追放、そして結成
「お前はパーティーから追放する。」
と、クエストの報酬で食事をしているときに告げられた。
「なんでだ?」
「お前とはチームプレイできそうに無い。何だお前の戦い方は!俺のほうがレベル高いのに!」
「まぁまてまてまて、リンダ、セトを慰めてやってくれ。」
と、ジンはリンダ、セトを別の席に移す。
「すまんね、うちのリーダーが。」
と、謝ってくる。
「いや、いいよ。たしかに俺は独断専行しちゃったからな。」
「いや、あれはお前の特性さ。それをあいつは理解できなかったのさ。それに、正直俺もお前はパーティーを組まないほうがうまく行きそうだと思うんだよ。少なくともジョブレベル10まではね。」
「レベル10?」
「そう、レベル10までは一人でクエスト行くと経験値が多めにもらえるんだよ。で、10になると上級職への道が開ける。上級職は基本職複数をマスターするとなれるんだ。」
「へぇ。じゃあ手っ取り早く強くなるにはソロのほうがいいのか。」
「そうだね。少なくとも僧侶が10になるまではね。多分それ以降は基本レベルのほうが上がりすぎて、ジョブレベルが上がりにくくなるから、そこからはパーティー組んだほうがいいだろうね。」
ジョブレベルと基本レベルか。
基本レベルは俺自身のレベルの事だ。これは下がらない。ジョブレベルは職業ごとのレベルの事で、これはジョブチェンジすると下がる。基本職複数を10にすると、上級職になれる。まさにゲームの世界だな。
「なるほどな。それならソロでやってみるのも考えてみるよ。まぁ、どちらにせよパーティー探さないと行かないとは思うけどね。」
「ごめんね。パーティー追放になっちゃって。」
「いいさ。」
と、こうして俺はパーティーを追放された。
ソロをおすすめされたが、ゲームではパーティー組むのが当然だし、パーティーでやりたかった俺はこのあと複数のパーティーに行ったがことごとく追放をされた。そんなことを1ヶ月ほど繰り返すと、ギルド内では「ひとりぼっちのリョウ」とかいう不名誉なあだ名で呼ばれるようになってしまった。しかたなく、ソロでレベル上げも兼ねて楽なクエストをやって日銭を稼ぐ毎日。そんな事をしてると、ジョブレベルも10になってしまった。ちなみに、基礎レベルは6だ。こっちはすぐ上がらない。まぁ当たり前だ。ちょっとの経験で身体が強くなるわけがない。
酒場で夕食を取っていると、いろいろな声が聞こえてくる。
「あ、ひとりぼっちのリョウだ。」
「うちのギルドでは有名よね。」
「他にも有名なのが居るのよ。MP枯らすバカとか。」
「あとさ、パーティー内の男女で子供出来ちゃって、一人残された独り者もいるらしいわ。」
「可哀想に。ギルドの余り物なのねぇ。」
うるさいなぁ。俺は耳がいいんだぞ。全部聞こえてる。このギルドは問題を起こしたり、ソロになると不名誉なあだ名で呼ばれる。それが一番精神的に来る。
夢の異世界ライフはどこへやら。
一人悲しくカウンターで唐揚げを食べていると、横からそれをつまむ手が伸びてきた。
「おい、俺のだぞ。」
と、その手を叩く。
「っ!痛いじゃない!」
「お、お前は……。」
そこには懐かしの、初めてのパーティーを組んだスイがいた。
「なによ、ひとりぼっちのリョウ。」
「MP枯らすバカよりはマシだ。」
「うるさいわね!」
まったく、騒がしい子だ。何なんだ一体。
「私、ついにパーティーから追放されちゃったのよ!あーもう、イライラする!」
と、唐揚げをパクパク食べる。
「おい、食うなよ。俺のだぞ。」
「なによ!あんたまで私に怒るの!ひとりぼっちのくせに!」
こんなに泣きながら怒ると外見も相まって子供みたいだ。いや、実際に子供なのかもしれない。いちいち年齢なんて聞かないからわかんないけど。
「わかったよ。食べなよ。その代わり静かにしてくれよ。周りの視線が痛い。」
俺はメインの唐揚げを失った代わりに周りからの白い目を無くすことに成功した。
「うう、パーティー追放されたどうやって食べていけばいいのよ!魔法使いがソロでやってくのは至難の技なのに。みんな無責任だよ!」
と、泣きながら唐揚げを頬張る。
「おい、泣くなよ。パーティーから追放?俺なんかそんなの両手で数え切れないほどされてる。」
「それ、慰めにもならないわ。」
「そうかい。」
はぁ、なんで俺はこんな事をしているんだ。飯も失うし、大泣きの女の子は居るし。こんな事をするために異世界に来たわけじゃないぞ。
「あのさ。」
「なんだ、唐揚げのおかわりはないぞ。」
「違うわよ。そうじゃなくて、こうなったら余り者同士、パーティー組みましょう?臨時じゃないやつ!」
と、油でギトギトの手で指差してくる。手を拭けよ。
「別にいいよ。ひとりぼっちのリョウなんてあだ名はさっさと返上したいからな。」
「本当?やった!」
と、無邪気に喜ぶ。
「じゃあ!明日から早速クエスト行きましょう!」
「そうだな。じゃ、俺は宿に行くからまた明日な。」
と、食事代をおいて外に出ようとすると、
「待って、ねぇお願い。宿代払ってくれない?」
「はぁ?金はないのか?」
「無いの!パーティー追放されたときに迷惑かけた代金として全部取られちゃったの!」
うわ、流石にひどいな。その割にはいい装備してるが。
「じゃあ野宿でもすれば?」
「ひどい!女の子に野宿させるの?サイテー!」
と、でかい声で喚く。また周りから白い目でみられる。
「わかった、わかったよ。相部屋でいいなら来いよ。」
「ほんと?ありがとー!」
まったくふざけた子だな。
俺はいつものように宿屋に行く。宿屋というか、貸し切ってる部屋だ。借家とでもいうのだろうか?
「なにここ?小さい宿屋ねぇ。」
「お前知らないのか?ここの宿屋、というか貸家は安い上に一軒家だから静かなんだぞ。その代わり1ヶ月貸し切りプランしか無いがな。」
そう、俺は意外と資金がある。ソロでさんざん稼いでいるからだ。そのおかげで俺は小さな部屋ではあるが、ここを1ヶ月貸し切っているのだ。
睡眠がちゃんと取れないと仕事もできない。だから、俺は装備よりもここにお金を出したのだった。おかげで武器は一番安い杖、というか槍?しかないし鎧なんて着てない。鎖帷子だけだ。
「貸し切り!いいなぁ。」
「今日だけだぞ。」
と、荷物を置いて、鎖帷子も脱ぐ。これで下着だけになる。
「俺、風呂入ってくるから。」
「え、お風呂あるの?」
「あるというか、作った。」
外に木で囲いを作って、樽を湯船に火を手動で起こすドラム缶風呂の様な簡易的なものだが、やはり日本人。風呂に入らないと1日が終わる感じがしないのだ。
「え、いいな。私も入る!」
「君の身長じゃ溺れちゃうから危ないよ。そこに濡れタオルあるからそれで済ませな。」
と、バスタオルを持って風呂に行く。
流石に風呂くらいゆっくり入らせてほしい。
樽の下にある薪に火をつける。火の魔法は使えないが、マッチがあるので、困らない。たぶん、俺以外の転生者が火が無いと困ることがあって作ったんだろう。意外とそういう感じで日本にいた頃とよく似たものが出回っている。冒険者を引退して製造業でもして異世界ライフを楽しんでいるのかもしれない。
火をつけて、ゆっくり扇ぐ。さすがにウィンドを使うと力が強すぎる。こうして、火力を調整したら、お湯になるまで待つ。この間に服を脱いで洗濯する。
冒険者は大変でいつも汗臭い。だから、洗濯するのは大事だ。
洗濯板で洗い、水で流す。そして、
「ウィンド!」
で、水分を飛ばして乾燥させる。これですぐ着れるというわけだ。
「さて、沸いたかな?」
と、湯加減を調べる。どうやらちょうどいいらしい。
中敷きを沈めて、ゆっくりとお風呂に浸かる。
ふぃーっ……。疲れたぁ。
月がきれいだなぁ。いや、異世界だから月じゃないのかな?まぁ、月みたいだから月ってことにしとこう。
なんて清々しい気分なんだろう。ここならあだ名で噂されることも無いし、静かで……。ないな。
ドタドタ足音がする。しかもそれはこっちに来ている。急いでタオルを腰に巻く。なんだか嫌な予感がする。
「やっぱり私も入る!」
と、スイがジャンプしながら湯船に飛び込んでくる。
いつの間に服を脱いだのやら。某大泥棒も驚きのダイブだ。
「お、おい!狭い!危ない!」
と、バスタオルを掴んで彼女に投げる!
「入ってもいいからそれで隠して!」
「え?何を?」
「身体をだ!」
と、海苔巻きを作るかのような感じでサッと彼女の身体にバスタオルを巻きつける。
「むーっ。なにこれ!」
「あのなぁ。女の子だろ?そういうの気になんないかな?」
「何が?」
「あぁ……。もういいよ。そのままでいろよ。溺れるなよ。」
この樽はかなり大きいんだ。スイは小柄だから多分溺れる。しかも溺れても助けられるかは分からない。冒険者が風呂で死ぬなんて、そんな恥はないだろう。
「お風呂なんて久しぶりだよ。」
「そうなのか?」
「いつもシャワー浴びれるかも怪しかったもん。女の子だけのパーティーだったから気にしなかったけど……。」
「そうか。」
「にしても、君、冒険者なのに贅沢してるねぇ!」
「俺はこの人生を謳歌するって決めたからさ。」
「この人生?」
あ、やばい。口を滑らせた。あんまり転生者の話はしないほうがいいよな。
「あ、いや。こっちの話だ。気にするな。」
「ふーん。でも、人生を謳歌かぁ。いいねそれ。」
「そうだろ?」
「私ももとの力取り戻せたら、謳歌できるかな?」
「もとの力?」
なんだそれ。聞いたことないぞ。初出の話をさも当然かの如く出すなよ。
「あれ、言ってなかったっけ。私、悪い魔物に年齢を吸い取られたの。だからこんなに幼く、経験も少ない身体にされちゃったんだよ!」
「えぇ!どういう事だそれ?」
「私はね、もともと戦士だったの。でも悪い魔物に年齢ごと経験値を吸われて気がつくとこんな子供にされちゃったんだよ!それで、近接攻撃なんてできない身体だから、魔法使いになったの。」
「それ、本当?」
にわかには信じがたい。この子は内面的にも子供だと思ったんだが、適当なこと言ってないか?
「当たり前でしょ?内面的に幼いのはなんでか分かんない!」
「そうか、そりゃ、大変だな。」
「あの魔物倒さない限り私は永遠にこのままなの!だから絶対倒してやるんだから!」
と、拳を握ってみせる。本当かどうかわからんが、その心意気は本物らしい。
「まぁ、それで、戦士の感覚で魔法撃ってたらMPがすぐ無くなっちゃうんだけどね……。」
「なるほどな。それでMP枯らすバカって呼ばれてんのか。」
「バカは余計でしょ。」
「ひとりぼっちよりは良いだろうよ。」
「そりゃ、そうねぇ。」
なんだか、初めて会ったときよりも話が膨らんだな。
これも風呂パワーだろうか。
そういえば、風呂に入ると話も膨らむものさって、誰かが言ってたな。誰だっけ?うーん……。大事な人だったと思うが思い出せねぇや。
「ねぇ、リョウ?」
「なんだ?」
「これからよろしくね。」
と、天使のような笑顔で見てくる。
年齢を吸われたのに、そんな顔ができるのか。俺ならわかる。生きてるという実感に対する喜びだ。それだけで、人は笑える。笑顔になれる。
俺も一番の笑顔返した。
「おう。よろしくな。」
そういえば、年齢を吸われたとか言ってたな。
ということは本当は一緒に風呂入っちゃマズかったかな?なんて考えても後の祭りである。




