絶望と救済
「.....ゔぅぅぁぁぁ..........」
怨嗟の声を吐く。
今日は一段と酷く扱われている。
声すらも満足に出せそうにない。
「おいおい。お姫様はどこにいった?そんな声を出してしまってよぉ。」
ケラケラ嗤いながらも、目の前にいる男は自分の肢体を撫で回している。
盗賊共に捕まり、連れ去られ、嬲られ続けてどのくらい経っただろうか。
少なくとも一ヶ月は経っているだろう。もう国は自分を救うことを諦めたのだろうか。一向に自分を助けに来ようとする気配もない。連れ去られてから暫くは期待していたのに。
誰かに救われることなど望むだけ無駄だ。改めて気づいた。
自分だけで勝手に救われてみせる。
自分の救世主はルイ以外にいないんだから。
「相変わらず、ガードが硬ぇなぁ。そんなに嫌がられたら、
どうやっても奪いたくなるだろうが。」
「一体どうしてこう好き勝手出来ないんだろうな。
顔も傷つけることが出来ねぇしよぉ。」
盗賊に捕まれば大体の末路は、慰め者にされた後に殺されるか、何処か非合法な奴隷商に売られるかのどちらかである。
一ヶ月以上も盗賊達に捕まっているままなど普通は無い。
自分がずっと捕えられているかといえば、ひとえにその奇異性によるものだろう。
自分の女性的な部分は何かの力で守られており、盗賊達が触れることを全く許さない。盗賊達はどうしても自分を穢したいのだろう。いつもあの手この手で私の純潔を奪おうとしてくるのだ。そして奪えないことに苛立ち、触れることの出来る自分の体をひたすら痛ぶるのだった。
もう今日は終わってほしい。体がやばいな。衰弱死寸前だ。
不思議なほどに体の状態が分かる。
もう遠くないうちに死んでしまうだろう。
いつかは逃げると思いつつも、そんな事をする気力などとうの前に自分からはなくなってしまっていた。
倒れるように自分は床に突っ伏した。
_____
「逃げろ逃げろ‼︎騎士共が来たぞ‼︎」
盗賊達が叫ぶ声が聞こえて意識を取り戻す。
盗賊共の拠点となっていたこの場は今や炎に囲まれていた。
何が起きたんだろう。
「お頭‼︎この女はどうするんです?」
「ほっとけ‼︎もし捕まってでも見ろ‼︎一生の悲惨な生活が待ってるぞ‼︎」
そう言い、お頭と呼ばれた男は少しの荷物を持った後、裏の扉から出ていく。
「待、待ってくだせぇ‼︎」
他の者たちも付いていくように出ていった。
そして、残されたのは鎖の様なものに繋がれた傷だらけの自分だけになってしまった。
自分の人生はここまでなのだろう。判断する。
二度目だからか、死ぬ前だといっても、少しは冷静でいられることが出来た。
今まで城で暮らしていた時の生活を回想してみる。
別に城の生活が良かったかと言われればそんなに良くはなかったけれど、今の生活よりは全然比べようがないほどには悪くなかった。
....出来れば次はまた男に戻して欲しい。
そう考えながら目を瞑ろうとする。
「少女....酷い状態。直ぐに運ぶ。」
その瞬間、声が聞こえた。後ろを見ると、重装な鎧を身に纏った銀髪の女性がルイを見ている。
「自分は、、、、たすかる、、、?」
無意識のうちに声が出てしまっていた。
やっぱり死にたくはない。
「大丈夫。私が助ける。」
.....どうやら自分は今度は、助かるらしい。
案外希望も捨てたものじゃなかった。
そう思うと何かが決壊したように、涙が止まらなくなってしまった。
「大丈夫。大丈夫。もう大丈夫。」
騎士に抱きしめられ、自分は安心して気を失ってしまった。
剣を一閃すると、捕らえていた鉄鎖は無くなり、やさしく少女を抱え上げる。
「...軽い。...盗賊は、皆殺し。」
あまりの軽さに騎士レーゼは鎖に繋がれた少女がどのような扱いを受けていたのか察してしまい、深く荒い怒りを覚える。
「この子は、私が、幸せにする。」
涙を流し眠ってしまった少女を抱きしめながら、レーゼは決意した。