ展開になればいいのだけど今までのことを考えるとゲームの中と同じ展開になるというのは少し考えにくい。

 リアの現在位置は護衛用の分身がいるからわかるが、私が悪役令嬢となるためにはなんの準備もできずに幻覚の森の中に入り幻覚に惑わされている状態のリアが、準備をして来たおかげでテントを張ってゆったりしているライラ・ソルテットに出会わなければいけないのだ。

 正直に言って無理難題である。私の方で魔法を使ってリアを自分のもとに誘導すれば行けるがゲームの中と同じように偶然の邂逅というのは考えにくい。

 それでもできるだけ魔法を使ってリアのことを操らない様にしようと思う。

 リアを迎え入れる様に私が動いてタイミングになったら私の方に魔法を使って誘導する方が多分いい。確証なんてものはない。

 名前を知らない先導する教員が、立ち止まった。

「皆さん、これが境界線です。これを一度くぐれば一週間はこの線から外に出てはいけません」

 名前も知らない教員は、立ち入り禁止区域とそうでない場所の境界線を指さしながら説明する。

 境界線はハーライト教員が言っていたようにかなりわかりやすいものとなっていた。木と木の間が赤い布で結ばれていてそれがずっと続いている。

「さあ、入りなさい」

 名前も知らない教員が私たちの身長なら屈まなくてもいい位置まで赤い布を持ち上げる。

 私たちはその位置から続々と幻覚の森の中に入っていく。全員が森の中に入ったことを名も知らない教員は確認すると何も言わずに立ち去ってしまった。

 それに合わせて私たち生徒側もバラバラに行動し始め幻覚の森でのサバイバルが開始したのだった。

 試験が開始されてから私はしばらく進んで人が通り掛かりそうにない場所で持ち込んだ荷物を広げた。

 持ち込んだものはゲームの中でのライラ・ソルテットと同じものだ。持ち込んだ物の一つ目はコンパクトにまとめることのできるリクライニングチェア。二つ目は折り畳の机。三つめは一週間分の魔除けのお香。四つ目はなんとティーセットだ。

 その他にもいろいろと持ってきているがどう考えてもサバイバルに挑む人の持ち物ではなくアウトドアを楽しむ人用の持ち物だ。

 普通はこんなことをしていると幻覚の森にいるモフォバにも、モフォバ以外の魔物にも襲われてしまうのだが三つ目の持ち物である魔除けのお香がサバイバルをキャンプへと変貌させる。

 私が持ち込んだ魔除けの香は効力が強く持続時間もお香の効果範囲も広い。

 装備点検を行った際にこの魔除けのお香やティーセット等を見つけたハーライト教員は私がサバイバルをキャンプへと変貌させる気だということに気づいて頭を押さえていたが、禁止されていたものではないし事前に許可はとってあるので持ち込みを禁止することはできなかった。

 風の流れでお香の効果範囲は変わってしまうが少なくとも私の周辺に魔物が現れることはないだろう。

 念には念をと私は魔道具を使い椅子と机を広げた場所を中心に半径十メートルはある球体の結界魔法を展開し三十センチ以上の物体が結界を通過した場合、警報が鳴るようにした。

 魔道具を使った後、結界内に魔物がいないかを魔法で探ってみたが魔物はいなかったので奇襲を受けることはないだろう。

 一通りの準備が終わった私はリクライニングチェアに寝転びリアに着けた護衛用の分身に意識を集中することにした。

「ったく……なんでこんな場所で一週間もサバイバルしなきゃならないのか……」

 さっそく私の耳に飛び込んできた愚痴は脳みそまで筋肉で出来ていると言われかねないところまで来ている近衛騎士団団長の子息であるガルド・ネリトラルだ。

「文句を言うなとは言いませんが……同じ愚痴を聞かされるこちらの身にもなってください……」

 私も分身を通してもう十回ぐらいは同じセリフを聞いているので頭痛を抑えるかのように頭を押さえている近衛魔法団団長の子息であるエメル・ガラルの気持ちはよくわかる。

「リア……先ほどから落ち着かない様子だが……何か不安なのか?」

 なんの対策もとることもなく幻覚の森の中に入ってきてしまったというのに呑気なことを言うのは第一王子であるバトルト・オビラ・ランハレトだ。

「……試験に参加するパーティーの半数は教育機関から支給された食料やテント以外にも荷物を持っていましたが……私たちは何も持っていないのが少し不安で……特に、ライラ・ソルテット様はかなりの大荷物でした」

 リアはキャンプを楽しむつもりでいろんなものを持ち込んだ私のことを見ていたようだ。確かに、今回の定期試験で一番の大荷物だったのは私だ。しかし、何の問題も起きなければ一番快適に一週間を過ごすことが出来るのも、私だ。

「……気にしなくてもいい。試験に挑む生徒たちの半分近くは何も持っていなかっただろう? 必要以上の荷物を持ち込むのは実力に自信がない軟弱物ばかりだ。気にしなくていい」

 優しくリアに語り掛けるバトルトだが残念ながら荷物を持ち込んでいない半分近くのパーティーは今回の試験で幻覚に惑わされて地獄を見ることになる哀れで傲慢なパーティーだ。

「その通りだ。俺たちなら一週間のサバイバル程度、楽勝だ!」

 豪胆するガルドを見て苦笑を浮かべる他の面々だが、リア以外の二人はガルドの意見に概ね賛成らしい。確かにこの幻覚の森に出る魔物はモフォバを含めてシトラル教育機関の生徒なら難なく討伐できる強さの魔物ばかりなので、幻覚の森でサバイバルを行うこと自体の難易度は高くない。しかしモフォバとの交戦が禁止されたことでこの試験の難易度は跳ね上がる。

 モフォバは好戦的ではないが数が多く、戦闘となる可能性が一番高い。

 これを何とか避けなければならないのだ。一定の場所に留まり続けることができないことの方が多く、最悪の場合一週間ずっと移動する羽目になる。

「お、来たぞ。魔物だ」

「お前の大声のせいで呼び寄せたんじゃないか?」

 呑気な会話をしながら視界に入った魔物との戦闘準備に移っているようだが残念ながらその魔物は戦闘行為自体が禁止されているモフォバと言う名前の魔物だ。

 モフォバは一メートル以上の大きさになった蝶のような見た目をしている。蝶と体の構造はそこまで変わらないが羽を羽ばたかせることで風の刃を飛ばすことが出来るし発達したストローのような口は人間の柔肌を突き破り吸血することが出来る。

 この幻覚の森にいる蝶型の魔物はモフォバだけなので見間違えることなどない。

 このモフォバが単独行動をしているお陰かまだリア達に気づいていないようだ。

 そのため気づかれない様に距離をとるべきなのだが何の対策もしていないイケメン三人組と対策する時間が与えられなかったリアはモフォバの外見を知らないため、戦う以外の選択肢を持ち合わせていない。

「行くぞ!」

 バトルトの掛け声で魔物相手に突撃するのは、イケメン三人組である。はっきりと言おう。頭がおかしい。これこそが主人公に対して盾を構え敵に対しては背を向けるような状態になる原因である。

 ガルドとバトルトの二人が魔物に対して突撃しに行くのはまだわからなくはないが魔法使いで接近戦闘が苦手なエメルがガルドと同じぐらいに魔物に接近するのはどう考えてもおかしい。

 また、ガルドとバトルトの二人が突撃しに行くのはわからなくはないがやはり不要な行為であることに違いはない。

 なぜこのような行動をとるのか? このイケメン三人組は戦闘時、リアに格好いい自分の姿を見せることに必死だからだ。

 今はまだリアが光属性の魔法を使えないため戦闘はイケメン三人組に任せることしかできないのだが魔法が使えるようになれば属性的な観点からリアが光属性の攻撃魔法を使用して敵に攻撃するのが最適解だ。

 しかしイケメン三人組はリアが光属性魔法を使えるようになっても今と同じで格好つけることしか考えない戦闘を行う。

 そのため接近戦闘が苦手だと自覚しているリアが少し離れたところから魔法で攻撃しようとしてもリアと魔物の間に必ずイケメン三人組の誰かが入り込んでしまう。

 また、魔法を使えるようになってもイケメン三人組の中でリアは守護する対象であり続けるためイケメン三人組が意図的にリアを背に庇う様な動きをすることがある。ハッキリ言って、害悪である。

 だがこれはあくまでもゲームの中で私が体験したことだ。

 もしかしたらこの世界では違っているかもしれない。

 ゲームではフレンドリーファイアが出来なかったしイケメン三人組に攻撃が当たってしまう可能性がある場合、魔法が使えず常にイライラしていたのを覚えている。

 ゲームの終盤に差し掛かるにつれて私はこのイケメン三人組が戦闘不能になるまで敵に対して一切の攻撃をせずに自分の身を守るという選択肢を取り続けるぐらいに戦闘の邪魔だった。

「よぉし……討伐完了だ」

 戦闘行為もそうだが討伐するなんてあってはならないモフォバを倒したことを自信満々に報告するガルド。今回の戦闘で一番活躍したのはガルドだったようで他二人は不満が顔に出ている。

 イケメン三人組がリアに格好をつけようとしている理由? そんなもの決まっている。綺麗になったリアの外見に惚れ込んだからだ。

 このイケメン三人組には光属性の魔法使いであるリアを気に掛けるように言われていてもおかしくはないのだが、どうなのだろうか? 気にするだけ無駄か。

「やはり、この辺りの魔物には苦戦しないな」

 不満げな顔をしながらもここら一帯に生息する魔物の強さは脅威にはならないとバトルトは確信したようだ。

「そうですね。僕たちならこの一週間を誰よりも余裕をもって過ごすことが出来るでしょう」

 エメルも、やはり自身満々だ。しかし残念ながら一番余裕をもって過ごすことが出来るのはなんの事件にも巻き込まれなかった場合のライラ・ソルテットだ。

 少なくともゲームではたくさん持ってきた魔導書を読みながら紅茶を飲んだり意味もなく昼寝してみたり幻覚の森を形成するモフォバの幻覚作用のある鱗粉を魔法で無効化することが出来ないか試行錯誤できる余裕があるのは今回の試験ではライラ・ソルテットだけだった。

「……お三方が仰る通りかもしれませんが戦闘を禁止されているモフォバという名の魔物とは、どのような魔物なのでしょう……」

「そんなの、決まってるだろ。普通の奴らじゃ手も足も出ないような強敵だ」

「僕もガルドの意見に賛成だ。教員が戦いを避け戦闘が避けられない場合は信号魔法魔法を使えと言う理由はそれぐらいしか思いつかない」

「ですが、何の問題もありません。僕たちは一般的な生徒ではありません。モフォバという魔物がどれほど強力であったとしても討伐することは容易でしょう」

 リアはモフォバという魔物について知らないのは危険ではないのかと遠回しに伝えようとしたもののイケメン三人組はそれを気に掛けない。

 戦いを避けなければならない魔物=強い魔物という短絡的な考え方には呆れさせられる。

「こんなこと言ってるうちに、さっきと同じ魔物が来たぞ」

「ふっ……僕の魔法であの脆い体を打ち砕いてやります」

 イケメン三人組はリアを守ることを考えずリアに格好をつけることだけを考えて魔物との戦闘を開始する。

 今回の魔物もモフォバなのだが先ほどとは違い今回のモフォバは三体もいる。イケメン三人組改め阿呆三人は三対三ではなく一対一を三人分行うのだろう。

 しかし実際には三対一と三対一と三対一だ。モフォバは連携して襲い掛かってくるが阿呆三人は連携のレの文字もない状態で魔物の各個撃破を目指している。

 モフォバは羽を羽ばたかせることで風の刃を飛ばすことが出来る、つまりは遠距離攻撃が可能なのだ。再度、いや何度だって言いたくなるが阿保三人はリアの身の安全を一切気にしていない。結果として、こういうことが起きる。

「っぐ……」

 阿保三人の内ガルドがモフォバの攻撃を避けたせいでモフォバが放った風の刃がリアの二の腕を深く切り取った。

「リア! こっんの虫風情が!」

 リアの押し殺した悲鳴を聞いてリアが怪我したことを知ったガルドが怒りを露わにして、自身の獲物でる大剣をモフォバに向けて振り下ろす。

 モフォバは見事に真っ二つに切り裂かれ、その体液がガルドの大剣に降りかかる。

「リア! 大丈夫か!」

 怪我の原因であるガルドが阿保三人の中で一番早く魔物を倒したようで真っ先にリアのもとに駆け寄る。エメルとバトルトはガルドに少し遅れはしたものの大差なく魔物を討伐しリアのもとに駆け寄る。

「まずは止血を……!」

 阿保三人の中で唯一水属性魔法が使えないガルドは肩回りをひも状の物で縛ろうとするがガルドに少し遅れてリアのもとに駆け付けたバトルトはガルドを押しのけ水属性の治癒魔法を使おうとする。

「邪魔すんなバトルト! 怪我はかなり深い! 膿む可能性だってあるんだぞ!」

「だからこそ魔法を使おうとしているんだガルド! 治りの遅いポーションなどより俺の治癒魔法の方が優れている!」

「ふ、二人とも、落ち着いて……」

「二人して何をしているんですか! ああもう、二人とも邪魔です! 僕が治します!」

「「邪魔をするな!」」

「邪魔!? この中で一番魔法に精通しているのは僕です!」

「治癒魔法の練度は俺の方が上だ!」

「俺はこういう怪我の正しい対処法を知ってる! お前らみたいな何も知らないような奴は出しゃばってくるんじゃねえ!」

「何も知らないのはお前だ脳筋! 引っ込んでいろ! そもそもお前が大声で魔物を引き付けたのが原因だろ!」

「馬鹿言うんじゃねえ! お前らが魔物を倒すのが遅かったのが行けねぇんだろうが!!」

「ああもう二人とも黙ってください、魔法に集中できません!!」

「魔法!? てめぇ何するつもりだ!!」

「貴様、リアが光属性魔法を使えることに嫉妬してリアに危害を加えようというのか!!」

「気でも狂いましたか!! リアを攻撃するなど!!」

「リアに刃を向ける奴は何人たりとも俺が許さん!!」

「リアは僕が守る!! 誰が相手でも!!」

「リアは俺のものだ!! それがどういうことかわかっているのか!!」

 これが、幻覚の森の恐ろしさである。

 リア達は幻覚の森に入って一時間程度しかたっていないにも関わらずこの森の中に舞う幻覚作用のある鱗粉は阿保三人に幻覚を見せている。

 阿保三人には一体何が見えているのだろうか? 私の知る由ではないが訳が分からず不安そうにするリアが可哀そうだ。

 これはポーションを持ち込まなかった生徒全員に訪れている。薬と言えばのソルテット家の令嬢であっても現時点では対処することのできないモフォバの鱗粉による幻覚を同世代の生徒たちが対処できるはずもなくポーションを持ち込まなかった生徒たちはこの定期試験が行われる一週間の間、木の葉が擦れる音でさえ自分の命を狙う攻撃の前兆と捉えるだろう。

 一週間の間、常に命を狙われるとなると当然まともに睡眠をとることも休息をとることもできないだろう。

 まさに地獄。

 そんな状態の生徒が区別をつけることが出来ずにモフォバを倒してしまうことはあるだろう。それでもこの幻覚の森の中で試験を行うのは調子に乗っている生徒たちを地に落とすために効果的な内容の試験であること以外にモフォバの移動先はランハレト国ではないと推測されているほか、生徒たちが頑張ろうとも幻覚の森に生息するモフォバの数が半数も減少することはないからだ。

「みんな落ち着いて! ケンカしないで!」

 この大声はリアの物である。リアは幻覚を見ていないようだ。

 初期症状の範疇であれば大声等の外からの衝撃でも幻覚から覚めることがある。阿保三人にはまだ重度の症状は表れておらずリアの大声で阿保三人はびくっと体を震わせてをキョロキョロと周辺を見渡す。

「私なら大丈夫です。ですからケンカしないで、冷静になってください……」

 リアの切実で縋るような声は阿保三人が自分たちの行動を恥じるに十分な声色だった。

「す、すまない……熱くなってしまった」

「俺もだ……」

「僕もです。すみませんでした」

 それぞれが、反省して謝罪の言葉を口にする。阿保三人はリアに格好悪いところを見せてしまって居心地が悪いのだろう。今すぐこいつらを殺してやりたい気持ちになる。

「っ! また魔物です!」

 リアが指さす先には確かに魔物がいるがその魔物はモフォバではない。

 狐のような見た目をしているが石の質感をもつ体毛を全身にまとうセキキツと呼ばれる魔物だ。数は五匹。この魔物は雑食であるためモフォバの死体を食しに来たのだと思われる。それか単に阿保三人の大声に惹かれてきたのか。

「あれぐらいの雑魚、さっさと倒すぞ」

「ああ」

「もちろんだ」

 先ほどの失態を挽回しようとやる気を出す阿保三人はセキキツに向かっていった。セキキツの体毛は質感に見合った硬度をしていて通常の手段ではまず間違いなく斬ることはできないためセキキツは魔法で倒すのが一般的な方法だ。

 阿保三人は三人ともそれなりにハイスペックだがガルドは四大属性の内、火属性魔法しか使えず魔法が苦手なため今回の戦闘では他二人と比べると苦戦を強いられるだろう。

 その代わりガルドは近距離戦闘が三人の中で一番得意で、他二人の追随を許さないぐらいだ。

 反対にエメルは近距離戦闘が苦手な代わり魔法の扱いが上手くエメルは四大属性のすべてを操ることが出来る。

 そしてバトルトはガルドとエメルの中間で近距離での戦闘も問題なく行えるし魔法の扱いもうまく四大属性のなかで水、地、風の三属性の魔法を扱うことが出来る。

 スペックの高いこの阿保三人にとってセキキツ五体はなんの問題もないだろう。

 現に阿保三人からは苦戦している雰囲気が感じられない。魔法が苦手だと言っても使えないわけではないガルドも火属性魔法を用いてセキキツを相手取る。

 その間リアは治癒されることなく治癒のポーションを準備する時間すら与えられなかったため自主的に治癒することもできないせいで二の腕にできた裂傷をどうすることもできなかった。

 リアは自分の二の腕を襲う痛みを無視して止まる様子のない出血を抑えるために強く傷口付近を握りしめることしかできない。

 セキキツも遠距離攻撃ができないわけではないというのに先ほどと同じようにリアに格好つけることしか考えておらず守るという発想が生まれない阿保三人は、苦痛に歪むリアの表情に気づくことはなった。

 阿保三人がリアの傷に気が付いたのはセキキツとの戦闘が終わったことをリアに報告しようとした時だった。


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