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風が橋になる村

作者: ごはん

かつて地球の深く、溶岩の熱とともに生きるドラゴンの一族がいた。彼らは「土の記憶を継ぐ者」として、静かな地下で互いに言葉を交わし、外界と関わることなく暮らしていた。


ある日、地上の村「ノアリス」で暮らす少年ミナトは、村で暮らす宇宙人の少女リリアと一緒に、地熱の通気孔の調査へ出かける。

だが予期せぬ崩落で、ふたりは地下空洞へと落ちてしまう。


そこには、燃えるような瞳をした若きドラゴンラヴェンがいた。

驚いた彼は、ふたりに言った。

「地上の者が、ここへ来たのは久しい。なぜ、土を破ってここまで?」


ミナトは正直に答える。

「僕たちは、地上でいろんな種族と一緒に暮らしてる。風のように、境界を越えて出会えることがあるんだ。」


ラヴェンは言葉を失う。ドラゴンの間では「風」は不安定で掴めないものとして敬遠されてきた。けれど、目の前のミナトは、恐れず、拒まず、誰とでも心を交わそうとしていた。


リリアが、ミナトに目を向けて微笑む。

「この人、どんな相手でも怖がらないんだ。風みたいに吹いて、いつのまにか心をほぐしていく。」


ラヴェンはふたりに導かれ、初めて地上へ出る。

地上の空気はまぶしく、空は遠かった。

だが、そこにはさまざまな命が混ざり合い、助け合って生きる風景が広がっていた。


風は、境界を越えて吹く。

土と星のあいだを、熱と冷気のあいだを。

誰かと誰かを、そっとつなぐように。


ドラゴンたちは、ミナトの生き方に触れ、少しずつ地上との交流を始めた。

風が橋になったのだ。


やがて、ノアリスの村は、土に生きるドラゴン、星から来た宇宙人、風のように生きる人間が共に暮らす場所となった。

それぞれが異なる存在でありながら、互いの心に風を通わせ合う村。


人々はそこをこう呼んだ。

――「Windbridge Village」と。


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