集いし仲間たち
俺達がパーティーを結成したことは割とすぐにギルドに広がった。まぁ、(不本意ながら)ギルドの名物と化した二人がパーティー組んでいるのだから話題性はあるだろう。
「じゃあ、ジョブチェンジをたのむ。」
「Hey!水晶治ったよ!使ってみるかい?」
「あぁ、そういや前は壊れてたんだっけ。試してみるか。」
水晶に手を触れる。
「どれどれ……おぉ、何でもできるわね!」
「え?それだけか?」
「ええ。おすすめジョブは無いわ。何でもできるんだもの。」
「なんだよ。参考にならんな。」
せっかく適性がわかると思ったのにな。
「何言ってんのよ?元々、魔法使いにジョブチェンジするつもりだったんでしょ?こんなのどうでもいいじゃない。」
「それもそうだ。じゃ、ジョブチェンジよろしく頼む
。」
「魔法使いネ!じゃあ目を閉じてね。」
言われるがまま目を閉じる。
「はい。あなたはこれから魔法使い。でも、僧侶の呪文は全部使えるから安心してね。あなたはステータス減少も無いわ。そういう体質なのよ。」
「それが何でもできるという意味か?」
「そう。何でもできるわ。ステータスが下がんないんだもの。こんな人10人に1人くらいしかいないからラッキーね。」
「結構いるんだな……。まぁ、ありがたく使うことにしよう。」
「次私!アシストマジシャンにして!」
「はい、じゃあ目を閉じて。」
スイは目を閉じる。
「はい、あなたはアシストマジシャンよ。ところで、二人とも魔法系で大丈夫なの?」
「いいのさ。俺は魔法系とは言いながら、物理攻撃もできるし。」
「そう。それに、普通なこと出来るんならパーティー追放されてないわ。」
「それもそうね。じゃあ頑張ってね。」
「じゃあ、早速だけど肩慣らしの為に、クエスト行きましょう?」
「そうだな。またスライムでいいか?」
「そうね。」
スライムは相変わらずワラワラ湧いてきているようだ。今回はスライム30匹撃破。まぁ魔法使えるからそんなに苦労しないだろう。
「よし、お互い魔法を試しつつ戦おう。ただし、MPを使い切るなよ。」
「分かってるわ。」
さて、やろう。
魔法使いになったので、ファイアが使える。試しに横薙ぎにファイアを撃ってみるか。
「くらえ、ファイア!」
と、ウィンドよろしく横薙ぎに撃つ。
炎が横に広がって数匹にダメージを与える。
「やっぱできるじゃん!」
「それできるの君だけだよ。」
残りに向かって斬りつける。これも特にダメージ量が減ったりもしていない。
「こりゃいい。魔法も物理もイケる。」
「ストップ!」
スイがスライムたちに魔法を撃つ。
「この魔法は相手のスピードを遅くするわ!」
遅くするのにストップか。わかりにくいな。
「止めれないの?」
「それをするにはレベルが……。」
「あぁ、なるほどね。」
と、その鈍くなったスライムを殴り倒す。
「こりゃいい。アシストマジシャンは補助呪文が使えるのか。」
「そうなの。これで私も殴りに行ける!」
「あぁ、なるほどな。」
魔法使ってるのに、ぶん殴るのは俺も人の事言えない。たしかに、魔法使いながら殴れたら便利だもんな。
どうも、スイは脳筋らしい。
魔法も物理もできたら強いじゃんとかいう、思考でむちゃくちゃをしている。だから、パーティーから追放されるんだ。
「ほら、アホな事考えてないで戦って!」
「分かったよ。」
戦いはちょっとの油断で死の危険がある。
今の一瞬で俺はスライムに囲まれた。
「ならば!」
俺はその場で1回転しながら
「ウォーター!」
と、水魔法でそいつらを退けさせる。
「どうだい?円形に撃てば魔法は防御にもつかえるのさ。」
スライムたちは水圧に押しつぶされて倒された。
水の力を舐めてはいけない。ファイアよりも強いかもしれない。
「これでおしまい。ファイア!」
スイも順調にスライムを倒す。
「何匹倒した?」
「13匹!」
「俺は18匹だ。1匹オーバーしたがクエストクリアだな。」
「ふーっ。終わった終わった。」
と、草原に二人で腰掛ける。スライムは恐れをなして巣に逃げ帰ったので、安全だ。
「ほら、水。」
と、水筒を渡す。
「あ、ありがとー。」
と、そのほぼすべてを飲み干される。
「おい、全部飲むなよ。」
「いいじゃーん。もうすぐ昼だからそのときに飲めば。」
まぁ、たしかにそうだが。今度からは2つ水筒を持つことにしよう。
「アシストマジシャンの使い勝手はどうだ?」
「うーん。はやく物理攻撃力2倍を覚えたいな。他の呪文は私はあんまり使わないかな。」
「そうか。便利そうだがね。」
「たしかに便利だけど、これだけじゃ戦えないわ。」
「そうか。」
アシストマジシャン。俺も魔法使いマスターしたらやってみようかな。幸い俺は戦える魔法あるし。
「はやく戦士に戻りたいなぁ。」
「その、因縁の魔物はどこにいるかわかってるのか。」
「それがわかってたらこんな所に居ないわよ。」
「そうか。そりゃ、残念だな。」
そもそも、ランガーフューリングは平和な方だと思う。魔物もそんなに強くない。とすると、どこでその魔物と遭遇したのだろうか?できれば仲間を助けてあげたい。せっかくできたパーティーなんだ。助け合いたい。それこそ俺のやりたかった異世界ライフなのかもしれない。
「さ、ご飯食べに行こう。」
「おう。」
俺達は帰路につく。
パーティーから追放されないのはこれが初めてだった。
「だからさ。私達もパーティーメンバー募集しようよ!」
と、麻婆豆腐を食べながらスイが言う。
「そりゃ、そうしたいのは山々だがな。俺達はこのギルドの余り者なんだぜ?組んでくれる奴なんているかよ。」
と、回鍋肉を食べながら話す。
ひと仕事終えたあとの食事ほど楽しい物はない。しかも、異世界だというのに、食事にほとんど違いがないのも嬉しい。
「でも、わかんないでしょ?他にも余り者が居るかも!」
「それが都合よく前衛職である確率はもっと低いぜ?探すだけ無駄さ。」
俺達二人は昼飯を平らげて、デザートに杏仁豆腐を頼んだ。スイは待ち切れず取りに行ってしまったので、一人机で待っていた。そんな所に一人の男がやってくる。
「やぁ、リョウ。」
「お前は、ジンじゃないか!」
俺にソロの良さを教えてくれたジンだった。
「食事かい?」
「まぁな。最近の稼ぎどうよ?」
「全然だね。というのも──」
「あ、あんたは独り身のジンじゃない。」
スイが帰ってきた。
「はははっ。そのあだ名は辞めてほしいな。」
「おい、いつそんなあだ名が付いたんだ?」
「まぁ、最近だな。」
「何があったんだ?」
「実はさ、パーティー解散したんだ。」
「ええ!いいパーティーだったのに何でだ?」
「セトとリンダに子供ができちゃってね。二人は実家に帰ったんだよ。」
「そうなのか。」
冒険者はみんながみんな貧乏ってわけじゃ無い。当然、実家に帰れば普通に生活できるような人もいるってことか。羨ましいなぁ。
「でも、俺は実家にもお金ないからここで稼ぎを続けてるんだ。」
「そりゃ大変だな。」
と杏仁豆腐を食べる。冷たくて美味しい。
「しかも、レベルが絶妙に高くも低くもないからなかなかパーティーに入れなくてね。おかげで独り身のジンなんてあだ名がついたんだ。」
なんと悲しい男か。ひとりぼっちよりも独り身のほうがあだ名として嫌な感じだ。
「それでさ。君を追放した身分でこんなこと言うのも何だが、君のパーティーに俺を入れてくれないか。」
と頼み込んできた。
「あんた、職業は?」
「ランサーだ。攻撃力だけが自慢だ。」
と、ステータスを見せてくる。以前は気にならなかったが、確かに力だけ異常に高い。スタン入れただけのオークを一撃で葬るだけの事はある。
結局こいつも少なくとも戦闘に関しては脳筋だ。ジョブのおかげで問題になってなかっただけでな。
「じゃあ、ちょうどいいじゃない!ね、リョウ?」
まぁ確かにそうだ。それに余り者ということもあるし、いいじゃないか。
「歓迎するよ。ようこそ、俺達のパーティーに。」
こうして、俺達は3人パーティーになった。
ギルドの奴らは余り者の三連星だの、寄せ集めパーティーだの散々なあだ名をつけてくれるた。今度全員ぶっ潰してやる。
俺はやっと異世界でゲームっぽいパーティープレイができる事にホッとした。
もっとも、仲間は1癖も2癖もある奴らだが。




