第七十九話 「愛」を知るもの
最終話まであと一話。
史上最長の文字数を、また更新してしまいました……
本当に、大変、読みづらくなってしまい、誠に申し訳ありません(汗汗)
アナタはアイドルに『希望を託された』ことがありますか? ……俺はある。
〇俺side
「レイブン、俺のアイドルたちに、気安く触れるんじゃねぇーーーーッ!」
バリバリバリ……
俺は、ユイの作った繭を剝がしながら、外に出る。
「アイドルは簡単に触れられないから尊いんだ、前にも言っただろうが!」
俺は鼻息も荒く、レイブンを指差しながら叫んだ。
「神魔の野郎といい、テメーといい、わけのわからない事を……」
グジュグジュグジュ……
破壊したはずのレイブンの腕が再生していく……『無限に再生する』っていうのは、本当みたいだ。
「もうちょっとで、お前も、この女たちも、バラバラにすることができたのによぉ!」
そう言いつつ、異様な構えをみせるレイブン。
四つん這いになったレイブンの体中に、何か黒い球体がいくつも浮かび上がっている……?
ボコボコボコ……
「あれは……?」
それを見ていたバグが、不敵な笑みを零しながら話す。
「それは『邪道玉』……当たれば『バグ化』する、必殺の遠距離攻撃だ」
「なんだって⁉」
「くらえっーーっ!」
バシュバシュバシューーーーッ
いくつもの黒い球体が飛んでくる!
「『対魔力結界』!」
ナナが『対魔力結界』を張る!
バリーーーーンッ!
「あぶっ!」
『対魔力結界』は一瞬で割れ、ナナは『邪道玉』を間一髪で避けた。
「ダメだ、結界も、触れたら一瞬でバグ化して無効化される、みんな避けるんだ!」
「はい!」
みんな必死に避けているけど、こんなのいつまでも続いたら……
俺の前に巨大な魔法陣が展開……『炎』『炎』『炎』『水』『水』『水』
「レイド・シーンハイル・バズ・バーゲイル・パロー
ロッド・ウォーパル・マジスカ・リーン・アプロウス
核爆属性ヘキサグラム、『ニュークリアロア』!」
キュウゥゥゥゥン……
「なにっ⁉」
ドガアアアァァァァンッ!!
ズズズズズズ……
レイブンに核爆属性ヘキサグラムを当てて、『邪道玉』を沈黙させてやったぜ。
「くそっ、なんて速さだ……だが、『絶対防御』と『無限再生』を持つオレ様に、魔法なんて通じねぇぞ!」
確かに、魔法の威力を五十パーセントカットしてくれる『レジスト機能』つきの『オリハルコンの鎧』なら、耐えられるかも。
「あっそ、じゃあこんなのはどうかな?」
俺は『オリハルコン製』の新しいガントレットを構える。
「『ニュークリアブロウ』!」
ズドガァーーーーッ!
「はぶりしゅっ!」
ガガガガガガガガーーーーッ!
レイブンは、地面を削りながら吹き飛び、崖にめり込む。
「ぐ、ぐふっ……」
俺は、魔力を集中させながら、レイブンを睨みつける。
「レイブン、俺の相手はお前じゃない……どけ」
「なん、だと、テメー……」
「トリプルキャスト発動!」
俺の前に魔法陣が展開……『炎』『水』『闇』『闇』『闇』
「シャン・シエッド・クールー・ヴァンガド
ドゥール・ドーゾ・カタルフィ・666・アンバタルテッド……
悪魔召喚ペンタグラム、『アーリマン』!」
「ギャッギャッギャッギャ!」
翼の生えた単眼の悪魔を召喚。
俺の前に魔法陣が展開……『風』『地』『闇』『闇』『闇』
「ロロア・クインジ・ブライン・アーヴ
アナン・ケイル・シジルド・ヴォーテ・クアッシーニ……
不死召喚属性ペンタグラム、『デュラハン』!」
「オオオオオーーーーン……」
騎馬に跨る、首のない騎士を召喚。
俺の前に魔法陣が展開……『水』『地』『闇』『闇』『闇』
「サン・アンカイド・レイテル・シーナ
ネア・デルト・タール・イス・ガカール・サーシャリー
竜召喚魔法ペンタグラム、『黒鱗竜』!」
「バルルルル……」
ユグドラシルで戦った、暗黒属性の『黒鱗竜』を召喚。
「ギャウ、同時に三体も召喚して、いったい何を……?」
「この三体って、まさか⁉」
「三体とも、『瘴気』持ちだ!」
三体の召喚獣から、『瘴気』が立ち込める。
「三体の召喚獣よ、俺を攻撃だ!」
「ギャッギャッギャーーーーッ!」
「オオオオオーーーーン……」
「バルオオオオオーーーーッ」
三体の召喚獣が俺を攻撃、俺の中で、『瘴気』が渦を巻いているのがわかる。
「ギ、ギガっち、『瘴気』なんか吸い込んで、大丈夫なのかギャウ?」
「俺は『マジェスティックオーラ』のおかげでほとんどの状態異常にかからない、大丈夫だ」
そう言って、体内の『瘴気』を集中する……
「行くぞ、コンボアーツ、『召』+『悪』+『竜』……名付けて『瘴気集束砲』!」
キュウゥゥゥン……
ドバアァァァァーーーーッ!
俺の両腕から、真っ黒な瘴気の塊が砲弾のように飛んでいく!
「う、うおおおおおーーーーっ⁉ 何だこれは⁉ か、体が腐っていく……」
「どうだレイブン、『絶対防御』の『オリハルコンの鎧』は無事でも、お前の体はそうじゃないみたいだな」
今のレイブンは『無限再生』があるから、これで完全には倒せないだろうけど、これで俺を警戒するはずだ。
「く、くそっ……なんて技を使いやがるんだ……」
「もう一度言うレイブン、俺の相手はお前じゃない、どけっ」
「くっ、こいつ……」
俺はレイブンを睨みつける……さすがのレイブンも、警戒して俺には近づけない。
バグアルティメットが、俺とレイブンの近くまで来て、レイブンに命令する。
「レイブン、邪魔だ、お前は下がれ」
「う……わ、わかりました……」
神魔がパタパタ飛んできた。
「ギガっち、『リインカーネーションの種』、うまくいったギャウな?」
「ああ、おかげでさらなるパワーアップができたよ、ありがとう」
アイカが駆け寄ってきて、俺と神魔に質問する。
「神魔さん、マスター、『リインカーネーションの種』とは一体なんなのですか?」
「ギャウ、超極秘アイテム『リインカーネーションの種』……その正体は」
「その正体は……?」
「『ステータス振り直し』アイテムだギャウ!」
「ス、『ステータス振り直し』アイテム⁉」
【ステータス振り直しアイテム】……
使用すると、今までのステータスをすべて振り出しに戻し、再度好きな能力に振りなおすことができるようになる『転生用アイテム』。
主にレベルアップ時に、任意の能力にポイントをふる系のゲームに多く存在する。
当然ながら、普通は『有料アイテム』となることが多い。
「そんなものを開発していたんですね……」
「俺も、食べた瞬間いきなり全ステータスがゼロになったから、ビックリしたよ」
「そりゃそうですよね……」
神魔が、俺の周りをパタパタと飛び回りながら、俺の体を確認している……
「思い描いている理想の自分に『最適化』できれば、レベル三千の相手でも対抗できるはずギャウ!」
「対抗できるかどうかはわからないけど、理想の自分には近づけたかな?」
「どんなふうに振り直したギャウか?」
お? 神魔、それ聞いちゃう?
「えっと、HPとМPは必要最低限、あとは『魔力』と『腕力』に極振りした」
「……」
神魔は一瞬、ポカーンとした顔をした。
「はぁ? 『魔力』と『腕力』に極振り⁉ 防御力はギャウ?」
「『マジェスティックオーラ』でなんとかなる」
「き、機動力は?」
「滑空魔法『エアグラインド』で大丈夫」
「癒力は?」
「それだけは使えなくなっちゃった、メンバーやアイテムに頼ることになるかな」
神魔とアイカの、開いた口が塞がらない……相当あきれられたようだ。
「なんちゅー極端な振り方ギャウ……でも、その『超攻撃型』のほうが、今のギガっちには合っているのかも……」
「そうですね、あのバグさんを超えるには、それぐらいしないとダメかもしれません」
俺もそう思う……生半可な振り方じゃ、あのバグに勝つことはできない。
「てゆーか、十分間って言ったのに、よくたった五分間で振り直したギャウな?」
俺は、久しぶりの『ドヤ顔』をみせる。
「フッフッフ、実は、以前からこんなアイテムがあったらいいなーと思って、妄想していたことがあったんだ。
叶ったらこうしようと思っていたから、そんなに時間はかからなかったよ」
「さすがは『ゲームの廃神』ギャウ……」
またあきれられた……
「マスターーーーッ!」
アカネが、泣きながら俺に抱きついてきた。
「べロスちゃんが、ヒュドラちゃんが、私のせいで……」
「ユイの『結界の繭』の中でも、お前たちの声は聞こえていた。
アカネを助けるためとはいえ、アキラに『強制催眠』を懇願していたとは、俺も知らなかった」
「うぅぅ……ぐすん……」
俺は、アカネを慰めながら、話を続ける。
「でもべロスもヒュドラも、死んでいないよ……お前の中で生きている、そうだろ?」
「えっ……べロスちゃん、ヒュドラちゃんが、私の中で……?」
「ああ、お前の中にいて、お前が呼べばいつでも助けに来てくれる。
それに、思い出まで無くなったわけじゃない、べロスとヒュドラと一緒に過ごした日々は、ずっと残る」
「はい……そうとよ、これからもべロスちゃんとヒュドラちゃんは、私と一緒とよ」
アカネの顔に笑顔が……よかった。
悲しみは残るけど、今は前を向く……べロスとヒュドラの覚悟を無駄にしないためにも!
俺は、新しい『オリハルコンガントレット』を確かめながら、バグアルティメットの方へ歩いていく。
「待たせたな、バグ……」
「フッ……やはりお前は面白いな。先ほどの攻撃、明らかに前よりも強くなっている……
すでに『崩壊属性魔法』は発動している、すでにこの世界は、半分ほどが崩壊済みだ」
「そうか、悠長に長話をしている暇はなさそうだな!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
俺とバグの気力と魔力に反応して、大地が、大気が、この星そのものが震えているようだ……
「ゴクリ……」
「頼むぞ、ギガっち……」
「マスター……」
みんなの祈りが聞こえるようだ……
「行くぞっ!」
シュンッ!
ゴンッ!
「おおおおおおっ!」
「はあああああっ!」
ズガガガガガガガガガガガガーーーーッ!
俺とバグアルティメットの、拳での殴り合い!
ドゴッ!
「ぐふっ!」
バグアルティメットの一撃が、俺の顔面を捉える!
頭を全部持っていかれそうな衝撃!
「『ニュークリアブロウ』!」
ズドンッ!
「ごはぁっ!」
俺のボディブロウが、バグアルティメットの腹に決まる!
ドガガガガガガーーーーッ!
現実世界で、喧嘩なんてほとんどしたことがなかった俺が、自分の何倍もの体躯がある相手と、壮絶な殴り合いをしている。
数年前の俺からは想像もつかなかった。
でも、この世界のため、メンバーのために、ここで引くわけにはいかない!
「ここで本気をみせなくて、どうするんだーーーーッ!」
「すげぇギガっち、あのバグとほぼ互角ギャウ! これなら……」
「はああーーッ!」
ドガァッ!
俺の掌底突きが炸裂!
「ぐぅっ!」
ザザァァ……
バグアルティメットは、俺から少し距離をとる。
バグアルティメットの体中に、何か黒い球体がいくつも浮かび上がる!
「あれは、さっきレイブンが使ってた『邪道玉』……?」
「『影足』で逃げられるものなら逃げるがいい、この辺り一帯のすべてを、影ごと消し去って見せよう!」
バシューーーーンッ!
発射された『邪道玉』は、俺ではなく空中へ飛び、一つの巨大な球体になった!
カアァァーーッ!
「ま、眩しっ⁉」
突然球体が光る!
「影が……」
真上から照らされて、全員の影がほとんど見えなくなってしまった!
「フハハハ、くらえ! 『邪道星』!」
ズズズオオオォォォ……
ゆっくりと、でもドンドン加速して、『邪道星』が俺の上に落ちてくる!
「マスターーーーッ!」
ドドドドドドドド……
煙が晴れると、俺の姿はない……
「そんな、マスター……」
勝ち誇ったバグが吠える!
「フフフ、どうだ、『影足』も使えず、ステータスも『魔力』と『腕力』以外はカスも同然……その状態で、この『邪道星』を避けられるわけが……」
「残念でしたー」
「なにっ⁉」
「マスター!」
俺はメンバー達の後方、安全な場所から歩いてきた。
「バカな、いったいどうやって……」
あのバグアルティメットが不思議がっている、いい気味だ。
「俺はレベル二千七百越え、そして『リインカーネーションの種』の転生で、『オルタナティブドア』を、一瞬で出し入れできるようになったのさ。
おまけにメンバーがいる場所なら、覚えていなくてもすぐに転移が可能だ」
「そんなことが……」
「そう、名付けて『オルタナティブテレポート』!」
この技はアカネの『霧の時空』や、バグ技の『領域外移動バグ』に近い……『影足』が使えないときでも使用可能というのは大きい。
「さあ、どちらが先に動けなくなるか、勝負だっ!」
アカネVSソウエイの魂の究極体
「このぉ……もほう、ものぉ……」
三体の究極体のうちの一体が、こちらに向かって歩いてくる……
「感じるとよ……この究極体、ソウエイさんの魂が入っているとよ」
一番近くにいたアカネが、そう話す。
「ソウエイ……」
ヴァロン皇帝が、悲しそうに究極体を見つめる……
「こんな死者を弄ぶようなこと、許されるはずないとよ、私が止めるとよ!」
さっきまでエネルギー切れだったアカネだが、メンバーの回復魔法と回復アイテムで復活していた。
「大丈夫アカネ? ……あのアイカでも苦戦した究極体よ?」
マフユが心配そうに、アカネに尋ねる。
「大丈夫とよ、あの三体の究極体は、レイブンの究極体よりエネルギーや魔力量が遥かに劣っているとよ」
「そ、そうなの?」
「レイブンのような『意志の力』を感じないとよ……たぶん一度死んでしまっているからだと思うとよ」
レイブンのように、明確に俺たちを倒すという『意志の力』を持たない、死んだ魂たちは、たとえ究極体に入ったとしてもその力を完全には制御できないということか……
「この究極体なら、きっと私でも倒すことができるとよ!」
べロスとヒュドラのエンブレムを持ち、姉のアズサから『霧の時空』の力を引き継いだアカネなら……
「たとえ『意志の力』の無い究極体でも、甘く見ていると取り返しのつかないことになる……」
バグが、何か意味深なことを……?
「もふぅぅぅ……」
ズシン……
四つん這いになった究極体の体から、黒い球体がいくつもが浮き出てきた……
「マズい、触れたらバグ化する、『邪道玉』だ!」
バシュッバシュッバシュッ!
いくつもの黒い球体が飛んでくる!
「キャーーーーッ!」
「うおおおーーッ!」
みんな必死で避ける!
「私が相手するとよ、みんなは下がって!」
アカネが、メンバーを下げさせ、自分一人でソウエイの魂の究極体に対峙する。
「アカネ……」
「アカネちゃん……」
「アカネさん……」
メンバー全員が見守る中、呼吸を整えるアカネ。
「ふぅ……お姉ちゃんから貰った技、今こそ使う時とよ!」
「もほおぉぉぉーーーーっ!」
ソウエイの魂の究極体もやる気だ!
「はああぁぁぁ……」
アカネが異様な構えをみせると、辺りに霧が充満してきた……
サアアァァァ……
「ぶほぉぉぉ……」
ソウエイの究極体は、アカネに狙いを定め、また四つん這いになる。
「『邪道玉』ぁーーーーっ!」
バシュッバシュッバシュッ!
いくつもの黒い球体が、アカネめがけて飛んでくる!
閉じていたアカネの目が開く!
「新アドバンスドアーツ、『ハイドアンドシーク』!」
フッ……
アカネが消えた……?
『霧の時空』に入ったのか?
「もほ、もほぉ、ものぉ……?」
ソウエイの魂の究極体も、アカネがどこにいるかわからない様子。
その時、空にアカネの声が響く……
「クスクスクス、もういいかい……」
「もほぉっ!」
一瞬、アカネの影が現れた!
ドガァッ!
ソウエイの魂の究極体が攻撃するも、アカネの影はユラユラと消える……
「幻術、か……?」
「クスクス、まあだだよ……」
「むほぉっ?」
ソウエイの魂の究極体の後ろに、アカネの影が現れた、しかも二体⁉
ドガァッドガァッ!
またもアカネの影はユラユラと消える……
これが『ハイドアンドシーク』……『霧の幻術』と『霧の時空』の複合技か?
「クスクス、もういいかい……」
「むごぉーーーーっ!」
ドガアァァンッ!
ソウエイの魂の究極体の、渾身の一撃がアカネの影に入る!
しかし、アカネの影はユラユラと消える。その時!
「もういいよ」
アカネの本体が、『霧の時空』の裂け目から、ソウエイの魂の究極体の死角より現れた!
ブワワワワ……
ソウエイの魂の究極体が、白い霧に包まれる!
「も、もほぅ?」
ソウエイの魂の究極体は、白い霧に捕らわれて、まったく動けない!
「捕えたとよ、この霧は私の『霧の時空』と同じもの……私はこの『霧の時空』を自由に操ることができるとよ」
アカネは、両手を目の前に出し、まるで雑巾を絞るかのようなしぐさを見せる。
「新アドバンスドアーツ、『ミストディストーション』!」
バキバキバキバキバキ!
「ぎゃべもほぉうっ!」
体をひねられたソウケイの魂の究極体は、体中から血を吹き出し、その場で倒れる。
ドサァッ……
パアアァァァ……
ソウケイの魂の究極体は、魔粒子となって空に消えていった……
「どうとよ? 私の新必殺技は?」
「うん、凄いとよ、よくできました」
「まるで、お姉ちゃんの声が聞こえているようとよって……えっ?」
アカネはビックリして振り返る!
そこにはアカネの双子の姉、アズサが立っていた!
「お、お姉ちゃん⁉ なんで?」
「旅の途中で『転移者』の人に出会って、『オルタナティブドア』を使いつつ、霧の時空にいた人たちを送ってきたとよ」
(※アズサは、俺たちが『霧の時空』から助け出し、動画を見せ、状況を説明したあと、他の人たちを送りに行っていた)
「それにしたって速いとよ、それにここは危険とよ?」
「大丈夫とよ、いざとなったら、アカネちゃんが『霧の時空』で助けてくれるとよ」
「お姉ちゃん……」
この楽観的思考……まさに姉妹だな。
リンカVS究極体
「究極体の一体がこちらに!」
メンバー全員が、警戒態勢をとる。
「全員で攻撃よ!」
マフユ、ユイ、ルイの弓部隊の攻撃!
バシュバシュバシューーーーッ!
「全然効いていない……? くっ、このままじゃ……」
「私に任せて下さい」
隣には、目に包帯を巻いたリンカが立っている。
「リンカ⁉
あなた目は? レイブンに『視力』を奪われて、何も見えないはずじゃ……」
「はい、私の目は『視力』を奪われたまま、今だ何も見えません……ですが戦えます」
そう言って、究極体の前に出て、ダガーを抜き、構えるリンカ……
シャキンッ……
「ばおおおおおーーーーっ!」
究極体の、凄まじい咆哮……
しかし、リンカは少しも怯まず、まっすぐに究極体を見据える。
「確かに、今私の目は何も見えていない……
でも、聞こえる……究極体の呼吸音、心臓の鼓動、血液の流れる音、筋肉の収縮音、骨のきしむ音、魔力の奔流の音も……
その色んな音が、私に究極体の全てを見せてくれる……」
「リンカ、お前まさか……」
リンカは俺の方に振り向き、少し微笑む。まるで目が見えているかのように……
「はい……ハーミットさんの『超聴覚』を『学習』しました」
【学習】……これこそがリンカの真の力。
アサシン系の技であれば、たとえ動画であっても、見ただけで自分のものにできる能力。
リンカは、ハーミットが死ぬ前に、ハーミットの持っていた『超聴覚』の能力を『学習』していたのだ。
「まさにハーミットの置き土産……
あいつから魔界のタロットカードの『隠者のカード』を没収したけど、能力が少しだけ残っていたんだな」
「あおおおおおーーーーっ!」
究極体が、リンカめがけて襲い掛かってきた!
「はあああああっ!」
ザシュザシュザシュッ!
目にも止まらぬ速さで、究極体を切り裂いていくリンカ!
「凄い……『オリハルコンの鎧』の隙間を、寸分の狂いもなく切り裂いている……信じられない、これで本当に目が見えていないの?」
マフユがビックリしてる、当然だ、俺だって目を疑う。
「ぐおおおおおおーーーーっ!」
「腕や足の腱を切っても、すぐに再生してしまう、倒すにはおそらく魂が入っている、『核』を見つけて破壊するしかない!」
「わかりました!」
いったん離れるリンカ。
四つん這いになった究極体の体に、たくさんの黒い球体が……
「当たればバグ化する『邪道玉』だ! リンカ避けるんだ!」
「はい!」
バシューーーーッ!
究極体は、『邪道玉』を発射! 黒い球体はリンカ目がけて飛んでいく!
「危ない、リンカ!」
「大丈夫です……アドバンスドアーツ、『影足』!」
シュンッ
リンカは『影足』で、影の中へ。
シュンッ、パッ!
と、思ったらすぐ出てきた。
シュンッ、パッ、シュンッ、パッ、シュンッ、パッ……
「ぐるるるう……?」
「こ、これは……?」
リンカが、『影足』を使いながら、『ファントムシフト』も併用しているのか?
たくさんの幻影が、影の中から出たり入ったりして、徐々に究極体に近づいていく……
「新アドバンスドアーツ、『幻想の幻影陣』!!」
「ぐるるらああーーーーっ!」
焦った究極体が、リンカの幻影を攻撃する!
ドガァンッ!
そこにリンカはいない……
「私はここよ!」
シュンッ
リンカが、究極体の死角から現れた!
「音から探った、お前の『魂の核』は……ここ!」
リンカは、究極体の背中の、腰のあたりを狙う!
「新アドバンスドアーツ、『ファントムエクスキューション』!!」
ザザシュッ!!
両手でダガーをクロスさせ、相手の弱点を確実に切り裂く、リンカの新必殺技だ!
「ばるおおおおおおお……」
ズ、ズウン……
うつ伏せに倒れた究極体の体は、魔粒子に変換され、空中に四散した。
パアアァァァ……
完全な盲目の状態で、あの究極体を倒すなんて……身体能力だけなら、すでに千騎士を軽く超えている。
シャキンッ
ダガーをしまうと、その場で跪くリンカ……
「やっぱり、目は見えないままなのか?」
「はい……
でも、視覚に頼っていた時よりも、いろんな見えなかったものが『視える』ようになった、そんな気がします」
目が見えないのに、なんて前向きな……
リンカは一人、空を見上げる。
「ハーミットさん……
今まで、戦ったり、協力してくれたり、いろいろ手伝ってもらいましたが、今日が一番助かりました……ありがとう」
マキVS究極体
究極体の残りの一体が、トレントのマキに襲い掛かる!
「マキ、危ない!」
ドカァッ!
「キャーーーーッ!」
マキが吹っ飛ばされた!
いくら鋼鉄並みの体を持つトレントでも、あんな攻撃を何回も受けたらやられてしまう……
その時、究極体が四つん這いになり、体中に黒い球体が浮かぶ!
「マズい『邪道玉』だ! 逃げろ、マキ!」
「あ、足が……」
「『邪道玉』ぁーーっ!」
バシューーーーンッ!
「くっ……」
やられた! っと思ったマキの頭の中に、懐かしい声が響く……
(大丈夫、アナタは一人じゃないわ)
「えっ」
バキィーーーーンッ!
メンバーの一人が、マキをかばい、『邪道玉』を受けてしまった!
「あ、あなたは……ヒナタさん⁉」
驚くマキ。
「ごめんね、大丈夫、マキ?」
あの時、自分で自分を刺したヒナタだったが、俺の『エクスヒーリング』がギリギリで間に合い、一命を取り留めていた。
元々バグ化しているヒナタなら、『邪道玉』を食らっても大丈夫だ。
神魔もパタパタ飛んできた。
「ギャウ、ヒナタよかった、どうやらバグの支配から一時的に解放されたようだな」
神魔は、何とかしてヒナタたちを助けようとした結果、『秘策』を思いついた。
今回のこの『ドラゴニックボード』のルールを利用して、『持ち駒』にすれば、一時的にバグの支配から解放されるんじゃないかと考えた。
何とかうまくいったみたいだ……でも、キャルロッテやリン、リュオンは間に合わなかった……
「マスター、私、さっきやられそうになった時、頭の中で声が聞こえたんです……あの声、ミソラだった……」
マキが訴えてきた。
「ミソラの声が……」
俺は、その事象に心当たりがあった。
「なぜだろう、すぐ近くに『ミソラ』を感じるんです……」
俺は、マキの疑問に答える。
「マキ、お前の中には『ミソラ』がいる」
「えっ、それはどういう……」
「ミソラは、トレントの予知能力で自分がもうすぐ死んでしまうことを悟っていた。自分が死んでしまうことは仕方がないことだけど、マキのことが心配だと言っていた」
「ミソラ、自分より私の心配を……」
「ミソラに、自分が死んだら、マキの体に自分の魂を『転魂術』で入れてほしいと懇願されていたんだ」
「『転魂術』で……それじゃあ、今私の中には……」
「ああ、ミソラが死んでしまう直前、俺が『転魂術』を使った。今お前の中には、ミソラの魂も一緒にいる」
マキは、両手を自分の胸に当て、ミソラの魂を感じているようだ……
「そうだったんですね……」
「お前の意思も聞かず、勝手にやってしまってすまない……」
「いえ、ありがとうございます、マスター」
マキの顔、以前のような幼さは感じず、一人の大人としての、覚悟ある顔つきになっている。
「ミソラ、一緒に戦おう……私にやらせて下さい!」
「マキ……」
襲ってきた究極体には、マキが対峙する。
「あなたの相手は、『私たち』ですっ!」
「ぐるああああああっ!」
究極体が、マキに襲い掛かる!
「マキ、危ない!」
「大丈夫です」
マキが魔力を集中……これは?
『光の魔力』と、『闇の魔力』が同時に発動している……?
ヒイイィィン……
マキの瞳が、『白色』と『黒色』に……?
マキは元々、闇の属性を持っていて、瞳の色は『黒色』だった……
ミソラは、光の属性を持ち、目の色は『白色』だった。
マキの体で、光と闇の属性が同時に発動した、のか……?
「アナタはもう、私を倒すどころか、触れることも叶いません」
「がおおおおおおおっ!」
ドガァッ!
なっ……究極体の攻撃を、マキがまともに……!
いや、なんだあれは? 究極体の拳が、マキに届いていない……?
「アナタの動きは『掌握』しました……もうアナタの攻撃が私に届くことはありません」
ブウゥゥン……
これは、まさか、『念動力』? マキが念動力で究極体の動きを抑えているのか⁉
「そして六秒後、アナタは私を見失うでしょう……」
少し離れた究極体が、その場で四つん這いになる。
「ばああああ……『邪道玉』ぁーーーーッ!」
バシューーーーンッ!
フワッ……
マキに『邪道玉』が当たったと思ったら、マキの体は葉っぱになって消えた……
「ばうぅぅ……?」
究極体が、マキを見失っている……
「そして二十二秒後、アナタは私に倒される……」
空にマキの声が響く。
トレントの持っている『予知能力』を応用して、その場で『最適解』を出しているってこと……?
ゴアアアァァッ!
もの凄い量の魔力が、究極体の後ろの方で集中している……マキだ!
「なんて魔力……
これは、ミソラの持っていた『光の魔力』と、マキが元々持っていた『闇の魔力』が、完全に融合したことによって起こる『相乗効果』……
一つの体に、二つの魂が入っていることによってのみ可能な、『特異現象』ですね」
マフユの説明……俺もここまでとは想像していなかった。
「ミソラ、行くよ!」
マキの前に巨大な魔法陣が展開……『光』『光』『光』『闇』『闇』『闇』
「クルン・バルトレイ・アインギス・パルパオーヴ・シュン・ルーレーン・ソルト
秩序を超え 因果を裂き 理を呑み込む闇
今ここに 世界の限界を穿つ一点を 汝がその胸に抱くは 光か 闇か……
特異点属性ヘキサグラム、『シンギュラリティ』!!」
【特異点】……
『通常とは異なる特別な状態』や『普通の理論が通用しない点』を指す単語。
マキの『特異点属性魔法・シンギュラリティ』は、光と闇の属性が完全に融合したことにより放つことができる、常識を超えた念動力を起こす魔法だ!
バキバキバキバキバキバキーーーーッ!
「あびゃああああああああっ!」
究極体は、念動力により吹き飛ばされ、岩盤にめり込んだかと思うと、そのまま岩盤ごと圧縮されていく……
バキバキ、バキンッ……パンッ!
凄まじい念動力によって圧縮された究極体は、魔粒子に変換されることもなく、地上から消滅した……
ぴったり二十二秒後、究極体はマキに倒された。
「時間ぴったり……これも予知能力の応用なのね、凄い……」
マフユも感心している。
マキは、また自分の胸に手を当てて、語りかける。
「ありがとうミソラ、これからずっと、一緒だよ……」
アイカVSレイブン究極体
「バグ様の命令だ、仕方ないからお前で我慢してやるぜぇ!」
「くっ……そう簡単にはいかせない!」
ガキィーンッ!
バキィ―ンッ!
「うぐっ……」
アイカが押されている……
「ギャーハハハ、足りねぇ、足りねぇな! 今のお前じゃ、オレの相手にならねぇぞ! オラオラ、強奪っ! 強奪っ! 強奪ーーーーッ!」
レイブンの攻撃で、アイカの武器や鎧の一部、髪の毛先までもが奪われていく……
「ぐ……キャーーーーッ!」
「ヒャハハハ、『目玉』や『心臓』をくりぬかれたお前を見たら、ギガンティックマスターはさぞかし絶望するだろうなぁ……ウヒャハハハ!」
「ハァ、ハァ、ハァ……」
アイカ……必死に耐えているが、限界が近い、このままじゃ……
「ハァ、ハァ、レイブン……前にも言いました、アナタはなぜこんなことをするのですか?」
「ああ? また偉そうに、オレ様に説教でもするつもりかぁ?
だったら言ってやる……盗んだり、奪ったりして何が悪い?
強い者が弱い者から奪うのは、当然の行為だ! 奪われるのはな、弱いから悪いんだよ、ギャーハハハ」
「レイブン、アナタという人は……」
何とか立ち上がるアイカ、自分の手を見つめる……
「本当に私に、隠された力なんてものがあるのなら、お願い、力を貸して!」
その時、アイカの体が、激しく輝きだす!
パアアァァァ……
「こ、これは……」
(いいでしょう……力を貸します、ただし、これ一度きりです)
「なんっ……⁉」
フッ……
メンバー全員の頭の中に声が響いたかと思うと、アイカはそのまま気絶してしまう……
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
気絶していたアイカは、そのまま立ち上がり、宙に浮く。
「ア、アイカ……?」
パアアァァァ……
アイカは、光り輝く、神々しき『女神』の姿に……
アイカの姿をしたその女神は、閉じていた眼が開き、レイブン究極体を見下ろす。
「な、なんだ? いったい何が……?」
さすがのレイブンも、ビビッて後ずさりする……
アイカの姿をしたその女神が、『アイカカリバー』を抜く。
ボロボロボロ……
『アイカカリバー』は、二本ともボロボロに崩れ落ちてしまった……
「まあ……私の力に耐えきれず、崩れてしまいましたか……」
マジか……現実世界の最高金属、『モリブデン合金製』のアイカカリバーが……
その時、アイカの姿をした女神は、コズミッククイーンが持っていた大剣を見つける。
「アナタ、良い剣をお持ちですね……」
「えっ」
「それを私に貸して下さい、よろしいですか?」
「こ、この『錆だらけの大剣』を……?」
アイカの姿をしたその女神は、コズミッククイーンから『錆だらけの大剣』を受け取ると、目の前に掲げ、嬉しそうに見つめる。
「これは良い『剣』ですね……どうやら、私の『祖父神』が作ったもののようです」
「そ、祖父神って……?」
アイカの姿をした女神が、『錆だらけの大剣』を、自分の頭上に掲げる。
「さあ『錆だらけの大剣』よ、我が前に、その真の姿を見せよ……」
パアアアァァァッ!
『錆だらけの大剣』が、眩い光を放ったかと思ったら、美しい装飾がなされた一振りの『神剣』に生まれ変わった!
「なっ……あのボロボロだった剣が……」
神魔が、ビックリしながらその女神と剣を見て叫ぶ!
「あ、あれは『三種の星神器』の最後の一つ、『星と天の御剣』ギャウ!!」
アイカの姿をしたその女神は、『神剣』に口づけをすると、レイブンに向かって剣を構える。
「さあ『星と天の御剣』よ、行きますよ!」
女神の背中に、真っ白に光る巨大な翼が生え、その周りには無数の『剣閃』が回る……
究極体のレイブンが、まるで蛇に睨まれたカエルのように、恐怖で委縮している……?
「くっ……なんなんだ? お前は一体、なんなんだーーーーっ⁉」
「『無限剣閃』!」
シュンッ
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
もの凄い数の『剣閃』が、レイブン目掛けて降り注ぐ!
「がっがああああああああっ!」
無数の『剣閃』に、刺し貫かれ、一切身動きができないレイブン……
「ぐっ、くそ、くそ、くそぉ……」
女神が、空中からゆっくりと、レイブンのところへ降りてきた。
「どうですかレイブン、『強き者』に理不尽に奪われる、この『恐怖』は……
アナタはもう少し、他人の痛みや苦しみを知るべきでしたね……」
「い、いやだ、死にたくない……やめろっやめてくれっ!」
あのレイブンが、恐怖で震えている……?
女神が、『星と天の御剣』を構え、目を閉じる。
「アナタの『出番』は終わりました、早々にこの『舞台』から降りなさい、レイブン……」
カアァッ!
「神技……『セイクリッドインパクト』!!」
カアアァァァーーーーーーーーッ!
『星と天の御剣』に刺し貫かれ、光に包まれるレイブン……
「いやだっ、死ぬのは嫌だ、助けて、誰か助けてくれーーーーっ!」
パアアアァァァ……
キラキラキラ……
究極体のレイブンは、光に包まれながら、魔粒子に変換された……
「あのレイブン究極体が、一撃で……」
全員、驚きでその場を動けない……
そんな中、マフユが女神の前に来て、その場で跪く。
「お久しゅうございます、アルフィオネア様」
それに気づいた女神が、マフユに近づく。
「その波動……アナタは、赤の侍女神『レディスナ』ですね?」
「はい」
頭を下げたまま、答えるマフユ。
「アダルの封印はどうなりましたか?」
「他の侍女神が抑えていますが、すでに八割がた破られております……完全解除は時間の問題かと」
女神は、ほんの少し、小さなため息をついた。
「そうですか、そちらも早急に手を打たねばなりませんね……」
「はい」
なんだ、一体何の話をしているんだ……?
アイカが『女神アルフィオネア』で、マフユが『赤の侍女神』……?
「私は一刻も早く、力を取り戻さねばなりません……後のことは頼みますよ」
「わかりました」
フッ……
気を失ったアイカを、マフユが受け止める……
「はっ」
すぐにアイカが目覚めた。
「マフユ、今のは……?」
「アイカ、意識はあったようね。
教えてあげる、アナタは『女神アルフィオネア』の『転生者』……この世界の、『真の救世主』となるお方なのよ」
「私が、この世界の『真の救世主』……?」
俺VSバグ
「まさか、ギガンティックマスター以外に、究極体を倒せるものがいるとは……少しお前たちを見くびっていたようだな」
バグは、残っていた究極体の死体に触れる。
ブワワワワワ……
すると、究極体がまた四体に増えた!
「邪道流バグ技、『複製』か……」
「『転魂術』!」
カアァッ!
四体の究極体の目が開く!
「フフフ……究極体に入れる魂など、ここには山ほどあるぞ」
ここは『劇薬の洞窟』の沼地……討伐に来て、やられた冒険者の魂なんてごまんとあるだろう。
「究極体まで、倒すたびに無限に増やせられたら、こんな厄介なことはないギャウ!」
「大丈夫だ、おそらく『複製』には制限があるはず……
そうじゃないなら、『オリハルコンの鎧』や、『星と光の水鏡』も、もっと複製しているはずだ」
「正解です」
『複製』の技を持つメルフィスが答える。
「『複製』の制限は四つまで……それ以上は精度が下がっていきます」
「メルフィス、話すぎだ」
「申し訳ありません」
バグがメルフィスを諫める。
メルフィスのことだ、何かの作戦の可能性もあるけど……
俺は今の話を信じる。
「だったら、いい手がある」
俺は神魔たちのところへ歩いていき、神魔、神居、神楽、神無に触れる。
ヒイィィィン……
「ギャウ? ギガっち……?」
「お前たちの『魔力回路』を開いた。お前たちに一番関りが深い者の召喚に応じることができるようにした」
「えっ、それってつまり……」
「お前たちを『召喚』できるようにしたってことさ」
「ギャウ⁉」
「そんなことが?」
「へぇ~」
コクコクコク……
神魔、神居、神楽、神無が感心してる。
実はこのゲーム中でも、四支神を召喚できるようになるらしいのだが、相当後半になるらしい(神魔談)
「さあ、サモンロード、コズミッククイーン、ドラゴニックキング、四支神を召喚してくれ!」
「わかった」
サモンロードが魔力を集中し、自分の頭上に巨大な『積層型魔法陣』を展開する。
「召喚……『神楽』!!」
シュンッ
そこにいた神楽が消えたかと思うと、サモンロードの頭上にできた『積層型魔法陣』から、巨大な『神の鳥』の姿をした『神楽』が出てきた!
「クエエェェェーーーーーーッ!」
「で、でけぇ……」
さすがのドラゴニックキングもビビってる。
「フゥ……まさか、召喚されて、『成獣』の姿に戻れるとは思わなかったよ」
『神楽』の成獣の姿は、巨大な『神鳥』だったんだな……首の周りで、何かが回転しているけど……?
『神楽』の目は、空中から一体の究極体を見据える。
ヒュイイィィィン……
『神楽』の首の装置が勢いよく回りだし、『神楽』の開いた口に、光の粒子が集まる……
「行くよ『神楽』、神技 『超音波サイクロトロン』!!」
ズバアアアァァァーーーーーーッ!!
『神楽』の口から放射された『超音波』は、首の『粒子加速装置』により増幅され、威力を増大している!
「ばるぼおおおぉぉぉ……」
究極体の体が、ボロボロに崩れていく……が、少しずつ回復している、『無限回復』の効果か?
ズシンッ……
神楽が、究極体の体に圧し掛かり、抑え込んでいる。
「ギガンティックマスター、今のうちだ! 頼む、キャルロッテの無念を晴らしてくれ!」
コズミッククイーンが魔力を集中し、自分の頭上に巨大な『積層型魔法陣』を展開する。
「召喚……『神無』!!」
シュンッ
そこにいた神無が消えたかと思うと、コズミッククイーンの頭上にできた『積層型魔法陣』から、巨大な『女神』の姿をした『神無』が出てきた!
「パアアアァァァ……」
光り輝くその姿……まさに『豊穣の女神』と呼ぶにふさわしい。
「『神無』、神技 『超震動バイブレーション』!!」
ガガガガガガガガガガガガガーーーーッ!
神無を中心に、とんでもない振動波と重力波、が究極体を襲う!
「ずあおおおぉぉ……」
ズシンッ……
ボロボロになった究極体は、まったく身動きが取れない。
「お願い、ギガンティックマスター、リンの仇をとって!」
ドラゴニックキングが魔力を集中し、自分の頭上に巨大な『積層型魔法陣』を展開する。
「召喚……『神居』!!」
シュンッ
そこにいた神居が消えたかと思うと、ドラゴニックキングの頭上にできた『積層型魔法陣』から、巨大な『城』のような姿をした『神居』が出てきた!
「オオオオオオーーーーーーン……」
まるで、巨大な城が歩いているみたいだ。
「『神居』、神技 『超伝導クラッシュ』!!」
ヒイイィィィン……
バキィィーーーーーーーーンッ!
究極体のいる地面から光が立ち昇ったかと思うと、一瞬で巨大な氷柱となり、究極体の体を閉じ込めた!
「ひゅろろろぅぅ……」
氷柱の中で、究極体はピクリとも動くことができないでいる……
「頼む、ギガンティックマスター、リュオンの覚悟を無駄にしないでくれ!」
俺が魔力を集中し、自分の頭上に巨大な『積層型魔法陣』を展開する。
「召喚……『神魔』!!」
シュンッ
そこにいた神魔が消えたかと思うと、俺の頭上にできた『積層型魔法陣』から、巨大な『ドラゴン』の姿をした『神魔』が出てきた!
「バオオオオオオオーーーーーーッ!」
緋色の鱗を全身に纏い、頭には巨大な四本の角、広げるとゆうに十メートルはあろうかという翼、口には絶えず灼熱の炎が燻っている……
炎を司る竜の神にして、伝説級のモンスター、その名は『神魔』!
「ふぅぅぅ……久しぶりの成竜の姿だ、力と魔力が漲っておる!」
俺がこの世界に召喚された時に出会った神魔と、同じ迫力、同じ威圧感だ。
「『神魔』、神技 『超弾道バースト』!!」
ヒイイィィィン……
バアアアアアァァーーーーーーッ!
神魔の口に光の粒子が集まり、凄まじい威力の『炎のブレス』が、究極体の体を屠る!
ズシンッ……
ボロボロになった究極体を、神魔が抑え込む!
「みんなの想い、確かに俺が受け取った!」
四体の究極体を封じ込めた俺は、そのままバグアルティメットを睨む。
「どうだバグ、究極体は封じ込めた、これ以上増やすことはできないぞ」
「ふむ……殺さずに封じて、これ以上究極体を増やすことができないようにしたわけか。
ナマズエが言っていた、この究極体は八方神を参考に作り上げたものだと……だとすれば、究極体が四支神に敵わないのは当然か」
俺はゆっくりと、バグアルティメットの方へ歩き出す。
「さあ、ここらでケリをつけようか……バグッ!」
「ク、ククク……無駄無駄、すべて無駄だ。
考え抜いた『秘策』も、絞りだした『作戦』も、すべて徒労に終わる……」
「……」
「邪道流バグ技、『停止』ッ!」
パキーーーーーーーーン……
「どうだ、これでお前たち屠りしものと、八方神以外のメンバーは……」
メンバーたちは、誰も止まっていない。
「な、なんだと……?」
バグはメンバーたちを見て、驚いている……
「ならば『リセット』するまで、『リセット』すれば、また最初からやり直しだ!」
バグアルティメットは、異様な構えをみせる……
俺たちは、それを黙って見ている。
「邪道流バグ技、『リセット』!」
シーーーーーーーーン……
何も起こらない。
「なに、バカな……なぜ『リセット』できない……?」
「バグ、気づかなかったか?
いつの間にか、俺たちの周りに、『白い霧』が立ち込めていたのを……」
「『白い霧』だと……まさか⁉」
「この霧は、アカネに頼んでおいた『霧の時空』……
お前も見ただろう、双子だったはずのアカネとアズサは、この『霧の時空』のせいで年齢に差ができてしまった……この霧の中では、時間の流れが違う」
「時間の流れが、違う……?」
「『劇薬の洞窟』にあったナマズエの日誌に書いてあった……
お前の『フリーズ』と『リセット』は、『時間の流れが規則的な場所』で使用するものらしいな。
逆に言えば、『時間の流れが不規則な場所』では、効果が発揮されないということだ」
「おのれ……」
「どうだ、これでもう『フリーズ』でメンバーを止めることはできない。『リセット』でまたやり直すことも、もうできないぞ」
「……」
バグは、俯いたまま動かない。
「バグ、今ならまだ間に合う、降参して『正義のカード』を渡してくれ!」
この世界は、もう半分以上崩壊してしまったけど、残っているもので再建できれば……
「バグ! お前が生まれて、育ってきた世界だぞ!
お前だけじゃない、お前の父親も、お前の愛していたフリージアだって、この世界にいたんだ……その痕跡さえも崩壊させてしまうのか⁉」
バグは、沈黙したまま動かない……
「バグ……お前は、『愛』を知っているはずだ!」
「『愛』……『愛』か……フフ、フハハハ」
バグが動いた!
「なぜ私とフリージアを会わせた……
会わなければ、こんなにも悲しむことなどなかった、苦しむことなどなかった……
お前のせいだ、お前が来たからこうなった。
全てを破壊した方が、全てを無かったことにした方が、いいに決まっている!」
「いいや、違う」
「……ッ!」
「二人一緒にいたとき、お前もフリージアも幸せだったはずだ……その『思い出』すらも壊し、無かったことにしてしまうのか!」
「……」
バグは無言……俺は一気にたたみかける!
「いつだって死んだ人たちが願うのは、生きている俺たちの幸せだ。
フリージアだって、きっとお前のこんな姿を見たくはない、世界の崩壊なんて望んでいない!」
「だまれっ……」
「バグッ!」
「黙れっ黙れっ黙れーーーーーーッ!
私をこんな風にした張本人が何を言うか!
お前も今まで見てきたであろう、王族や貴族たちの腐敗、軋轢、この世界の理不尽、不条理……
この世界の人間は、生まれながらにして『罪人』だ! この世界は、『初期化』するべきなのだ!」
「バグ、待て……」
「邪道流バグ技、『能力拡張バグ』!!」
バキバキバキバキ……
「な、なにっ⁉」
バグアルティメットは、さらに異形な形態に……
「『無敵』、『完全』、『究極』……我が名は『真・バグアルティメット』。
我は新世界の神……神に仇なすものには『天罰』がくだる」
「バグ、お前……」
「ギャウ、ただでさえ強かったのに、『能力拡張バグ』で、さらに強く……もう手が付けられない、これが、『新世界の神』……」
さすがの神魔にも、焦りの色が……
「があああああああーーーーッ!」
真・バグアルティメットが俺に殴りかかってくる!
ドガガガガガガガガガガガガガーーーーッ
「ぐっ……」
なんて手数と重さ……さっきの比じゃない、肉弾戦ではもう敵わない!
ドガァッ!
「がはっ!」
俺は吹き飛ばされて、崖に激突!
「く、くそっ」
俺は両手を揃えて、頭上に構える。
「くらえっ『大次元閃』!」
見えない『次元の刃』が、真・バグアルティメットに飛んでいく!
シュンッ
真・バグアルティメットが消えた⁉
「なっ⁉」
ドガァッ!
いきなり目の前に現れた真・バグアルティメットに、腹を蹴られ、崖ごとまた吹き飛ばされる俺。
「ぐほぉっ!」
ザザザァァァ……
吹き飛ばされて、何とか立ち上がる俺……
「今のは、『領域外移動バグ』か……」
真・バグアルティメットの体中に、黒い球体が浮かびだす。
「『邪道玉』よ、集束せよ……
『邪道玉』は、真・バグアルティメットの前に集まり、巨大な球体になった。
「『邪道砲』!」
バシューーーーーーンッ!
勢いよく発射されたその『邪道砲』は、一直線に俺の方へ!
「マスター、危ないっ!」
アイカが手を伸ばしながら叫ぶ!
たぶん『対魔力結界』を張っても、一瞬でバグ化されてしまう、なら……
「うおおお! 『超電磁メテオキャノン』!」
ドシューーーーーーンッ!
ズドオオオオオーーーーッ!
俺と真・バグアルティメットの間でぶつかり合った二つの技は、『邪道砲』が俺の『超電磁メテオキャノン』を飲み込み、そのまま俺の方へ!
「うわぁっ!」
ドガアアアアアアンッ!
ガラガラガラガラ……
「ぐふっ、ごほっ……」
俺は『邪道砲』の直撃を受け、体も、装備もボロボロに……
「マスター!」
「くるな、アイカ!」
今メンバー達が来たら、真・バグアルティメットの思うツボだ。
「くそっ、せっかく『リインカーネーションの種』を使ったのに、また力の差が開いちまった……」
しかもあいつは、自分の防御に絶対の自信を持っている……
「まだ、まだお前はぁ、『絶望』しないのかぁぁ……?」
「当たり前だ、絶望なんか、してやらねぇ!」
真・バグアルティメットの、挙動と話し方が変だ……やはり相当無理のある強化だったみたいだ。
「まだ、攻撃手段が無くなったわけじゃないぜ! 『トリプルキャスト』発動!」
ヒイィィィン……
俺の前に魔法陣が展開……『炎』『水』『闇』『闇』『闇』
「シャン・シエッド・クールー・ヴァンガド
ドゥール・ドーゾ・カタルフィ・666・アンバタルテッド……
悪魔召喚ペンタグラム、『アーリマン』!」
俺の前に魔法陣が展開……『風』『地』『闇』『闇』『闇』
「ロロア・クインジ・ブライン・アーヴ
アナン・ケイル・シジルド・ヴォーテ・クアッシーニ……
不死召喚属性ペンタグラム、『デュラハン』!」
俺の前に魔法陣が展開……『水』『地』『闇』『闇』『闇』
「サン・アンカイド・レイテル・シーナ
ネア・デルト・タール・イス・ガカール・サーシャリー
竜召喚魔法ペンタグラム、『黒鱗竜』!」
「さっき召喚した『瘴気』持ちの三体を召喚……てことはギャウ!」
「これなら『オリハルコンの鎧』でも防ぐことができないのは実証済みだ……三体の召喚獣よ、オレを攻撃だ!」
「ギャッギャッギャーーーーッ!」
「オオオオオーーーーン……」
「バルオオオオオーーーーッ」
俺が『瘴気』を集束しているときに、真・バグアルティメットが異様な構えを……
「邪道流バグ技、『強奪』!」
バタッバタッバタッ……
三体の召喚獣たちが倒れた……?
「なんだ? いったい何を『強奪』したんだ……?」
「邪道流バグ技、『移植』!」
パアアァァァ……
真・バグアルティメットは自分の手を胸に当て、バグ技の一つ、『移植』を使った。
「行くぞ、コラボアーツ、『召』+『悪』+『竜』……『瘴気集束砲』!」
キュウゥゥゥン……
ドバアァァァァーーーーッ!
俺の両腕から、真っ黒な瘴気の塊が砲弾のように飛んでいく!
ズボアアアアアアーーーーッ!
やった、直撃だ!
ザアアアアア……
瘴気が晴れると、そこには真・バグアルティメットが立っている……
「そんな……なんで平気なんだ?」
真・バグアルティメットは、体に纏わりつく瘴気を、軽く払いながら説明する。
「さ、三体の召喚獣の心臓を強奪し、わ、私に移植した……これで私にはもう、『瘴気』の技は通用しないぃ……」
マジか? 瘴気の元になっている、三体の召喚獣の心臓を自分に移植……?
規格外にも、程があるだろう?
「こうなったらもう、なりふり構っていられない!」
俺は、最後の決め技として残しておいた魔法を使う!
「『マジェスティックオーラ』全開ッ!」
バアアァァァ……
ズアアアアアッ!
「フィフスキャスト発動っ!」
俺の前に魔法陣が展開……『水』『水』『水』『水』『光』『闇』
「レヴィナート・アイントル・クオンタム・シーゲイン・ブールー・ネイト・ウォルシュ
アザット・レイドル・カルエス・マイン・レヴァロースキー
海竜召喚属性ヘキサグラム、『リヴァイアサン』!」
「バオオオオオオーーーーン!」
俺の前に魔法陣が展開……『地』『地』『地』『地』『光』『闇』
「バオウ・ガオウ・レディオン・シンカ・リーデス・アヴダクト
フルクラスト・アン・ジークレイン・シッジ・フースタン
隕石属性ヘキサグラム、『メテオーション』!」
ズガガガガガーーーーッ!
俺の前に魔法陣が展開……『炎』『水』『風』『地』『闇』『闇』
「シッダ・ヨールグ・アビート・モア・クワッド・ミラレス・フリーラン・フリューゲルズ
ソー・トー・クルル・アイバス・カーダ
邪竜属性ヘキサグラム、『ファフニール』!」
ズガガガガガガガガガガガーーーー!
俺の前に魔法陣が展開……『水』『風』『闇』『闇』『闇』『闇』
「グランシュル・アーヴ・ドマンド・エル・グラシオン・ヴァルヴォル・オーブス
ロット・ロイク・マラフィス・カイーニ
悪魔召喚属性ヘキサグラム、『バフォメット』!」
「ウロロロロロロ……」
俺の前に魔法陣が展開……『炎』『水』『風』『地』『光』『闇』…
「スー・シュー・ゴウ・レイ・ファシオン
ドート・エルオン・キーク・ビルスラータス・・アイギル
六極炎属性ヘキサグラム、『ヘキサゴンフレア』!」
ズッドオオオオオッ!
「おおおおおおおーーーーーーッ!
コンボ魔法、『竜』+『星』+『召』+『悪』+『魔』……これで決める、『マジェスティックフレア』ーーーーーーッ!」
俺の頭上には、今まで一番巨大な『大火球』が浮かぶ!
「アクトの時に使った『コラボ魔法』ギャウか!」
「しかも今回のは五つ分です!」
神魔とアイカが衝撃に備えて、『対魔力結界』を張りながら叫ぶ!
ドガオオオォォーーーーッ!
ズドドドドドド……
「キャーーーー!」
その場にいる全員で、巨大な『対魔力結界』を何重にも張ったが、その衝撃は外に漏れ、その場には巨大なクレーターができる。
凄まじい熱量により、周りの岩や地面は溶け、真っ白な煙が立ち昇る……
「す、凄い……『劇薬の洞窟』が、跡形もないよ……」
「そりゃそうだ……あの威力、オレたちが無事だったのも不思議なくらいだぜ……」
あのサモンロードとドラゴニックキングも、唖然としている。
「ハァ、ハァ……どうだ……?」
たぶん、今の俺の魔力での、最大の魔法攻撃だった……これでダメなら……
ザッザッザッザ……
「あれはまさか……」
「ウソ、だろ……」
「そんな……」
煙の中から現れたのは、真・バグアルティメットだった……
「フ、フフハハッ、『アイテム縦読みバグ』で、ま、『魔法無効』にしていなければ、今のでやられていたかもしれないぃ……」
「ハァ、ハァ、ハァ……くそっ……」
ザッザッザッザ……
まるで何事もなかったかのように、歩きながら近づいてくる真・バグアルティメット……
「さ、さすがに、絶望の色が、濃くなってきた気がするなぁ……お前以外のな、ギガンティックマスター……」
俺を見下ろす真・バグアルティメット。
俺はそれを、下から睨み返す。
「どうだ……『アイテム縦読みバグ』で『魔法無効』を付け、さらに『能力拡張バグ』で全ての能力も上がっている……
もはや私に敵うものは存在しない……そう、たとえ神天界の神々であっても!」
この自信……そりゃそうだ、俺の攻撃も、もうほとんど通用しない。
でも、それでも俺は、絶望なんてしないけどなっ!
「ダメ押しだ……邪道流バグ技『文字バケ』!」
パアアアァァァ……
『文字バケ』……? バグ化した館長が使っていた技か……
「詠唱も、話す言葉も、アナライズすらも、すべて通じなくした……これでお前たちの、れ、『連携』も、そして『絆』とやらも、もう役には立たんん……」
「マ〇×Σ§÷Ш+ё⊿ーーーーッ!」
アイカが、何か叫んでいる……?
何を言っているのかわからない……
アナライズしても、文字が記号だらけで読めない……
「ハァ、ハァ、フゥ……」
俺は、ゆっくりと立ち上がる。
「そんなことをしても無駄だ、俺たちは『手話』が使えるからな……」
「『しゅわ』……?」
「でも、今はもう、その『手話』さえもいらないな……」
俺はなぜか、落ち着いた目で、メンバーたちを見つめる。
「俺とメンバーの間には、文字なんていらない、言葉なんていらない、アナライズもいらない、そして『手話』すらも……なぜなら、俺たちはすでに『心が通じ合っているから』……」
俺の気持ちが通じたのか、メンバーたちも俺の方を見て、みんな微笑む。
「バグ、これで最後にしよう……」
俺は装備を解き、真・バグアルティメットを真っすぐに見据え、集中する……
「この忌まわしき、破壊の輪廻は……」
「今」
「ここで」
「俺が」
「必ず止めてみせるっ!」
「みんな、俺に力を貸してくれっ!」
『文字バケ』のせいで、俺の言葉は通じていないはずだが、メンバーたちはみんなコクリと頷く。
「おおおおおおおおおおお! 『マジェスティックオーラ』全開ッ!!」
ガガガガガガガガガガーーーーーーッ!
「マスター行きます! 新アドバンスドアーツ、『タケミカヅチ』!!」
バリバリバリバリバリバリバリバリバリーーーーッ!
ランの『星おとし』が巨大な『雷の剣』となり、俺のオーラに落ちる!
「来て、マグマドラゴンちゃんたち!」
ドバァーーーーッ!
二十体以上のマグマドラゴンが、地中より出現!
「エマさんお願いします、私の炎も使ってください!」
イフリートのイオナが、炎を体に纏って、マグマドラゴンたちと一緒に突撃する!
「新アドバンスドアーツ、『ドラゴニックスーパーノヴァ+アルファ』!」
「バオオオオオオオーーーーッ!」
ドワーフのエマの技が、とてつもない爆発と火柱を上げる!
「私だって『異世界あいどる・はーと』の一員よ! もうザコなんて呼ばせない!」
ネネが、譲ってもらった『オフィウクススタッフ』をかかげながら、魔力を集中させる。
「ダブルキャスト発動!」
ネネが『ダブルキャスト』を⁉
ネネの前に巨大な魔法陣が展開……
「メルカル・アプトラーダ・エフィール・ピル・シャマレイナス
傷を治し 体を癒す 聖なる神の御加護を受けし者よ
神聖なるその手に 触れ 抱かれ 一つとなれ
回復属性クアトログラム、『エクスヒーリングプラス』!」
ネネの前に巨大な魔法陣が展開……
「シンシール・アンリンクド・ウェイリール
我 属性神の名のもとに すべての味方にチカラを分け与えるものなり……
付与属性クアトログラム、『ブーステッドロア』!」
パアアァァァ……
異世界あいどる・はーとメンバー全員の、HP・МPを全回復、さらにすべてのバフを重ね掛けした!
「みんな、お願いっ!」
アオイの前に巨大な魔法陣が展開……『水』『水』『水』『水』『水』『水』
「キルア・キーン・アスクド・フォルス・メイキル
パナ・ルスア・ディード・クルンセイン・シャンネイト
蒼く 清く どこまでも深い 大いなる水の星よ 眼前の我の敵を 葬り給え
魂を洗い 穢れを落とし この世界の礎となれ
水属性ヘキサグラム 『アクエリアスフォール』!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
十メートルはあろうかという巨大な『水の星』が、俺の頭上に落ちる!
「イマジネーショントレース……新アドバンスドアーツ、『致命的処女』!」
スライムのヒフミが、巨大な鉄の『鉄の処女』になり、俺ごと飲み込む!
バチイィィィーーーーンッ
「デゴちゃんパワーアップ! ……『ヌーベルデザートゴーレム』!」
バオオオオオオオ――ッ
『ヌーベルデザートゴーレム』に乗ったノノが、俺に向かって飛んでくる!
「デゴちゃん、『ゴーレムハエ叩き』!」
バガアアアアーーーーンッ
「『極大闇分身』!」
ズアアアァァ……
「新アドバンスドアーツ、『閻魔王 億裂矢』ーーーーッ!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
ダークエルフのルイが放った一億本の矢が、俺のオーラに直撃する!
「『新約神聖書・黙示録』奥義……『アポカリプス・ロウ』!」
バアアアアアァァァーーーーッ!
ミキの本が光り輝き、本の中から飛び出した黄金の鎖が、俺のオーラを攻撃!
「晴れよ 曇りよ 雨よ 雷よ 雪よ 霧よ 突風よ 嵐となれ」
ズオオオォォォ……
神獣ナーガのカオルが、宙に浮き、七色のオーラを纏う!
「新アドバンスドアーツ、『レインボウストーム』!」
ガガガガガガガガガガガガガーーーーッ!
「『サジタリアスの弓』、レディセット! 新アドバンスドアーツ、『破邪・射手座流星群』!」
バシューーーーン……
マフユが撃った矢は、空の雲に吸い込まれ、無数の光の矢が降り注ぐ!
ピカーーンッ
ドシュシュシュシュシュッ!
「ふ、『風神脚』!」
パパパパパパパパパパーーーーッ
「ニャニャニャニャニャニャーーーーッ!
新アドバンスドアーツ、『億獣王・疾風斬爪』!」
ザンッザンッザンッザシュッ!
フタバの新必殺技が、俺のオーラに決まる!
「二人とも、いっくよーーーーッ!」
投擲士のフウカが、両手でヒビキと、ケンタウロスのモモを持ち上げる!
「『ギガンティックスイング』ーーーーッ!」
「『ギガンティックカタパルト』ーーーーッ!」
「『ベルセルク』二百パーセント! 新レゾナンスアーツ、『ユグドラシル倒し』ーーーーーーッ!」
バガァァァーーーーーーンッ!
「新レゾナンスアーツ、『ニーベルングの衝撃』ーーーーッ!」
ズドドドドドドドドドドーーーーッ!
「マスター、妾の全魔力、受け取ってたもれーーーーっ!」
クレアの前に巨大な魔法陣が展開……『水』『風』『地』『地』『地』『地』
「アレク・アラン・アブドル・シリガス・ヴァーバル・ソナー・アブソル・クリアレンス・デスオネスティ
二十億年の記憶持つ 雄大なる断崖絶壁よ その地殻変動 地層隆起の力 今ここに 大いなる力持ちて 穢れしものを 地獄へ送りたまえ……
大渓谷属性ヘキサグラム、『グランドキャニオン』!」
ドガガガガガアアァァーーーーッ!
「アラクネ流操糸術、『デッドエンドマリオネーション』!」
パァァ――……
ユイは糸を自分の体に刺した。
「これで自分の力を限界ギリギリまで引き出します、はああああーーーーッ!」
今まで見たことがないほど巨大な弓を糸で作り、光る矢を装填。
ギリギリギリギリ……
「くっ、やっぱり巨大すぎて、今の私の力だけでは……」
「ユイ! 私にも手伝わせて!」
シノが、ユイと一緒に光る矢を引く!
「こ、これならいけるかも……シノさん、ありがとうございます!」
「はああああーーーーッ!」
「アラクネ流操糸術最大奥義、『デッドエンド・エクスクラメーション』ッ!!」
バシューーーーーーンッ!
ミコトの前に巨大な魔法陣が展開……『闇』『闇』『闇』『闇』『闇』『闇』
「レーン・クォンタ・バイステル・アージ・キリア
ファイスエルテル・コード・アッジ・リストリビュー
闇よ 光より生まれ 混沌に帰するものよ
何モノにも染まらず 何よりも深く 何よりも暗く その力で 全てを混沌に帰せ……
闇属性ヘキサグラム、『ダークカタストロフ』!」
ドンッドンッドンッドンッドンッ!!
五つの巨大な闇の球体が、俺のオーラに直撃する!
アキラの前に魔法陣が展開……『炎』『炎』『風』『風』『光』
「光と幻想 音と幻惑 真実より目を逸らし その者を二度と抜け出せぬ月の微睡みの中へ落としたまえ
オーノス・タリア・ブラキオ・アルタ
シーメイズ・オルトラノ・フレンベル・ケイジ
幻術属性ペンタグラム、『ギガイリュージョン』!」
パアアアァァァ……
幻術属性の思念波が、俺のオーラを包む!
(アドバンスドアーツ、『ニジイロの歌』!)
「ハアアアァァァーーーーーーッ!」
ガガガガガガガガガーーーーーーッ!
セイレーンのカルラの、共鳴、共振攻撃!
リリのオーラが真っ赤に染まる!
「双林寺活殺拳・攻の拳・究極奥義『閃空極地鳳凰活殺拳』ーーーーッ!」
ズアアアァァァ!
ドドドドドドドドーーーーッ!
真っ赤な気力のオーラを身に纏い、まるで鳳凰のような巨大な気力の塊が一直線に飛んでいく!
オウカの前に魔法陣が展開……『光』『光』『光』『光』『光』『光』
「ジャイン・ニード・アンブル・クエイド・リズィーク・カカ・アンバー・リイン・キーン・メイク
光の神と その眷属に申し上げる この世の闇を照らすは 神の御光による 聖なる輝き 闇を打ち祓い 邪悪を滅せよ 全ては光のために……
光属性ヘキサグラム 『グレイテストグリッター』!」
ズズズズ……バアアアアーーーーーーッ!
地面に無数の光が収束、巨大な光の柱が屹立した!
「グレイシャルアーム、グレイシャルレッグ!」
ナナの腕と足に、氷のガントレットと脚甲が装備される!
バキィーーーーンッ
「新アドバンスドアーツ、『アブソリュートゼロ』!」
バキバキバキ……バキィーーーーンッ!
「ケイちゃん、行くよっ!
透明人間のケイちゃんが、トーコに魔力を送っているのがわかる!
「これなら、行ける!」
トーコの前に巨大な魔法陣が展開……『水』『水』『地』『地』『闇』『闇』
「バレン・ヴァルシオ・ピュフュラ・ハーテルエイド・シイン・ガルガントル・マーマイン
落ちよ 堕ちよ 埋まれ 沈め 深く 黒く 昏く 奈落の底へ
地獄の下層の澱の中で 魂の声を聴け
『クレイゾーン』の上位版、奈落属性ヘキサグラム、『アビスゾーン』!!」
ドドドドドドドドドド……
ヒイイィィィン……
ヒナタの前に巨大な魔法陣が展開……『炎』『炎』『風』『風』『地』『地』
「レイダル・アーソーン・クアイエット・ヴェル・バージュ
トロスコス・ベイ・セインチュア・キルインガス
我が前に力の紋章を 敵の前に破滅の印を 星よ回れ 星よ回れ……
超地磁気属性ヘキサグラム、『テラ・ホライゾン』!」
ガガガガガガッ!
ゴンッゴンッゴンッ!
マスター、行くとよ! 『ヒュドラソウル』!」
「シャアアアアアーーーーッ」
アカネの左腕から、ヒュドラのエネルギー体が攻撃してくる!
「『ケルベロスソウル』!」
「バオオオオオオーーーーッ」
アカネの右腕から、べロスのエネルギー体が攻撃してくる!
パアアアァァァ……
俺のオーラの周りを、白い『霧の時空』が包む……
「新アドバンスドアーツ、『ミストディストーション』!」
バキバキバキバキバキーーーーーーッ!
リンカは腰から二本のダガーを抜き、構える。
「新アドバンスドアーツ、『ファントムエクスキューション』!!」
ザザシュッ!!
両手でダガーをクロスさせ、俺のオーラを切り裂く!
マキの前に巨大な魔法陣が展開……『風』『風』『地』『地』『闇』『闇』
「クルン・バルトレイ・アインギス・パルパオーヴ・シュン・ルーレーン・ソルト
秩序を超え 因果を裂き 理を呑み込む闇
今ここに 世界の限界を穿つ一点を 汝がその胸に抱くは 光か 闇か……
特異点属性ヘキサグラム、『シンギュラリティ』!!」
ズアアアァァァ……
「『無限剣閃』!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!
「マスターーーーーーッ!」
アイカが、『星と天の御剣』を構えながら、空中から俺のオーラ目がけて攻撃!
「『アイカインパクト』ーーーーーーッ!!」
ガガガガガガガガガガガガガーーーーーーッ!
メンバー全員の攻撃を吸収した俺の『マジェスティックオーラ』は、とてつもない巨大な球体となり、俺の頭上へ……
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
俺の周りの岩盤が宙に浮き、とんでもない量の魔力の奔流が、俺の周りを吹き荒れる!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「ここにきて、それだけの大技を……
だが、それを跳ね返すことができれば、あとは絶望が残るだけだな……」
バグは、跳ね返す気満々で構えをとる。
「その前に一つ聞きたい……
なぜお前は、そこまでしてこの世界を救おうとする……?
確かにお前は、この世界が好きなのかもしれない……
だが、お前には関係ない。お前には、『現実世界』という帰る場所がある。
たとえこの世界が無くなったとしても、お前は何も失うわけではない。
お前が、命をかける理由はなどない!」
「フゥゥ……」
目を閉じ、ずっと真・バグアルティメットの話を聞いていた俺は、それに答える。
「確かに、俺には現実世界という、こことは別の帰るべき世界がある。
この世界は、俺の『現実逃避』の場所だったのかもしれない……」
ストレスだらけの現実世界……この『ギルギル』ってゲームは、それから逃れるためのツールだった。
これはきっと俺だけじゃない、暗殺組織のコンドルも、あのアクトも、そうだったのかもしれない。
「現実世界でもそうだった……
現実世界にも、この世界と同じように貧しい人や、助けが必要な人がたくさんいた。でも俺は手を差し伸べることはしなかった……
自分には力がないから、他に自分よりふさわしい人がいるから、そう言う理由をつけて、俺はずっと『逃げて』いたんだ」
そう、俺はいつも、都合の悪いことから目を逸らしていた。
「もう『逃げる』のは嫌だ……
俺はこの世界が好きだ。
この世界はメンバーたちの故郷でもある、そしてメンバー以外にも、親しくなった人たちがいる。
世話になった人がいる、一緒に戦った人もいる、一緒に笑いあった人がいる……
俺はこの世界を愛している、この世界を救いたい」
「そんな理由で命をかけるのか? たとえ救っても、何もないかもしれないのだぞ?」
俺は、バグを見つめ、少し微笑む。
「自分の愛するものを救うのに、理由なんかいるのか?」
「……ッ!」
「もう一度言う、お前だって、『愛』を知っているはずだ!」
「だ、黙れっ! 黙れっ! 黙れっ! 絶望……絶望だ!
私は『この世界を初期化するもの』なのだーーーーーーッ!」
ボゴッボゴッボゴゴゴ……
真・バグアルティメットの体中から、黒い球体が浮かび上がり、真・バグアルティメットの体の前に集束する。
バクンッ!
「バグ技が使えなくなる代わりに、威力を最大にまで高めたこの究極の技で、絶望に堕ちろぉ、ギガンティックマスターーーーッ!!」
バグアルティメットの胸と腹の装甲が展開し、中から巨大なエネルギー集束体が現れた!
「『極大邪道砲』ーーーーーーッ!!」
ヒイィィィン……
ズバアアアァァァーーーーーーッ!!
真っ黒で巨大な『邪道砲』が、一直線に俺に向かって飛んでくる!
「受けろ、これが俺たち『異世界あいどる・はーと』の……」
「ギガンティックマスターーーーッ!」
「お願いっ! ギガンティックマスター!」
「ぶっ殺せ! ギガンティックマスター!」
「行っちゃえー、マスター!」
「頼む! ギガンティックマスター殿ーーーーッ!」
「いけーーっギガっち!!」
「マスター……」
「マスタァァァァーーーーーーーーッ!!」
「コラボアーツ、『アルティメットフレア』ーーーーーーッ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
キュウゥゥゥゥン……
ズアアアアアアアアアアーーーーッ
ガガガガガガガガーーーーーーッ!
全てのメンバーの技を圧縮した、超巨大な『極大火球』は、バグ目がけて飛んでいく!
「うおおおおおおーーーーーーッ!」
ドオオオオオオオオオオオーーーーッ
俺の『アルティメットフレア』と、バグの『極大邪道砲』が衝突!
ズドドドドドドドドドドーーーーッ!
ゴンッゴンッガンッドガンッ!
「キャーーーー!」
『アルティメットフレア』と『極大邪道砲』が衝突した場所は、周りの岩や近くの地面が吹き飛び、その熱量で蒸発している!
全員で防御や結界を張っているが、その衝撃は凄まじく、まさに『大陸を削り取っていく』よう……
「ぐ、ぐうぅぅぅーーーーッ!」
バグの『極大邪道砲』は、少しずつ、『アルティメットフレア』に飲み込まれていく……
「ぜ、絶望……わ、私は、この世界を、絶望、で…………」
パアアアアアアァァァァァ……
真・バグアルティメットの体が、光の中で消滅していく……
☆今回の成果
俺 核爆属性ヘキサグラム『ニュークリアロア』
『ニュークリアブロウ』
『フィフスキャスト』
『瘴気集束砲』
『オルタナティブテレポート』
コラボアーツ『アルティメットフレア』
アカネ 新アドバンスドアーツ『ハイドアンドシーク』
新アドバンスドアーツ『ミストディストーション』
リンカ 新アドバンスドアーツ『幻想の幻影陣』
新アドバンスドアーツ『ファントムエクスキューション』
マキ 特異点属性ヘキサグラム『シンギュラリティ』
ヒナタ 超地磁気属性ヘキサグラム『テラ・ホライゾン』
トーコ 奈落属性ヘキサグラム『アビスゾーン』
次の投稿は 6/8 19:00 の予定です。




