第七十七話 げーむのはいじん
アナタはアイドルに『寝起きドッキリ』されたことがありますか?……俺はある。普通は逆だよね?
◇神魔side
ガチャッ……バタン
オレ達は全員、『劇薬の洞窟』へ到着……
『毒の沼池』の上には、すでにドラゴニックボードが設置されている。
その上には、一人バグの姿が。
「審判竜や百骨王たちは、オレが事前に『擬人化システム』を使って、チビ魔獣にしておいたギャウ」
ボードのこちら側には、八方神たちと、他にも何人か……
「アンタ達は……魔角族王にガーマイン、それにヴァロン皇帝、ギャウ?」
「話はすでに聞いている、動画も見せてもらった……
我々もここで、この世界の命運を分ける戦いを見届けさせてもらう」
三人とも、覚悟が決まっている目をしている。
「Zzzz……」
ドラゴニックキングに抱えられながら、まだ寝てるギガっち……
「こいつ、本当にギリギリまで寝ているつもりだな」
昔のマンガとかにも、ほとんど寝ているキャラクターとかいたけど、ギガっちも負けず劣らず……
ボードの上で一人待っていたバグが、立ち上がり、不敵な笑みを零す。
「揃ったようだな……では始めようか、『最後の戦い』を」
「よく言うギャウ、『リセット』で何度でもやり直せるクセに……」
「邪道十三人衆、召喚」
パアアァァァ……
バグの前にあった魔法陣から、邪道十三人衆たちが召喚される……
召喚されてすぐ、『ソウケイ』『ウォルフ』『館長』『シャルド』『ラーマイン王』『ナマズエ』が消えていく。
魔角族王、ガーマイン、ジン、ヴァロン皇帝は、悔しそうにそれを見つめる。
「ギャウ、レイブンの奴最初から『究極体』の姿で現れやがった」
バグの横のクイーンドラゴンには、最初から『究極体』のレイブンが乗っている。
「『オリハルコンの鎧』まで元通りになっている、厄介ギャウ……」
その反対側のビショップドラゴンに、見慣れたやつが……
「お前、魔族のメルフィスか……?
てっきりオウカ達の『疑似ブラックホール』に吸い込まれて死んだと思っていたギャウ」
「メルフィスさんは魔族です……六獄の一つ、『五の獄・幻夢』を使えても、おかしくはありません」
アイカが教えてくれた。
話を聞いていたメルフィスが、それに答える。
「残念ですが、ワタクシは『カイーナ級』なので『幻夢』を使うことはできません。ワタクシが使ったのは、ニンゲンが使う『うつせみ』の方です」
人間が使うアドバンスドアーツまで使えるのか……
「『疑似ブラックホール』に飲み込まれる瞬間、ウォリアーと入れ替わったってわけギャウか……」
「その通りでございます」
こいつ、やっぱり只者じゃないな……
よく見ると、バグを含め十三人衆とウォリアー達は全員、鏡のようなピカピカの盾を装備している……
「あれは『反射鏡の盾』だね……たぶんクレアさんの『メデューサアイ』対策じゃないかな?」
神楽の考察……なるほど、鏡に映った自分を見ると、自分が『風化』してしまうわけか。
ガクッ……
『海鳴のホーン』が、バグの前で苦しそうに膝をつく。
「どうやらこのホーンは、先の戦いで、『リセットリスク』による『後遺症』が残ったようだ……」
そう言いつつ、バグは自分の右手をホーンに向ける。
「ま、まさか……待つギャウ、バグ!」
「動けない『駒』など、必要ない」
パアアァァァ……
バグの右手から発した光る球が、『ホーン』を包み込み、そのまま消えた……
「ウキャ、ウキャ、ウッキャーーーッ!」
正気に戻った三猿たちが、各々逃げていく……
「バグ、お前……」
「文句があるのなら止めてみろ……今のお前では到底叶わぬがな」
チビ魔獣の、今のオレ達じゃ話にならない……
「今回はこちらの戦士たちも、さらにバグ化して強化してある……以前のように簡単にはいかぬぞ」
確かに向こうの戦士たち、姿形も変化して、オーラも増している……
「『屠りしもの』たち……この世界の命運をお前たちに託す、頼んだギャウ!」
サモンロード、コズミッククイーン、ドラゴニックキングの三人が、ボードの上に上がる。
「任せておいてよ」
「四天王を助けなきゃいけないしね」
「覚悟しやがれ、バグ!」
バグ側の配置
ルークドラゴン「メギード」 Pドラゴン「戦士」
ナイトドラゴン「キャルロッテ」 Pドラゴン「戦士」
ビショップドラゴン「メルフィス」 Pドラゴン「戦士」
キングドラゴン「バグ」 Pドラゴン「戦士」
クイーンドラゴン「レイブン」 Pドラゴン「戦士」
ビショップドラゴン「ヒナタ」 Pドラゴン「戦士」
ナイトドラゴン「リュオン」 Pドラゴン「戦士」
ルークドラゴン「リン」 Pドラゴン「戦士」
屠りしもの側の配置
歩兵竜「アミサー」 香車竜「アオイ」
歩兵竜「ドドム」 飛車竜「キング」 桂馬竜「アカネ」
歩兵竜「レイザ」 銀将竜「オウカ」
歩兵竜「リリ」 金将竜「アイカ」
歩兵竜「ミコト」 王将竜「ギガっち」
歩兵竜「ユイ」 金将竜「クイーン」
歩兵竜「タイタン」 銀将竜「カケル」
歩兵竜「エスタ」 角行竜「ロード」 桂馬竜「リュウセイ」
歩兵竜「ガンドルフ」 香車竜「ヨシキ」
ギガっちはまだ寝ているけど、そのまま『王将竜』に乗せておくことに。そのうち起きるだろう……
「ゲームをスタートする前に、確認しておきたいことがあるギャウ」
「なんだ?」
オレは、バグに質問する。
「前回の勝負、お前の駒はほとんどが戦闘不能で、最後はお前が自ら引いた……
あの戦いは、こちら側の勝利ということでいいかギャウ」
「……」
バグは、少し考える……
「まあいいだろう……毎回『リセット』すると、何も進展しないことになるからな」
「よし、じゃあ『勝利者の特典』として、ルールを一つ追加させてもらうギャウ!」
「ルールの追加、か……」
オレはずっと考えていた、『秘策』を使う。
「追加のルールは、『持ち駒システム』ギャウ」
「『持ち駒』……将棋独自の、とった駒を再利用できるシステムか」
『持ち駒』……
将棋独自のルールで、相手からとった駒を、自分のものとしていつでも使うことができる。
『持ち駒』がなかった時代、駒の取り捨てでは勝負がつかなくなることが多かったために考案された。
このルールのおかげで、将棋はより深く、より面白くなったと言える。
「なるほど、考えたな……」
「これで準備は整ったギャウ、みんな心置きなく戦うギャウ!」
「おう!」
まずは様子見ってところ……
バグ側の『戦士』が、バグの命令を受けて突撃してきた!
「まずは僕に任せてもらおうかな!」
胸に『万騎士』の勲章をつけたサモンロードが、ウォリアーたちを迎え撃つ!
「『カイエル騎士団修練場』で身に着けた、とっておきを見せてあげるよ!」
サモンロードの前に魔法陣が展開……『水』『水』『水』『水』『光』『闇』
「海精 海竜 海神よ 生命の根源たる海の王 その息吹 その逆鱗 人の身にて抗うこと敵わず 願わくば その力 我が前にて示したもう……
レヴィナート・アイントル・クオンタム・シーゲイン・ブールー・ネイト・ウォルシュ
海竜召喚属性ヘキサグラム、『リヴァイアサン』!」
「バオオオオオオーーーーン!」
サモンロードのフェイバリッドマジック、召喚魔法リヴァイアサンだ!
サモンロードの頭上に、巨大な海竜が出現……その眼は、敵のウォリアーを捉える!
サモンロードの前に巨大な魔法陣が展開……『水』『水』『水』『水』『水』『水』
「キルア・キーン・アスクド・フォルス・メイキル
パナ・ルスア・ディード・クルンセイン・シャンネイト
蒼く 清く どこまでも深い 大いなる水の星よ
眼前の我の敵を 葬りされ
魂を洗い 穢れを落とし この世界の礎となれ
水属性ヘキサグラム 『アクエリアスフォール』!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
十メートルはあろうかという巨大な『水の星』が、リヴァイアサンの頭上に現れた!
おお!サモンロードが水属性ヘキサグラムを……
っていうか、そのままだとせっかく召喚したリヴァイアサンに当たっちまうぞ!?
「リヴァイアサン、そのまま『アクエリアスフォール』を食べるんだ!」
「えーーっ!?」
リヴァイアサンは命令通り、頭上から落ちてきた『水の星』を、そのまま口の中へ……
バクンッ!
カアアァァ……
バキバキバキバキバキバキ!
『水の星』を食べたリヴァイアサンは、さらに巨大に、さらにパワーアップした姿に……
「これが僕とリヴァイアサンの新しい技……『上位召喚』だよ!その名も、『レヴィアタン』だ!」
『リヴァイアサン』から『レヴィアタン』へ……
その神々しさ、迫力がさらにパワーアップしてる!
「いくよ!『アクエリアスブレス』!」
キュウゥゥゥゥン……
バアアアーーー―ーッ!
巨大な口から放出された『水の星』は、バグのウォリアー達を次々と吹き飛ばしていく!
「ギャワワ……凄い威力、あの強化されたウォリアーがいともあっさり……」
『アクエリアスフォール』の魔法だけでも凄いのに、それをブレスで放つなんて……そりゃ強力だ。
「次は私の番ね」
クイーンの前に魔法陣が展開……『風』『風』『風』『風』『風』
「大気司りし 風の精霊 姿見えぬものよ 歌い 踊れ 風よ舞え 葉よ舞え 花よ舞え
ヒュルリ・ラヒュルラ・ピン・ス・ハール
風精霊召喚ペンタグラム、『シルフィード』!」
クイーンの前に魔法陣が展開……『水』『地』『地』『闇』『闇』
「邪視を持ちし 異形なるものよ その呪われし眼で我が敵を屠れ その眼に映りしは 絶望か 黄昏か
ブレン・ギン・ニール・ファイアット・ブル・レイタリス
邪視獣召喚ペンタグラム、『カトブレパス』!」
コズミッククイーンが、二体の召喚獣を召喚した!
「コズミッククイーンが『星の塔』で見つけたっていう、レア召喚獣かギャウ!?」
『シルフィード』……
言わずと知れたファンタジー世界の『風の精霊』代表。
羽の生えた妖精の姿で登場することが多い。
空気の羽で、空に巨大で芸術的な雲を作り出すこともできるという。
『カトブレパス』……
垂れた豚の頭、水牛の体に、細い首を持ち、その眼は『邪視能力』があるという伝説の動物。非常に重たい頭部で、常に地面に引きずって歩いているという。
『カトブレパスの眼を見た者は即死する』と言われている。
「『シルフィード』、『カトブレパス』……私に魔力を!」
「ヒュルルルル……」
「ブルオオオ……」
クイーンの両脇にいた『シルフィード』と『カトブレパス』が、クイーンに魔力を送っているのが見える。
「コズミッククイーンの体の中で、魔力が迸っているギャウ……」
「これが私の新しい技、『魔力供給』よ!」
『魔力供給』……
召喚獣から魔力を供給してもらうことで、通常よりも強力な魔法を唱えることができるってことか。
「私の『メテオ―ション』で、一気に殲滅するわ」
「まてコズミッククイーン、敵にはあの『メルフィス』がいる、魔法は反射されるギャウ!」
「それは大丈夫よ、リュウセイ!」
「へへ、あいよ!」
コズミッククイーンの四天王の一人、リュウセイが取り出したのは……『星と光の水鏡』!?
「ゆうザイくんに頼んで、狛犬将が持っていた物を借りてきたの。
『魔法は反射してから撃てば、相手は反射できない』……まあ、これは敵のメルフィスが言っていたことだけどね」
なるほど、『星と光の水鏡』で魔法を反射して撃てば、例えメルフィスでも反射することはできない……
「考えたギャウな!」
「はああぁぁぁ……」
コズミッククイーンが集中してる……もの凄く魔力が高まっているのがわかる。
「行くわ!『トリプルキャスト』!」
「ト、『トリプルキャスト』ギャウ!?」
コズミッククイーンのやつ、いつの間に……
コズミッククイーンの前に魔法陣が展開……『地』『地』『地』『地』『光』『闇』
「バオウ・ガオウ・レディオン・シンカ・リーデス・アヴダクト
悠久なる 宇宙の星々よ 星の海より来たれ 我にその力の一端を貸し与え給え 我が眼前に 隕石よ 落ちろ……
隕石属性ヘキサグラム、『トリニティメテオーション』!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「あのバカでかい隕石が、三つも落ちてきたギャウーーー!」
ドガガガガガガガガガガーーーーーッ!
「うわぁぁーー!」
「みんな伏せるギャウーーー!」
バグのウォリアーは、バカでかい三つの隕石の直撃を受けて、吹き飛んだ!
「ギャワワ……周りに結界を張っていなかったら、ボードどころかこの辺一帯吹き飛んでいたギャウ……」
「ふう、さすがにそう何度も連射はできないけど、威力だけなら『オクタグラム』に匹敵するわよ」
さすがはコズミッククイーン……修業終わりのあの自信たっぷりな顔も、これなら納得だ。
「テメーらばっかりいいカッコさせられない、オレも行くぞー!」
オレの出番と言わんばかりに、ドラゴニックキングが進軍していく!
「イービルウイング!」
ドラゴニックキングの背中から、蝙蝠みたいな真っ黒い羽が生えた!
バサッバサッバサッ
上空に上がり、狙いを定めている……?
「『ドラゴニックファング・ファランクス』!」
シュババババババ―ーッ!
『ドラゴニックファング』を連続で放つ大技!
無数の気力の刃が、ウォリアーに襲い掛かる!
「まだまだ行くぜーーーっ!
アドバンスドアーツ、『666』!」
ドラゴニックキングの額に、『666』の文字が浮かぶ!
「あ、あれは、『悪魔崇拝者』のアクトが使った、自分の能力を底上げする悪魔技ギャウ!」
ドラゴニックキングの体を、ドス黒いオーラが包む。
「ハハハハ、さあショータイムだ!」
ドラゴニックキングの前に魔法陣が展開……『炎』『水』『風』『地』『闇』『闇』
「地獄の底に眠る 闇の神よ 我に最凶 最悪の 闇の竜の力与えよ
その憎悪 その慟哭 その怨嗟を 全て吐き出せ 全ては破壊のために
シッダ・ヨールグ・アビート・モア・クワッド・ミラレス・フリーラン・フリューゲルズ
邪竜属性ヘキサグラム、『ファフニール』!」
バオオオオオオオオッ
真っ黒で巨大なドラゴンが、ドラゴニックキングの前に現れた!
「ギャウ、ファフニールを自分の目の前に召喚して、いったい何を……?」
「お前の命、オレがもらう!」
そう言うと、ドラゴニックキングはファフニールを掴んだ。
「ズオオオォォォォ……」
ドラゴニックキングは、口から息を吸い込み始めると、『ファフニール』が吸い込まれていく……!?
「ウソでしょ!?あのでっかい『ファフニール』を、食べちゃったギャウ!?」
「うおおおおおおおおーーっ!」
邪竜『ファフニール』を食べたドラゴニックキングは、体も一回り大きくなり、体中に異様な文様が浮き出ている……
「これがオレ様の新技、『過剰摂取』だ!」
「召喚獣を食べてパワーアップするなんて、まさに『悪魔的所業』ギャウ……」
ドラゴニックキングの体の中で、とてつもないドス黒い魔力が渦巻いている……今にも溢れ出しそうだ。
「ふううぅぅ……行くぞオラーーッ!」
ガシィッ!
ドラゴニックキングが、一体のウォリアーを捕まえた!
バキバキバキバキバキバキ!
ドラゴニックキングが、ウォリアーを『さば折り』してるーー?
「アドバンスドアーツ、『ドラゴニックベアハッグ』!」
ドサァッ!
背骨を折られたウォリアーは、その場で撃沈……
「なんちゅう豪快な技ギャウ……」
リュオンの『グラビティフィールド』の時よりもさらに禍々しく、強力になっている……
「ガハハハ、気分が高揚して高ぶっている……次はどいつだ!」
サモンロードは、召喚獣に自分の魔法を食わせてパワーアップさせ、
コズミッククイーンは、召喚獣から魔力を供給してもらい『トリプルキャスト』を、
そしてドラゴニックキングは、召喚した召喚獣を食って、自らをパワーアップ……
この三人、前とは比べ物にならないほどパワーアップしている!
「三人とも、しっかりと修業の成果が出てる……これなら、ギガっちが起きる前にケリがついちゃうかもギャウ」
「フッ、なるほど、それぞれレベルを倍以上上げ、そして違うクラスの技を使うことができるようにしたのか……」
う……さすがバグ、考察力高め。
「だが、足りんな」
「ギャウ?」
「世界最高の錬金術師ナマズエが作った『究極体』は、貴様ら『八方神』との戦いを想定して作られたもの……
レベル六百程度、そして付け焼刃のクラスの技など、全て想定内だ」
「なんだとぉ?」
ドラゴニックキング、今にも飛び掛かりそうだ。
「レイブン、見せてやれ、神に匹敵するその力を!」
一番の機動力を誇る、『クイーンの駒』であるレイブンが進軍してくる!
「レイブン究極体が来るよ!」
「真正面から来るなんて、舐められたものね」
サモンロードとコズミッククイーンが迎え撃つ!
「行くよレヴィアタン、『アクエリアスブレス』!」
「シルフィード、カトブレパス、力を貸して!『トリニティメテオ―ション』!」
ガガガガガガガガガガガッ
ズドドドドドドドドドドーーーー……
サモンロードとコズミッククイーンの連携攻撃!衝撃波だけで吹き飛びそうだ……
煙が晴れると……対魔力結界を張ったレイブンが立っている!?
「効かねぇなぁ……そんなんじゃオレのこの絶対防御、『オリハルコンの鎧』は破れねぇぜ!」
「そ、そんな……」
「オクタグラム以上の威力のハズなのに……」
「この『オリハルコンの鎧』は、魔法の威力を五十パーセントカットしてくれる『レジスト機能』つき……
オレの乗っていたクイーンドラゴンは消し飛ばせても、オレには効かねぇな」
クイーンドラゴンが消し飛び、直接ボードに立つレイブンが解説した。
「その究極体は、元々オクタグラムでの戦闘を考慮して作られた体……
一・二発程度のオクタグラムでは、そう簡単に倒されはしない」
バグまで解説……あの究極体、思っていたより凄いのかも。
「ならオレが、直接その体をへし折ってやるぜーーーっ!」
ガシィッ!
いつの間にか後ろに回っていたドラゴニックキングが、レイブンを捕まえた!
「『ドラゴニックベアハッグ』!」
ギギギギギギギギ……
「ギャーハハハ、足りねぇ、そんなんじゃ足りねぇぞおおおおおお!」
ガッ!
レイブンは、ドラゴニックキングの頭を鷲掴みにして引きはがす!
「があああああ!」
「フフフ、この世界の最強金属オリハルコン……
神魔たちのように温度差で脆くしているのならともかく、素の状態で砕くのなら、『神の大樹ユグドラシル』を折るぐらいの力がなければな」
またバグの説明……そんなの人間じゃ無理に決まってる!
「ドラゴニックキング!」
サモンロードとコズミッククイーンが助けに行くも、レイブンの残りの腕に捕まってしまう!
「うわああああ!」
「きゃああああ!」
三人とも、レイブンの腕から抜け出せない!
「ギャワワ……三人とも相当パワーアップしたのに、レベル六百でもダメギャウか!?」
このままじゃ三人ともやられてしまう……
「く、くそ……こうなったら、みんなでギガっちを起こすギャウ!
ギガっちを加えて四人になれば、なんとかなるかもしれないギャウ!」
もう今は、ギガっちの『奇跡』に頼るしかない!
「みんな、戦闘はいいからギガっちを起こしてくれギャウ!」
「わかりました!」
メンバー全員で、ギガっちを起こす!
「マスター、マスター、起きて下さい!」
「マスター、もう時間ですよー」
「マスター、おねしょのことバラしちゃいますよぉーいいんですかぁー?」
揺すったり、耳元で囁いたりするけど、反応はなし……
「こうなったら、マスターのアイドル好きを利用して、私の『色仕掛け』で……」
おお、マジかマフユ!?
「アッハーン、マ・ス・ター、起・き・てぇーん」
スゲェ、アイドルの色仕掛け、初めて見た……
「えへ、えへへへ、もう、みんな見てるだろ、やめろよぉ……」
幸せそうに鼻の下をデレ~と伸ばすギガっち……
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
「まったく、夢の中でもだらしなく鼻の下を伸ばして……」
「ギャウ、い、今は抑えて、アイカ……」
半殺しにして、また気絶しちゃったら元も子もない……
怒り心頭のアイカをなだめるオレ。
「いや待て、夢を見ているってことは、今ギガっちは『ノンレム状態』じゃなくて『レム状態』……眠り自体は浅いはずギャウ」
「ということは、もうちょっとで起きるかもしれないってことですね?」
「なんでもいい、ギガっちが興味ありそうなことって無いギャウか?」
「う~ん、アイドルの色仕掛けが効かないとなると、あとは……」
ギュピーン!
アイカが、何か思いついたような顔をしている。
「マスター、『当たり確率0.4パーセントのスーパー激レアアイテム』が、あんなところにっ!」
ピクッ!
「なーーーーーーー!」
「にーーーーーーー!」
ギュピ――――ーンッ!
ゴオアァァッ!
「キャー――!」
もの凄い突風が吹き、みんな吹き飛ばされちゃった!
〇俺side
「ふうぅぅ……『当たり確率0.4パーセントの、スーパー激レアアイテム』はどこだーーーー!?」
爆睡していたはずの俺は、その言葉で一気に目が覚めた!
「0.4パーセントってことは、千回引いても四回しか当たらないくらいの確率……『星と命の勾玉』よりレアじゃないか!」
あれ……なぜかみんなが白い目で俺のことを見てる?
「マスター、『スーパー激レアアイテム』は冗談です……マスターが全然起きないから」
アイカ、そりゃないぜ……
「いい夢見てたのに……」
あんまり覚えていないけど、アイドルとイチャイチャしていた夢を見たような気がする……これは内緒にしておこう。
「やっと起きたかギガっち、もう戦闘は始まっている、大ピンチギャウ!」
目の前で、子竜の神魔があたふたしている。
「あ、そうなの?」
「他人事かギャウ!」
「よっこらせ、じゃいっちょ世界でも救ってきますか!」
俺は、服の埃をはたきながら立ち上がる。
「疾風迅雷 電光石火 風林火山 汝に風の力を 浮かせ 滑空させよ
滑空属性ハイアナグラム、『エア・グラインド』!」
俺は自身に滑空魔法をかけ、そのままレイブンとサモンロード達のところへ。
サモンロード、コズミッククイーン、ドラゴニックキングの三人が、究極体のレイブンに捕まっている!
「くうぅぅ、ぬ、抜け出せ、ない……」
「なんて力……このままじゃ……」
「ちくしょう、まだこんなに力の差があるなんて……」
「さあ、ギガンティックマスターを地獄に落とすための生贄となれ!ギャーハハハ、あばよっ!」
「く、くそっ……」
「ヘクト・グラビトン!」
ズドンッ!
「はぶしゅっ!?」
レイブン究極体の体が、ボードに半分埋まり、捕まっていた三人は放り出される!
「うわあっ!」
「ゴホッゴホッ、私たち……た、助かった、の……?」
「お前……ギガンティックマスターか!」
俺は元気よく手を挙げて、三人に答える。
「よっ、三人とも危なかったな。
お前たちのピンチにギリギリ間に合うなんて、俺ってマンガの主人公みたいでカッコよかったんじゃない?」
ドヤ顔の俺に、三人は冷たい目線……
「よく言うぜ、どうせその辺の物陰に隠れていて、オレ達がピンチになるのを待っていたんじゃないのか?」
「アホか、お前じゃあるまいし、そんなこと俺がするかよ」
「なんだとテメー」
「おお?やるかー?」
「二人とも、目の前の敵に集中してっ!」
何とか立ち上がったレイブンが、俺の方をもの凄い目で睨んでいる。
「ギガンティックマスター、ようやくお前を切り刻む時が来たようだぜぇ……」
「おお、おお……なんか、これはまたずいぶんと思い切ったな、レイブン」
頭が三つに腕が六本……もう以前の面影は皆無だな。
レイブンが何かブツブツ呟いている……
「オレの記憶の中にある、あの技を『強奪』……
防御不可能のこの技で、あの世へ行けっギガンティックマスター!アドバンスドアーツ、『次元刃』!」
レイブンは手刀を振り下ろす!
「『次元刃』!?あの距離で撃たれたら、回避が間に合わない!」
俺は真っ直ぐにレイブンを見ながら、自分の手刀を振り下ろす!
「『次元刃』!」
ギャリィィンッ!
もの凄い音が、俺とレイブンの間で響く!
「なにぃ!?」
「フムフム、どうやら『次元刃』は、『次元刃』で相殺できるみたいだな」
「な……な……」
レイブンが、面白い顔で口をパクパクさせている。
「アドバンスドアーツ、『影足』……」
シュンッ!
俺はレイブンのすぐ後ろに現れた。
「な……いつの間に……」
わなわなしていたレイブンが、いきなり咆哮を上げる!
「うおおおおおおーーーーっ!」
耳の鼓膜に響く……
「オレ様は、絶対防御『オリハルコンの鎧』で、防御は完璧だ!お前の攻撃など効きはしない!」
「あっそ」
「これでお前との因縁も、終わりだーーーーー、死ねーーーーーッ!」
レイブン究極体の、右ストレート!
ピタッ
「なっ……」
俺は、レイブンの巨大な拳を、手の平で受ける。
「レイブン、お前うるさいよ」
ポンッ
俺はレイブンの拳を、ちょっとだけ押した。
ヒイイィィィン……ゴンッ!!
「ごばぁっ!?」
レイブン究極体は、体中から炎を吹き出し、その場で倒れた。
ズ、ズウゥン……
レイブンの体は真っ黒に焼け焦げて、今もまだ燃え続けている……
再生にはまだ時間がかかるだろう。
「ギャウ、ギガっち!」
子竜の神魔が、パタパタ飛んできて、俺の肩にとまった。
「今のはギガっちのフェイバリッドブロウの一つ、『インプロ―ジョンブロウ』だなギャウ。熱伝導率、破壊伝導率百パーセントの拳撃……
どんなに強力な防御を誇っても、この技の前では意味がないギャウな」
「ま、そういうこと」
俺は本日二度目のドヤ顔。
「っていうか、キミ強すぎだよ、なんで僕たちよりもそんなにレベルが上なの?」
サモンロードが、不思議そうに俺を見てる。
「いや、なんでって言われても、ちゃんと俺はノルマ通り、サブキャラのレベルを六百にしただけだよ」
「えっ?」
「えっ?」
みんなきょとん顔。
「ギャウ、オレは『メインとサブキャラ合わせてレベル六百』って言ったんだぞ……まさかお前、サブキャラだけでレベル六百まで上げたのか?」
「うん」
俺は普通に返事した。
なぜか神魔は呆れ顔。
「いや、そもそも『魔界大迷宮』だけでレベル六百は無理があるギャウ」
「なに?『魔界大迷宮』だと?」
反応したのは、魔角族王だ。
「今『魔界大迷宮』は、魔界の魔脈が暴走中で、誰も近づけない状態なのだ。
中のモンスターたちは、レベルや能力が二倍に……当然経験値も二倍以上になっている。今の『魔界大迷宮』は、余でも攻略は不可能だ」
「『魔界大迷宮』がそんな状況に……知らなかったギャウ」
「確かにそこを制覇できたのなら、レベル六百もいくかもしれん……」
なんかよくわからないけど、結構凄いことみたい。
「だから『ゆで卵』と『栄養ドリンク』の空き瓶があんなにいっぱい転がっていたギャウか……
相当根を詰めて、サブキャラを育てていたんだなギャウ。でも、パソコンが四台もあったのはなんでギャウ?」
「えっ……部屋にパソコンが四台あったのですか?」
今度はアイカが反応。
「テーブルの上に二台、テーブルの下に二台、パソコンが置いてあったギャウ」
アイカが、『あっちゃー』と言わんばかりの顔をしている。
「それは多分マスターが、右手左手、右足左足を使って、四台のパソコンを操作していたからですね、きっと」
「はぁ?それって、ゲームのアカウントを四つ作って、四人のサブキャラで同時にプレイしていたってことギャウ?」
(※ゲームのアカウントを二つ以上作ることは、ゲーム会社の方針上推奨されていません。良い子はマネしないで下さい)
「そうです……
マスターは以前このやり方で、クリア推定時間二百時間のゲームを、不眠不休でやり続け、四日でクリアしたことがあるんです」
「クリア時間二百時間のゲームを、たった四日で?計算が合わないギャウ……」
(※大事なのでもう一度言います、
ゲームのアカウントを二つ以上作って遊ぶことは、方針上推奨されていません。良い子はマネし……rpt)
「そうか、レアなアドバンスドアーツを二つも使っていたからおかしいなとは思っていたギャウが……
サブキャラを四人同時に育てていたなら、アドバンスドアーツも四つ持つことができるギャウ」
さすがは神魔、その通り。
メインキャラの分も含めると、全部で五つのアドバンスドアーツを覚えることができる。
「えっ……ちょっと待つギャウ、てことは今のギガっちのレベルは、
サブキャラレベル六百、かける 四人、 足す メインキャラのレベル三百 イコール……
二千七百……ギガっちの今のレベルは『二千七百』……!!」
「えーーーーーーっ!?」
「今回のアップデートで、レベル三桁の『レベルキャップ』は外したから、キャラのレベルは999以上にできるギャウ……
でも、一気にレベル『二千七百』って、ちょっと想定外ギャウ!」
あれ、そうなんだ、俺はちょっと効率的にやっただけなんだけどなぁ……
まあ楽しかったし、俺にはやっぱり『ご褒美』だったな。
「ギャワワ……
どうやらオレは、ギガっちの性格を見誤っていたみたいギャウ……
ギガっちは『ゲームの廃人』なんかじゃない、『ゲームの廃神』だったギャウ!」
「『ゲームの廃神』って……そんなに褒めるなよ神魔」
「いや、褒めてはいないギャウ、あきれているギャウ」
え、そうなの?
「マスター」
向こうから駆け寄ってきたのは、シノとイオナだった。
「マスター、新しい『ガントレット』持ってきました」
「おお、完成したのか、間に合ってよかった」
俺は真新しい『ガントレット』を腕にはめて、感触を確かめる。
「うんいい出来だ、さすがは職人、いい仕事するねぇ」
俺はそのまま、ヴァロン皇帝に話しかける。
「皇帝申し訳ありません、せっかくいただいた『オリハルコンのトロフィー』でしたが、ガントレットの材料に使いました」
「『オリハルコンのガントレット』か……構わぬ、存分に利用してくれ」
バグが、少し不思議そうにこちらを見ている……
「そのシノとイフリートのイオナという女……
確か前の戦いで後遺症が残り、壊死が止まらなかったはず、なぜ……?」
俺はシノとイオナの方を向き、その疑問に答える。
「シノとイオナには、暗殺組織デスサイズとの戦いのときに、サンプルとして採取した『超回復魔蟲』を使っている」
「『超回復魔蟲』だと……?」
「『超回復魔蟲』は、入っている体が傷つくと、自動で回復してくれる……
何かに利用できないかと、錬金術師のトーコと研究をしていたんだが、こんなところで役に立つとは思わなかったよ」
俺はシノとイオナの頬に触れ、少し申し訳なく話す。
「よくわからない蟲を体に入れられて、気分が悪いかもしれないけど、我慢してくれ」
「はい、ありがとうございます」
「私たちは平気ですよ、マスター」
「フフフ、フハハハ……自身のレベルを『二千七百』にし、窮地だったメンバーをも救ってみせた……
面白い、面白いぞ……やはりお前は『絶望』しないのだな、ギガンティックマスター」
「言ったはずだバグ、俺は絶対に『絶望』はしないと!」
座っていたバグが立ち上がる、その体からは、もの凄い邪悪なオーラが立ち昇る……
「だがそれでいい……『希望』が大きいほど、『絶望』に落ちた時の反動も大きくなる。こんなものはもう邪魔だ!」
バグは、腕を振り上げると、ドラゴニックボードに触れた。
バキバキバキバキバキバキ……
ドラゴニックボードは、全体にヒビが入り、そのまま全て崩れ落ちた……
俺たちも、バグたち十三人衆も、みんな直接大地に立つ。
「ゲームは終わりだ、ここからはお互い全戦力による全面戦争……
まさに、この世界の『最終決戦』に相応しい!」
オオオオオオォォォォ……
バグのオーラが広がり、邪道十三人衆やウォリアー、ドラゴンたちを包み込む……
バキバキバキバキ……
すると、ウォリアーたちやドラゴンたちも、さらに異形の姿に変化した!
「ウォリアーやドラゴンも、さらに『バグ化』させたのか!?」
「メルフィス」
「はっ」
バグが命令すると、メルフィスは倒れていたレイブンの体に触れる。
「邪道流バグ技、『複製』……」
バキバキバキバキバキッ!
「そんな……」
メルフィスの前には、『究極体』が三体、コピーされた。
「アドバンスドアーツ、『転魂術』!」
パアアアァァァ……
「この地に、今だ彷徨っていた魂を入れた……さあ、目覚めよ!」
カアァッ!
三体の究極体の目が開く……
「グルルルル……」
「プシュウゥゥ……」
「……この、模倣品、め……」
「ま、まさかこの三体の究極体……『ヴァロン近衛兵団』の三人か!?」
「なんてことを……」
バグの野郎、ついに本気を出してきやがった……
この戦力差、本当に勝てるのか……?
「ギガンティックマスターさん……」
ナナが、俺の手を握り、訴えてくる。
「ナナ?いや、フリージアか……?」
「はい……
『凍魂術』で、私の魂を現世に留めておくのはもう限界のようです……」
確かに、ナナの中のフリージアの魂の波動が、薄く、今にも消えそうになっているのを感じる。
「今のバグから、昔のバグの波動を感じます……アナライズすれば、きっと『本当のバグ』の心が見えると思います」
『本当のバグ』の心が?
「お願いします、バグを救ってください!」
泣きながらオレの手を掴み、懇願するフリージア。
「わかった、この世界も、バグのことも、俺が任された!」
「ありが、とう、ござ……」
パアアァァァ……
ナナが光ったと思ったら、フリージアの魂が天に昇っていくのが見える……
ガクッ……
気絶したナナを、俺が抱きとめる。
「バグ……」
俺はバグをアナライズしてみた。
「見える……バグの心の深層に、僅かだけど『本当のバグ』の心が……」
(ギガンティックマスターさん、オレです……前と一緒で、意識はあるけど体の自由がまったく効かない状態です)
『本当のバグ』も、あの体の中で戦っているんだなきっと。
(このままだと、オレはこの手で、この世界を崩壊してしまう)
「大丈夫だバグ、俺がそんなことは絶対にさせない!」
(はい、オレはもうフリージアのように、大切なものを失うのは嫌だ!)
バグが、オレの方を真っすぐに見つめながら、ゆっくりと歩き出す。
「さあ、ギガンティックマスターよ」
(頼む、ギガンティックマスターさん!)
「私を……」
(オレを……)
「倒してみよ!」
(殺してくれ!)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
俺とバグのオーラで、大地が震えだす……
「バグ……」
「ギガンティックマスター……」
俺とバグの睨みあい……
「我が名はバグ……この世界を、初期化するもの……さあ始めよう、『最終決戦』を!」
俺は目を閉じ、今までの思い出を回顧し、そして目を開ける。
「お前を、この世界から、削除してやるぜっ……バグっ!」
☆今回の成果
サモンロード 『上位召喚』
コズミッククイーン 『魔力供給』
ドラゴニックキング 『過剰摂取』
俺 称号『ゲームの廃神』
アドバンスドアーツ『次元刃』
アドバンスドアーツ『影足』
次回の投稿は 5/11 15:00の予定です




