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授業に復帰したリアが教室に入っていった時の反応はいろいろだった。
一番多かったのは教室に入ってきたのがリアだと気付くことが出来ずリアが私に話しかけてきて私がリアの名前を呼んで初めてリアがリアだと気付きその美貌に驚愕するという反応だった。
何人かは綺麗にかつ可愛くなったリアがリアだと一目で見抜いたみたいだがその何人かはリアのことを見てもそこまで驚いていなかった。
恐らく私がリアと最初に出会った時に私が最低限の身だしなみを整えた時のリアに出会っていたのだろう。
そして、今のリアは今後に大きく関わってくる人物と関係を持つために必要な条件を満たしている。
「リア・シュメラさん。少し、時間をもらってもいいかな?」
優しい微笑みをその顔に浮かべながらリアに話しかけたのはこの国の第一王子であるバトルト・オビラ・ランハレトだ。その後ろに居るのは近衛騎士団団長の子息であるガルド・ネリトラルでその隣にいるのは近衛魔法団団長の子息であるエメル・ガラルである。
この三人はとても容姿が整っていてイケメンと言って相違ない。だがこの三人はゲームの中のストーリーが進行すればするほど戦闘する際の障害物としてしか機能しなくなっていった。
加えてそれはヒロイン側の障害物として機能するだけで敵にとっての障害物にはなりえなかったのだ。
これは戦闘が起きた時にこのバトルト、ガルド、エメルのイケメン三人組はヒロインに対して盾を構え敵に対しては背を向けている状態だと言える。
ヒロインが攻撃しようとしても攻撃を行うチャンスを悉く防ぎ妨害するにも関わらず敵から放たれた攻撃を防ぐことはなく回避する。
その後、イケメン三人組の体に隠れていた敵の攻撃をヒロインが受けることになるのでゲームでは前に出て戦っているイケメン三人組よりも先にヒロインが瀕死の状態に追い込まれることの方が多かった。
このイケメン三人組のスペックがもう少し低かったら肉壁として機能したにも関わらずイケメン三人組は中途半端にスペックが高いせいで肉壁として十分に機能しないというのもイケメン三人組が障害物としかならない理由だ。
それとは別に第一王子であるバトルトは言わずもがなだがガルドもエメルも公爵の地位を持つ貴族の子息だ。
地位の高いこの三人に絡まれるリアに自分から話しかけようとする人はいないしリアから話しかけたとしても誰もリアとまともに口をきいてくれない。
地位が高すぎるがゆえに面倒ごとに巻き込まれることを危惧しているのもあるが本当の原因はイケメン三人組が問題児でありリアに対する独占欲のようなものを隠そうとしないからだ。
リアに頑張って話しかけようとする男子生徒を漏れなく恐喝したりするのだから男子はだれもリアに話しかけなくなるし女子生徒は女子生徒で地位は高いイケメン三人組に懇意にされるリアに対する嫉妬心からリアのことを徹底的に無視するなんてこともあれば恐喝される男子生徒のことを見てイケメン三人組が問題児であることを再認識し問題児と一緒にいるリアに話しかけなくなることもある。
そのせいでリアがまともに会話できるのはイケメン三人組とライラ・ソルテットだけになってしまう。
ライラ・ソルテット、つまり私がリアと会話するのは残念ながら私が悪役令嬢だからであるためリアに友達と呼べるような人物はゲーム内でも存在していなかった。
また問題児であるイケメン三人組は綺麗になったリアに声を掛けたその日から定期試験の対策も忘れてリアとの仲を深めることに専念している。
そのせいで何もできていないリアには不安が募っていった。
そんなリアを護衛用の分身を介して知る私は定期試験に向けての準備を着々と進めている。
今の私ならモフォバが放つ毒物など効くはずもないし幻覚の森についても知っている。
そのため幻覚の森について教員に聞く必要などない。
だが、ライラ・ソルテットはハーライト教員に立ち入り禁止領域に指定される幻覚の森についてのこと、もしくはモフォバに対する攻撃が禁止されている訳を聞き出さなければいけない。
これらの情報は秘匿されているから、と言うのもあるが、それだけじゃない。
シトラル教育機関は一週間分の幻覚作用の有る鱗粉を無効化するポーションを準備しているがそれを受け取るためには試験会場について教員に聞く必要があるからだ。
私には幻覚作用の有る鱗粉を無効化するポーションは必要ないがライラ・ソルテットとしてはこれが必要なのだから。
私はハーライト教員の元に向かい試験会場について聞き、ポーションを受け取りながらも定期試験に向けた準備を着々と進める。
反対にイケメン三人組がずっと絡んできてそれを振りほどくことが出来ない優しいリアは試験会場が幻覚の森と呼ばれていることすら知らないままに時間が過ぎていく。
光属性の魔法の中には回復魔法がありそれを使えればモフォバの鱗粉など簡単に無効化できるのだが残念なことにリアはまだ光属性の魔法を使えていない。
これは私がリアに魔法を教えるときに手を抜いたのではなくライラ・ソルテットには光属性の魔法を使えないからだ。
すべての魔法は無属性魔法からの派生に過ぎないが極大属性である光と闇は四大属性とは毛色が違いひどく扱いにくいのだ。
私が教えれば確かに今のリアも光属性の魔法を使えるようになっていだろうけどライラ・ソルテットが扱えるのは火属性と水属性と無属性の魔法のみだ。
光属性の魔法が使えないライラ・ソルテットが光属性魔法を扱う方法を知っているというのは不自然なため、リアには教えられなかった。
加えて極大属性の魔法はその希少性から極大属性用の魔法陣と言うのが存在していない。
そのためリアが光属性の魔法を使う為には自力で光属性の魔法を扱う方法を知らなければならない。
当然ながらそれは容易ではなく試験開始までにリアが回復魔法を使えるようになるとは考えにくい。またゲームでも試験開始までにリアが回復魔法を使えるようになることは無かった。
だがこれらの要因が重なることで私が悪役令嬢となる未来が到来する。
リアが試験開始前に回復魔法を使えるようになっていたらライラ・ソルテットが悪役令嬢になることも無かっただろう。これはリア達が定期試験に向けてしっかりと準備できていた場合も同じだ。
でも、そうはならなかった……少し、残念ではある。
今回の定期試験を機に私は悪役令嬢となり今までのようにリアと接することはできないしリアが私に笑顔を向けることもなくなる。
苦痛に染まるリアの顔が見たくないわけではないがやっぱりリアには笑顔でいてほしいと思ってしまうのだ。




