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住民説明会

 翌朝、エビハラに依頼し、広場に集落の住民を集めてもらった。集落の人口は約2000人、面積は約15km²だが、当然、公共放送や通信システムもないため、人海戦術で呼びかけを行った。

 昨日はまばらだった広場も、見違えるほどの人でごった返していた。集合の目的を「転入者からの挨拶」としか伝えていないため、皆戸惑っている様子だ。

「おい皆、これから大事な話がある。聞いてくれ!」

 エビハラが住民を静まらせたのを確認すると、雄樹は木箱を数段つんだだけの壇場に上がった。マイクも拡声器もない。腹に力を込めて、雄樹は声を張った。


「おれは、ユウキ=オサダ。昨日、異世界からクワガドーエ神聖国に転移させられ、国王から役立たずとこの場所に追放された者だ。」


「おれのジョブは公務員。転移者なら聞き覚えがあるだろうし、この世界の住民には、役人といえばわかるだろうか。

 さて、このジョブ名を聞いて、どう思う? 住民のために事務仕事でもするのかと思うだろう。ところが、このジョブは名前に反して規格外なんだ。これを見てくれ。――逆ステータスオープン。スクリーン」

 コールセンターに習った方法で、雄樹は自身のステータス画面を拡大し、住民に開示した。


氏名 :ユウキ=オサダ

種族 :ヒューマン

年齢 :29歳

性別 :男

レベル:5609

攻撃力:130050

防御力:111528

体力 :226070

魔力 :9009

運  :4878

スキル:財産調査、課税、徴収、炎滅の吐息(インフェルノ)浄化(ピュリフィケーション)

ジョブ:公務員


 住人たちが、ざわつく。

「昨日、訳あって数値が下がったが、それでもどうだ? お前らのステータスと比べて、いかに怪物じみてるかわかるだろ。

 とはいえ、おれは自慢をしたいわけでも、屈服させたいわけでも、協力をして欲しいわけでもない。ただ事実を知ってもらえればいい。後は、お前らが勝手に変わる確信があるからだ。」


「さて、おれのジョブの固有スキルは、簡単に言うと、対象者のステータスを鑑定し、指定した項目を自由に奪えるという能力だ。やばいだろ。おれは昨日、レベル1ながら、このスキルを使ってケルベロスを討伐した。そこのカスミ=オノデラが証人だ」

 壇上前に立つカスミを指差すと、彼女はぶんぶんと頷いた。

「このチートスキルを使って、おれは何がしたいのか。二つある。

 一つは、極めて個人的な理由だ。この腐った国に復讐したい。異世界から勝手に呼び出し、家族も友人も生活も奪われたのに、国王のお気に召さないとポイ。ここにいる転移者の中には、身に覚えのある奴もいるだろう。それから、おれと同時に転移してきたクソガキども。ハイクラスのジョブを授かった途端、おれのことを侮辱しやがった。まずは、あいつらに地獄を見せることが第一の目的だ。

 二つめは、少し公の目的だ。おれがここにいて、これからお前らと暮らす以上、おれは自分のまちを良くしたい。お前らは痛みを知ってる分、少なくとも王都のクズどもとは違う。こんなおれでも受け入れてくれた。だから、おれが最強のまちづくりをする中で、結果的にお前らもその恩恵を受けてくれたら嬉しい。

 以上がおれの目的だが、手段を語らなきゃ単なる理想論だ。だから、おれのこれからの行動も伝える。

 おれは魔王領に入る。お前らの生命をおびやかす存在を排除することが最優先だからだ。魔王領では、魔族と魔物からあらゆる能力を奪う。ただし、殺さない。生きたまま魔族と魔物を国内の主要都市に送り込む。目的は後のお楽しみだ。いま話せるのは、ここまでだが、まだ信じられない奴もいるだろう。川を見ろ」

 広場の西側には、生活用水だという小川が流れている。流れる水は、薄紫ががって濁り、飲料水として利用するには覚悟がいる色をしている。住民がそちらに注目したのを確認すると、雄樹は続けた。


「エビハラから、水が汚染されていると聞いた。そこで、おれは昨日、生意気な転移者の聖女から、便利なスキルを奪った。さて、実験といこう」

 浄化(ピュリフィケーション)と唱えると、川は白く光った後、見違えるほどの透明度を得た。


「――浄化に成功した。汚染の元を立たないと、問題の解決にはならないかもしれないが、そこはおれが引き受ける。ともあれ、当面は困らないだろう」

 住民から歓声が上がる。小川に駆け出す者もいる。

「飲める! 水が飲めるぞ!」

「奇跡を見たのかしら……」

 その光景を見て、雄樹は元の世界で一仕事をやり終えた時のような充実感が込み上げてきた。

「魔王領に行くなら、おれたちに手伝えることはないか?」

 最前列の住民が雄樹に問いかけた。


「さっきも、言ったとおり、お前たちには事実さえ知ってもらえればいい。

 ただ、そうだな。一つ宿題を出そう。この世界にジョブシステムなんて窮屈なものがなければ、自分は本当は何がやりたかったのか。おれが帰るまでに、それを考えてみてくれ」

 住民は一瞬、面食らった様子を見せたが、すぐに

「ああ、考える! 考えてみるとも!」

 大きく頷きながら、笑顔を見せた。

 雄樹は、住民たちの顔を見渡し、昨日はそこになかったある種の光が宿ったのを確認した。それは、まちづくりに一番大切な何かだが、言葉にするのはクサい気がしたので、自分の胸におさめることにした。

 



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