こんにちは、異世界。
人生ってもっと彩りがある物だと思っていた。
死後の世界はこんなに真っ暗なんて。
まさか、持病の悪化でこんなにあっさり死ぬとは。果たして、自分の人生にどれほどの価値があったのだろうか?
「残念ながらそれは誰にもわかりません。」
高身長で巨乳の白髪の女性が話しかけてくる。
「誰?死後の世界の案内人?」
「いいえ、神です。」
「へぇ、神様。なんかキリスト的な神様だな。俺、仏教徒だけど大丈夫?」
「あ、そっちの見た目のほうがいいですか?」
え、変えられるの?
それなら、もっと俺好みのビジュアルに……
「なんか不敬なこと考えてません?」
「いえ、ぜんぜん。」
「で、どうしますか?」
「そのままで話進めてください。なんか用事あるんでしょ?」
「ええ、では話の続きを。あなた、ゲームとか好きですよね。」
「まぁ、人並みには。」
神がカーテンを開ける。白い壁が出てくる。
この黒い空間カーテンだったのか。
「これを見てください。」
と、白い壁に映像を投影する。
うわ、両手から投影するとか魔法かよ。でも魔法のくせにプロジェクターの劣化版みたいな画質なんだな。
「なんすかこれ。」
「これ、異世界なんです。あなた居た世界とは全然違う世界。この世界でもう一度人生を歩みませんか?」
「え、なんで俺が?」
「実は、世界ごとに死者は上限が決まってるんです。でも、なぜかここ数年あなたの世界で死者が上限を超えているんです。なので、若くして死んだ人を異世界で生きてた事にして上限を超えないようにしてるんです。」
「へぇ、大変ですね。」
「なので、お願いします。私を助けると思って!」
と、手を握ってくる。
「まぁいいですよ。どうせ死んでますし、何もすることも無いので。」
「じゃ、頑張ってください。」
おい、他に説明ないのかよ。
「そっちに行けばわかりますから!」
あーあ、ひでえなぁ。
なんか、また死ぬみたいな感覚だ。
「よっと、ここが異世界か?」
神殿(なのか?)の中央の魔法陣に、俺は横たわっていた。
そこに、初老の爺さんがくる。
「おやおや。君が今回の犠牲者かね。」
「そうなんですかね?あなたはどなたですか。」
「ほっほっほ。私は女神の使い。ここに召喚された異世界人に説明をする役割なのです。」
「そりゃ、ありがたい。」
「あなたはこの世界で何をしても構いません。あ、ただし公共の福祉に反しない限りですが。」
「え、じゃあ目的とか無いんですか?」
「人生の目的は自分で決めてください。とは言っても、資金が貯まるまでは冒険者をしてもらう事になりますが。」
なんで冒険者なんだ?ひょっとして、冒険者って日雇いの労働者みたいな扱いなのか?
「冒険者なら、身分を証明する必要がありません。これで資金と地位を手に入れてから、初めて自由になります。」
「わかりやすい話ですねぇ。結局異世界でも生活をするには苦労しろと言うことですか。」
「その通りです。ここから道なりに行くと街があります。ここで冒険者となり、お金を稼ぐのです。」
まぁなんと地味なことか。やはりゲームの様には行かないという事か。
「ありがとうございます。早速行ってきます。」
「うむ。よき異世界ライフを。」
さて、神殿から出てみる。
自然豊かな所だ。小高い丘にこの神殿はあるらしい。
すぐ近くに池がある。歩くことになるだろうから飲めるか確認して、飲めそうなら飲んでから行こう。
「よっと。どれどれ?」
池の水は透き通っていて、飲めそうだ。
「うん。飲めるな。」
普通の水だ。美味しくもないが、水は生命の維持に必須だ。水筒があればな。
水面に自分の姿が映し出される。
外見に変化はない。服装はチュニックとマント。それからポケットの多いズボン。まぁ、多少なら冒険できそうな格好である。
腰にはでかいベルトがある。ここには袋とかが装備されている。
「お、水筒あるじゃん。」
ベルトに水筒がついていたので、これに水を入れる。
「よし、行くか。」
俺はゆっくりと歩き始める。風を肌で感じる。俺は生きてるぞ。生きてる!こうやって自分の足で歩いて、この地面を蹴って、動いている。なんと清々しい事か。健康な体で生きてるって素晴らしいな!
こうして、生命の素晴らしさに感激していると、街はすぐに見えた。
実際には山を一つ越えてくるほどの距離を
「ランガーフューリングへようこそ!」
おお、本当にこんなこと言う町人って居るんだな。
「失礼。冒険者になりたくてここまで来たのだが。」
「なら、ここをまっすぐ行って冒険者ギルドへ行けばなれますよ。」
「ありがとう。」
大通りをまっすぐ進むとご丁寧に冒険者ギルドと看板が出ている建物がある。
「失礼するよ。」
と、ドアを開ける。
なるほど、市役所みたいだな。
受付に行く。
「本日はどのようなご用件ですか?」
「冒険者になりたくて来たのだが。」
「では、こちらにサインを。」
と、紙を手渡してくる。
裏返してみても、なにか細かい条件など書いてない。
「べつに専属契約の書類ではないので、大丈夫ですよ。やめたくなったらいつでもやめられますし。」
「そりゃ良かった。これに署名したら最後、砂漠で戦争することになったらたまらないからな。」
と、サインして渡す。
「ありがとうございます。では、これからあなたは冒険者です。まずはこの冒険者水晶をお渡しします。これはあなたの経験値やお金、ステータスを表示する水晶です。これでクエストの達成についても記録しますので常に装備するように。装備してないとクエストが進行しませんからね。」
なるほど、コマンドの役割とその他ゲームのシステム的な処理をこれでするということか。よく分からんが使ってみればわかるだろう。
「初めてのご登録ですので、隣のカウンターでジョブチェンジしてくださいね。」
「わかった。ありがとう。」
と、隣のカウンターに行く。
「Hey!ジョブチェンジに来たのね?」
うわ、アメリカンな女性だな。
「あぁ。たのむよ。」
「まずは水晶に触れてね。ジョブ適正を調べるから。」
と言うので、水晶に触れる。
「これでいいか?」
「OK!えーっと。」
頼むぞ。ここで大したジョブになれなかったら詰むんだから。
「エラーだわ。水晶がボロいからかしら。」
「え、じゃあジョブチェンジできないのか?」
「いいえ、この適正を調べなくてもジョブチェンジはできるのよ。悪いけど今度調べるから、今は直感でジョブ選んでね。」
と、ジョブ一覧を見せてくる。
こういうときは攻撃系か回復系のジョブがいいんだ。
「じゃあ僧侶で。」
「じゃ!目を閉じてね。」
言われるがまま目を閉じる。
「はい、これであなたは僧侶です。頑張ってね。」
「どうもありがとう。」
さて、ジョブチェンジも済んだし、早速クエストをやりたい。
クエストボードを眺めてみる。
「ちょっといいかな?」
振り返る。だが誰も居ない。
あれ、気のせいかな。
「下だよ下。」
下を見ると少女がいた。
小学6年生くらいだろうか?きれいなピンク髪だ。
「あなた、冒険者になったばかりでしょ?試しでいいからパーティー組まない?」
「そりゃ願ってもない事だ。ぜひ。」
と、成り行きで少女とパーティーを組む。
二人でやるならと、スライム討伐のクエストを受注する。
さて、初戦闘だが、うまくやれるだろうか?
「そういえば、自己紹介してなかったな。」
「そうね。」
「俺は遼だ。よろしく頼む」
「リョウ?いい名前ね。私はスイ。よろしくね。」
「スイか。よろしく。ところで俺は僧侶なんだが君のショブは?」
「私は魔法使いなの。」
しまった。二人とも後衛職か。いや、僧侶は前衛もできるからいいか。
「そりゃいい。俺が前に出るから、後ろで魔法を頼むよ。」
「わかったわ。魔法の撃ち方わかんないけど!」
「心配するな、俺も知らん!」
さぁて、目の前にいる半透明の液体のモンスター。こいつがスライムだ。
「よし、来いよ!」
と、適当な木の棒を構える。
「でろでろ……ファイア!」
スイが火の玉をスライムに投げつける。
「おお、呪文できるじゃん!俺も負けてられねぇな。」
と、走ってスライムをぶん殴る。
しかし、いくら殴っても倒せない。それどころか棒を伝って俺に噛み付いてきた。
「いてぇな!なら、これでどうだ!」
棒を上に投げる。
「ウィンド!」
風の魔法を起こして奴を吹き飛ばす。
地面に叩きつけられて、消滅した。
「やるわね。」
「これで二匹か?」
と、水晶に触れる。そこには撃破数2と記載されていた。
「あと3匹ね。協力しましょう?」
「そうだな。でもその前に……。」
噛まれた腕に向けて魔法をかける。
「ヒール。」
回復魔法だ。どういう理屈か分からないが、何故か魔法が使える。そういうものと理解した。
さて、残るは3匹。おそらく俺のMPも大して残っていないだろう。
奴らが俺めがけて突っ込んでくる。
俺はそれを軽く躱す。
(音が聞こえる。耳の良さがここに来てうまく働いているのか?)
どうも、相手が動き出す時の音が聞き取れるらしい。それに合わせると避けられる。
さっきそれができれば噛まれなかったのにな。
奴らは避けられたことに驚いているようだ。
「ウィンドで吹き飛ばした奴をファイアで焼ける?」
「やってみるわ。」
「ウィンド!」
横薙ぎするように風を巻き起こす。ちょうど三匹が空に舞う。
「ファイア!ファイア!ファイア!」
3つの火の玉がスライムめがけて飛ぶ。
それらは見事に命中し、スライム3匹は消し飛んだ。
「ナイスショット!」
「はぁ、はぁ、魔法ってのは疲れるのね。」
「やたらに撃てないって事だな。」
しかし、今のはファイア1発でよかったはずだ。
ファイアは敵を貫通していたし、俺がやったみたいに横に薙ぎ払うように撃てば3匹まとめて倒せたはず。
もしかしたら、ウィンドとは勝手が違うのかな。
「さ、戻りましょう?」
「おう。」
しかしまぁ、実際に戦闘してみると意外と何とかなるもんだと驚いた。健康な体なら俺はこんな事が出来たんだなぁ。
ギルドへ帰って来た。
「はい、では報酬です。」
と、硬貨100枚の入った袋を渡してくる。
「たったの100ピーク。これじゃ1週間持つかも怪しいわ。」
このピークがどれほどの価値から分からないが、日本円にして1ピーク100円ほどであろうか?
もっとも、冒険者は野宿やら、酒場で寝泊まりやら、冒険者向けの1日10ピークの格安宿にとまるからか、1日過ごすのにかかるピークは少ない。それでも100ピークでは1週間ギリギリらしい。しかも、二人で山分けなので、さらに厳しい事になりそうだ。
「ほれ、半分。」
「ありがとう。はぁ、駆け出しとはいえ50ピークかぁ……。」
冒険者とは言え、女の子だから野宿という選択肢は無いんだろう。そうすると確かに生活は苦しそうである。
「今日はありがとう。実はパーティーはもう決まってて、悪いけどここでパーティー解散させてね。」
「わかった。また会ったらよろしく頼む。」
こうして初めてのパーティーは解散した。パーティーはずっと一緒の場合もあるが、こうした臨時パーティーの場合もあるらしい。俺もパーティーを探さなければならない。
「さて、いいパーティーはあるかな?」
パーティーは様々だ。高レベルのパーティーから、初心者のパーティー。ジョブも多種多様の編成である。
ただ、幸運なことに僧侶の募集は多いらしい。
「お前、パーティー探し中か?」
鎧を着た屈強な男が話しかけてきた。その後ろには槍を持った男と、魔女みたいな格好の女がいる。
「ああ。」
「どうだ?俺達のパーティーに入らないか?僧侶が欲しくてな。」
まぁ、悪いパーティーでは無さそうだ。
「ぜひよろしく頼む。」
「おう。」
こうして俺はすぐにパーティーを見つけた。
パーティーを組むと、まずは自己紹介をするらしい。
ギルドに併設されてる酒場で自己紹介をする。
「俺は騎士のセトだ。このパーティーのリーダーでもある。」
「俺はランサーのジン。近接なら任せてくれ。」
「私は魔法使いのリンダよ。攻撃呪文が得意だわ。」
騎士にランサーに魔法使い。いいバランスだ。
「俺は僧侶のリョウだ。まだまだレベルが低いがよろしく。」
セトが水を飲みながらクエストの書かれた紙を見せつける。
「さて、早速だがクエストだ。ジンとリンダは前行ったから分かってると思うがオークを倒しにいく。」
「ええ!またオーク?あれ嫌いなのよ、近づかれると魔法撃てないし。」
「近づけさせないさ。」
オークは近接系なのか。俺も苦戦しそうだ。
「まぁ、グダグダ言っても始まらない。行こうよ。」
「ジンの言うとおりだ。リョウは俺たちの戦い方を見ながらヒールくれればいいからな。」
「わかった。だが、俺も戦えるさ。」
「そりゃ頼もしい限りだ。さぁ、行くぞ!」
こうして、俺は2回目のクエストへ向かった。
と言っても、さっきスライムを倒した平原をちょっと進んだ台地に行ったので、感覚的にはまだ冒険という感じはしない。
オークはその台地を生息地にしているようだ。
至るところに棍棒を持って座っている。
「よし、行くぞ!」
と、セトがその真ん中めがけて進撃し始めようとする。
「ま、待て待て!せっかくの不意打ちのチャンスにどうして真ん中へ行こうとするんだ?」
「不意打ちなど騎士のすることじゃないからだ!それに不意打ちできる呪文が無いだろう?」
「リンダの呪文があるだろ?」
「え?私全体攻撃魔法使えないよ?」
な、なんだって?全体攻撃呪文?そんなのなくたって、横薙ぎ撃てばいいんじゃないか?
と、思ったがスイも単体にしか撃ってなかった。魔法使いは横薙ぎに魔法撃てないのかもしれない。
「なら、俺が奴らに魔法を撃つよ。」
「は?君はヒールとウィンドしか呪文が使えないだろう?全体攻撃呪文も無しにどうやって?」
「こうするのさ!」
と、ウィンドを横薙ぎに撃つ。
相手の肉を切り裂く。もっとも、致命傷にはならないが、これで3体ほどにダメージを与えた。
「ほら。」
「ほら、じゃない!どうしてそんな事ができるの?」
と、リンダが驚く。
「おいおいおい!倒せるんじゃないのか!」
と慌ててセトとジンが構える。
「これじゃ一対一に出来ねぇよ!何してくれてんだ。」
「そりゃ悪い。なら2体は俺がなんとかしよう。」
と、セトより前に出る。
戦闘の興奮だろうか?何故か分からないが今の俺ならやれる。そう確固たる自信が湧いた
「おい、俺より前に出るとあぶねぇぞ!」
「知るか。俺は俺のやり方でやらせてもらう。」
と、オーク2匹に向けてウィンドを食らわせる。
これで、2匹にが孤立した。
「さぁ、こっちに来な!」
2匹が3人から離れて俺めがけて突撃してくる。
(右だ!)
それをさっと避ける。
高台から転げ落ちて派手な音がなる。
可哀想に、2匹とも下に落ちてしまった。しかもそのうち1匹は下敷きにされている。瀕死だ。
「おーい!2匹やったぞ!」
「やったぞ、じゃない!」
と、セトが怒鳴る。彼は攻撃から仲間を守るので精一杯らしい。
リンダはビビってその後ろに隠れるのでいつまで経っても魔法が撃ててない。
唯一まともに戦えてるのがジンだ。
「なんだこいつら。役に立たねぇじゃん。」
と、セトの前に立つ。
「大丈夫か?」
「大丈夫な訳ないだろ!瀕死だ。」
「ほれ、ヒール。休んでろ。」
と、セトにヒールをかけるついでに剣を奪う。
「借りるぞ。」
「お、おい待て!僧侶の攻撃力じゃたいしたダメージにならないぞ。」
「それなら工夫するのさ。」
と、オークめがけて進む。
「ジン!スタン入れるからすごい一撃をかましてやれ!」
「くっ、分かったよ!だがどうする気だ?」
「こうするのさ!ウィンド!」
と、俺は足元にウィンドを撃つ。この風に乗って一気に敵の頭の上にジャンプする。
「人型なんだ!脳に攻撃食らったらスタンするだろ!」
と、脳天めがけて剣で叩く。どうせ斬り方なんてわからないので、単純に叩く事にした。これが見事にハマり敵は尻餅をついてスタンした。
「今だ、やれ!」
「お前すごいよ。これでとどめだ!」
とピクスが高速で突きを繰り出す。
さすがの攻撃で、オークを撃破した。
「やったぞ!」
「ナイス!」
「ナイス、じゃない!勝手に行動するな!」
と、セトがキレながら俺を小突く。避けれるが避けると余計に怒られそうなのでおとなしく食らった。
「悪い。剣返すよ。」
「ふん。わかればいい。残りの二体も倒すぞ!」
と、俺が気絶させた2体を狙う。奴らは立つのがやっとのように見える。
「お前はチームプレイが苦手らしいな。なら瀕死の方を任せる。」
「配慮感謝する。」
下敷きにされて瀕死の方にウィンドを食らわせる。
もはや避ける力も無いらしい。まともに食らって奴は倒された。
振り向くと、セトが鬼の形相で攻撃を防ぎ、やっと魔法を詠唱終えたリンダがウォーターを撃っている。
ほとんど魔法のゴリ押しだ。魔力が勿体無い。
「ふぃーっ。なんとかクエストクリアだな。」
「くそっ、帰るぞ。俺は不機嫌だ。」
セトが明らかに俺に対して機嫌悪そうにしている。
それをジンが慰めつつ、ギルドへ帰った。




