第7話 魔法使いの集落へ③
前回の投稿から大きく開いてしまってましたね。すいません。
とりあえずこれでやっとチュートリアル的な部分が終わったんで、次回から本格的に物語が進行していきます。といってもまだまだ序盤だけどね。
魔導書より
術式暗記 魔導書に書かれし魔法文字を自動翻訳し、単語として魔力辞書などに記録する。仮に文字の解読ができなくとも、これを利用すれば簡単に魔術を起動することができる。
レアル「すごい簡単な...というか魔法文字ですらない文字1文字だけでできてる...
こんな簡単な魔法なら、私でも簡単に習得できそうだけど....」
魔導書より
尚、分類は補助呪文である。
レアル「はあ、まあ攻撃呪文なわけないよね...とりあえず実際に魔法陣を書くかぁ...」
レアルは羽ペンと魔法学校の校章の入った手帳を取り出す。これは学校に入学した際に、支給品として学校から最初に配布されるものだ。生徒たちは基本的にはここに魔法陣を記録し、魔力を注ぐことにより呪文を会得している。
レアルは早速羽ペンで魔法陣を書き写した。
レアル「はあ、それじゃあ始めるか...」
手帳を両手で持ち、自分の肩ほどの位置まで持ち上げる。
レアル「聖なる白魔の精霊よ...我其方より魔道を賜らん」
白い光が、レアルの腕と手帳を包み込む。
そして5秒ほどたった時、光が消えると同時にレアルが脱力したかのようにその場に崩れ落ちる。
レアル「やっぱり...魔力が足りなかったかぁ...」
魔法を習得する際に、自身の魔力が魔法習得の必要魔力に追いついていない場合、習得者の体力をそのまま養分にして習得が行われる。そして、当然ながらその値が乖離している場合、
習得者はそのまま体力をすべて失い、体の機能の一切を停止して硬直する。
即ち死である。
レアル「とりあえずちょっと休憩...いや、せっかくだしこの魔法を使ってみよう」
レアルは壁に腰掛けながら魔導書の登録が記載されたページを開く。
術式暗記!!魔導書の魔法陣が金色に輝いた。そして、その光はレアル自身を包み込んだ。
......そのままレアルは意識を失う。
.....
........?
???「ここは....?」
血の匂いと腐った死体のようなにおいが混じる。
???「重い...」
自身の上にも大量の死体が乗っている。
........
.....
レアルは目を覚ました。そこは、さっきと同じコンクリートの部屋だった。
レアル「ちょっと魔力を使いすぎちゃったかな....まあ、寝て多少は回復しただろうし。」
レアル「登録!」
朝と同じ銀色の魔法陣が目の前に浮かびあがる。」
そして、その先には最初に訪れた客間があった。椅子に座って、フィスは舟を漕いでいる。
レアルはその魔法陣を潜り抜けた。
レアル「師匠、できましたよ」
レアルはフィスの肩を揺らす。
フィス「ん...ああ、お疲れ。」
まだ寝ぼけているのか、フィスは欠伸をしながら目をぼんやりと開けた。
日は頂点を過ぎているが、まだ傾くとは言えない高さである。
フィス「それじゃあ、軽く軽食を取ってから午後は修行といこうじゃないか。」
フィスが伸びをしながらレアルに話す。
丁度、シルファが2つのオムライスをお盆に載せて、部屋に入ってくる。
シルファ「お昼ご飯できましたよー」
フィス「ありがとう、とりあえず話はこれ食べてからかな。」
オムライスは眩いほどの黄色の卵が乗っており、とてもふわふわとしている。
町では卵はそこそこ貴重品であるため、より一層その豪華さがレアルの身に染みた。
レアル「卵なんてここにあるんですか!?私の故郷ですら珍しかったのに...」
シルファ「ここには魔物が湧かないからですよ。ここなら鶏も安心して育てられるんです。」
レアル「へえ...ところで師匠、お昼から何するんです....」
フィスはもう既に完食していた。
レアル「めちゃくちゃ早食いじゃないですか?師匠...」
フィス「あれ?そうかな?」
シルファ「いやあ、フィス様はすぐ食べちゃうんですよ。むしろレアル様!」
シルファが感極まったような声で言った。
シルファ「あなただけですよ!この館でこんなに料理に感動してくださったの!そこで魔道具屋をされてるレイス様はレイス様でバクバク食べて「美味かった!」って言って終わりですし!」
フィス「あれはあいつがおかしいんだって」
レアル「はは...大変そうですね。」
そんなこんなでレアルはオムライスをそこそこユックリ堪能した。
レアル「ごちそうさまでした」
フィス「それじゃあ、座学も飽きただろうし、実践訓練といこうか。登録」
魔法陣が現れた。
レアル「ここからどこに行くんですか?」
フィス「んー...まあ行けば分かるね。」
レアル「あ、それとシルファさん。オムライス、本当に美味しかったです!ケチャップライスは味が濃いはずなのにまったく卵の邪魔になってないし、卵は卵で塩味が聞いてすごくおいしかったです!」
シルファ「いえいえ、あなたほど堪能してくださるなら、いくらでも作れますよ!」
フィス「それじゃ、早速修行場所へ向かおうか。」
2人は魔法陣を潜り抜けた。
そして、そこは50m程の高さはありそうな崖の下だった。
レアル「ここで何をするんですか?」
フィス「この上まで行く。それだけだよ。」
レアル「へ?それなら別に簡単じゃないですか?昨日だって私の分身が飛び上がりましたよ?」
フィス「ああ、その通り、君は多分この程度のことなら簡単にクリアできちゃうだろう。
だから少し縛りを設けようと思う。」
レアル「縛り?」
フィス「補助魔法を使わず、2種類の魔法のみで上まで上がる。そして、」
レアル「そして?」
フィス「上るために崖を使ってはならない。この辺でどうかな?」
レアル「なるほど....(これなかなか厳しくない?)」
フィス「制限時間は...今から1時間としておこう。それじゃ、崖の上で待ってるからね。転移」
フィスが緑のオーラを纏いながら上へ飛んでいく。
レアル「呪文2つ...とりあえず風属性の魔法は使えそう。ただ、空中だと姿勢が安定しないから、それが課題ってことになるのかな...」
早速、レアルは一つ目の方法を試してみる。
レアル「風持線!」
10数メートルほど上の何もない空中に、風でできたワイヤーが固定される。
レアル「火炎砲撃!」
片手でワイヤーをつかみながら、もう片方の手で自分の真下に火炎球を叩きつける。
そして、火炎球が地面を削り、それに伴って熱風が発生した。
レアルはワイヤーを使って大きく飛び上がった。しかし、ワイヤーの付け替えと2発目の火炎球は同時にできない。この方法では上がれてせいぜい30m程だった。
レアル「さすがに一発でできるようなことを言ってはこないよね...まあやりがいあるからいいけど!地殻砲撃!」
直径3m程の岩石球がレアルのそばの地面から生成される。
レアル「これなら...!」
レアルは岩石球の上に立つ。そして、
レアル「地殻砲撃!」
今度はレアルの足元....つまるところさっきの岩石球の上に岩石球が生成された。
レアル「地殻砲撃!」
そして、彼女はこの調子で40mほどのところまで岩石球を積み上げた。」
フィスが上から顔をのぞかせる
レアル「これであと3回くらい!地殻砲撃!」
レアルの足元から何度目かの岩石球が現れる。
レアル「行ける!...........あれ?」
突如、レアルの足元がぐらつき出す。というか岩石球ごとぐらつき出す。
.....風だ。崖上ぎりぎりの位置で、突風が吹き荒れている。
一番上の岩石球が転がりだす。そして、絶妙なバランスで成り立っていた他の岩石球たちも、ともに崩れだす。
顔をのぞかせているフィスもこれには苦笑いだった。
レアル「風は聞いてないって....」
そのまま彼女は風持線を用いて無事着地した。
しかし、もう既に魔法の連発で魔力はぎりぎりだった。
レアル「まさか...ごり押しすらさせてくれないなんて...でも、2種類で登る?」
炎の上昇気流では高い位置から発動できない、風のワイヤーでは飛べる高さが足りない、
岩の重ね置きでは横からの風に対応できない。まだ使っていない水や氷の魔法も、恐らく厳しいだろう。
レアル「2種類の魔法....そうだ、ここまで2つの魔法を同時使用してたけど、魔法の重ね掛けはしていない...でも、重ね掛け...?」
重ね掛けは、当然ながら魔法学校では履修しない。ましてや、重ね掛けそのものをレアルは見たこともないのだ。術者が存在すると聞いたことがある程度である。
レアル「でも、残り魔力的にそれを試すしかない...!」
レアルは地殻砲撃と火炎砲撃を融合させ、一つの魔法として発動した。
レアル「殻炎砲撃!」
レアルの横から炎を纏った岩石球が現れる。
レアル「風持線!」
レアルは炎の上昇気流を用いて飛び上がる。そして、その途中で手を離した。
レアルは勢いよく上に吹き飛びながら魔法を唱える。
レアル「殻炎砲撃!」
レアルの足元に炎を纏った岩石球が生成される。
そして一瞬間をおいて風持線を使い、再び上昇気流で上に吹き飛ぶ、
そして、ついに崖ぎりぎりの風の強い地点にまで到達した。
レアル「風持線!」
横から吹く風の勢いをそのまま利用し、崖の上に見事な着地を決めた。
フィス「まさか、呪文の重ね掛けを思いつくとはね...ちょっと予想外だった。」
レアル「え?」
フィス「いやね...僕の予想だったら、水を思いっきり上に飛ばして、それを凍り付かせて登ってくるかなーとか思ってたんだよ。まさか予想を超えられるとはね...」
レアル「それはよかった...」
フィス「とりあえず君も疲れてるだろうし、家まで送るよ。」
レアル「ありがとうございます...」
フィス「あ、それとね、今さっき一件依頼が入ったんだ。」
レアル「依頼?」
フィス「明日からはそこで依頼をこなすついでに君の訓練をするから、今日はしっかりと休んでおいてね。」
日は徐々に傾き始めていた。
レアル「はい。」
フィス「登録」
その先には、まだ昼の2時ごろの街並みがあった。
フィス「それじゃ、お疲れ。明日からは直接登録を使って家まで来てくれればいいよ。」
レアル「分かりました。お疲れ様でした。」
レアルは家に着くと、すぐさまソファに転がった。
レアル「疲れた.....」