第13話 2人の行方②
3人は魔法陣を通り抜けた。そして、その先は薄暗い下水道の通路だった。
レイス「うわ、最悪じゃねえか。こんな薄汚れた場所に魔法陣張り上がって...」
レイスがひきつった顔で吐き捨てるように言う。しかし、エフィラは逆に水を得た魚のような眼で話す。
エフィラ「いえ、むしろラッキーかもね。少なくともこの上はダンジョンとかじゃない。街ってことなら、それなりに安心できるかも。」
レイス「それなら最初から街に出してくれよ....まあいい、とりあえずスカイガーネットを追うぞ。」
レイスは相変わらず顔は引きつったままだが、冷静に下水道の奥へ飛んでいく赤い宝石を指差した。
レアル「ところで、ここって結局どこなんですかね?街ではあるんでしょうけど...」
レイス「んなこと今はいいから、さっさとあの宝石を追うぞ!」
3人は宝石の方へ歩き出した。
少し気まずかったのと、下水の匂いに耐えかねて気を紛らわしたくなったのが重なったレアルは、レイスとエフィラに尋ねた。
レアル「御2人って、師匠と、どんな関係なんですか?」
レイスが面倒くさそうに答える。
レイス「腐れ縁だよ。ガキの時からの。」
エフィラはレイスに対して呆れたようにため息をし、補足する。
エフィラ「フィスとは魔法学校の頃からの幼馴染なの。昔は魔法学校が少なかったから、いろんな地域の子が一か所に集まってて、私たち3人もそれぞれ違うところの出身だったわ。」
レアル「そうなんですか...」
レイスがさらに付け足す
レイス「昔からあいつは人一倍芸達者でよ...ちょっと下級呪文が使えたからって理由で入学した俺なんかとは比較にならないくらい強かったんだよ...」
レイスは、心の底からの本音を吐き出すかのように話す。
エフィラ「あ、私たちが仲良くなったきっかけは確かダンジョン探索の課外授業とかじゃなかった?」
エフィラはまるで懐かしい過去に思いを馳せるかのように話す。
レアル「そんなのあったんですか!?」
レイス「今はないだろうな、ほんと、頭の痛い話ばっかだよ....面倒くせえ。」
エフィラ「まあまあ、それで、2人1組でダンジョンを探索してたんだけど、2人で魔力を入れないと開かない扉があってね。」
エフィラ「その時は私とレイスで組んでたんだけど、レイスの魔力が低すぎて扉が認識してくれなかったのよ。」
エフィラは笑いながら言った。
レイス「だってよお、その直前まで魔物とドンパチやって、俺もうほとんど魔力が切れてたんだぞ?」
エフィラはレイスの発言をスルーしながら話す。
エフィラ「それで詰んじゃって困ってたら、後からフィスが1人でやってきたのよ。なんでも、もう一人の相方が魔物の炎に焼かれて死んじゃったらしくてね。」
レアルは驚きと戸惑いが混じったような声で言った。
レアル「魔法学校の授業で死人が...!?」
エフィラはそれとは対極に淡々と返す。
エフィラ「あら、今はそういうの無いのね、私たちの時は毎月誰か死んでたけど、少しは良くなったのね。」
レアルはぞっとした。今まで散々言ってきた、"魔法学校の授業が簡単すぎる"ということには、このような過去があったのかと思った。
エフィラ「話を戻すわ。えーっと、どこまで話したっけ。」
レイス「フィスが来るとこまでだったぞ。」
エフィラ「ああ、そうそう、結局フィスを交えて、3人で強引に突破したのよ。それからよね。私たちが結構絡むようになったのって。」
レイス「そうだな...っと、そろそろ地上に出るらしい。何があるか分からないから、特に嬢ちゃん、覚悟しておけよ。」
レイスは梯子を上って、上にあったマンホールを開ける。そしてそこから、3人は地上に出た。
そこは、空は巨大樹たちの葉に覆われ、薄い霧のようなものに全体が包まれている、森の中に作られた街だった。
レアル「何ここ...すごい幻想的.....」
エフィラ「まるでおとぎ話の世界みたいね」
レイス「....スカイガーネットが止まっていないか?」
赤い宝石は、街に出た途端動きを止めた。そして、力尽きたように地上に落下する。
レイス「おいおいおい、なんで動きがバグっちまってるんだ!?」
エフィラ「もしかして...この霧のせいかしら。少しだけど、いろんな人の魔力を感じるわ。」
レイス「てことはフィスがここにいるのは間違いねえんだな?」
レアルは思った。
レアル(この2人、状況の把握が早すぎる...!これがプロの魔導士たちの力なんだ!)
レイス「....てなわけで、どうだ嬢ちゃん?」
レアル「え?」
レイス「ったく、重要な話だからしっかり聞いとけよ?もう一回言うと、」
エフィラが遮る。
エフィラ「要はあなたにこの街の人たちから話を聞いてもらいたいのよ。」
レアル「私がですか?」
エフィラ「私たち魔導士ってのは、身分上結構怪しまれたりするの。レアルちゃんなら、怪しまれることなく街の人たちから話を聞けると思ってね。」
レアル「あなたたちはどうされるんですか?」
エフィラ「そうねえ、この辺の魔物でも狩って、適当に調査でもしようかしら。」
レイス「じゃあ俺は、スカイガーネットを少し修理させてもらっとこうかな。」
レアル「分かりました。じゃあ、早速行ってきます!」
レアルは舗装された石畳の上を走っていく。
遠ざかっていくレアルを見ながら、エフィラが話す。
エフィラ「いいわね、若さって。私たちにもあんな時代があったのかしら。」
レイス「そりゃあるだろ、それこそダンジョンの時なんて、お前がガンガン行くせいでどんだけ死にかけたか....まあ、昔話はまたフィスも交えてやるか。」
エフィラ「そうね。それじゃあ、それの修理は頼んだわよ。」
エフィラは赤い宝石を指差す。
レイス「おうよ!お前こそ簡単に犬死にするんじゃねえぞ!」
エフィラ「誰に向かって言ってるのかしらね!」
エフィラ「簡易召喚!」
エフィラの目の前に、鞘に納まったショートソードが現れる。エフィラは右手でそれを取り、左手で剣を抜いた。
エフィラ「魔導士にして魔導剣士の私は、そうやすやすと負けないわよ?」
レイス「フラグにならないといいな!」
エフィラはレアルが来た方と逆の方向を歩いて行った。
レイス「さてと、んじゃあ俺はとりあえず修理するかね...」




