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魔王軍襲来!

俺はバルコニーに向う。

「お待たせしました。」

「いえ、いいんです。」

椅子に腰掛ける。

「あなたの冒険の話、聞かせてくれませんか?」

「ええ、いいですよ。」

俺はこの世界に来てからの冒険について話した。それにいちいち反応してくれるので、話していて楽しい。

「あなた、短期間で随分といろいろ経験なさったのね。」

「ええ。体が良くなってからは時間が経つのが早く感じるようになりました。」

「そうですか。それがきっかけで……。」

「きっかけさえあれば、なんでもできるものです。」

「きっかけというのはなかなか来ないものです。私はこの帝都に縛られていますから。」

と、悲しそうな目をする。

でも、俺には共感することしかできない。

さすがに王族を旅に連れ出すわけには行かない。

「すみません、なんか愚痴になってしまって。」

「いいんですよ、愚痴ならいくらでも聞きますから。」

そこにおじさんがやってくる。

「話はどうかね?」

「とても楽しいです。リョウ様は私の持っていない素晴らしい経験をたくさんされている。」

「はっはっはっ。遼くんも活発的になったなぁ。本当、体が良くなって良かったなぁ。」

バルコニーに笑い声が響く。

俺はふと外の景色を眺める。晴れ渡る晴天に一つの黒点が見える。

「おじさん。あれはなんですか?」

「おや、なんだろう……!あれは!」

おじさんが血相を変える。

「魔王軍の空中戦艦だ……。なぜここに?なぜ帝都に来れる。魔王軍本拠地からはかなり離れているんだぞ!」

戦艦から魔物が発射される。その戦闘は紫の肌の美男子だった。


「敵襲!」

俺は大声で叫ぶ。兵士たちが来るが、それよりもヤツのほうが速い!

「貴様が皇帝か。」

「そうだ。」

「殺す!」

それの前に俺が立ちはだかる。

「やめろ!」

「邪魔するな!」

と、ウィンドが飛んでくる。それをウィンドで相殺する。

「帰れ!魔王がなんでおじさんに用事がある!」

「その皇帝が我々にどんな脅威を与えているのか知らないのか?この国が統一されて、俺達はその強大な力に怯えなければならないのだぞ!」

「それが戦争をしていい理由にはならない!」

俺がいることで奴らはおじさんを殺すタイミングを失った。

奴は機転をきかせ、俺が守れていない姫様をさらう。

「ふん。この娘は預かっておくぞ。」

そう言うと、奴は粒になって消えていった。

戦艦は帝都上空をゆっくり旋回し始めた。

奴は煽っているんだ。早く助けに来いと。

「おじさん、すみません。」

「いや、おじさんの方こそすまないね。私は戦いはからっきしダメでね。なんとか話し合いで助けられないだろうか。」

やっと兵士たちも現れる。バトゥがまた先頭にいる。

「申し上げます。庭園内に侵入したすべての敵を追い払いました。」

「うむ、ごくろう。しかしテイがさらわれてしまった。」

と、深刻な顔で話す。

「なんとか、対談をする場を設けなくてはな。」

「おじさん!相手は話し合う気なんかないですよ!」

「しかしね、生き物は話し合いで何でも解決できるんだよ。魔王軍だって知能を持つ生き物だ。話し合いをせずに戦うのでは、我々も魔王軍と同じになってしまうよ。」

俺は何も言い返せなかった。冒険者は襲ってくるから、依頼だから魔物を倒すが、話し合うなんて、考えてもみなかった。

「しかし、話し合いには対等な条件が必要だ。テイは救出しなくては。」

「なら俺が助け出してきます。こうなった責任は俺にもあります。」

「うむ。頼むよ。君ほど頼れる冒険者は他に居ないからな。」


俺は宿屋に戻って支度を始めていた。

ジンは街に買い出しに出かけているので、今はスイと二人っきりだ。

「全く、休まる暇がないわね。」

俺は荷物を積み込む手を止める。

「ごめん。気が乗らないなら俺一人で行ってくるよ。」

「そんな事、言わないでよ。私達はパーティーでしょ?」

と、いつかみたいに目を合わせてくる。

「ありがとう。」

「あのさ、リョウはさ。このまま帝都に残るの?」

「え、なんでだ?」

「だって、皇帝と知り合いで、お姫様とも仲が良いみたいだし。」

と、ちょっと涙目になりながら話してくる。

これは悪いことをしたな。

スイは前のパーティーから追放されてから、一人になるということに異常なほど恐れているんだ。

口にこそしないけど、普段の距離感から分かる。

「大丈夫。俺は冒険者を続けるさ。一人にはしない。」

「ほんとに?」

「ああ、約束しよう。」

と頭を撫でる。

「良かった……。」

「余計な心配させてごめんな。」

「あのね、リョウ。私、あなたの事が……。」

ドアが開け放たれる。なんと間の悪い事か。

スイはとりあえず自分の中の不安が晴れたことに満足することにした。

思いを伝えるのは今じゃなくてもいい。いや、今は無理。心の準備が足りない。それに、伝えるならちゃんと準備したい。今みたいに流れに任せるのはちょっとちがう。

「買い出ししてきたぞ。」

「おお、おつかれ。」

「おつかれさま。」

ジンは薬草やらポーションやらを広げて袋に整理して入れている。

「仮にも魔王軍との戦闘だ。念には念を入れて最高級のポーションを用意したぜ。」

「そりゃいい。」

「で、作戦は?」

「戦艦に乗り込む。戦艦というのは強力な兵器を持っているが、内部での白兵戦は基本的に想定されてない。だから、帝都から砲撃戦を仕掛けて手一杯になっているうちに、戦艦に乗り込んで姫様を助け、できれば内部から戦艦を落とす。」

「そんなのできるのかな。」

「できるさ。まぁ、最低限姫様を助け出せばあとはおじさん……皇帝陛下が交渉するらしいから、大丈夫さ。」

俺達は装備を万全にする。

魔王軍よ、待っていろ……!




帝都の皇帝の部屋に、二人の男がいる。一人は当然皇帝である。もう一人は漆黒の鎧に身を包んだ男、あの日リョウを助けた暗黒騎士がいた。

「残念だが、彼は冒険者をやめるつもりはないみたいだよ。」

「やはり、そうですか……。」

「すまんね。止められなかった。」

「いえ、彼が選んだなら、それを尊重したいです。ですが、みすみす死なせる訳にはいきません。俺も戦艦に乗り込んで彼を援護します。姫様も俺が助け出しましょう。」

「すまん。よろしく頼むよ。」

「いいんです。そのために、俺はこの世界に来たんだから。今度こそ、俺が守る。ではまた来ます。」

暗黒騎士が部屋から出る。

「悲しいな。弟を失った幻肢痛に苛まれてる。失ったものは帰ってこないのに、死者に引っ張られている。彼を助けるには、この世界の平和の実現しかない。そして、遼くんが死ぬことの無い世界を作らなくては彼も救われない。」

皇帝は自らの役割を再認識した。

彼は魔王軍との交渉に向けて寝ずに準備を始めた……。

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