魔王領入り
演説後、雄樹はすぐに魔王領へ向けて立つことにした。エビハラやカスミは、他の住民の帯同も提案してきたが、今回数の力は必要ないし、あまり時間をかけるつもりもなかったので断った。
初めは国境まで歩こうと考えていたが、思ったより距離があることがわかったので、追加でスキルを徴収し、楽をすることにした。
「コールセンター。課税対象者のリストから、王城内にいたアルを検索してくれ」
――検索。ヒットしました。
氏名 :アル
種族 :ヒューマン
年齢 :34歳
性別 :女
レベル:65
攻撃力:33
防御力:62
体力 :42
魔力 :567
運 :91
スキル:火球LV6、水壁LV4、風刃LV5、雷撃LV6、重力波LV7、転移LV6、収納LV5
ジョブ:上級魔導士
「スキル”転移”に課税、徴収」
雄樹の身体に光が舞い込む。
――スキル”転移 LV6”の徴収に成功しました。
「魔王領の魔族・魔獣を一斉転移させるとして、レベルはいくつ必要だ?」
――レベル8を推奨します。
「では、そこまで上げてくれ」
――承知しました。ポイント変換。必要なポイントを消費して、レベルアップをします。完了。
「じゃあ、遅くとも一週間以内には帰る」エビハラ、カスミ、見送りに来た住民たちに雄樹は手を上げた。「転移。魔王領との国境地点へ」
足元に赤い魔法陣が展開し、雄樹の身体は消失した。
無事成功したようだ。雄樹の前には、無機質な石壁が広がっていた。
「コールセンター。位置を教えろ」
――関所、魔王領側です。
クワガドーエ側に転移するつもりだったが、失敗した。転移の際は、もう少し詳細な位置指定が必要なようだ。おかげで――。
「貴様、人間か! どうやって侵入した!」
周囲を武装した兵士数名に取り囲まれていた。魔族を見たのは初めてだが、ややとがった耳、土気色の肌色から、おそらく魔族だろうと想像がついた。
「関所内の生物を一括で財産調査」目の前に赤ウィンドウが開き、一覧が映る。「レベルからジョブまでに一括課税、徴収!」
目の前の兵士はもちらん、関所内の至るところから無数の光が雄樹の身体に注ぐ。念のため、もう一度課税対象者のリストを確認すると、パラメーターはいずれも0、スキルとジョブも表示されていなかった。
魔族の兵士5名が同時に切りかかってきたが、大振りな剣や鋭利な槍が雄樹の肌に触れた途端、いずれも粉々に砕け散った。兵士は目を見開き、状況が理解できないまま立ち止まる。
「関所内の生物を一括転移。クワガドーエ王都へ!」
複数の陣が展開した後、関所内に静寂が訪れた。
「よし、上手くいったようだな」身体についた刃物片を雄樹は払った。「いまので、どれくらいの数から徴収した?」
――628名と42匹です。
「上々だな。次は魔王城に向かう。さっきみたいにピンチにならないよう、比較的安全な位置情報を教えてくれ」
――承知しました。
コールセンターの提供してくれた緯度と経度を繰り返し、雄樹は魔王城へ向けて転移した。




