第16話 2人の行方⑤
レイスとエフィラはその場に崩れ落ち、倒れ込んでいた。
レアルは震えた声でただ一言、
レアル「え.....?」
それしか声に出なかった。
フィルド「最初から、魔力を完全に吸収しきっちまえばよかったんだ。魔力が切れれば、誰でも気絶する...!」
フィルドは少しふらつきながら勝ち誇ったように話す。
レアルは呆然としていた。と言うよりこの状況を全く予想していなかったからだろうか。混乱して立ちすくむだけだった。
フィルド「これで厄介な2人は始末した。残っているのはろくに魔法を撃つ魔力も残っていない魔導士、そして...」
フィルドはにやりと笑って言った。
フィルド「実戦経験もなさそうなひよこ魔導士だけってわけだ。どうする?今ここで自決して楽に死ぬか?」
レアルは動けなかった。今初めて、”死ぬかもしれない“と言う恐怖に押しつぶれたのだ。
フィルド「話せもしないのかよ。まあ、楽に逝かせてやるから安心しろよ。風圧弾」
フィルドの目の前の空気が揺れる。そして、1点に収束してサッカーボールほどの球になる。
フィルドは特に感情も籠もっていない言葉を言い残す。
フィルド「あばよ、哀れなひよこ魔導士さん」
風の球はレアルに直進する。
しかし、レアルの目にそれは映っていなかった。
彼女は依然ぼーっとしているだけだった。
フィス「移動奪取!」
風の球はレアルに触れる寸前で勢いを無くして消えた。
フィスは残っている気力を振り絞って言う。
フィス「レアル!落ち着け!まだ君は戦える!」
フィス「レアル!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
???「....ここは」
目の前にはまた死体の山が転がっている。
光はない。
しかし、眼を凝らすと少しは前が見える。
目の前にあったのは、よく知る者たちの姿だった。
???「ああ....やっぱり.......」
眼を瞑った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
レアルは我に帰った。
目の前には、風の球が飛んできている。
フィルド「今度こそ、消し飛べ」
本来なら、確実に反応できない距離だっただろう。
しかし、レアルは瞬時に1つ魔法を放った。
レアル「....登録!」
風の球を魔方陣が吸収する。そして、レアルの横に魔方陣が現れ、風の球を吐き出す。
フィルド「なんだよ急に!」
フィルドは焦りながらも、冷静に自分の前に霧を固め、壁を発生させる。
風の球は壁にぶつかり、溶けるように勢いをなくす。
フィス「よくやった!」
フィスは少し笑っていた。余裕があったのだろうか。
そしてそのまま、安堵したかのように眠った。
対照的に、フィルドからはどんどん余裕は無くなっていった。
フィルド「ったく.....魔導士ってのは本当に面倒くさいんだな....!」
レアル「さっきまで戦意喪失してたから何とも言えないけど.....」
レアルは決意のみなぎった表情で言った。
レアル「今の私なら、あなたを倒せる!」
フィルド「舐めるなよ....このひよこ魔導士が!」
フィルドは自身の右腕に霧を固め、弓と矢を作り出す。
フィルド「俺の切り札で、苦しみながら死ね!....霧囲弓撃!」
フィルドが弓矢を引き、レアルに向かって放つ。
矢は回転しながらレアルに向かって飛んでいく。
レアル「登録!」
レアルは自分の目の前に魔方陣を出す。
フィルド「そうやって皆死んでくんだよ!」
レアルは周りを見渡す。
霧の中から、レアルを取り囲むように矢が飛んできている。
レアルはリアクションも取らず素早く呪文を詠唱する。
レアル「火炎砲撃!」
レアルは自分の真後ろに炎の球を叩き落とす。
レアルは魔方陣ごと目の前に吹っ飛んだ。
目の前から飛んできていた矢は魔方陣を抜け、レアルの真横から別の魔方陣を抜けフィルドの方に飛んでいく。
フォルドは再び霧の壁で矢を受ける。
レアルは地面を少し転がり、フィルドが壁で矢を受ける間に立ち上がる。
少し傷ついてはいるが、まだまだ戦える状況だった。
しかし、霧による魔力の減少も込みで、もう大技を連発するほどの魔力は残っていない。
レアル「霧をどうにかしないと...!」
フィルドは怒気を込めて言った。
フィルド「マジで面倒臭いな、ひよこの癖して。」
レアルも強く言い返す。
レアル「誰だって死にたくないわよ!」
フィルド「知らねえよ!さっさと死にやがれ!」
フィルドは再び右手に弓と矢を生成する。
そしてその間に、レアルはふと思った。
そういえば、前も霧を使う敵がいた
そう、ライスケークである。彼は滝を生成することで発生した霧をそのまま凍らせることで、別の攻撃に利用していた。
レアル「やるしかない!冷凍と.....」
フィルド「なにごちゃごちゃ言ってやがる!!霧囲弓撃!」
レアルの周りを囲みように霧の中から矢が放たれる。
レアル「これだ....!風持線で重ねがけ!」
レアル「寒波持線!」
レアルは手から数mほどの氷のワイヤーを出す。
そして、そのワイヤーをまるで鞭のように振り回す。
周囲の霧が、瞬時に凍りつく。そして、周りから放たれた矢もまた、氷塊となり勢いを失う。
レアル「冷凍と登録で重ねがけ...!」
レアル「氷結登録!」
レアルの真上に、氷の結晶のような魔方陣が現れる。
そして、レアルの真上から降ってきていた氷塊たちは、その魔方陣を抜けて、より大きな氷塊となってフィルドの上に現れた。
フィルドは自身の切り札を攻略されたことに、若干の焦りを感じていた。
フィルド「だからどうした!霧があれば俺は無敵だ!」
フィルドの真上に、霧の壁が現れる。
氷の矢は霧の矢に阻まれる。しかし、霧に吸収されているわけではないため、フィルドが急いでその場を離れると、壁は霧散し、氷の矢は地面に突き刺さった。
フィルドは怒気を通り越して、憎悪を込めた声で言った。
フィルド「ひよこ如きが...!俺の切り札を攻略しやがって!」
フィルドは目の前に霧を集める。
その濃さは先ほどの霧の魔人を彷彿とさせるほどだった。
フィルド「この霧で、消し飛びやがれ!!!」
フィルドは霧の砲撃をレアルに向かってとてつもない勢いで放つ。
レアルは思った。
もう魔力はそこまで残っていないし、魔法を防御と攻撃。両方に使わなきゃ行けない....!
.....でも、多分 氷結登録はもう通用しない。
レアル「そうだ!火炎陣と火炎砲撃を重ねがけ!」
レアルの右手から、火炎砲撃のそれとは比較にならない炎を纏った、火炎の球....いや、太陽のような迫力すらある炎が生まれる。
レアル「.......超炎砲撃弾!」
レアルの手からそれは放たれた。そして、放ったレアルもまた、黒焦げになりながら後ろへ大きく吹き飛んだ。
霧の弾丸など、まるで相手にもならないかのように消し飛ぶ。
フィルド「ひよこの魔術じゃねえ...!ふざけんなよ!俺はこんな所で死にたくねえ!」
フィルドは目の前に霧の壁を生み出した。
しかし、炎の前にそれは全くの意味を持たず、容赦なく消し飛んだ。
その後、その場所には男の断末魔が響き渡った。
レアル「ん....」
レアルが眼を覚ましたのは、宿屋のベッドの上だった。霧はもうない。
シルファ「あ、レアル様の目が覚めました!」
シルファが、そこにはいた。
フィスとレイスが歩いてくる。
フィス「まあ、結構色々と言いたいことがあるけど、とりあえずはお疲れ様、君のおかげで結構な命が守られた。」
レイス「にしても、フィスの家で倒れてた時もそうだが、嬢ちゃん毎回黒焦げになってるな。火傷治し持って来といてよかったよ。」
レアル「さっきの敵は...どうなったんですか?」
フィスは淡々と言った。
フィス「即死、だろうね。君と違って体中黒焦げの大火傷に、体が一部溶けてた。とても学生が見るような状態じゃないよ。」
レアル「そうですか...」
レアルは少し悲しみつつ返した。敵とはいえ、自分は人を殺したのだ。
フィス「悔やむことはないよ。所詮はこの世界の存在じゃないんだ。君はむしろ英雄とすら言える。」
レアル「分かってるんですが....結構、心に来るものがありますね...」
フィス「....まあ、落ち着くまではしばらく休むといい。僕もちょっとやらないといけないことがあるしね。」
レアル「分かりました....」
レアルは再び眠りについた。




