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神器終極  作者: 英英一
1章 熱砂の秘宝を求めて
7/9

砂漠へ

「なるほど、相当な腕だ。……であれば大丈夫でしょう」



そう言うとラシードはちりんと机にあったベルを鳴らす。

すると部屋に1人の男が入ってくる。ラシードの館に仕える執事だ。



「ザノヴァンをここに」

「はっ」



そう言うと執事は短く返信をし退室して行った。


そこからすぐに大柄な男が息を切らして駆け込んで来た。


服の上からでも鍛え抜かれた逞しい体である事が良く分かる恵体。そして右頬には4本の傷。

アクラブの兵士の服装と砂漠の民特有の装飾品を身に着けており、黒い髪を布で纏めた出で立ちだ。


グレイよりも一回り大きいにも関わらず威圧感を感じ無いのは武人としての振る舞いを身に付けているからだろう。



「こいつは優秀な兵士。砂漠で動く際に役立つでしょう。」



ラシードはグレイ達に向き直ると、このザノヴァンという男を連れていくように言った。

2人としても砂漠の勝手が分かる者がいた方が動きやすい。断わる理由も無い。



「……ザノヴァン、これは命令だ。砂海の遺跡に向かう2人を助けなさい。……そして、必ず戻ってくるのだ」



ラシードの言葉は兵士に対する過酷な命令だったがどこか温かく息子を見守る父親の様な声音だ。



「ラシード様……」



ラシードの意図に気が付き跪くザノヴァン。



「ありがとうッ……ございますッ……!」



優し気な眼差しでそれを見るラシード。

そんなラシードにザノヴァンは声を震わせて感謝を述べるのであった。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



「ザノヴァン!」



出発の話も纏まり3人が館を出ようとしたその時声がかかった。


振り向く3人の視線の先には一人の女性。

給仕服を来ている姿から館で働く者の一人であることが伺える。


彼女はザノヴァンの前まで歩み寄ると口を開く。



「聞いたわ、……気をつけて、……絶対に戻って来てね」



祈るように縋るように彼女は言う。

ザノヴァンは彼女の手を取り、両手で力強くそして優しく握る。


「…ああ約束だ!父と共に必ず戻って来るさ!」



不安を吹き飛ばすような笑みで言うザノヴァン。


グレイはそんな2人をまぶしいものを見るように見つめていた。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



灼熱の大地に日が落ちる頃、茜色に染まる空の下で3本の長い影が砂の海を渡る。


グレイ達は再びキャメルに乗り目的地へと進んでいた。

この分であれば明日には【六分儀の遺跡】に到着するペースだ。



「魔法……何度見ても凄いものだ……。リリア殿のおかげで助かります」



通常であればこの灼熱の大地を移動する際には大量の水が必要だ。水を作り出す魔道具はあるものの魔石が必要なため、金銭的・物量的な問題があり無尽蔵に水が飲めるという訳では無い。


彼の仕えるラシードの魔法は水の魔法であるがそれでもあまり馴染みの無い光景に感心するザノヴァン。


一兵士であるザノヴァンが間近で魔法を見る機会はほとんど無い。



「平民を助けるのが貴族の務めよ。当然の事をいちいち言わなくていいわ」



リリアはそんなザノヴァンの言葉を聞いてさも当然とばかりに答える。



「以外だな、そんな殊勝な奴だったなんて」



これに驚いたのはグレイだ。目を丸くしながら感心したようにリリアを見る。



「何言ってるの?貴き血の恩恵を受けるのには責任と義務が伴うの。当たり前のことよ。……だからアナタ達とは住む世界が違う」



またも当然とばかりにリリアは返す。

まるで戦いの前の戦士のような決意に満ちた表情で言った。

これにはザノヴァンも驚きの表情となる。



「……なんつーか、見直したよアンタの事」

「はぁ?急に何!?」



呟くグレイに反応するリリア。



「会ってからずっと機嫌悪いみたいだったし、もっと嫌な奴だと思ってたよ」

「……そこは悪かったわ。妙な任務で気が立ってたみたい」



リリアはグレイから視線を逸らしばつが悪そうに謝罪する。



「まぁ、貴方のことは変わらず気に入らないけどね」

「ハハハ、よく分かりませんが仲良くできそうで良かった」


再び冷たい視線へとなるリリア。なんでだよとぼやくグレイ。

そんな2人のやり取りを見てザノヴァンが快活に笑う。


その時グレイが目を凝らしつぶやく。



「アレってもしかして……」



リリアとザノヴァンもグレイの指差す方向へ顔を向けてみると茜色の空と金色の砂の境界線に黒い影が揺れている。


影の形は砂蜥蜴……。だがかなりの距離があるのにも関わらず確認できる程の大きさ。


あちらは既に3人に気が付いているのか一直線に向かって来る。



「逃げ場は無さそうだな……」



グレイが言ったその言葉を皮切りに3人は戦いに備えるのであった。


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