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神器終極  作者: 英英一
1章 熱砂の秘宝を求めて
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リリア・アルフェラッツ

1章突入です!

昼と夜の狭間。

沈みかけた太陽は草原を金色に染め上げる。

幻想的な緋色の中でただ2人。ローブを目深に被った男と銀髪の少年が向かい合う。


風が2人の頬を撫ぜ少年の透き通るような銀髪を揺らす。



「死んだ人ともう一度会いたい?・・・・・・無理だね。当然この僕にも無理だ。神様でもなきゃそんな奇跡起こせないと思うよ」



問いかけに対する答えは少年に無情な結論を突きつける。


ようやく見つかったかもしれない希望を失ったことで少年は俯き、ただ悔しさを募らせるばかりであった。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦



砂の海はギラギラと照りつける太陽の熱を受け景色を揺らす。


昼は灼熱の大地であり夜はその暑さが嘘のように消え極寒の地と化す。この地に対応出来ないものに生きる価値は無いと言わんばかりの過酷な環境。


グラン王国の王都から馬車で南に10日余り移動すれば国境。その先に広がるのは砂漠の国サンディアである。

国土の約8割が砂漠で占められているが、点在するオアシスの周囲には肥沃な大地と街が栄えており独自の文化が形成されている。


移動の際はこの大地に適したキャメルという動物を使うのが主流でありグレイたちもそれに則って移動している。


王宮からの情報によるとこの砂の大地に神器の1つが眠っているという。


砂の大地の移動にも慣れてきたところでありグレイ達はあと1日程でようやく目的の町に着く予定だ。


とはいえ目下グレイにとっての問題はそんな事ではなく……。



「はぁ〜…。どうしてこの私がこーんな冴えない男と宝探しごっこなんてしなくちゃいけないのかしら…」



グレイの前で文句を言うこの人物。


表向きは旅の戦力としてつけられたこの娘。しかし実態はグレイに神器を持ち逃げされないための監視役。リリア・アルフェラッツ。


アルフェラッツ家の次女であり王国第一師団所属の魔法戦士。整った目鼻立ち。太陽の光を受けて銀色に輝く美しい髪。青空の様に澄んだ空色の瞳。見るものを魅了するその美貌は氷の妖精のようである。


第一師団入団という狭き門を潜る程の実力であり王国での戦闘力はトップクラスだ。



「アーク団長の一言さえ無ければあんたみたいなの氷漬けにして引いていくところなのよ?感謝しなさい」



顔を合わせた時は貴族の鏡のごとく淑女然とした様子とその美貌に見とれてしまったものだが、……いざグレイと二人になった途端にこれである。


アークは『仲良くね』などと言ったがこの調子では仲良くどころか協力できる見込みも薄そうだ。


はぁ、と。グレイはここ数日で何度目か分からないため息をこぼす。


そして見渡す限りの砂の世界を眺めていると不意に不自然な砂の動きに気が付いた。

2つの小さな砂の山が少しずつ側面から近づいているのだ。


砂の世界は過酷な環境であるが、その上でこの大地に適応した生き物も当然いる。


砂漠砂蜥蜴である。全身を硬い鱗に覆われた人の半分程の大きさの砂漠の捕食者。

砂を操る能力と狙った獲物は獲物の体力が切れるまで追い続ける執念深さも持ち合わせている。


それが今リリアの乗っているキャメルに噛み付こうと飛び出す。



「おい!危ねぇ!」



グレイが叫び、思わず飛び出そうとするが



「邪魔ね」



その一言で2匹の蜥蜴が氷の槍に貫かれた。

首を氷柱に貫かれビクビクと痙攣していた蜥蜴であるがやがて動きを止めた。


リリアはそんな様子を一瞥もせず何事もなかったかのように進む。



「何か言った?」

「……いや、なんでもねぇ」



顔を引き攣らせながらグレイが答える。


リリアの左手の甲には青白く光る点が幾つか。これこそが魔法使いの証。魔力を外界へと作用させる【星痕】。


身体の何処かに浮かぶ星痕は王国では貴族の証。親が星痕持ちであればその子も星痕を持って生まれる事が多く、何処の国でも特別視される証である。


市井の人間からも極々稀に星痕を持った者が現れる事もあるが、大抵の場合は貴族の隠し子である事がほとんどだ。



「砂漠の魔物と言ってもこんなものかしら?」



拍子抜け止め言わんばかりの態度にグレイも瞠目する。


魔法は通常、詠唱をし星痕から魔力を作用させて使用するもの。グレイでも知っている程の魔法の常識だ。

魔法の弱点として上げられるのは発動までの時間と魔力の消費であるが、今のリリアの魔法はほとんどノータイムである。


その昔、貴族が義務として定期的に行う魔物狩りにグレイは参加した事があった。

そこで見た貴族の魔法は魔物討伐に有効であったものの、使う度に消耗し次の魔法の行使まで間隔を空けており、実戦向きでは無いと思ったのが印象深かった。



「おっかねぇ〜……」



思わず漏れる呟き。


果たして第一師団が粒ぞろいなのかこの娘が飛び抜けて優秀なのかは定かではないが、グレイはこの人の形をした化け物にあまり気に触るような事はしないようにと思うのであった。


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