第6話 魔法使いの集落へ②
どうも、ほしおとこです
投稿遅れてすいませんね。普段なら隔週投稿しようとするんですが(できてるかは置いといて)
今週は幼児と体調不良により遅れてしまいました。
というわけで内容をちょっと読み直してきたので、今から第6話書いてきます。
歩き続ける2人は、家が立ち並ぶ中でも一際大きいログハウスへたどり着いた。
フィス「ここが僕の拠点兼研究所だ。」
レアル「ここに住んでるんですか?」
フィス「まあ、一応はここに住んでるってことになってるよ。」
レアル「一応...?」
フィス「まあ、それについてはあとでゆっくりと説明しよう。」
フィスは家のドアを開く。鍵は掛かっていなかった。
玄関は埃一つない....ということはないが、そこそこ手入れがされているようで、意外ときれいだ。
???「フィス様?お帰りになられたんですか!?」
少し高い女声が、奥から家中に響き渡る。
フィス「紹介しよう。彼女が例外その2....もといメイドとして同居してもらってる妖精のシルファだ。」
奥から小太りで2頭身ほどの、眼鏡を掛けた女性が走ってくる。
シルファ「フィス様...........」
フィス「あ、久しぶり。」
シルファ「ひと月に一度くらい帰ってきてくださいよ!もうそろそろ半年ですよ!?」
シルファが捲し立てる。
フィス「ごめんごめん、しばらくは旅に出ないから!」
シルファ「....信じますよ?」
その会話が終わり、やっとシルファはレアルの方を見る。
シルファ「あら、お客さんですか?」
フィス「あ、僕の弟子」
シルファ「え....?よくできましたね。」
フィス「君も言うか。」
フィスは苦笑いしながら返す。
フィス「とりあえず、この子はレアル。ホープの魔法学校に所属してる。」
レアル「よろしくお願いします。」
シルファは満面の笑顔で返す。
シルファ「よろしくお願いします!レアル様!」
レアル「様付けは大丈夫ですよ?」
シルファ「いえいえ、フィス様のお弟子なのですから、私からしたら主のお弟子、様付けしない方が失礼に当たりますよ♪」
レアル「は...はあ....」
フィス「さっそくで悪いんだけど、3人分の紅茶を淹れてもらっていいかな?」
シルファ「かしこまりました。」
シルファは奥へ歩き始めた。
フィス「とりあえず、詳しい話なんかは奥で話そうか。こっちに応接間があるから、ついてきてくれ。」
レアル「分かりました。」
フィスとレアルは入って右側の部屋に向かった。
応接間は、小さな木製の机を取り囲むように一人掛けのソファーが4つ置かれ、さらにその外周に本棚が数個おかれているだけの、悪く言えばこじんまりした感じの部屋だった。
フィスとレアルは向かい合うようにしてソファーに腰掛ける。
フィス「さて、どこから話そうか。」
正直、レアルはそこそこ混乱していた。聞きたい話が多すぎる。
レアル「そうですね...結局のところ、ここってなんなんですか?」
フィス「さっきも軽く説明したけど、もっと分かりやすく言うなら"瘴気に包まれた森"になるかな。」
レアル「瘴気...?」
フィス「そう、ここはもともと普通の森だったんだけど、色々あって、森自体が瘴気に侵されちゃったらしいんだ。」
レアル「じゃあ、なんでこんな所に住んでるんですか?」
フィス「えーっとね...瘴気ってのはそもそも、過剰な魔力の塊ってのは知ってる?」
レアル「魔法学校で軽く....いや図書館だっけ?確か瘴気の魔力を吸って、魔物が湧くんでしたよね。」
フィス「まあ、ソースはどこでもいいんだけど、その通りだよ。この森の瘴気は、実をいうとそこまで濃いわけじゃないんだ。もちろん、一般人が入れるわけではないんだけど。」
レアル「だから、魔物も湧かなければ虫なんかもいないんですね」
フィス「そうそう、弱い魔物はこの瘴気に適応できないし、そこそこ強い魔物が湧くには魔力が全然足りていない。つまりなかなかに絶妙なバランスで、この瘴気は保たれているんだ。それに、これくらいの瘴気なら、魔法使いにとっては毒どころか魔力を常に回復できる薬にもなる。」
レアル「なるほど、それがこの場所の秘密なんですね。」
シルファ「紅茶持ってきました~」
コップ3つとケトルの置かれたお盆を持ちながら、シルファが部屋に入ってくる。
フィス「ありがとう。それとレアル、彼女も基本的にはこの瘴気の中でしか生活ができない。」
レアル「あ,,,確かに、妖精も生きるのに魔力が必要でしたもんね。」
シルファが静かにソファに腰掛ける。
フィス「うん、まあその結果小太りになったわけだけど。」
シルファ「違いますよ?今は若返ってる途中なだけですからね!3,4年もたてば、それはそれは美しい姿になってますよ!」
レアル「なるほど...」
フィス「あ、その紅茶飲んだら魔法を教えるよ。まあ初日だし大したのじゃないけどね。」
レアル「分かりました。というか紅茶すごいおいしいですね!」
多分本日一番の笑顔である。
シルファ「そうでしょう!私が半年かけて茶葉の栽培からティーパックの作成まで!全部マスターした結果ですからね!フィス様もそう思うでしょ!?」
フィス「...君ほんとにシルファ?あの半年前に飲料タイプの兵器作ってた。」
レアル「え?」
シルファ「あれはあなたが失敗作の梅酒飲むからでしょう?」
フィス「いやいや、失敗作でもあそこまではひどくならないって!」
シルファ「なりますよ!寝ぼけて梅の代わりにいちご味の飴入れてたんだから!」
レアル「あのー....」
数分後
フィス「さっきはごめん、とりあえずその魔法を説明しよう。」
奥に向かう廊下を歩きながらフィスが言う。
レアル「なんか、思ってたよりこの家大きいですね。」
フィス「魔法で細工してあるからね。結構色んな部屋を詰め込んだから、これでも部屋はほとんど埋まってるんだけど。」
フィスが近くのドアノブを回す。そしてドアを開けると、勢いよく閉めた。
フィス「どうやら、ただの倉庫だったみたいだ。」
レアル「...ゴミ屋敷って」
フィス「......気にしたら負けだよ。」
レアルの中で、フィスの株がとんでもない勢いで下がっているのは言うまでもないだろう。
フィス「ようやくまともな...違う、使える部屋を見つけたよ。」
フィスがそう言いながら部屋に入っていく。
レアルが後から部屋に入る。そこは、ログハウスに似つかわしくない、大理石の床とコンクリートの壁でできた部屋だった。
フィス「ここで、最初の魔法、というか登録魔法について説明するよ。」
レアル「ここに来た時に使ってた魔法ですよね。」
フィス「そうそう、最初にも言った通り、僕たちはここがどこなのか、正確な座標がわかっていないから、登録を利用することで行き来しているんだ。」
レアル「なるほど。」
フィス「じゃあさっそく、魔法を練習...と行きたいんだけど、魔法を習得するには、魔法陣を自力で作成できるようにしないといけないから....えーと、魔力辞書って魔法知ってる?」
レアル「魔力辞書?」
フィス「魔法学校って、そういうの教えてくれないのか...簡単に説明すると、魔法陣を一回覚えたら、この魔法を使うだけで好きな時に呼び出して発動できるようになるってやつ。」
レアル「そんな便利魔法があるんですか!?毎回図書館で読み漁ってた私の努力が...」
レアルはその場に膝から崩れ落ちた。
フィス「多分君が思ってるほど便利でもないよ。少なくとも一回は完全に身に着けておかないと使えないし。そもそも魔力辞書がもし使えなくなったら、その時点で戦えなくなっちゃうってのもまずいしね。」
レアル「よかった...」
レアルは安堵した表情で立ち上がる。
フィス「んじゃあ、とりあえずその魔法を説明するところから始めようか。簡易召喚」
フィスの目の前に銀色の魔法陣が浮かび上がり、その上に一枚の紙切れが現れた。
フィス「この紙に書かれた魔法陣を覚えてくれ。これが魔力辞書の魔法陣になってるから。」
レアル「なんか...結構特徴的ですね。できるだけわかりやすく覚えられるようにしてあるというか」
紙に描かれた魔法陣は、3種類の魔法文字の規則的な並びだけで構成されていた。
フィス「ただのショートカット呪文だからね。これ自体簡単に覚えられるようになっているんだよ。」
レアル「へえ...なんでこんな魔法今まで知らなかったんだろう...」
フィス「まあ、意外と情報の統制がしっかりされてるんだろうね。これさえあれば、だれでも簡単に魔法を利用したテロを引き起こせるしね。」
レアル「そんなにですか?」
フィス「意外と魔法を作るのも大変なんだよ。とりあえず、その魔法陣は覚えたかい?」
レアル「覚えられました!」
フィス「よし、んじゃあ早速、登録を覚えようか。とりあえず前提なんだけど、この魔法は補助魔法だから、補助魔力を利用して発動する必要がある。だから、補助魔力が0だとこの時点で半ば詰んでるんだけど。」
レアル「一応、昔ちょっとだけ回復魔法とかも使ってみたことがあるので...」
フィス「んじゃあ、大丈夫そうかな。それじゃあ、さっそく登録の魔法陣を見せよう。簡易召喚。」
再び銀色の魔法陣がその場に浮き上がる。そして、今度はそこそこ大きい辞典程度の本が現れた。
フィス「確かこの本の109ページくらいに、魔法陣は乗っていたはずだけど。」
レアルは本を勢いよくめくりだした。図書館で長い間本を読み漁っていたからであろうか。かなり手慣れた手つきで109ページにたどり着いた。
レアル「ありました。登録および転移についてって書いてますね。」
フィス「とりあえず、そのページの内容を暗記しておいてくれ。客間とここの間を移動できるようになったら、習得ってことにするよ。僕は客間で待ってるから。」
フィスはそう言って部屋から出て行った。
その10数秒後
レアル「うーん、やっぱりさっきの魔力辞書ほど簡単な魔法陣じゃないよね...とはいえ一回は覚えてしまわないといけないか....」
魔法陣に使われている文字は先ほどの4倍の12種類で、覚えるための公式的なものが辞典には書かれている。が、補助魔法ということもあり、レアルはそこまで気乗りしていなかった。
レアル「うーむ...なんか楽な方法は...」
レアルは適当にページをめくりだした。時間促進、美容、発音体生成...結構多様な魔法が書かれている中で、"術式暗記"と書かれたページをレアルは見つけた。
レアル「これなら...もしかしたら、魔法陣を暗記できるかも!」
レアルは目を輝かせた。