第26話 それぞれの苦悩②
スタッドが帰った翌日
昼を過ぎた頃、レアルは、ベッドの上で目を覚ました。しかし、未だ声は出ない。
レアル(ああ...スタッドが上手く脱出させてくれたんだ...)
辺りを見渡す。近くにソファーと小さな机があるだけの簡素な部屋だ。
レアル(にしても、術式暗記にあんな弱点があったなんて...やっぱり最低限は自分で魔法を覚えるべきなのかな...)
脳裏にはベルの前で、必死に抵抗するスタッドが浮かんでいた。
そんなことをぼーっと考えていると、部屋のドアが開いた。フィスだ。
フィス「やあ、調子はどうだい?」
レアル(思った所で何も言えないんだよなあ...)
レアルは黙ったままフィスを見ていた。
フィス「なるほど、まだ傷は回復しきってないのか。なら、ある意味丁度いい。」
フィスが手に持っていた一冊の本をレアルに手渡す。
フィス「術式暗記....だろう?」
レアル「....!?」
手を震えさせ、手に持った本をベッドの上に落とす。
フィス「ああ、勘違いしないでくれ。むしろそれはありがたかったんだ。
"ちゃんと本を読むくらいの能力がある"って意味では」
レアルは話を聞きながら本を開く。それは、フィスが最初にレアルに見せた、登録の書かれた魔導書だった。
フィス「まあ、今日1日は動けないだろうし、それでも読んでゆっくりしていてくれ。んじゃ。」
そういってフィスは部屋を出ていった。
レアル(何もかにもお見通しだったわけだ....ただ、おかげで1つ分かることがある...)
魔導書を1度閉じて、自分の顔の前に持ち上げる。
レアル(術式暗記が記されているこの魔導書が何なのか....それが分かる!)
レアルは早速、魔導書の表紙を見た。本来なら、ここにタイトルがあるはずだ。
レアル(あれ、表紙が....黒塗りされてる...?)
レアル(いや、これ、そもそも表紙が真っ黒なんだ....)
その後もレアルは様々なページを見て回ったが、タイトルは愚か、著者や製本日付も載っていなかった。
レアル(とりあえず、登録だけでもちゃんと習得しよう...)
レアルは登録の魔法陣を見る。
レアル(うへえ...最近は術式暗記に頼り切りだったとはいえ、この魔法を覚えるのはやっぱり骨が折れるんだろうなあ....)
しぶしぶ、レアルは魔法を覚えるために、手帳と羽ペンを取り出そうとした。
レアル(あれ、手帳も羽ペンもない。.....まさかさっきの戦闘中に落としたかな...?)
手帳には校章や住所、ついでにレアルのメモなどが書かれていた。
レアル(まあ、大丈夫かな....それより、どうやって登録覚えよ....)
レアルは魔導書のページを見る。
レアル(....魔導書に直接魔力流し込んで覚える....?でも、それをやると書かれてる全部の魔法陣に反応して危ないしなぁ....)
レアル(....あ、術式暗記で浮かび上がらせた魔法陣に無理やり魔力をねじ込めば行けるんじゃない...?)
レアル(術式暗記!!)
魔導書から登録の魔法陣が輝きながら浮かび上がる。
レアル(いつもならこれから出る光に当たって、体に魔法を馴染ませるんだけど...)
レアルは魔導書を両手で持って天井へ投げた。
レアル(逆に魔力を更に与えて完全に体に馴染ませる!)
魔導書から、レアルに向かって光が伸びる。
レアル(魔力を伝えるなら...!風持線!)
レアルの手から、魔導書に向かってワイヤーが伸びる。
レアル(そして....重ね掛け...術式暗記!)
ワイヤーが緑色の光を帯びる。そして、それは魔導書に触れた。
魔導書の魔法陣が、より一層明るさを増す。そして、その光はレアルを包み込んだ。
ついでに上に投げた魔導書もレアルに降ってきた。
レアル(間に合って!風持線!!)
レアルは手から魔導書につながっていたワイヤーを用いて魔導書をソファーに叩き飛ばした。
ドン!と豪快な音が部屋に響き渡る。
レアル(さて、効果はあるのかな....登録!)
ソファーの上の魔導書の下に魔法陣ができ、魔導書はその中に落ちた。
そして、それはレアルの枕元に現れた。
レアル(やった...!これでとりあえず登録を覚えれた...)
「その魔法...準禁書どころか、禁書級の魔法じゃない?」
ふと、その言葉を思い出した。
レアル(そうだった。確かこの魔法のページは...)
術式暗記メモリード 魔導書に書かれし魔法文字を自動翻訳し、単語として魔力辞書などに記録する。仮に文字の解読ができなくとも、これを利用すれば簡単に魔術を起動することができる。
レアル(あった。この辺のどこかに...)
尚、この魔法は〇〇〇〇〇得〇〇と〇常に〇〇〇た〇、〇〇〇〇外との〇〇〇換は厳〇〇〇る
乱雑に黒塗りがされていた。
レアル(何が書いてあるのかもわからない...この本、本当に何なんだろう...)
そこに、フィスがやってきた。
フィス「やあ、その感じだと、登録は覚えられたのかな?」
レアルは頷いた。
フィス「了解。あ、その本を返してもらっていいかい?」
レアルは魔導書をフィスに差し出す。
フィス「ありがとう。それと、1つ大事な話があるんだけど。」
レアル(大事な話....?)
フィス「魔導士試験の日程が、1週間後に決まったよ。1次は2人とも無事突破できてたからね。次は2次...実践試験かな?」
フィス「君の体調からしても、この1週間は依頼とかをこなせる感じでもないだろうし、本番への調整をしていてくれ。あと、スタッドには僕から伝えておいたよ。」
レアル(1週間後....意外とすぐ先だなぁ....)
レアルは体調が治り次第、本番への調整を始めた。具体的には、既存の魔法の強化や、新しい重ね掛けの考案といったところである。
レアルは毎日魔法使いの里に通い、日が暮れるまで魔法の練習を繰り返した。
しかし、その1週間の間、スタッドがそこに現れることはなかった。
そして、魔導士試験の日は来た。




