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第3話 2日目②‐特別講師との激突① Re write

レアル「....次は国語か....寝よっかな....」


スタッド「面倒くさいなあ....」


レアルとスタッドは気怠そうに教室へと足を進める。


スタッド「どうせ国語なんてさ、宗教の神がありがたいやら、崇拝がどうちゃらって...生きる上でそんなの関係ないよ...そんなことするくらいなら、魔導士になって強い魔法をガンガン打つくらいしたいな...」


レアル「どうする?うまいことして1時間さぼる?」


スタッド「賛成。それっぽい幻影魔法でも使って置いておけば、国語の先生じゃ気づきようがないでしょ!」


レアルたちが通っている魔法学校は、いわゆる自称魔法学校と呼ばれるもので、多少魔法に関する授業がある程度で、講師たちは基本的に魔法を扱うことができない。ましてや、国語などの基礎教科は魔法とは関係もなく、魔法を使うことはおろか、魔法で起こった事象を魔法だと認識ができる教師すら稀である。


レアルとスタッドは教室に入ると、

自身とそっくりな幻影を召喚し、席に腰掛けさせた。

そして、自身らは透明化の魔術を使用して、

廊下をゆっくりと歩いていく。


無事校庭まで辿り着き、そのまま校門を越え、朝入ってきたばかりの白樺の門を抜けた。

丁度そこで、透明化の効果時間が切れる。


スタッド「うまく行ったわね」


レアル「そうね。とりあえず1時間くらい寝とこ...」


レアルはそういうと、近くの芝に寝転がった。


スタッド「早いわね...じゃあ私も寝よっかな!」


「君たちがこの魔法学校の生徒かい?」


スタッドが芝に転がろうとしたとき、不意に男性の声がする。


スタッド「え?」


振り返ると、漆黒のシルクハットとスーツを着こなした、20代前半ほどの男が立っていた。


スタッドは一目見て、それが3、4時間目の授業の特別講師ではないかと思い至った。


「どうやら、そこまで堂々と話すこともできない状況みたいだね。」


特別講師はそういうと、レアルの方を見た。


「この子も君と一緒に抜け出したのかい?」


落ち着いた口調でスタッドに聞く。


スタッド「は...はい...」


「なるほどね、君たちには、中々期待ができそうだよ。じゃあまた。」


特別講師は門をくぐり、奥の方へ歩いていく。

途中で一度振り返り、


「あ、このことは先生には報告しないから、安心しといて」


最後にそう告げ、門の奥へと消えた。


スタッド「...なんかいかにも魔導士って感じ....私もあんな風に早く魔導士になりたいな...」


そうぼやいて、芝の上に転がった。


30分ほどして...


スタッドが目を覚ます。


スタッド「あ、やばい、時間間に合わないかも..」


彼女は太陽を見た。

正午である。

国語の時間はとっくに終わっている。なんなら特別講師との授業すら終わりかけていた。



スタッドは急いでレアルに駆け寄る。


スタッド「起きてレアル!多分寝過ぎた!!」


レアル「....もう夕方まで寝てない?」


レアルはもう既に起きていた。

もっと言えば悟りを開いていた。


スタッド「開き直るなああ!」


全力でレアルの頬を平手で叩く。


レアル「痛っ!?そこまでする必要ないじゃん!」


スタッド「特別講師の人、さっき会ったんだけどなんかすごかったんだって!」


2人は急いで校庭へ向かう。

もちろん、透明化の魔法を使って。


そして、2人が校庭にたどり着いた時、丁度例の特別講師と魔法学校の生徒がひとしきり戦闘を終えたところだった。


特別講師は、透明化している2人に気付いたのか、一見何もない方向を見る。


「やあ、次は君たちとかな?」


近くにいた講師が困惑する。


「あのー、フィスさん?そこには何もないですよ?」


特別講師は内心呆れつつも、講師に言った。


「...そこを見ておいて下さい」


そこから、フェードインするかのようにスタッドとレアルが現れる。


フィス「やあ、体調は万全かい?」


特別講師は、ここまで生徒たちと戦闘をした後だというのに、呼吸1つ乱れていなかった。


スタッド「...はい」


空間に、張り詰めた緊張が走る。


レアル「....この人が特別講師?なんか思ってた数倍若いけど。」


レアルは小声でつぶやいた。


フィス「今回の特別講師のフィスです。よろしく。」


レアル「ああ....あの補助魔法の。」


レアルはとりあえず、知っている情報で会話する。


フィス「正確にはまたちょっと違うんだけどね」


フィスとレアルたちの会話に水を差すように、講師が口をはさむ。


講師「とりあえず君たち、あとで職員室に来なさい。そもそも授業を欠席するとは、生徒の風上にも置けん!」


フィスは講師に背を向け、またもや呆れたような顔をする。


フィス「...そうだな、君たちのどっちかが僕に勝てたら、僕が先生に掛け合ってみよう。」


講師「はい?」


講師は突然の提案に困惑している。


フィス「大丈夫でしょうか?先生」


フィスは講師に対して強い口調で言った。


講師「いや、まあ..大丈夫ですけど...さすがに無理がありますよ...」


フィス「僕の勘ですが、この子たちは、その気になれば相当強い気がするんですよ。」


講師「はあ....あ、いいかお前たち! 1対1だからな?それだけ間違えるなよ!」


せめてこの場を取り仕切ろうと、講師が強い口調でレアルとスタッドに威圧する。


フィス「じゃあ、最初はどっちからくるかい?」


スタッド「レアル、私は職員室送りは嫌よ、だから、ここは私から行くわ。できる限りあの人のスキルを探ってみる。」


レアル「分かったわ。まあ、あなたが勝っちゃたら私の出番はなくなっちゃうけどね」


レアルはなんとなく言葉の意図を読み取り、スタッドに返した。

スタッドはにやりと笑う。


スタッド「安心して....それが目的だからね!」


フィス「話は纏まったかい?」


スタッド「私があなたを倒して見せるわ!」


スタッドが勢いよく飛び出す。そして、右腕を大きく体の内側に曲げる。

その動作の後、彼女の右腕の周りの空気が振動する。


それは彼女の右腕を軸として激しく渦巻いていた。


レアル「早速、必殺技を使ったわね...やっぱり、安直だけどそれが一番効果的!」


彼女の右腕の周りの空気の嵐が、重機が装備しているような刃の形に整う。


フィス「...やっぱり期待通りだ」


スタッド「風旋刀(エアロスラスター)!」


スタッドが勢いよく右腕を振り下ろし、それに合わせて、空気の刃がスラッシュウェーブのように地を這いながらフィスに向かう。


フィス「確かに、当たったら痛そうだ。」


しかし、彼は全く避けようという動きを取らない。

もうすでに刃は彼の目と鼻の先である。


フィス「...スティール」


轟音の中、微かにフィスが魔法を唱えたのを、その場にいたレアルだけが聞き取った。」


そして、その効力なのだろうか、空気の刃はフィスの目の前で急に失速し、塵となって消えた。


フィス「なかなかやるね」


スタッド「まだまだ!風持線(ウイングワイヤー)!」


スタッドは左手からワイヤーのようなものを出し、それを空中に固定する。


スタッド「風旋刀(エアロスラスター)!」


今度は、空気の嵐がワイヤーに巻き付き、大きな鞭のようになった。


フィス「同時発動はしてないが、魔法に魔法を纏わせるとは...かなりの使い手だ..!」


フィスは思わず笑みをこぼす。


スタッド「これが私の...風鞭舞(ワイヤーダンス)!!」


ワイヤーが固定から外れる。そのままスタッドはフィスに突撃しながら、ワイヤーを振り回し始めた。その時だった。


フィス「移動奪取(ムーブスティール)


今度ははっきりと聞き取れた。

フィスは先ほどと同じ呪文を唱えていた。


スタッド「あれ...私の呪文が!?」


スタッドの発動していたはずのワイヤーが、またも消えていた。


スタッド「まだま....だ....」


スタッドはその場に倒れこんだ。恐らく高威力の呪文を連発した反動で、魔力が底を尽きたのだろう。


フィス「この戦いは僕の勝ちだね。すみません、講師さん。」


講師「はい..」


講師はすっかり立場をわきまえて、スタッドをベンチに運んで行った。


フィス「彼女をそこのベンチに横たわらせてあげてもらえませんか」


講師「わ、わかりました。」


フィス「さて、さっき寝てた子だよね?」


レアル「はい、まあどっちも寝てましたけど。」


フィス「さっきの試合で分かったよ。彼女は強い。そして、君のその佇まいを見るに、君もそ     れなりに実力者なんだろう?」


フィス「試してみなよ。今の実力を。」


レアル「言ってくれますね...まあ、どちらにせよ職員室への呼び出しをかけて負けられない状     況...勝たせてもらいますよ!」


しかし、その言葉とは裏腹に、レアルは一向に呪文を唱えず、その場に立っているだけだ。


スタッド「レアル...?何してるの?」


講師に至っては茫然としている。


しかし、フィスは違った。


フィス「なるほど、移動奪取(ムーブスティール)に気づいて、あえて呪文を唱えないとは、君は彼女以上のようだ。こちらもそれなりに本気でいかないと勝てなさそうだよ。」


フィスが感心したように言う。


レアル「移動奪取(ムーブスティール)...対象の動きを一瞬だけ消し去るスキルでしたっけ。

    空気の刃の勢いがなくなって霧散したのも、スタッドが突然空中で停止したのも、そ     の影響ってことですよね。」


フィス「観察眼もあの子より優れているみたいだね。その通りだ。」


フィス「だけど、観察眼があるだけが魔導士じゃないよ。」


フィスが呪文を唱える。


フィス「鎧兵造兵(カスタムナイト)!」


彼の横から、全身が鉄でできているかのような、重装備に両手剣の騎士が現れる。


そして、重装備の騎士は、何度もふらつきながらも、その巨体に見合わぬ速さで、レアルの方に突撃してくる。


しかし、それを見たレアルは自身の得意としていた魔法をぶつけた。


レアル「火炎砲撃(ブレイズ・キャノン)!」


巨大な火炎の球が、重騎士を吹き飛ばし、そのままフィスに突撃する。


フィス「厄介な呪文だよ。まったく。移動奪取(ムーブスティール)!」


彼は言葉とは逆に笑顔だ。そして、火炎球は勢いを失い、霧散した。


レアル(やっぱり、この人の魔力は底知れない....!」


フィス「さあ、次はどう来るかな...?」

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