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魔王領制圧

――魔王城付近に転移成功しました。

 一面何もない草原に雄樹はいた。アニメなどで見る魔王の国は、大体空が曇り、雷鳴がとどろき、草木は痩せ細った描写がされるが、目の前には、以前に彼が旅をしたヨーロッパを思わせるような風光明媚な風景が広がっていた。日本の5月くらいの温かな気温に乾いた風が心地良い。

 辺りを見まわすと、後方300mほどのところに城が見えた。

「さて、魔王城内の課税対象者を出してくれ」

――こちらになります。魔族4202名、魔獣165匹、その他284名です。

「待て。その他とは何だ?」

――多種族の奴隷になります。

「それは、盲点だったな……」

 領内から全ての魔族たちを消し去るつもりだったが、奴隷や他国の一時滞在者なども含まれているはずだ。

「リストから、その他の者を除外してくれ」

――除外しました。

「そしたら、いまいる課税対象者に一括課税、徴収」

 魔王城内から光の筋が飛び出し、雄樹の身体に降りてくる。いまおれは、どれくらい強くなっているのだろう、と逆に心配になってくる。

「では、魔王の面前に転移」

 クワガドーエの王の間のような場所を想像していたが、転移先は20畳ほどの小部屋だった。中央の金細工を施した長机に5名の魔族が座り、話をしていたようだ。

「やあ、ぼくはクワガドーエ神聖国の勇者。わるいにんげんじゃないよ」

 雄樹は片手を上げ、さわやかに挨拶をした。

「な、人間!? 城議の最中に不敬ぞ!」

 雄樹の一番側に座していた長髪に黒いローブの魔族が、立ち上がった。

「今日はお話があって来ました。魔王さんは、どなたですか?」

「我だ、人間」誕生日席に座した赤髪の少女が言った。「どういうカラクリでこの場に現れたのかは知らんが、貴様の度胸に免じて、塵にする前に用件を聞いてやる」

「ロリババアの魔王って、ほんとにいるんすね……? いや失礼、本日の用件は、あなた方が我々の国民にちょっかいをかけてくるので、それをやめていただきたく参りました」

「ちょっかいだと?」

「はい。うちの国の国境付近に住む民を魔物の狩餌としてますよね」

「いまさら、異なことを。あれは貴様の国の王も納得していることではないか」

「勇者のおれが納得できないんです。だから、薄汚い魔族は我が国で奴隷として飼ってあげることにしました」

「……言いたいことは、それだけか?」魔王は、こめかみに青筋を浮かせた。「永久に地獄を彷徨うが良い。暗い日曜日(ディスペア)

 魔王は掌を雄樹に向け詠唱したが、当然何も起こらない。

「ぶははは! 何すか、厨二病ですか!」

「な……! 神滅百物語(フォーリングダウン)!」

 雄樹は腹を抱えて笑った。取り巻きらしき幹部も、負けず劣らずダサい呪文を唱え出したが、大の魔族がただ恥ずかしい文言を繰り返す痛々しいシーンに過ぎなかった。

 雄樹は、涙を拭きながら、感情を落ち着かせた。

「いやあ、どうですか、奪われる者の気持ちは。対抗できる力を持たないことは恐ろしいでしょう。それは、我が国の民が皆感じていたことなんですよ」

 牛頭の巨人が殴りかかってきたので、裏拳を放つと、それは血の帯になって床にプリントされた。

「王都では、せいぜいコキ使ってあげますから、しっかり働いてください。転移。クワガドーエ王都へ」

 魔王を含む4名の魔族は消失した。

「さて、コールセンター。固有ジョブにまつわるスキルを購入したい」

――ウィンドウ上部のタブから“ショップ“を選び、購入してください。

 雄樹は言われたとおりに操作し、あらかじめ目をつけていたスキル“広報“を購入した。

「スキル“広報“。範囲を魔王領内の魔族、形態は映像に指定」

 スキル発動と同時に、魔王領内の全ての魔族の前にウィンドウが出現した。映っているのは、雄樹である。


「ぼくは、クワガドーエ神聖国の勇者。今日は貴様ら魔族に通告があり、この放送を行っている。」


「クワガドーエ神聖国は、これまで政治的•地理的な利害関係から貴様ら下等な魔族と同盟を結んできたが、いまこの放送を以て、これを破棄する。」


「魔王領の領土は我が国のものとし、貴様ら邪悪な種族は、奴隷として我が国の反映の礎となってもらう。抗うことは無益であるから、貴様らは我ら人間に恭順せよ」

 放送を終了する。いまの映像で、魔族のクワガドーエに対する憎しみは、否が応でも高まっただろう。

「さて、コールセンター。さっきの同じように”その他”の生物を除き、魔王領の課税対象者を一括表示してくれ」

――表示しました。魔族670084名、魔獣162805匹です。

「パラメーター、ジョブ、スキルに一括課税、徴収」

 天井を埋め尽くすほどの光の束が、数分にわたって雄樹に降り注いだ。

「ステータスオープン」


氏名 :ユウキ=オサダ

種族 :ヒューマン

年齢 :29歳

性別 :男

レベル:0000

攻撃力:0000

防御力:0000

体力 :0000

魔力 :0000

運  :0000

スキル:対象数が多すぎて表示できません。

ジョブ:公務員ほか18725件


「おい、どうなってるんだ。スキルとジョブは良いとして、パラメーターが0になってるぞ」

――正確には、0000です。0とは異なります。

「どういう意味だ?」

――パラメーターがカンストしました。これほど多くの数値を得る者をシステムは想定していません。よって、数値は上限値に達し、今後、増減は生じなくなりました。

「要は、♾️ってことか?」

――お見込みのとおりです。

 やばい。優れたスキルとは思っていたが、ここまでとは思わなかった。これでは、どこぞの趣味でヒーローをやっている者や転生したスライムでさえ、瞬殺してしまうかもしれない………。

「ポイント変換した場合、どうなる?」

――ポイントも無限にとなります。

「よし、頼む」

 変換したポイントで、固有ジョブのスキルを全て購入した。還付、委託、複製、行政代執行の4つである。

「コールセンター。転移も対象者の指定は可能か?」

――可能です。

「“その他“を除き、領内の魔族、魔獣を指定してくれ」

――指定完了

「転移!」

 これにより、能力を奪われた魔族•魔獣が一瞬にして王都に送り込まれた。




 


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