第27話 魔導士試験、開幕①
その日、スタッドは現れた。
朝早く、レアルがシルファに手伝ってもらいつつ、フィスの家で最後の準備をしている時だった。スタッドが玄関から入ってきたのだ。
スタッド「おはよう!」
1週間いなかったとは思えないほど明るい声だった。
シルファ「スタッド様!」
シルファは心配そうな目でスタッドを見るが、レアルは違った。
レアル「スタッド...あんた1週間もどこほっつき歩いてたのよ....」
レアルは呆れつつもスタッドを問いただす。
スタッド「いやー、それはほんとごめん!実はまだちょっと言えない訳があってさ!」
レアル「まあ...とりあえず無事でよかったわ。」
その会話が終わった頃、フィスが部屋から出てくる。
フィス「おはよう、これで無事2人揃ったね。」
レアル「それで、会場ってどうやって行くんですか?」
フィス「ああ、移動に関しては....」
魔法陣がフィスの横に現れる。
フィス「こいつを通ったら一発だよ。」
レアル「ありがとうございます。スタッド、忘れ物とか大丈夫よね?」
スタッド「私は大丈夫!それじゃあ、早速行こう!」
シルファ「御二方!気をつけてくださいね!」
2人は魔法陣に入って行った。
そして、魔法陣は静かに閉じた。
フィス「....さて、こっちも仕事を始めるかな。」
シルファ「私は、何か料理の支度をしてきますね。」
魔法陣を抜けた先は、体育館のような場所の入り口だった。
入口では初老ほどの男性が受付を行なっていた。
受付「魔導士試験の参加者でしょうか?名前の確認をお願いします。」
レアル「レアル・スプリングです。後横の赤毛はスタッド・レビーです。」
受付「レアル...スタッド.....はい、登録されてますね。」
スタッド「じゃあ、早速行こ!」
受付「あ、少々お待ちを、会場では指示があるまでこれを着用してください。」
受付は後ろの木箱に積んであった、黒色のフードと、真っ黒のフェイスシールドを取り出した。
レアル「え...これは...?」
受付「指示があるまでは、これを着用しておいてください。
それと、同じく指示があるまでは魔法の使用も禁止です。」
受付「不正行為が発覚した場合、即刻失格となります。」
レアル「わ、分かりました...スタッド、あんたも。」
スタッド「面倒くさいなぁ....」
2人はフェイスシールドの上からフードを被った。
不思議なことに、視界には影響がなかったが、これでは誰が誰かを判別することはできないだろう。
受付「では、会場はこの建物ですので、間違わないように。」
レアル「ありがとうございます。」
2人は、そのまま会場に入った。
そこには、2人と同じくフェイスシールドとフードを被った魔導士見習い30人前後がいた。
1人で立ちすくむ者、あるいは数人で談笑するものなど、様々な者たちが、そこにはいた。
レアル「スタッド、絶対離れないでね?流石に分からないから。」
スタッド「分かっ...だぁ!?」
レアルの隣にいたスタッドにフードを被った誰かがぶつかった。
スタッド「あ..すいません!」
スタッドはそれなりに丁寧に謝った。
フード1「なんだよ、このガキが。」
男の声だ。フェイスシールドで少し吃ったが、スタッドが怒りを抱くのには何の問題にもならなかった。
スタッド「....はい?それがぶつかった人の態度ですかい」
スタッドは小声で言った。つもりだった。その言葉はレアルにも、フードの男にもしっかり聞こえていた。
フード1「んだとクソガキが!」
スタッド「いやいや、悪いのはあんただから!」
フード1「ああ!?お前なんぞ俺の奥義で速攻ぶち抜いてやんよ!」
レアル「ちょ、落ち着いて...」
レアルの静止を、この場の誰も聞いていなかった。
スタッド「ぶち抜く!?はは!結構な自信ね!あんたなんかこっちの魔法で木っ端微塵にしてやるわ!」
フード1「お前みたいなクソガキが...」
その時、別のフードが、男の頭を畳んだ扇子で叩いた。」
フード1「いった!?って、あんたかよ....」
フードの男はもう1人の右手に持つ扇子、
そして左の手に持つティーカップを見て言った。
立ち方からして、女性のようだった。
フード2「申し訳ありませんわ。彼は、少々自信家でして」
その物言いは、気品に溢れてはいるがどこか威圧感のようなものがあった。
レアル「あ、いえいえ、こちらこそうるさいのがすいません」
レアル(なんか独特な喋り方をする人だなあ...)
フード1「なんだよ...先に吹っ掛けたのはあいつだし、別にいいじゃねえか」
スタッド「いやいや!私は謝ったじゃんか!」
フード1「そもそも第一....」
その言葉を、フードの女が遮り、フードの男に諭すように言った。
フード2「おやめなさい、それ以上は見苦しいですわよ」
レアルがスタッドを見て、それに続ける
レアル「あんたも、その辺にしときなさいよ」
スタッド「はーい...」
フード1「っち...試験であったら覚悟してろよ....」
そう言ってフードの男は人混みへ歩いて行った。
フード2「重ね重ねのご無礼、申し訳ありませんわ」
レアル「いえいえ、こっちにも非はあるので...」
レアルはスタッドの方を見た。
スタッドは目を背ける。
フード2「では、わたくしも失礼させていただきますわ。
試験でのお手合わせ、よろしゅうお願いしますわ」
そう言うとフードの女も人混みへと歩いて行った。
レアル「なんか....不思議な人だったわね.....なんか、穏やかだけど怖いというか..」
スタッド「あいつ...次あったら覚悟してなさいよ....」
レアル(はあ....こっちはダメそうね)
そんなことを考えていると、会場に声が響き渡った。
「あー...あー....えー、魔導士試験参加の皆さんへご連絡です。全員が揃ったので、只今より試験の説明を行います。」
会場の声が、完全に静まった。




