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異世界で「あいどる・はーと」作りました。  作者: みっど
第十九章 第三次異世界大戦編
76/80

第七十六話 アフォガード、と「師弟」

 

 アナタはアイドルに『抱っこ』されたことがありますか? ……オレはあるギャウ。

 

 ◇神魔side

 

 オレ達八方神と四支神の大活躍により、邪道十三人衆の残りはバグとレイブン、数体のウォリアーのみ。

 

 レイブンが、装備品のデスサイズを構えて見得を切る。

「オレが残っている限り、バグ様には指一本触れさせねぇっ!」

 

 

 レイブンVS神魔&神居

 

 神居が、レイブンを見据えて話す。

「レイブン、お前のバグ技『強奪パクる』の能力は脅威ではあるが、射程が短いという弱点がある……我らには通じないと知れ」

「ちっ、そんなこと、やってみなくちゃわかんねぇだろうがっ!」

 

 レイブンが、持っているデスサイズを構えながら、魔法を唱える。

「疾風怒濤 汝風の如く舞い 風の如く斬る その身触れること能わず……風属性アナグラム、『エアリアルエンチャント』!」

 自分に風属性のバフをかけた!

 パパパパパパーーッ!

 

「これでもくらえっ! 『邪道流バグ技・強奪パクる』……」

 パキィーンッ!

 レイブンの腕が凍り付いた!

 

「うおおーーっ⁉」

「絶対防御、『真・絶対零度氷壁』……これでお前はもう私には近づけない」

 

 ゴアアアァァァッ!

 反対側で、真っ赤な炎の渦が巻き起こる!

「絶対防御、『極炎結界』……以下同文だギャウ!」

 

「くっ、くそっ……」

 今のところ、強力な遠距離攻撃方法を持っていないレイブンなら、これで封殺できるはずだ。

 諦めたのか、レイブンはデスサイズをしまい、くるりとオレ達に背を向け、後ろに歩き出す。

 

 そのままバグの前に行き、その場に跪く。

「バグ様、このままではオレは奴らには勝てません……お願いします、オレに『力』を」

 バグは、閉じていた眼を開き、答える。

「いいだろう……」

 

 ズズズズ……

 バグは、レイブンの後ろに巨大な『亜空間のゲート』を展開した。

「こ、これは……?」

 

 中から出てきたのは、巨大な六本腕の体……

「そ、それは、まさか⁉」

「『世界最高の錬金術師 ナマズエ』が、最後に使った『究極体』だ、これをお前にやろう」

 

「あいつナマズエを葬ったときに、あの『究極体』だけを亜空間に保存していやがったのかギャウ!」

 オレも神居も、あまりの出来事にビックリ!

 

「アドバンスドアーツ、『転魂術』!」

 パアアァァァ……

 バグのやつ、いつの間に『転魂術』を……

 

 レイブンの体から、光る球のようなものが出てきて、そのまま『究極体』の体に吸い込まれていくのが見える……

 光る球が抜けたレイブンの体は、その場でボードの上に倒れる。

 

 カアァッ!

 『究極体』の目が開いた!

「フウウゥゥ……オレは、またもやこんな姿に……

 だが、そんなことは言っていられない、オレは、ギガンティックマスターを殺すために地獄から舞い戻ったのだ、こんなところでやられるわけにはいかない!」

 

 オレ達は全員、『レイブンの究極体』を前に、警戒態勢をとる。

「ドクターナマズエが開発した究極の体『究極体』……前はバグがあっさり倒してしまったから、その能力は未知数だったギャウ……」

「あの体から、凄まじいパワーと魔力を感じる……気をつけろ」

 あの神居までもが警戒している……?

 

「この『レイブン究極体』は、ナマズエの時と同様、最高のステータスに、すべての魔法を操り、無限に再生する。 しかも最強金属、『オリハルコンの鎧』を身に纏っている」

「『オリハルコン』だって⁉」

「普通の攻撃では、かすり傷一つ付けられないであろう」

 流暢に説明するバグ……余裕すらうかがえる。

 

 マジか……元々の戦闘力が高い上に、オリハルコンの鎧で防御も完璧、これは一筋縄ではいかないか。

 

 レイブンが、自慢の鎧をバンバン叩きながら吠える。

「へへへ、さっきは『絶対防御』なんて大層なことをほざいていたが、この『オリハルコンの鎧』を纏った、オレ様の方がよっぽど『絶対防御』だと思わないか? ギャーハハハ!」

 くそっ、最強金属を纏っているからって、調子に乗っていやがるな……

 

 

「はあああぁぁぁ……『神魔 光速斬鋼剣』ーーーーッ!」

 ガガガガガガーーーーッ!

 オレの、目にも止まらぬ超高速剣をお見舞いだ!

 

 シュウウゥゥ……

 全弾命中したはずの『レイブン究極体』は、微動だにせずその場に立っている……

「マジか……本当に傷一つついてないギャウ……」

 

「それならボクが……」

 神楽の前に魔法陣が展開……『風』『風』『風』『風』『風』『風』

「アナルトス・バッファー・シューエル・トリノ・エルダー

 ギザルシュ・パイン・サザノーム

 大気を統べる空の竜よ 暴風となり 全てを切り裂け

 白き風纏いし 大いなる風神よ 邪気を祓い 人を守りし壁となれ

 相反するものよ 天神オーバーンの御心のままに集え

 風属性ヘキサグラム 『テンペストクロス』!」

 

 いくつもの竜巻が一つになり、見たこともないほどの巨大な竜巻に!

 周りの岩やボードを破壊し、巻き込みながら、レイブン究極体へ!

 ガガガガガガガガガガガーーッ

 

 ヒュウウゥゥ……

 竜巻が去ったあとには、やはり微動だにしない『レイブン究極体』の姿が……

 

「ウソでしょ……? 魔法も効かないなんて」

 さすがの神楽も、ちょっと驚いている。

 

「さすがは『天才錬金術師・ナマズエ』といったところか……」

 コクコクコク

 いや、神居も神無も、感心している場合じゃないでしょう?

 

「物理攻撃も効かず、魔法も通じない……

 さすがの『神の名を冠するもの』でも、オレ様の『絶対防御』を破ることはできねぇだろ?

 もう観念して、オレに殺されちまいなぁ!」

 

 バオオオォォォーーーーッ!

 レイブン究極体の凄まじい咆哮!

 ビリビリビリビリ……

 耳の鼓膜に響く……

 

 オレは、神居とアイコンタクトをとり、神居も頷く。

「残念だったなレイブン、二日前のオレ達だったら、もしかしたら負けていたかもしれないギャウ」

「私たち二人が共闘すれば、必ずやお前の『絶対防御』をうち破ることができるだろう」

 

「なんじゃと? あの二人が共闘するじゃと⁉」

「『エイトインフィニットの水と油』と言われていた、何もかも正反対のあの二人が……?」

 審判竜、色神……オレ達ってそんな風に言われていたのか……? 初耳だぞ。

 

「なめるなよ……二人共闘したぐらいで、この『オリハルコンの鎧』を打ち破ることができるわけねぇだろう!」

 そう言いつつ、レイブンはその巨体でドンドン進軍してくる。

 

「レイブン、お前に教えてやるぜ!

 冷たいスイーツと、温かいスイーツを合わせることで、今まで見たことのない景色を見ることができるギャウ!

 一人じゃ無理でも、オレ達二人の力を合わせることで、未知の領域を切り開くことができるギャウ!」

 

「……⁉ 何を言っているんだ、貴様は?」

 

 神居の周りに、凄まじい凍気の渦が発生する!

「アドバンスドアーツ、『大氷河期波』!」

 

 バキバキバキバキバキーーーーッ

 ボードの上は『氷の世界』に……

「まだまだ行くぞ!」

 神居は、広げた両の手を中心に!

 ズズ、ズズズ、ズズズズ……

「はああぁぁ……」

 

 バキバキバキバキバキーーーーッ

 

 神居の『大氷河期波』が、『氷の棺』になる直前……!

「今だギャウ!」

 ゴアアアァァァッ!

 オレの周りにも、真っ赤な炎の渦が立ち昇り、その炎を剣に付与する!

 

「奥義、『神魔 七星極炎覇』ーーーーッ!」

 ゴアアアァァァーーーーッ

 ドドドドドドドドドドドーーーーッ!

 

「な、なにぃ⁉」

 神居の『大氷河期波』と、オレの『神魔 七星極炎覇』が重なり、大爆発が起こる!

 

「レゾナンスアーツ、『氷炎アフォガード』ーーーーッ!」

 

 ジュアアアァァーーーー

 カアッ

 ズガガガガガガガガガガガーーーーッ!!

 

 凄まじい爆音とともに、立ち昇る巨大な白煙……

「凄い……ボードがほとんど破壊されちゃっています……」

「散々冷やされた場所に、いきなり超高温の技を入れたんだ、これが『水蒸気爆発』ってやつギャウ、どうだこの威力!」

 

「本当にあの二人が共闘したんだね……今日イチでビックリしたよ」

 コクコクコク……

 神楽と神無も、物凄く感心してるんですけど?

 

 

 白煙が晴れる……

 そこには、なんと『レイブン究極体』の姿が!

 

「フフハハハ、残念だったな、お前たち二人の共闘でも、オレのこの『絶対防御』は破れねぇ! ギャーハハハ!」

「そんな、あれだけの爆発でも倒せないなんて……」

 絶望するメンバー達……

 

「チッチッチ……

 オレ達の目的は『水蒸気爆発』じゃないんだな―ギャウ」

「なに?」

 

「前にもあったギャウな、こんなこと」

「たとえ『神の金属・オリハルコン』と言えど、金属であることに変わりはない。

 極低温にまで冷やされた金属が、超高温で急激に熱せられれば、分子の結合が崩壊し、脆くなるのは知っているだろう?」

 

「あー、それって、前に『陸軍将ギンジ』って人を倒すときに、『鬼の民ドドム』さんが使っていた戦法ですねぇ」

 ピンポーン正解、よくできましたナナ。

 

「オレ達の目的は『水蒸気爆発』でお前を倒すことじゃない、お前の『オリハルコンの鎧』を脆くすることギャウ。 今のお前の防御は、『絶対』じゃないギャウ!」

「な、なん……」

 ピシッ、ビキキキ……

 その時、レイブンの『オリハルコンの鎧』にヒビが……

「く、くそぉぉぉ……」

 

 オレと神居は、メンバーのアカネを見て、親指を立てる。

 アカネも両手の親指を立てて、それに答える。

 ギュピーンッ!

(まあ本当は、『アフォガード』を食べたのは、オレ達じゃなくて『ドッペルゲンガー』達の方なんだけどね)

 

「アイカ、とどめギャウ!」

「はい!」

 シャキィーーン!

 アイカは両手に、『アイカカリバー』を構える。

 

「レイブン、アナタのとどめは、私の担当です!」

「またテメェか……いつもいつもオレの邪魔ばかりしやがって、この女ーーーーッ!」

 レイブン究極体が、その巨体でアイカに襲い掛かる!

 

「『対打撃結界』展開、『雷足』ッ!」

 バリバリバリバリバリバリーーーーッ

 アイカは一瞬で、レイブン究極体の頭上へ!

 

「『剣閃』ッ!」

 バババババババッ!

 ドスッドスッドスッ!

 アイカの周りに出現した『光る剣』が、アイカの合図でレイブンに降り注ぎ、『オリハルコンの鎧』を粉々に粉砕する!

「ぐあああぁぁ!」

 

「おーぎ、『アイカクロスインパクト』ーーーーッ!」

 

 ガガガガガガガガガーーーーッ!

「がああぁぁぁぁーーーーっ!」

 『オリハルコンの鎧』が粉砕され、剝き出しになった体に、直接アイカの奥義が炸裂する!

 

 ドシャァッ!

「ガハァッ!」

 ボロボロになりながらも、立とうとするレイブン……

 

「く、この、化け物どもが……」

 ガクッ……

 

 巨大な体躯に、三つの頭、六本の腕を持っているクセに……

「レイブン、お前が言うなギャウ」

 

 

 リリVSラーマイン

 

 『レイブン究極体』は、体を再生しようとしているが、刺さっている『剣閃』の力なのか、再生がひどく遅い。

 おまけに地面に貼り付けにされていて動くことができない。

 その奥には、キングドラゴンに乗ったバグが……

「どうだ、レイブンも動けない、あとはお前だけギャウ、バグ!」

 

「フフフ……」

 不敵に笑うバグ……

 

 ボシュン……

 神楽の『エクスメタモルフォーゼ』が切れて、元の緑色のインコに戻っちゃった!

「神楽っ⁉」

「ゴメン、時間切れちゃった」

 

 それを見ていたバグが、目線をオレ達の方に移す。

「どうやらお前たちの変身時間も、あと僅かのようだな……」

 

 オレの頬に冷や汗が落ちる……

 『レイブン究極体』に時間をかけ過ぎた、残りの八方神たちも、もってあと二・三分だ。

 

「切り札は、最後まで取っておくものだ……そう教わらなかったか?」

 バグが指を鳴らすと、ボードの結界の一部が消え、奥から人が入ってくる……

 

「だ、誰だ……?」

 青年と呼ぶにはまだ早い、少年のような男性が、異様なオーラを纏いながら現れた。

 

「彼が邪道十三人衆、最強最後の男、ラーマインだ」

「ラ、ラーマインだって⁉」

「そんなっ?」

 

 ラーマインって言ったら、騎士国カイエルの国王にして、『双林寺活殺拳』の創始者っていう、トンデモじいさんだよな?

 でもこいつは見た感じ、少年にしか見えないけど……?

「あの『閃帝』の異名をもつじいさんが、そんな簡単にバグ化なんてするかよっ!」

 

 その少年は、バグを守るようにバグの前に立ち、オレ達をまるで値踏みするように睨みつける……

「ラーマインには、『能力拡張バグ』を与えてある。

 そして、年齢を一番体力と力に満ちている、十八歳の頃に戻した」

 

「なんだって⁉ そんなことが……?」

「最大のパフォーマンスを出せる身体と、今までの経験で培った頭脳……今の彼は、まさに『史上最強のラーマイン』と呼ぶにふさわしい」

 くっ……今言ったことがすべて本当なら、まさに『人類最強の男』だ。

 

「ちなみに、最後はラーマインの方が観念して、バグ化してくれたぞ」

「そんなバカな⁉」

「疑うのなら、そいつに聞いてみるといい」

 そいつって……?

 

 ガサガサガサ……

 

 なんか全身鎧姿の、どっかで見たことがある男が、茂みから出てきた!

「あ、アンタは……」

「ガーマイン皇子⁉」

 アイカが叫んだ……ガーマインって、確かラーマインの息子の千騎士か。

 

「はぁ、はぁ、ま、間に合った……

 みんなすまない、オレがついていながら、みすみす父上をバグ化されてしまった」

 

「いったい何があったんだ?」

「それが……」

 

 

 ◆回想

 

 ギイィィ……

 カイエル城・王の間の、巨大な扉が開く。

 

 コツ、コツ、コツ……

 カイエルの王ラーマインと、その息子ガーマインの前に現れたのは、漆黒のマントに身を包んだバグであった。

 

 まず口を開いたのは、ラーマインの方……

「来おったな……」

「その口ぶり……どうやら、大体の状況は聞いているようだな」

 

 シャキィン……

 ラーマイン王を守るように、剣を抜き、構えるガーマイン。

 それを制止し、玉座から立ち上がるラーマイン。

「一応聞いておこうか、いったい何をしにここへ来たのじゃ?」

 

「知れたこと……ラーマイン、お前をバグ化するために来た」

 周りの騎士たちも、剣を抜き警戒する……その顔には緊張が走っている。

 その場から、一切動く気配のないバグ……

 それもそのはず、彼がその気になれば、『邪道流バグ技・フリーズ』で、全員の動きを一瞬で止めることができる。

 

「『邪道流バグ技・フリーズ』という技で、余たちの動きを止め、その後ゆっくりと余をバグ化させるつもりじゃな?」

「その通り、抵抗しても全て無駄に終わる」

「それはどうかのぉ……」

 バグが、訝し気にラーマインを睨む。

 

「お前の『邪道流バグ技・フリーズ』は、お前が手をかざし、発動するまで約一秒ほどのタイムラグがあるらしいの」

「……」

「余はその一秒で、自分の体を、細胞の一かけらも残さず消滅させることができる……」

「ち、父上、それは……」

 

「お前の『バグ化』は、細胞の一かけらもない状態でもかけることができるのかのぉ?」

「……」

 無言のまま動かないバグ。

 『フリーズ』のタイミングを窺っているのか、それともラーマインの動きを警戒しているのか……

 

「父上、そんなことはさせません、オレが必ず……」

「なるほど、考えたな……」

 ガーマインが話し終える前に、バグが話し出す。

 

「だが、いいのか?」

「……?」

「私は知っているぞ、お前のこと、そしてお前の考えていることも……」

「どういう、ことじゃ……?」

 

「お前には、愛弟子が二人いるな……」

「……」

 ラーマインの眉間にしわがよる……

 

「その二人に、自分の『双林寺活殺拳』の奥義を教えている、それももう最終段階だ」

「何が言いたいのじゃ……?」

「完成したようだぞ、最終奥義が……」

「!! ……」

 

 ラーマインの目は大きく見開き、その頬には焦りによる冷や汗が……

 バグの目は、真っ直ぐにラーマインを見つめる。

 

「お前の夢、お前の悲願であった最終奥義、一度も見ずにこの世から消えるのか?」

「……」

「もう一度言おう、いいのか、それで?」

「ち、父上……」

 ガーマインが、心配そうにラーマインを見る。

 

 バグは、不敵な笑みを零すと、右手をかかげる。

「……ッ!」

 

「『邪道流バグ技・フリーズ』……」

 ピタッ

 シーーーーーーーーーーン……

 

 ラーマインは、動かなかった……いや、動けなかったのか?

 抵抗できず、その場で全員が停止……

 バグが、ゆっくりとラーマインのもとに歩いていく。

 コツ、コツ、コツ……

 

 静かに、マントから手を出し、ラーマインに触れるバグ。

 バキバキバキバキバキバキ……

 ラーマインは、禍々しいオーラに包まれる……

 

「ようこそラーマイン、邪道十三人衆、十三番目の男よ」

 

 

 ◇神魔side

 

 オレは、ラーマイン王をアナライズした。

(無念じゃ……余ともあろう者が、敵の誘惑に落ちてしまうとは……)

 なるほど、今の話を聞く限りでは、どうやらラーマイン王には何か未練があるみたいだな……

 

(かくなる上は、全員で余を止めてくれ! 余の力を、世界の崩壊のために利用させるでない!)

 そうは言っても、『双林寺活殺拳』の創始者……全世界でも三本の指に入る達人を『バグ化』させたんだ、そう簡単には止められるはずもない。

「その強さ、己の身をもって知るがいい……やれ、ラーマイン」

 

「父上! 父上はオレが止めてみせます! はああぁぁーーーーっ」

「よせギャウ、ガーマイン!」

 

 ガーマインは、体中の気力を剣に集め、最大の力で剣を振るう!

「奥義『百獣咆哮覇』!!」

 ズガガガガガーー!!

 巨大な衝撃波が、ラーマイン王に向かってほとばしる!

 

「双林寺活殺拳・守の拳、『金剛』」

 ガガキィンッ!

 

 マジか、まったく効いていない⁉

 『対斬撃結界』ではなく、自らの体に圧縮した気力を纏い、衝撃波を弾いたのか。

 

「双林寺活殺拳・攻の拳奥義、『秒殺烈破びょうさつれっぱ』……」

 パパパパパパパパッ!

 ラーマイン王の両手が、目に見えないほどの超スピードで、攻撃している⁉

 

「ぐはぁぁっ!」

 ガーマインは、装備していた鎧が粉々に砕け、十数メートル先まで吹っ飛んだ!

 ドシャアァァッ!

 

「おいおい、速いなんてもんじゃないギャウ、あんなのオレでも避けきれないギャウ……」

「何という強さ……予想より数倍強い」

 今の技を見たオレと神居は、ラーマイン王に近づけなくなった……

 

「お前たちならわかるか、このラーマインの強さが……」

 この野郎、最後の最後に、とんでもないことしてくれるぜ……

 

「やべーぞ、あんなのもう、人間の枠を超えちまっているギャウ!」

「いや待て、物理はダメでも、魔法なら或いは……神無」

 コクコクコク

 頷く神無が、詠唱を唱える……

 

 神無の前に超巨大魔法陣が展開……『地』『地』『地』『地』『地』『地』

「星と大陸と運命の大神ジアスよ 我に星の力を

 我が体を伝い この地に振動を 大地よ揺れよ 大陸よ揺れよ 星よ揺れよ

 ファフパルハ・ドルグリア・ラリスザナン・ロナ・ロールテラハルト

 ウンペクト・ナムジーアス・クル・カル・リーンバーン

 地属性ヘキサグラム、『テラシェイク』」(小声)

 

 ゴンッゴンッゴンッ!

 ガガガガガガガガガガガーーッ

 もの凄い地鳴りとともに、ボードや岩盤が吹き飛び、衝撃波が噴き出す!

 

 ラーマイン王は異様な構えをみせる……まともに魔法を受ける気だ!

「双林寺活殺拳・守の拳奥義、『朧月おぼろつき』……」

 フワアアァァァ……

 

 降り注ぐ岩盤も、地面からほとばしる衝撃波も、全く当たっていない……?

 まるで水面に映った『月』の如く、実体がないかのように、ゆらゆらと揺れすべてを避けていく……

「こんな技、見たことないギャウ⁉」

  

 魔法を、他の魔法や結界以外で防ぐなんて……本当に人間なのか?

 

 ボシュンボシュンボシュンッ……

「しまったギャウ、全員『エクスメタモルフォーゼ』が解けちゃったギャウ!」

 オレ達はみんな、もとのチビ魔獣バージョンに戻ってしまった!

 

「フム、これはマズいペン」

「こんなんじゃ戦えないカァー」

「逃げるが勝ちゾイ」

 神居も審判竜も百骨王も、こんなぬいぐるみみたいな体じゃどうしようもない。

 

「くそ、これは本当に、負けを認めて逃げるしか無いギャウか……?」

 

 ズシャァァァーーーーッ、ゴロゴロゴロゴローーッ!

 その時、また茂みの奥から、一人の男が飛び込んできた!

「なんだなんだ?」

 

「いたたたた……着地を失敗してしまった、すまん」

 そう言って立ち上がる男の顔……どっかで見たことがある。

「アナタは、確かラーマインさんの弟子の一人、『裏林寺殺人拳』のジンさん……?」

 

 アイカのおかげで思い出した、ファルセインの攻城戦でリリと死闘を繰り広げた、『毒手拳のジン』だ!

「ジンさん、どうしてここに?」

 

「ボクが頼んで、連れてきてもらいました」

 そう言って茂みから出てきたのは……

「リリ!」

 リリ……確か『異世界あいどる・はーと』のメンバーで、『宝林寺活人拳』の達人のモンク……だったよな。

 

「久しぶりです、アイカさん」

「本当に久しぶりね……でも、どうやってこの場所を?」

「実はマスターとガーマインさんとは、『携帯電話』でメールのやり取りをしていて……」

 ギガっちのやつ、いつの間に……

 

「なので、今の現状、師匠のこと、この場所のこと、メールで確認済みです」

「そうだったのね、でも元気そうでよかった」

 

 一部始終を見ていたバグが、静かに話し出す。

「お前たちは確か騎士国カイエルの山中で修業していたはず……

 私の計算では、時間的、距離的に到底間に合うはずはなかったのだがな」

 

 立ち上がり、リリの隣にいた『毒手拳のジン』が、話に割って入る。

「へへ、残念……

 どうやら私が『エアグラインド』と『スカイグラインド』の魔法を使うことができるとは知らなかったようだな」

 

 オレも、一緒になって話に割って入る。

「『エアグラインド』と『スカイグラインド』ギャウ……?

 それでもカイエル方面からここまで、ノンストップでも五時間はかかるギャウ」

「ああ、おかげで私のМPと、魔力回復薬は空っぽ……もう何も唱えられん」

 リリを抱えてここまで……こいつ、根性あるな。

 

 リリが師匠であるラーマイン王を見つめながら、口を開く。

「『裏林寺殺人拳』を究めるのは辛かったです……

 『殺人拳』の極意は『破壊』……生きること、人を治すことに何の意味があるのか、考えさせられました」

 リリは、裏林寺殺人拳での修業の日々を回顧しているようだ……

 

「『破壊』の、その先を知ること。

 破壊することで止められることもある、破壊することで救われることもある……

 ボクが『裏林寺殺人拳』を究めることができたのは、この師匠の教えがあったからです」

 『破壊』の、その先か……オレは考えたこともなかったな。

 

「師匠は、ボクが止めます」

「リリ、今のラーマイン王は、バグ化してとんでもない事になっているわ、それでも行けるの?」

 心配そうに、リリに問いかけるアイカ。

 コクリ……頷くリリ。

 その顔は、一切の迷いなく、覚悟が決まった顔をしている。

 

 オレがアナライズして、ラーマイン王の気持ちを伝える……

(リリ、……何ということじゃ、こんな姿をお前に見せることになるとは……)

 

「師匠……」

(だが、お前が来てくれたことは余にとっては僥倖じゃ……余を止めることができるのはお前以外にはいない、さあ修業の成果を見せてくれ)

「わかりました、師匠」

 

「むううぅぅぅん……」

「ふううぅぅぅ……」

 二人とも『双林寺活殺拳』の構えをとる……

 もの凄い緊張感……一瞬でも気を緩めたら、首が飛ぶような空気感だ……

 

 刹那……!

 

「双林寺活殺拳・攻の拳奥義、『秒殺烈破』!」

 パパパパパパパパッ!

「双林寺活殺拳・攻の拳奥義、『秒殺烈破』!」

 パパパパパパパパッ!

 

 目に見えない、超スピードの攻防が繰り広げられている⁉

「速すぎて、何が何だか……」

 

 バチィッ!

 

 二人とも動かない……お互いに、相手の隙を伺っているのか?

 

 オレはジンに質問してみた。

「なあジン、リリが攻撃している隙に、お前が攻撃したら倒せるんじゃないギャウか?」

 ジンは首を横に振る。

「どんな攻撃も、『守の拳奥義・朧月』で躱されてしまう……師匠を倒すには、双林寺活殺拳の『最終奥義』しかない」

「活殺拳の、『最終奥義』……?」

 

「あいつは……リリはまぎれもなく格闘の天才だ……

 私ではとうとう届かなかった、双林寺活殺拳の『最終奥義』を、彼女は唯一会得することができた」

「ギャウ、マジか、スゲーなリリ!」

 

 話を聞いていたのか、ラーマイン王が構えを解く……

(リリ、『双林寺活殺拳・最終奥義』……お前は会得することができたのじゃな?)

 コクリ……頷くリリ。

 

(そうか、余が思い描きながらも、とうとう会得することができなかった『幻の最終奥義』……余に見せてくれ!)

「こおおおぉぉぉぉ……」

 凄まじい闘気を放ちながら、活殺拳の構えをとるラーマイン王。

 

「わかりました師匠、アナタの最高傑作、『活殺拳最終奥義』をご覧ください!」

「はあああぁぁぁ……」

 リリも、負けないくらいの闘気を放ちながら、活殺拳の構えをとる。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……

 ボードが、地面が、二人の闘気に反応して震えている……?

 今まで見たことがないほどの、凄まじい気力の渦が、二人に巻き上がる!

 

 

「行くぞーーーーーーッ!」

 先に動いたのは、ラーマイン王の方!

「双林寺活殺拳・攻の拳・究極奥義『閃空極地 鳳凰活殺拳』ーーッ!」

 ズアアアァァァ!

 ドドドドドドドドーーーーッ!

 

 真っ赤な気力のオーラを身に纏い、まるで鳳凰のような巨大な気力の塊が、リリに向かって一直線に飛んでいく!

 気力が通過したあとは、ボードが粉々に砕けて吹き飛んでいる!

 

「ふううぅぅ……」

 リリは、全身を青いオーラで身を包み、ゆっくりと両手を前に構える……

 

「双林寺活殺拳・最終奥義……『因果応報 活殺波動陣』!」

 

 パアアアァァァ……

 リリは一切動かず、ラーマイン王の攻撃を真正面で受ける!

 

 ガカァッ!!

 

 ドガガガガガガーーーーッ!

 一瞬だった……

 光ったと思ったら、ラーマイン王が空中に弾き飛ばされていた!

 ドシャァッ!

 

 数メートル弾き飛ばされて、地面に叩きつけられたラーマイン王……

「マジか、あのラーマイン王が……」

「ガハッ、ゴフゥッ、ゴボォッ……」

(み、見事じゃ……まさに、余が思い描いていた、最終奥義……よくぞ、よくぞその域に達した、リリよ……)

「師匠……」

 

「凄すぎてなにがなんだかギャウ、リリ、この技は……」

「はい、この双林寺活殺拳・最終奥義『因果応報 活殺波動陣』、その正体は……究極の『オートカウンター』」

「オートカウンター?」

「どんな攻撃もその威力を倍にして、弾き返すことができます」

 スゲェ……相手の技が強ければ強いほど威力が増す、活人拳と殺人拳の良さを合わせた攻防一体の技、まさに『活殺の拳』。

 

「しかし、『双林寺活殺拳』の極意は『戦わずして勝つこと』……

 自分の強さで戦意を喪失させる、相手と同位し、相手の思考を読み、何もさせず勝つなど……相手も自分も一切傷つかずに勝利するのが理想なのです」

 人を生かす活人拳、人を倒す殺人拳、双方を突き詰めると、結局『戦わないこと』に行きつくのか。

 

「ひょっとしたらボクは、活殺拳の極意とは、一番かけ離れた場所にいるのかもしれません……」

「リリ……」

 

 

 オレは、またラーマイン王をアナライズした。

(ま、まだじゃ、まだ余は死ぬわけにはいかん……)

 もはや満身創痍のラーマイン王だったが、気力で起き上がる。

 

 ラーマイン王に吹き飛ばされて、こちらも満身創痍だったガーマインが、リリに話しかける。

「すまぬリリ、これは、これだけは、他の者に譲るわけにはいかぬ」

「はい、ガーマイン皇子……」

 

 リリに抱えられ、やっと歩けているガーマインが、ゆっくりとラーマイン王の元へ。

(ガーマイン、どこじゃ……)

 ラーマイン王は、すでに視力も失っている……

「はい、父上、ここにおります……」

 ラーマイン王の目の前で、跪くガーマイン……

 その目にはすでに涙が滲んでいる。

 

(ガーマインよ、今この時をもって、お前を『騎士国カイエルの国王』に任命する)

「……はっ」

(その剣で、この世界の崩壊に加担した、逆賊の王を討ち取るのじゃ……よいな)

「…………はい」

 

 ラーマインはその場に座り、目を閉じる。

 ガーマインは剣を抜き、ラーマインの後ろに立つ。

 

(カイエルを、王国民を頼んだぞガーマイン)

「……うぅぅ……はい!」

(リリよ、ギガンティックマスター殿と一緒に、この世界のことを守れ、弱き者たちを救うのじゃ)

「はい、師匠」

 

 ラーマインは空を見上げ、両手を広げた。

 

(人生の最後に、素晴らしき出会いがあった、まこと良い人生であった……

 今の余の辞書に、『無念』と『後悔』の文字は無いっ……ハーハハハ!)

 

 ザシュッ!

 ドサッ……

 

 ガーマインの一撃で、ラーマイン王は息絶える……

「父上、私は、もう一生泣きません……だから、今だけ、今だけは……うああぁぁぁーー、ぢ、ぢちうえ、ぢぢうえーーーーっ! ううぅ……うぅ……」

 まるで、小さな子供のように泣き叫ぶガーマイン……

 

「ラーマイン王……見事な最後だったギャウ」

 

 

 バグVSナナ?

 

「王手ギャウ、バグ!」

 全ての駒を失ったバグ……

 でもバグ本人の実力は、まだ誰も見ていない、果たして……

 

「多少の計算違いがあったとはいえ、ここまで私が押されるとは……

 さすがは、この大陸を支える『八方神』、というわけか」

「じゃあ観念して、降参するギャウか?」

 

 そう言うオレに、不敵な笑みを見せるバグ。

「今私が『邪道流バグ技・フリーズ』を使えば、動けるのはチビ魔獣の八方神と、アイカ、マフユの二人だけ……

 ちなみに、私は邪道十三人衆すべての『邪道流バグ技』が使用できる」

「なんだってギャウ⁉」

 そりゃマズい、こいつこそ最凶じゃないか!

 

「と言うわけで、ギガンティックマスター絶望のため、まずはお前から始末しよう、神魔」

「ギャワワ⁉」

「邪道流バグ技、『ライフミューティレーション』!」

 マ、マズいっ!

 

「アドバンスドアーツ、『アブソリュート・ゼロ』!」

 バキィーーンッ!

 

「ギャウ⁉」

「なにっ⁉」

 バグの手が凍り付いている……

 オレを助けてくれたのは、何とナナだった!

 

「大丈夫ですか、神魔さま」

「ギャワ⁉ し、神魔さまぁ? どうしたんだナナ、頭でも打ったのか? まさかあれほど注意したのに、また拾い食いを……⁉」

 ナナに抱っこされ、守られているオレ……ナナの喋り方がいつもと違って、オレは気持ち悪くて心配になった!

 

「大丈夫です神魔さま、今喋っているのはナナさんではありません、『氷の民』フリージアです」

「フ、フリージア⁉」

 

「なんだと⁉」

 話を聞いていたバグが反応する!

「私の妻フリージアは、盗賊の襲撃の際死亡した、断じてお前がフリージアのハズはない!」

 

「『名もなき村』が襲撃された際、村人は全員殺されたとオレも聞いているギャウ……じゃあお前は一体?」

「私は盗賊に襲われたとき、自分の魂を氷の民の秘術である『凍魂術とうこんじゅつ』にて凍らせ、あの村でずっと機会を窺っていました。

 私と一番波動が近かったナナさんに憑依して、今喋っています」

 

「そうか、フリージアの体を再生しても、完全に戻らなかったのは、魂が抜けていたせいだったのか……」

 あのバグが、愕然としている……

 

「『機会を窺っていた』っていうのは……?」

「はい、今お見せします」

 そう言って、ナナはバグの方へ歩き出す。

 

「バグ……」

「フリージア……」

「このバカバグッ! いい加減に起きなさーーーーーーいっ!」

「ええーー⁉」

 周りのみんなはビックリ! ってかフリージア、お前って『恐妻』だったの⁉

 

 バグは? みんなバグの方を見る!

「ごっ……」

「ご?」

 

「ご、ごめーーーーんっ!」

 

「ええーー⁉」

 周りのみんなは、二度ビックリ! あのバグが、あやまっている……?

 

「はっ、こ、ここは? オレは一体……?」

 バグが、まるで今起きたかのように、キョロキョロしてる……

「やっぱり、寝ていただけだったのね、バグ」

 『寝ていた』……?

 じゃあ、今が本当のバグってこと……?

 

「オレは、名もなき村が襲撃されたとき、あまりのショックで気を失ってしまいました……

 あれからずっと夢を見ていたような感覚でしたが、どうやらその時に、『悪いバグ』に体を乗っ取られてしまったようです」

「『悪いバグ』……?」

 

「あっ、ああああ、また『悪いバグ』が、体を支配しようと……ダメだ、オレじゃ、抵抗でき……」

 バグは、自分の中の誰かと戦っているように見える……

 

「はああぁぁーーーーっ!」

 カアァァッ!

「はぁ、はぁ、はぁ……おのれ、永遠に寝ていればよかったものを」

 

「そうギャウか……ギガっちが言った通り、やっぱり本当のバグはいいやつだったんだな……ということは、お前がシステムから生まれた、『プログラムのバグ』の方ギャウか?」

「フフフ、そうだ……

 私はもともと、この『バグ』の『深層思考』だった。

 バグのネガティブな感情が積み重なり、私は『自我』を持った……

 今の私こそが、バグの真の心を持った存在なのだ」

 

 メンバーのオウカのように、一つの魂に二つの人格が備わっている、いわゆる『二重人格』ってことなのか……?

「『深層思考』のお前が、バグの体を乗っ取り、新しい世界の神になるために『ギルギル』を崩壊させようとしているのか!」

 

「そうだ、『表層思考』のこいつも、ずっと私と同じことを考えていた、口に出さないだけでな」

 人間は誰しも、心の奥ではそういうことを考えているものだ……

 一概に、バグだけを責めることはできない。

 

 

「興が削がれたな……

 このままフリージアを残して、お前たちを全滅させてもいいのだが……

 まあいい、もう一度だけチャンスをやろう」

「ギャウ、まさかまた『リセット』するつもりギャウか⁉」

「フッ、どうせならギガンティックマスターの前で直接お前たちを殺した方が、より絶望感が増すだろうからな」

「ギャワワ……」

 

「おそらくその『エクスメタモルフォーゼ』という魔法、次に使用できるのは相当あとになりそうだな」

「そ、それは……」

 一番聞かれたくないことを聞かれ、オレはしどろもどろに……

 

「どうやら今回使ったことで、数日は使用が不可能になるとみた……

 ならば『リセット』した後は、お前たち八方神はただのチビ魔獣の集まりというわけか」

 うう、くそう、ハッタリをかます余裕もない……

 

 バグは右手をかかげ、技を発動しようとしている……

「ではまた『二日前』で会おう、ごきげんよう」

「バグ、待つギャウ!」

 オレ達はみんな、バグの技を止めようと飛び掛かる!

 

「邪道流バグ技……『リセット』」

 プツンッ……

 

 

「ハッ……!」

 突然、目の前がモザイクだらけから真っ暗になり、気が付くと……

「ここは、現実世界か……? ギャウ」

 

 オレ達は、『邪道流バグ技・リセット』により、また『二日前』に戻されたようだ……

「間に合わなかった……みたいですね」

 ガックリと落ち込むアイカ。

 

 オレは一人、ニヤリと微笑む。

「いや、作戦成功だ……

 まんまと時間を稼いでやったギャウ、最初からバグには『リセット』を使わせるつもりだったギャウ」

「え、そうだったんですか?」

 

「よし、このまま『株式会社エイトインフィニット』へ行くギャウ!」

「はい!」

 

 *****

 

 現実世界の『株式会社エイトインフィニット』に来たオレたちは、屠りしものたちを呼び出す。

「ピンポンパンポーン、屠りしものの皆様、至急会議室へお集まりください」

 

 一分後、屠りしものたちが集まってきた。

 

「神魔……その顔、どうやら作戦は成功したみたいだな」

「ああ、バグがリセットを使い、ギルギルの世界は『二日前』に戻ったギャウ。

 これで合計三日、お前たちは修業に専念できる」

 

「マスター!」

「おお、リリ!」

 ギガっちとリリの対面……一年ぶりくらいになるのかな?

 

「何度もメールはやり取りしていたけど、会うのは本当に久しぶりだな」

「はい」

「お前たちの活躍は、タブレットの『動画』で見ていた……ラーマイン王を救えなかったのは、本当に残念だった。 でも、あの人らしい、豪快な最後だったな」

「……はい」

 

 おそらく初めて現実世界に来た『毒手拳のジン』が、まるで田舎から都会に遊びに来た観光客のようにキョロキョロしている。

「ジンもありがとう、必死にリリを運んでくれたんだろ?」

「あなたが万が一のため、『エアグラインド』と『スカイグラインド』を覚えた方がいいとアドバイスしてくれたからな。

 私は『双林寺活殺拳』を究めることはできなかった……こんなことぐらいしかできなかった」


「そんなことはありません、ジンさんも相当な達人になっています、ボクが保証します」

「ハハハ、ありがとうリリ、だがおかげで師匠の最後に立ち会えた、感謝している」

 

「他にも、ソウエイとヴァロン皇帝や、シャルドと魔角族王も残念だったな……

 そして、神魔たち八方神の活躍も凄かったよ」

「そうだろうそうだろう、もっと褒めてもいいギャウ」

 なぜか、他の八方神からの白い目が痛い……

 

 オレは改めて、集まった屠りしものたちに話始める。

「今回の戦闘で、お前たちに伝えておきたいことがあるギャウ」

 屠りしものたち四人の顔が、真剣モードに変わる……

 

「伝えたいことは二つ、一つはバグの使う邪道流バグ技、『フリーズ』と『リセット』についてギャウ」

「そうだな、オレ達『転移者』には効かないとはいえ、他のメンバー全員が行動不能になるってのはキツイぜ」

 ドラゴニックキングが、メンバー達を見ながら呟く。

 

「『劇薬の洞窟』にあったナマズエの日誌から、いくつかわかったことがあったギャウ。

 どうやら『フリーズ』と『リセット』は、『時間の流れが規則的な場所』で使用する技らしい……これがヒントになるかも知れないギャウ」

「『時間の流れが規則的な場所』、か……」

 

「もう一つは、『バグの因子』について。

 いろんなプログラムに浸食しているらしく、『誘惑』や『催眠』、『洗脳』の類の技も効果がない、解析するのにはまだまだ相当な時間がかかるギャウ。

 どちらにしても、まず『バグの支配』から解除しないことには始まらない……バグを倒すことが、最低限の条件ギャウ」

 

「……」

「そうか……」

 四人とも、うな垂れている……

 自分の四天王を助けたい、それが修業のモチベーションにもなっていたからな。

 

「そう落ち込むこともないギャウ、一応『秘策』も用意しているギャウ」

「そうか、そうだな、まだ終わったわけじゃない、落ち込むのはやることをやった後だ」

 さすがは『ポジティブが服着て歩いている』と言われているギガっちだ、そうこなくっちゃ。

 

「よし、俺たちは修業の続きだ!」

 

 

 ……二日後。

 

「どれどれ、そろそろ四人とも修業が終了して、戻ってくる頃のはずだけどギャウ……」

 オレ達は、ギガっち達が修業している部屋を訪れてみた。

(ドッペルゲンガー達は最上階の応接室で待機、目が合ったらまずいから)

 

 まずはサモンロードの部屋から。

 ガチャ……

 

「どうギャウ、サモンロード?」

「神魔……かい? ということは、修業はこれで終了でいいのかな?」

 いつもビシッとしてるサモンロードが、今はボロボロ……

 

「カイエル騎士団修練場で、百万騎士試験に合格したよ……千騎士相当の相手と十人連続、さらに伝説級の『亜竜』や『羅竜』との連続戦闘、さすがに疲れた……途中何度もリタイアしかけたよ」

 あのサモンロードが泣き言とは珍しい……

 でも、それだけ仲間を助けるために必死だったってことだな。

 

 

 次はコズミッククイーンの部屋へ。

 ガチャ……

 

「おーい、どうギャウ……」

「キャアー!」

 コズミッククイーン、着替え中⁉

 

「ギャワワ……」

「おい、レディの部屋に入るときはノックぐらいしろ! 不謹慎だぞ」

「す、すまんギャウ……」

 カケルに怒られた……というかカケルはいいのか?

 

「この私が二日間もシャワーに入れないなんて……せめて着替えだけでもと思って」

「そうだったギャウか……」

「修業の方はバッチリよ、『星の塔』は制覇したわ。ただ……」

「ただ……?」

「天辺にあった『超激レアアイテム』っていうのが、ただの『錆だらけの大剣』だったの、ガッカリだわ……」

 そう言いつつも、自信たっぷりな顔……手ごたえはあったみたいだな。

 

 

 お次はドラゴニックキングの部屋だけど……

 ガチャ……

 

「ド、ドラゴニックキング―ギャウ⁉」

 ドラゴニックキングが、床に倒れこんでる?

 

 オレの呼びかけに反応し、プルプル震えながら話し出す……

「キ、キツかった……最後の『ゴールデンフェニックス』が強すぎて、とっておきの全回復アイテム『竜命水』も使っちまった……死ぬかと思った」


「マジか、最後の『ゴールデンフェニックス』だけ、レベル三百越えだって知らなかったギャウか……?」

「もうちょっと早く、教えてほしかった……ガクッ」

 チーン

 

 

 最後はギガっちの部屋だ。

 ガチャ……

 

 カタカタカタカタ……

「そうか、ここでタゲをとれば、もうちょっとうまく立ち回れたかも……ブツブツブツ」

 真っ暗な部屋で一人、まだパソコンを操作してる……

 

「おい、ギガっち」

「うわぁっ! ビックリした……なんだ神魔か」

 この集中力……

 

「お前が来たってことは、修業は終了か?」

「ああ、あれからまる二日、作戦通りこの後本番だギャウ」


「よーし、俺もダンジョンは攻略した、神魔の言っていたノルマは、何とかギリギリ達成したぞ」

 オレの言ったノルマは、合計レベル六百以上……『ゲームの廃人』のギガっちなら楽勝だと思っていたけど、以外にかかったな。

「俺には修業じゃなくて、『ご褒美』だったけどな」

 

 ギガっちの部屋を見まわす……

 あちこちに、ゆで卵の殻と、栄養ドリンクの空き瓶が散乱してる……相当やりこんではいたみたい。

 机の上と下に、パソコンが四台もあるのが気になるけど……?

 

 

 オレ達と屠りしものたちは、全員で会議室に移動した。

 そしてオレの説明が入る。

 

「というわけで、作戦通りお前たちにはまる三日修業してもらったわけだが……

 いいか、この『クラスユナイトシステム』は、『オルタナティブドア』を通過せずに、パソコン上から『ギルギル』にログインすることでサブキャラを作ることができるようにした。

 このサブキャラを成長させて、最終的にそのサブキャラのレベルと能力を、メインキャラに合体させることができるシステムギャウ」

 

 つまり、メインキャラよりも数倍速くレベルアップし、なおかつ違うクラスの技や魔法を会得することができるってこと。

 四人とも、メインのキャラはだいたいレベル三百ほど、これにレベル三百のサブキャラを足して、合計六百にするのがノルマだ。

 

「これでお前たちは、通常よりも猛スピードでレベルアップし、相当強くなったはずギャウ」

 よしよし、四人とも自信たっぷりの顔をしているな……なんでギガっちだけアクビしてんだ?

 

「オレ達八方神でバグにリセットをさせ、時間は稼いだ。

 オレ達はしばらく『エクスメタモルフォーゼ』は使えない、あとはお前たちに任せるギャウ!」

「わかったよ」

「めんどくさいけど、仕方ないわね」

「あとはオレ様に任せておけ!」

「ふあぁ……」

 

「『ゲームの廃人』のギガっちに、ぴったりのシステムだっただろ?」

「失礼だなっ、俺は人よりちょっとゲームのレベリングが好きで、人よりちょっとプレイ時間が長いだけだ!」

(それを『ゲームの廃人』というんだけどな……)

 全員の白い目が、ギガっちに突き刺さる。

 

 

「ちなみにお前たち、サブキャラには何のクラスを選んだんだギャウ?」

「ボクは『精霊王アレクタリス』だよ。ギガンティックマスターの強さの秘密を知りたくてね、召喚獣の属性も強化できるみたい」

 さすがはサモンロード、考えているなぁ。

 

「私は『召喚士サモナー』、サモンロードのフェンリルみたいな子が欲しかったの」

 コズミッククイーン、召喚獣をペットかなんかと勘違いしてないかな……?

 

「オレは『悪魔崇拝者サタニスト』だ。アクトの奴は気に食わなかったが、あの力は魅力的だ」

 確かに……その顔には良く似合っているけどね。

「ギロッ!」

 ドラゴニックキングに睨まれた……転移者同士は読心できないはずなのに。

 

「ギガっちは? 何にしたギャウ?」

「俺は……」

 言いつつ、ギガっちは目がトローン……?

 

「ちょっと……もう限界なんで、戦闘前に起こしてくれると、助かります……じゃ、そういうことで、俺は……」

 ガクッ……

「えっ?」

 ギガっちは、そのまま床に倒れこむ。

「ZZzzz……」

「ね、寝てる……?」

 

「世界の命運がかかっている戦いの前なのに、よく寝られるなこいつは?」

 ドラゴニックキング、珍しくオレも同意見です。

 

「時間がない、このまま運んじまおう」

 ドラゴニックキングがギガっちを抱え、オレ達はバグと邪道十三人衆が待つ『ギルギル』へ、オルタナティブドアを開けて入る。

 

「さあ、これが『最終決戦』になる、出陣だ!」

「おう!」

 

 

 ☆今回の成果

  神魔&神居 レゾナンスアーツ『氷炎アフォガード』

  リリ 双林寺活殺拳最終奥義『因果応報 活殺波動陣』

  俺

  サモンロード

  コズミッククイーン

  ドラゴニックキング

   クラスユナイトシステム・ノルマ達成?


次回の投稿は 4/26 21:00の予定です。

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