××の独白
誰とも関わらず、一人で、自分は生きていきたかった。
もう人に振り回されるのはうんざりだった。
青年××は、沈みゆく視界の中、
どうしようもなかった今世を振り返ってみた。
母親は自分を産み落としてすぐに失踪した。
育てる気が無いのならば何故自分を産んだのだろうか。
自分はこんな世界にに生まれ落ちることなど絶対に、
望んでなどいなかった。
父親の顔は見たことも無い。
誰のものでもない自分はずっと、孤児院で育った。
愛など欲してはいなかった。
ただ、生きることが出来れば十分だった。でも、
整っているらしい容姿のせいで無駄に愛された。
職員の中には、自分の子供にならないかとまで、聞いてきた者もいた。
そんなこともあって、きっと他の孤児達は....嫉妬したのだ。
何故××だけあんなに愛されるんだ、と。
深く嫉妬したんだろう。
15になり、施設を出る許可を得られるまではずっと陰で虐めを受けていた。
高校は有数の進学校に行くことが出来た。
自分は周りと何処か違っていた。
幼い頃にそう気づいた。
進学校に行けば、こんな自分でも受け入れられる。
そんな期待をしていた。
勉強は苦手では無かったから、
県では1番の高校入ることが出来た。
....最初は上手くやれていたと思う。
でも、自分を出し始めてからは、段々1人になっていった。
距離を取られた。本当の自分を出せば距離を取られる。
当たり前の事だった。
自分は周りとは何か違っているのだから。
ひたすら自分を隠すしか、
周りと一緒に生きていく方法がなかった。
本当の自分を受け入れてくれる誰かがきっといる。
そんなことを信じたのが間違いだった。
結局あまり高校にも行かなくなった。
これでは良くないと奮起して一ヶ月ぶりの高校に行こうとしたらこの様だ。
雪でスリップしたのだろう。他の高校の学生が乗っていた自転車が転倒し、巻き込まれ、道路へ押し飛ばされたところ、
タイミング良く通りかかった車とドッカーンだ。
漫画の様に超人的な能力を発揮して避けられるなんて物は起こるはずもなく、自分は車に跳ね飛ばされた。
.....あーーー。本当についてなさすぎる。
最初から最後まで不幸たっぷりな人生だったな。
もし来世というものがあるならば。自分でも幸せになれるか?
自分は普通ではないから、普通の幸せはきっと無理だ。
.....それでもいい。歪んだ幸せでいい。
今世ではこんなに他人に振り回されてきたんだ。
来世では多少人を振り回しても神は許してくれるだろう。
幸せになってやる。
自分が、俺が幸せになることで、
世界が不幸せになろうとも。