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神器終極  作者: 英英一
1章 熱砂の秘宝を求めて
8/9

砂蜥蜴

強靭な肉体と砂を操る魔法が使える砂漠砂蜥蜴はこの砂海における上位の捕食者である。


天敵のほとんど存在しない環境において主に彼らの脅威となり得るのは同族だ。

縄張り争いやメスや餌を取り合う争いによって命を落とす事は珍しくない。


過酷な環境や縄張り争いを勝ち抜く為の鱗は分厚く通常の人間では文字通り歯が立たない。


魔力が豊富に溜まっている砂海の中心や遺跡の周辺にはより強く大きな個体が縄張りを作っているため、砂漠の知識に加えて戦う力が無ければ遺跡に行く事すら難しい。


アクラブの街に行く途中にリリアが一瞬で葬った砂蜥蜴は所謂負け犬。

砂海の生存競争に敗れ外へと追いやられた弱い個体であった。


今グレイ達の目の前にいる砂蜥蜴は人の2倍程の大きさであり近くに寄れば見上げる事になるのは想像に難くない。



「はぁッ!」



リリアが左手を振り払い氷の槍を飛ばす。

鱗の付いていない腹側、喉元目掛けて凄まじいスピードで飛ばされた氷の槍は砂蜥蜴の動かした丸太の様な太い前足の鱗に阻まれる。


鱗ごと貫通された外部の砂蜥蜴とは強さの格が違うとまざまざと感じる光景だ。



「面倒ね……」



舌打ちと共にリリアがこぼす。



「ブチ飛ばすかァ!」



裂帛の気合いと共に飛び出そうとするグレイだが……。

勢いよくその場で縦に回転するかのように顔から地面に転んでしまった。



「アンタ何してんのこんな時に!?ふざけてるワケ!?」



その間の抜ける光景を見てリリアが悲鳴のような叫びを上げる。



「……足元見ろよ。こんなもんで負けるとは思わねぇが、これじゃまともに戦えねぇ」



ぺっぺっ、と砂を吐きながらグレイが答える。

リリアが見たのは踝まで埋まっている自分の足。いつの間に埋まっていたのだろうか。答えはすぐに分かる。


砂蜥蜴を中心に砂の流れができている。

少しずつ砂蜥蜴の方へ流れて行く流砂。サラサラと流れる砂に足が徐々に埋まっていく。

これでは踏み込みもままならない。



「砂に抗おうとすると引き込まれる……。故に我ら砂漠の民は砂の流れに逆らわない……」



ザノヴァンは槍を持ちながらゆっくりと自然な動作で砂蜥蜴近づく。

近づくにつれてズブズブと足が砂へ入ってゆく。


膝まで砂に埋まった頃には既に砂蜥蜴の目の前だ。

引き寄せた獲物を仕留めようと鱗で覆われた剛腕がうなる。



「フンッ!」



ザノヴァンはそれを槍でいなし続ける。

砂に埋まった足が大木の根の様な役割を果たし、上半身の柔軟な動きや独特な槍術が組み合わさる事で華麗に砂蜥蜴の攻撃を捌く。



「今のうちに攻撃を!」

「よしきた!」



グレイは砂蜥蜴の背後に回り込み後ろ足に近づく。

それを見逃す訳もなく鞭の様にしなる砂蜥蜴の尻尾がグレイに襲いかかる。



「だんだんッ……慣れてきたとこだ!」



ぐいと踏ん張り跳躍。

尾の一撃を一飛びに回避し砂蜥蜴の後ろ足の傍に着地するグレイ。



「どぅらあぁ!」



後ろ足を持ち気迫ある声と共に砂蜥蜴がひっくり返される。

これにはザノヴァンも目を丸くする。



「ようやく腹を見せたわね」



待ってましたとばかりにリリアが左手を振る。

転がった砂蜥蜴にザクリザクリと雨のように降り注ぐ氷柱。


数秒程で雨はあがり、残ったのは砂蜥蜴の死体。



「この大きさの砂蜥蜴を仕留める時は通常だと10人以上は要るのですが……、聞いた通り2人共相当な腕ですね」



死体を見上げ感心した様に言うザノヴァン。



「産卵期の砂蜥蜴は気が気が立っている上に通常より餌を食う。ここからの移動はもっと気を付けなければなりませんね」



もうじき砂蜥蜴の産卵期。慎重を期さなければ戦闘は免れない。そう言って2人に向き直るザノヴァン。



「……もう遅いみたいよ」



苦虫を噛み潰したような表情でリリアが呟く。

地平線に蠢く幾つもの影。

砂埃を上げて近づいて来るそれは砂蜥蜴の大群だ。10や20ではきかないだろう。



「おいッ!アレ何だよ!?ザノヴァンッ!?聞いた話と違うぞ!」



砂蜥蜴は通常、単独での行動をとる。産卵期であるとそれが2匹になる事もあるが群れを作る事は無い。

聞いていた砂蜥蜴の生態とは全く違う光景を見て叫ぶグレイ。



「そんなはずは無い……。砂蜥蜴が纏まって移動する事などありえない!どうなっているんだッ!?」



ありえないと狼狽えるザノヴァン。

そうしているうちにも大量の影砂蜥蜴はグレイ達目指して進軍するのであった。


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