第15話 2人の行方④
フィスの言葉に、場は静まり返った。
レアル「.....異世界転生者って、なんですか?」
フィス「ああ、レアルは知らないのか。一言で言うなら
“人の形をした化け物”だね。」
レアル「化け物....?」
レイス「俺たちとは格が違う能力を持ってるやつらのことだ。」
エフィラ「ええ、彼らには“魔法”を超えた力が宿っているの。その名を、顕現した魔術という意味を込めて、
顕魔
エフィラ「....顕魔は、分かりやすく強いものから使いこなすことで厄介になるものまで多種多様なの。2つ、共通する点があるとすれば.......」
エフィラ「異世界転生者は基本的に自分の顕魔を完全にコントロールできる事。そして、対策をしなければ私たちはまず間違いなく顕魔を突破できないことよ。」
レアル「突破できない...!?そんなに恐ろしいものなんですか...?」
レイス「恐ろしいなんて物じゃないな。俺たちにとっちゃ、トラウマみたいなもんだ。」
フィス「ともかく、敵は異世界転生者と決め打ちしてもいいだろう。と言うかその覚悟で行った方がいい。レアルも、できる限り帰った方が身のためだ。」
レアル「え?」
フィス「例え君がここで死んでも、俺たちが助けられる保証はほとんどない。って事だよ。それでも来るかい?」
レアルは黙り込む。
フィス「まあ、何も今すぐ決めろとは言わないよ。とりあえず今日1日はここで休もう。」
エフィラ「少なくとも誰か1人は起きておく必要はあるだろうけどね。」
エフィラが冷静に返す。
フィス「まあ、そりゃそうだね。とりあえずさっきまで寝てた僕がしばらくは起きてるよ。」
レアルとエフィラはそれぞれ違うベッドに横たわり、レイスは床に転がった。
数分後
レアルとエフィラの寝息だけが、部屋に聞こえる。
レイス「...なあ、フィス。」
フィス「なんだ、まだ寝てなかったのか。」
レイス「まあ、それはいいんだが、今回の顕魔、霧が関係してるんじゃないか....?」
フィス「....何か根拠があるのか?」
レイス「エフィラがさっき魔物の調査をしに行ったんだが、その時に出た魔物がおかしかったって言ってたんだ。」
フィス「....ほう?」
レイス「本来霧の中なら、それに合わせた水属性の魔物が出てくるはずだろ?」
フィス「まあ、そうだな。これだけ霧が濃ければ、水属性なんかの魔物が大量に湧いてもおかしくはない。」
レイス「なのに、出てきた魔物は全て地属性か木属性だったらしい。いくら森だろうが、これはおかしくないか?」
フィスが”お前にしてはやるな“と言う表情で答える。
フィス「確かに、これが自然の霧なら、その湧き方は中々信じ難い話だな。」
レイス「んで、こっからがもう一個の根拠なんだが、その後に俺はエフィラの魔力で、魔力が動力の小さな人形を起動させたんだ。それでそいつの電池の減り具合を見てみたんだが、30秒と持たなかった。」
フィス「通常の稼働時間は?」
レイス「1日だ。つまり、俺が言いたいことは分かったな?」
フィス「霧から魔力を吸い取るのが顕魔の効果って考察か。一応、記憶はしておこう。」
レイス「ありがとよ。んじゃあちょっと俺も寝るわ...」
そう言ってレイスは顔を壁側にやった。
フィス「......いずれにせよ、時間がない」
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レアル「ん....?」
レアルが眼を開けると、目の前には霧が広がっていた。
レアル「霧...!?」
レアルは慌ててベッドから体を起こす。
???「風裂刀!」
部屋の外を風が吹き荒れる。窓がカタカタと激しく鳴り、
その音で、3人は完全に眼を覚ました。
エフィラ「いくらフィスでも、1人で異世界転生者はきつい!」
レイス「まさか宿屋の中にまで来やがるとは....!」
3人はエフィラを先頭にして階段を降り、カウンターの前にあるドアを勢いよく開く。
その先では、黒髪の寝癖だらけの男が、面倒くさそうにフィスと相対していた。
???「あんたはもうほとんど魔力が残ってないんだ、無駄に足掻かずにいい加減死んでくれないか?」
フィスは見た目的には先ほどの宿屋での姿とあまり変わりなかった。しかし、驚くほど疲弊しており、おそらく魔力も切れかけの状態だった。
フィス「面倒くさいことをしてくれるね....」
エフィラはフィスではない方の人影に向かって魔法を放つ。
エフィラ「簡易雷撃!」
エフィラの手から雷が迸った。
???「もう起きたのかよ。」
男はエフィラに向かって石のようなものを勢いよく投げる。
すると、石がエフィラに向かうにつれ、その石を中心として霧が集まって魔人のような実体となった。
そして、魔人は片手で雷を受け止める。
レイス「それがお前の顕魔か!」
???「顕魔?ああ、俺の霧魔幻術のことか」
レイス「やっぱり霧の能力だったのかよ!」
???「ああ、そうだよ。そんだけ分かったなら、ここは穏便に死んでくれよ。俺はさっさと帰って妖精達を愛でたいんだ。」
レアルは思った。
あ、やばい人だ。と
エフィラ「残念だけどその妖精を返してもらうまで帰れらないのよ!」
エフィラは背中につけていた剣を素早く抜く。
エフィラ「雷鳴撃!」
柄から剣先まで、剣がバチバチと雷を纏う。
男は舌打ちして言った。
???「....ミストサタン、やれ」
霧の魔人がエフィラに向けて突撃する。
フィス「まずい!鎧兵造兵!」
フィスの横から、重装備の騎士が霧に魔人に向けて突撃する。
霧の魔人は、素早く振り向き、騎士の腕を掴んだ。
そして、その直後、騎士は力なくその場に崩れ落ちた。
レアル「え!?魔力が吸われたの!?」
フィス「やっぱりか!この魔人...いや、この霧は、魔力を吸う性質がある!」
エフィラが急いで距離を取る。
エフィラが焦りながら話す。
エフィラ「これじゃ迂闊に斬撃や魔法を打ち込めない...!」
???「はあ、やっと分かったか。まあ、モタモタしてたらそれはそれで魔力が切れるから、お前らは詰んでるんだけど。」
???「ま、さっさと死んでくれ。」
レアル「殻炎砲撃!」
レアルの目の前に魔方陣が現れる。そして、そこから炎を纏った流星のような岩石が霧の魔人に突撃する。
レイス「フィス、ちょっとこっちに来い!」
レイスがフィスを呼ぶ。
幸い、その間男はレアルの放った殻炎砲撃に目を奪われていた。
魔人が岩を勢いよく壊す。魔人は未だ体勢を変えず立ちすくんでいた。
レアルも焦る。
レアル「本当に魔法が通用しない...!」
???「あんたも無駄なことするなよ。さっさと死ねって。」
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フィス「どうした?」
レイス「........」
レイスはフィスに耳打ちした。
フィス「.....行けるのか?」
フィスは不安そうにレイスに尋ねる。
レイス「任せとけよ。」
レイスはその言葉とは裏腹に、顔に一切の慢心がない。
フィス「分かった。」
男がようやくフィスたちの方を見る。
???「ん?何考えてるか知らないけど、悪あがきはやめとって言ってるだろ。」
レイス「悪あがきかどうかは....」
レイスはゆっくりと立ち上がると、霧の魔人に向かって
一気に駆け出す。
レイス「これを見てから決めるんだな!!」
レアル「レイスさん!?」
エフィラ「あれを持ってるってことは...なるほどね!」
エフィラの剣が再び雷を纏う。
レイスの右手に握られているのは、探知に使っていた赤い石だった。
レイス「スカイ....ガーネット!!!」
レイスは赤い石を霧の魔人の体に押し当てる。
フィス「移動奪取!」
レイスが赤い石を押し当てたところが、そのまま空洞になる。
レイス「エフィラ!あとは任せた!」
レイスは魔人の横に飛び退くと、そこには霧を集めていた石までの空洞があった。
そして、エフィラも既に技を発動する用意ができていた。
剣を魔人に向け、魔法を唱える。
エフィラ「雷突!」
剣から鋭い雷が発射される。
そして、雷は正確に霧の魔人の中心部にあった石を貫いた。
その石が壊されると同時に、魔人も言葉通り霧散した。
レアルは、一連の流れを立ち尽くしながら見ていた。
レアル(すごい連携だ...!これが昔から一緒に戦っていた人たちの力!)
男はわなわなと震え出す。
???「まさか移動奪取で霧が動くのを封じてから、スカイガーネットで魔力を一気に吸収して空洞を作ってきやがるなんて.....ふざけるなよ?」
そして、ドスの聞いた声で言った。
???「おい、お前らは俺に殺されるだけの雑魚でしかねえんだよ。それなのに貴重な魔法石使わせやがって....」
エフィラ「だったら最初から妖精を解放してくれたら良かったんじゃない?」
男が怒りを込めた声で低く話す。
???「うっせえな、俺は妖精を愛でたいっつってんだろ。どんだけおばさんでも、何年か経てば美少女になるってんだ。こんなの逃すわけねえだろ....」
レイス「お前さあ....動機がクズにも程があるだろ....」
レイスが呆れて言うと、男は激昂した。
???「黙れ!......ああ、冥土の土産に教えてやるよ。俺の名前はフィルド・ミドル.............お前達はこれから最も苦しめて殺す!」
レイス「エフィラ、まだ行けるか?」
エフィラはまだまだ元気そうに言う。
エフィラ「当然よ、ここからが勝..........」
エフィラが急にその場に倒れ込む。
レイス「なっ....てめっ....」
レイスが殴り掛かろうと構えるも、またもやその場に倒れ込む。
男は肩で息をしながら、勝ち誇ったように言った。
フィルド「はあ....はあ....最初からこうすりゃよかったんだ。これで後戦えるのは1人だけだしな...」




