表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

苦手を克服するとは?

作者: あかいの
掲載日:2025/11/12

 友達と飲んでいる時、過去に克服した苦手について発表する流れになった。私は昔タラコが苦手だった話をした。子供の頃の僕はあのツブツブしたものが口の中でまとまりつく感じが苦手だった。それが後々、タラコスパゲッティーであればなぜか食べられることに気づき、だんだんとタラコそのものも食べられるようになった。今ではタラコは大好きで、サイゼリヤで一番頻繁に頼むのはタラコソースシシリー風だ、みたいな話をした。

 まあ、私の話はともかく、私のつまらない話はともかく、友達の方はなかなか興味深い話をしていたのでここに共有する。


 彼女の職場には厄介なおじさんがいたそうだ。肩や頭に手を置くことを未だにセクハラと認識していないような人で、友達もそのおじさんの被害者だった。厄介だったのは、そのおじさんは類稀なる仕できであり、上司共々注意することが難しく、あったとしても軽い注意のみで終わることが殆どだった。


「正直、死ねよって思ってたね」

 彼女はそう言った。


 そんな時、別部署との会議でヒステリックなおばさんに目をつけられたようだ。そのおばさんは彼女ちょっとしたミスを執拗に指摘しては、対象が泣き出すまでネチネチすることで有名だった。


 彼女はそれ以前にもそのおばさんに嫌がらせを受けていたが、決して泣かなかった為、逆にしつこく絡まれていた。


 その日も、会議におばさんが出席していた。いつもと違ったのは、おじさんの方も出席していたことだ。

 彼女はその日もおばさんにネチネチされた。しかし、その彼女をおじさんは庇ったのだ。庇ったおじさんの主張は理路整然としていて、セクハラを言い訳する時とはうって変わったいた。逆におばさんはすぐさまヒステリックになり、議論は当然のように水かけ論にしかならなかったが、明らからにおばさんの方に非がある形で終わった。

 その時、敵にしか見えなかったおじさんが、急に頼もしく見えた。その時からおじさんに対する苦手意識はなくなったという。


「それじゃあ、今ではそのおじさんのことを悪くないって思ってるんだ」

 と私は訊ねた。

「いや、全然。未だに嫌いではあるよ」

 と友達は言った。

「どういうこと?それって克服したって言えるの?」

 と私が再び訊ねると、彼女は少し考え、それから何かを察したかのように

「嫌いなままだけど、苦手ではなくなった」

 と言った。私は、溜飲下がりきらない感じが少し気持ち悪かったが、どこか腑に落ちた部分も確かにあった。


 友達と解散した後、私は一人で考えた。苦手を克服することとは、苦手が好きになること、私はどこかそんな風に思い込んでいた。そんな子供っぽい発想でいた。だけど友達は違った。彼女は嫌いなものを嫌いなまま受け入れ、その上で苦手を克服していた。


 私は回転寿司に行きトビッコを注文した。トビッコは昔から苦手で未だに苦手な食べ物だ。味も苦手なのだが、イクラに擬態して口の中に入ってこようとするあの捻くれた感じが気に食わなかった。

 注文してから1分を経たないうちにトビッコは運ばれてきた。私は普段より多めに醤油を書け、多少の逡巡の後口に運んだ。それから4回ぐらい適当に噛み、普段よりより強い力で飲み込み、事前に用意していた緑茶で口をすすいだ。

 うん、まずい。

 やっぱりまだ嫌いだ。

 でも、食べられないほどじゃない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ