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神聖国兵士アルベルトの回想

 突如、王都内市街地に複数の転移陣が浮かび、間もなく魔族•魔獣が出現。その数、およそ700。時間を置いて、計測不能な数の魔族らが転移してきたことで、王都民はパニックとなった。

 魔獣に知能はなく、飼い主以外を見境なく攻撃することは知られているが、高い知能を待ち、我が国と同盟関係にある魔族が強い憎しみををまといながら都民に襲いかかったのは理解が及ばなかった。

「おのれ、裏切り者の人間どもを滅ぼせ!」

「血の報復を!」

「下等生物は、我らか人間か、思い知らせてやれ!」

 一般的に魔族•魔獣の膂力や魔力は、人間より優れていると言われる。それが無数の集団で、明確な敵意を持って暴徒化しているのだ。王都崩壊の危機と捉え、全兵士に緊急召集がかかるのも無理からぬことである。

 しかし、アルベルトの属する大隊が都市部に到着した際、そこには予想外の光景が広がっていた。

「弱い、弱すぎる――!」

 魔族らは、都民ら民間人に制圧されていた。ある魔族は、子どもに小石を投げられ、数メートル吹き飛んだ。S級と呼ばれる魔獣リッチは、箒を振り下ろした婦人に頭蓋を粉砕された。「四天王を舐めるな!」と叫んだ男は、野良犬に噛まれ振り回されていた。

 アルベルトの部隊にも多数の敵が突進してきたが、盾で押し返すだけで骨折し、槍で軽くつけば断末魔を上げて生き絶えた。結果的に数の暴力を制圧するのに、4刻ほどしか要しなかった。

 そして、この事件は、王都民に一つの認識を植え付けた。魔族は弱い、我が国は強いと――。

 それが誤った認識であることを知るのは、仕掛人である一人の公務員のみである。

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