第25話 それぞれの苦悩①
夕陽が家の数々を美麗な朱色に染め上げる中
スタッドが、ドアを蹴破りそうな勢いでフィスの家に入る。
シルファ「あれ?スタッド様、どうしました?」
何も知らないシルファは茶菓子の乗った皿を持って応答する。
スタッド「レ....レアルが...!」
スタッドは青ざめた顔をしながら言葉を出す。
シルファ「....レアル様に何かあったんですね!?」
シルファは茶菓子の皿を近くの机に置き、急いで奥の部屋まで走って行った。
シルファ「フィス様!!!!」
廊下中に叫び声が響き渡る。
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フィス「ん?どうかしたの?」
フィスの部屋にシルファが入ると、何食わぬ顔でフィスが出てきた。
シルファ「レアル様が....!」
フィス「レアルがどうしたんだい?
今、例の転生者を倒しに行ってるはずだろう?」
シルファ「それが...!スタッド様がすごく青ざめた顔で帰ってきて...!」
フィス「ふーん......分かった。すぐに向かうから、君は急いでベッドの用意をしておいてくれ。」
シルファ「分かりました!」
シルファは部屋を出て行った。
フィス「.....流石にまだまだ、未熟だったか。」
フィスは椅子から立ち、歩いて部屋を出て行った。
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フィスの姿が玄関から見えた。
スタッド「フィスさん!」
フィス「レアルはどこだい?」
フィスは落ち着いた口調で言った。
スタッド「こっちです!」
スタッドはドアを開け、外の花壇にもたれ掛かっているレアルまで案内した。
フィス「ほんと、中途半端に死んでなくてよかった。癒治宝回」
レアルの腹の穴がみるみるうちに塞がって行った。
フィス「完全な回復には、十数時間から数日かかる。それまではレアルはベッドで休ませておこう。」
フィスはレアル肩の方を持った。
フィス「疲れてるところで悪いんだけど、君は足の方を持って運ぶのを手伝ってくれ。」
スタッド「あ、分かりました」
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レアルをベッドに寝かせ、ようやくスタッドは一息ついて近くのソファーに腰掛けた
スタッド「はあ....まさか、異世界転生者があんなにも強いなんて...年だって私とあんまり変わらなさそうのに。」
フィス「むしろ、かなり弱い方でよかった。」
スタッド「え!?あれでまだまだ弱い方っていうんですか!?危うく殺されかけたのに」
スタッドは少し大きな声を出して言った。
フィス「まあまあ、落ち着いて。レアルが起きたらまずいしね?」
一呼吸置いて、フィスが話し出した。
フィス「まあ、僕も君を買い被りすぎてた所があったのかもね。レアルの言うことも今なら分かる。」
一瞬、部屋は静寂に包まれた。
スタッド「え....?」
フィス「確かにここまで逃げ切れたのは、君の再現魔法あってのことだよ。」
フィスはため息をつきながら言った。
フィス「だけどね、君にはレアルに比べて圧倒的に足りないものがある。」
スタッド「......一体、何ですか?」
フィス「それに気づくまでは、君は“荷物”だよ。」
フィスはドアを開け、音もなく廊下へと出ていった。
スタッド「.......」
数拍子置いて、呼吸を乱したフィスが慌てて入ってきた。
フィス「ごめん!カッコつけた先から悪いんだけど、「帰る時は言ってくれ」って言うの忘れてた!」
今度はドアを勢いよく閉めた。
スタッド「.......」
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陽が降り、再び昇った。
スタッドは1度家に帰宅し、1日は休むことにした。
ため息をつきながら街を闊歩する。今日は魔法学校も休みらしい。
スタッド「はあ.....結局どうすればいいんだろ.....」
目の前には図書館が見える。スタッドはボーッとしながら、その中に入っていった。
見慣れた....いや、忘れようの無い赤髪に司書が反応する。
ラーイ「貴方、失礼ですが“スタッド・レビー”さんですか?」
スタッド「はい?そうですけど」
ラーイ「貴方.......今出禁ですよ?」
スタッド「え?」
凍りついた空気が2人の間に走る。
ラーイ「いや“え?”なのはこっちですよ?まさか出禁になってる人が平然と入ってくるなんて」
スタッド「いやいやいやいや!私何かしました!?ここで魔法ぶっ放したりとか、本焼き尽くしたりとかしてませんよ!?」
スタッドは口早に返す。
ラーイ「.....忘れたんですか?貴方が未だに本の返却してないの」
司書は壁の貼り紙を指差した。
”本の返却、滞納中は出禁!“
スタッド「あー.........すみませんでしたぁ!!!!」
スタッドは図書館の入り口を全速力で走っていった。
ガラス張りのドアを突き破るような勢いでスタッドは飛び出す。
スタッド「風持線!」
図書館の外に出ると、空中にワイヤーを固定し飛び上がる。
そして、近くのアーケードの屋上に辿り着き、人々の上を走り抜ける。
アーケードを超えると、彼女の住むアパートが見えてくる。
彼女はもう一度ワイヤーを伸ばし、そこまで辿り着いた。
スタッド「はあ....借りた本....探さなくちゃ」
アパートの鍵を開け、自分の部屋へと階段を駆け上がる。
大雑把に掃除がされた廊下を走り抜け、ドアを開いた。
部屋の本棚には、昔読んでいた絵本が陳列されている。
スタッド「借りた本....借りた本.....」
スタッドは棚の中を見回った。埃を被った本たちの中に、1冊だけ綺麗めな本があった。
スタッド「あ、あった....」
1冊の小説が、彼女の手に握られていた。
スタッド「そういえば、2ヶ月くらい返してなかった....」
スタッドは部屋を出ようとした。
しかし、ふと、彼女は自分の背後を振り返った。
ソファーの上に、1冊の本が開かれて置かれていた。
スタッド「あれ...?こんな本持ってたっけ?しかも魔導書.....」
スタッドは小説を机に置き、その魔導書を見た。
そこには、1つ、魔法が載っていた。
スタッド「...............何.......これ」




