表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で「あいどる・はーと」作りました。  作者: みっど
第十九章 第三次異世界大戦編
74/80

第七十四話 八方神見参、と「マジデベ」

 

 アナタはアイドルに『エヘ』と言われたことがありますか? ……オレはあるギャウ。

 

 ◇神魔side

 

 オレ「神魔」、三十歳、『ギルギル』のゲームデザイナー。

 好きな色「赤」、好きなスイーツは「イチゴのスフレ」、好きな技は「獄炎のブレス」。

 ゲーム開発中に異世界に転移してしまい、紆余曲折の後、相棒のギガっちと一緒に異世界を大冒険中。

 

 オレが今いるのは、ゲームの異世界『GUILTYorNOTGUILTY ONLINE』の王家の遺跡……

 丁度、ジャッジメントドラゴンと色神、あと百骨王を『擬人化システム』を使ってチビ魔獣の姿に戻したところだ。

 

「まさかアンタが来るとはね、神魔」

「てっきりギガンティックマスターあたりが来ると思ってたのに」

「あんまりお前に借りとか作りたくなかったゾイ」

 ジャッジメントドラゴンも色神も、百骨王も相変わらずだ。

 

「ギガっち達は今修業中だからな、オレ達で時間を稼がなきゃならない、お前たちにも協力してもらうギャウ」

 オレは三人に軽く説明した後、オルタナティブドアを開く。

「よし、このまま『劇薬の洞窟』へ行くギャウ!」

 

 オレ達は、オルタナティブドアを通って、大陸の北西にある『劇薬の洞窟』へ。

 

 ガチャ……バタン

 

「おっと、オレ達よりも先に待っているとは、なかなか殊勝ギャウ、バグ」

 毒の沼地の上に、ドラゴニックボードがすでに設置されていて、その上にはバグと邪道十三人衆が配置についている。

 

「フッ……この世界の崩壊はすでに決まっている、ならば一刻も早く見たいではないか、『新世界』を」

「そんなことは、ギガっちとオレ達が、絶対にさせねぇギャウ」

 

「そう言う割りには、ギガンティックマスターと他の屠りしもの達はいないようだな……わざわざ百騎士のエリアに『模写』まで使わせて、ご苦労なことだ」

(げっ……速攻でバレてる)

 

「おい神魔、バレないように本人そっくりの装備まで準備したのに、どういうことだ?」(小声)

 いや神居、オレにそんなこと言われても……

 

 バグのやつが、ため息交じりで話し出す。

「てっきり屠りしものたちの残りのメンバーで挑んでくると思っていたが……

 ギガンティックマスターがいないのなら、話にならんな」

 

「お前たちの相手をするのは、残ったメンバー達だけじゃない、オレ達も相手になってやるギャウ」

「ほう……この大陸を支える神と言われている、お前たち『八方神』が……?」

「そうだギャウ」

 今のオレ達は、チビ子竜、ペンギン、緑色のインコ、黄色のリス、黒いカラス、桃色のフラミンゴ、ちっちゃいスケルトン……

 見た目はかわいいが、真の姿で登場してたら、きっとビビッておしっこチビっていただろうぜ。

 

「しかしお前たちは、通常の姿だと魔力の消費量が多すぎて、持って数分……そんな状態で私たちの相手ができるとでも?」

「ヘヘヘ、そいつはすでに『裏技』を使って、解決済みギャウ」

「『裏技』、だと……?」

 

 そう、開発者という特権を最大限利用した、オレ達だけが使える最高の技だ。

 

「その裏技とは『マジックデベロップメントシステム』、略して『マジデベ』だギャウ!」

「『マジデベ』……?」

 

 【マジックデベロップメントシステム】……

 『マジックデベロップメント』とは、直訳すると『魔法開発』のこと。

 この『ギルギル』の魔法には、名称と効果が設定されていない属性式がいくつかあり、その場所に自分の好きな効果を持つ魔法を『開発』することができるシステムがある。

 

 通常のゲームモードでは、自分で『魔法名』と『魔法効果』を考え、それを株式会社エイトインフィニットの専用係へメールで送信。

 許可が出たら、後日送られてくるプログラムをアップロードするという手順。

 

 今回使った属性式は『炎』『風』『光』『光』『闇』のペンタグラム。

 魔法名は『エクスメタモルフォーゼ』、効果は『メタモルフォーゼ』の強化で、効果対象の増加と消費魔力の軽減。

 

 急遽チーフプログラマーの百骨王に依頼して、その場で作ってもらい、間に合わせた『裏技』だ。

(後からさんざん百骨王には文句を言われたけどなっ!)

 

「まあ、それでも十五分間が限界……これで相手してやるギャウ!」

「そうか……ギガンティックマスターがいないのは残念だが、『八方神』のお前たちが相手をするというのであれば……いいだろう、あえてのってやる」

「そう来なくっちゃなギャウ」

「お前たちが全滅した姿を見れば、さすがのギガンティックマスターも、大いに絶望するだろう……楽しみだ」

 

「お前、性格悪いギャウな……

 残念だけどそんなことにはならない、オレ達『神』が相手をするんだからな!」

 

 

                       神魔側の配置

  

        歩兵竜「ユイ」           香車竜「アイカ」

        歩兵竜「ヨシキ」 飛車竜「審判竜」 桂馬竜「百骨王」

        歩兵竜「ヒビキ」          銀将竜「神楽」

        歩兵竜「アオイ」          金将竜「神魔」

        歩兵竜「マフユ」          王将竜「エリア」

        歩兵竜「カルラ」          金将竜「神居」

        歩兵竜「エスタ」          銀将竜「神無」

        歩兵竜「レイザ」 角行竜「色神」  桂馬竜「オウカ」

        歩兵竜「アカネ」          香車竜「ナナ」

 

 

「よーし、ゲームスタートだギャウ!」

 オレ達は全員配置につき、バグの邪道十三人衆を迎え撃つ。

 

「エリア、もうバレちまったから『模写』は解いていい、お前はそこで動くなよ、いいなギャウ」

 エリアはビビって震えながらも、ブンブン頷く。

 エリアにはそのまま『王将竜』をやってもらうことに。

 

「いいか、『エクスメタモルフォーゼ』は、戦闘開始のギリギリで発動するんだ、十五分間しか擬態できない、キチンと逆算して戦ってくれギャウ」

「わかった」

 

 

 色神VSキャルロッテ

 

「アンタが『色バグ』を使うキャルロッテって娘かい?

 『色神』のアタシに、色で勝負をするなんて、一万年早いよ」

「……」

 

 う~ん、まだ『エクスメタモルフォーゼ』を使っていないから、ただのピンク色したフラミンゴがいきがっているようにしか見えないギャウ……

 まあ、魔法を使っても、ピンクのツインテールの小学生の女の子にしか見えないんだけどな……

 

 色神の前に魔法陣が展開……『炎』『風』『光』『光』『闇』

「光よ 幻よ 虚像よ 変化を求めしものに 偶像のベールを纏わせたまえ

 この世は目に見えぬものにこそ価値があることを知らしめよ

 クォック・メトロ―ト・ジンギアス・ファーリン・エスタメイト・ダン・マッキアート

 超擬態属性ペンタグラム、『エクスメタモルフォーゼ』!」

 

 パアアァァ……

 フラミンゴの足元の魔法陣が輝き、フラミンゴを人間の女の子に変えていく……

 

「ウフフ、どう? アタシの誘惑に負けない男なんて、この世に存在しなくてよ、キュピーン!」

 かっこよくポーズを決めても、女子小学生にしか見えないんだよなぁ……色神、残念っ!

 

「どうやら『色のバグ』を使うみたいだけど……

 前の戦闘では防御一辺倒、まるで攻撃する気がなさそうだったけど、ひょっとして攻撃する手段がないのかしら?」

 

 レイブンが後ろから、キャルロッテに指示を出す。

「なめるなよ……『色バグ』のバグ技はなぁ、こういう使い方もできるんだぜぇ! キャルロッテ!」

「パワーソース……『マゼンタスプレッド』!」

 パアアァァァ……

 キャルロッテは、自分を『色バグ』で真っ赤に染めた!

 

「自分に色バグを……? いったい何をするつもりギャウ?」

 

 続いてレイブンが、周りのウォリアー達に命令する。

「よし、全員でキャルロッテに炎系魔法を放て!」

 

 ウォリアーの前に魔法陣が展開……『炎』『地』『闇』『闇』

「プライグ・シーメイン・ガラルド

 地下深く眠る地獄の業火 罪深き獣共に地獄の烙印を押せ……

 獄炎属性クアトログラム、『エグゾダス』!」

 

 ウォリアーの前に魔法陣が展開……『炎』『炎』『炎』『炎』

「ルーン・セイル・アールガイン

 太陽より生まれし炎の竜よ 我が前におん下りて 踊り狂え

 炎属性クアトログラム、『プロミネンス』!」

 

 ウォリアーの前に魔法陣が展開……『炎』『炎』『地』『地』『光』

「原子炉溶融 原子崩壊励起 核分裂の力をもって 想像を絶する炎を

 太陽のごとき爆炎をその手に!

 シン・ヴァレリアル・サンセルト・ジン・ガインゼル・パララシオン

 融解属性ペンタグラム、『メルトダウン』!」

 

 キャルロッテに放たれた炎系の魔法は、全てキャルロッテに吸収されていく……

「な、なんだって⁉」

 

 またレイブンが、オレ達に向かって吠える。

「吸収された炎系魔法は、キャルロッテの中で集束し、威力を倍増させることができるのさ」

 うおっ、確かにキャルロッテの体の中で、凄まじい魔力が渦巻いているのがわかる……

 

「これが邪道流バグ技、『魔力集束砲』だっ! やれっキャルロッテ!」

 キュウゥゥン……バシューーーーッ!

 キャルロッテの中で集束された炎属性魔法は、キャルロッテの手の平から、巨大な光線のように放たれた!

 

「凄い魔力ギャウ、威力だけなら『アークパイロ』に匹敵するギャウ! 色神、避けろーーーーっ!」

 ズドドドドドドドーーーーッ

 ガガガガガガガガガ……

 直撃しちまった……さすがに、まずいんじゃないか……?

 

 煙が晴れると、そこには真っ赤に染まった色神が立っていた。

「なっ、これは、キャルロッテの技、『マゼンタスプレッド』か……?」

 

「アタシは名前の通り『色』のスペシャリストよ、アンタが使う色の技なら、当然アタシも使うことができるに決まってる」

 色神のドヤ顔……久しぶりに見たな。

 

「チッ、さすがは八方神の一柱、簡単にはいかないか……」

 さすがのレイブンも少し歯痒そう。

 

「今度はこっちの番、今言ったように、アンタが使う技ならアタシも使うことができる……こんな風にね!」

 キュウゥゥン……

「こいつ、まさか『魔力集束砲』まで⁉」

 あのレイブンが、焦って後ずさりまでしてる……そんなにヤバいのか?

 

「こいつはアタシの体の中のいろんな『色の魔力』を集束したもの……

 体を赤く染めたくらいじゃ防げないよ、覚悟してね、『魔力集束砲』!」

 バシューーーーン!

 色神の手の平から、巨大な光線が放たれる!

 

「……ッ!」

 ズドドドドドドドーーーーッ

 ガガガガガガガガガ……

 

 直撃だ……サモンロードには悪いが、さすがにこれは無事には……

 バフゥッ!

 煙が晴れると、そこには真っ黒に染まったキャルロッテが……

「なんですって⁉」

 

「ギャーハハハ、色神のアンタならわかるよな?

 『黒』は何ものにも染まらない色……キャルロッテがこの状態になったら、どんな属性魔法も通用しないぜぇ」

 

 『黒は何色にも染まらない色』……

 人を平等に裁かなければいけない裁判官の服の色も、『黒』だ。

 黒はどんな色も跳ね返す、無敵の色ってわけか……

 

「なるほどね……でも無敵ってわけではないわ、弱点はある」

「はぁ? 弱点なんてあるわけねぇだろう、黒を上塗りできる色なんて存在しねぇ!」

「あるわ、一色だけ、黒を上塗りできる色が……」

 本当にそんな色があるのか……? オレも知らないんだけど。

 

「へっ、はったりが下手くそだな……そんなものがあるのならさっさと出して見ろ!」

「せっかちな男ね、そういう男は例外なくモテないのがセオリーなのよ」

 そう言いつつ、色神は異様な構えをみせる……

 

「パワーソース……『チタニウムホワイト』!」

 パアアァァァ……

 キャルロッテが白色に染まった⁉

「何だと⁉ 白色で、黒色を上塗りしただとっ?」

 レイブンもびっくりしてるけど、オレもびっくり!

 

「『チタニウムホワイト』は油絵具の顔料で、チタンを配合した白色。

 色の中で唯一、黒を上塗りできる色なのよ」

 そんな色があったのか……しかも白色ってことは……

 

「さあ、これでアナタは『何ものにも染まる白』になったわけだけど、好みの色は何色かしら?」

 そう言って色神がキャルロッテに近づくと、キャルロッテは後ずさり……

 パアアァァァ……

「……⁉」

 な、なんだ? キャルロッテの足元が、光っている?

 

「フフフ……かかったわね、アタシのアドバンスドアーツ、『ハニートラップ』に」

 色神のアドバンスドアーツ、『ハニートラップ』……地面に設置する、罠系の誘惑属性攻撃か。

「アタシにビビッて、きっと後ろに下がるだろうと思って、戦闘前に設置しておいたの」

「あ、ああ、ああああ……」

 

「さあ、『バグの因子』とアタシの『誘惑』、どちらが上か勝負しましょう!」

「ううぅぅ、くぅぅ……」

 キャルロッテが苦しんでいる……『バグの因子』と色神の『誘惑』の狭間で、葛藤しているのか?

 

「キャルロッテ、そんな『誘惑』など、跳ね除けろ!」

「……はい、はああぁぁぁ!」

 パアーーーーンッ!

 マジか? バグが一声かけただけで、色神の誘惑を跳ね除けた!

 

 

「なるほど、やるわね……なら、アタシの最大の誘惑属性魔法ならどうかしら?」

「なにっ?」

「さあ、アタシ色に染まっちゃいなっ!」

 

 色神の前に魔法陣が展開……『炎』『炎』『地』『光』『闇』『闇』

「ジュテム・ジュゲム・オーベルバスタイン

 チルリラル・ウーチン・アッバス・ローテ・ギイン

 危険 秘密 駆け引き 犯した罪 今宵儚い思いを胸に

 嘘も真実も すべて受け入れ 溺れ 我が手の上で踊れ

 誘惑属性ヘキサグラム 『テンプテーション』!」

 パアアァァァーーーーッ!

 

 キャルロッテの周りに、無数のハートが現れて、キャルロッテを囲んでいく……

「あ、ああ、あああーん……」

「お、おいおい……」

 キャルロッテが、顔を真っ赤にしながら、もだえ苦しんでいるー⁉

 

「アタシのこの誘惑属性魔法は、この世のものとは思えないほどの快楽を与え、アタシに服従させることができる魔法なのよ」

「おい色神、これは完全にセクハラじゃないギャウか?」

「そんなこと言っている場合じゃないでしょ? それに、これでキャルロッテが戻るなら最高じゃない」

「そ、それはそうだけど……」

 

「無駄だ、跳ね除けろ、キャルロッテ!」

「は、はい……はあああぁぁーーーーっ!」

 パアァァーーーーンッ!

 マジで跳ね除けやがった!

 

「……どうやら、『バグの因子』は一か所ではなく、いろんなプログラムに根をはって、キャルロッテを支配しているみたいね」

「そ、そうなのかギャウ……」

 やはり、魔法や催眠などではなく、プログラムそのものを解析しないとダメみたいだな……

 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 ガクッ

 キャルロッテは、その場で跪く。

 

「でもキャルロッテは、今の攻防でかなり疲弊したみたいだ……

「前に出てきたら、またアタシの『テンプテーション』で誘惑してあげるわ」

「さすがは『エロ神』……頼んだぞ」

「『エロ神』って言うな! アタシは『色神しきがみ』だっ!」

 

 オレはゆうザイくんのカメラに向かって、現実世界にいる神居に小声でこそっと話す。

「神居、今後会社の『法令順守コンプライアンス』を、もっと強化した方がいいかもしれんギャウ」(小声)

「うむ……確かに」

 

 

 百骨王VSメギード

 

 メギード王が、『はかオガの剣』を構えて、こちらに進軍してくる。

「メギード王……やっぱりあの後、バグ化しちまったのかギャウ」

 しかも『はかオガの剣』がすでに完成している、こいつは厄介だぞ……

 

 メギード王は、剣を持った右手を真っすぐに上へ掲げた。

「あれは、まさか……みんな避けろギャウ!」

「邪道流バグ技、『パラディンブレイク・拡張エクステンション』!」

 ズガガガガガガァァーーーー!

 振り下ろした剣から、七つのどデカい衝撃波が飛び散る!

 

「うおおおーーーー!」

「ひょえーーーー!」

 みんな避けたり、対斬撃結界で防御してるけど、それだけじゃ防ぎきれていない!

 

「遠くの敵には『パラディンブレイク・拡張エクステンション』、

 目の前の敵には『オーバーキル七重奏クインテッド』……まさに臨機応変の対応、うちの社員に欲しいくらいギャウ」

 しかしどうする……?

 うちの戦力で、あいつに対抗できる奴となると……

 

「まてよ、あいつ基本物理攻撃だけ、それなら……」

 オレは、ボードの上をキョロキョロ……いた。

「おい、百骨王」

「ん、何だゾイ?」

 ボードの一番端の安全な場所で、鼻をほじっていた百骨王に話しかける。

 

「アンタ不死族の王なんだから、物理攻撃じゃ死なないんだろ? だったらあのメギード王の相手をしてくれギャウ」

 例え『エクスメタモルフォーゼ』でばあさんの姿になっても、『不死族』の属性は残るはず。

 

「いやだゾイ」

「なんでだギャウ?」

「例え不死族でも、斬られたら痛いゾイ。

 それに、斬られてバラバラになったら、さすがに死ぬゾイ」

 

 こいつ……現実世界の百骨王もそうだが、自分の興味のない事はトコトン無関心なんだよな。

「みんなだって命をかけて戦っているんだから、ギルギルのために少しは協力しろギャウ!」

 

「アイタタタタ!」

「な、なんだ急に?」

「持病の腰痛が! イタタタターーだゾイ」

「アンタ今は骨しかないんだから、腰痛なんて関係ないだろ!」

「うるさいなー、年寄りはもっと労わるもんだゾイ」

 都合のいいときだけ、すぐ自分を年寄り扱いしやがって……

 

 ギュピーン!

「ハッ、そうだギャウ、不死族と言えば……ミキ!」

「はい?」

 ドラゴニックボードの外にいた、本の民ミキに話しかけた。

 

「お前の持っている『ネクロノミコン』って確か……」

「あー、はいそうですね、『ネクロノミコン』は、死者や悪魔を操ることができる魔導書と言われています」

「だったら、そいつを使えばおそらく……フフフ、ギャウ」

 

 不穏な空気を察知した百骨王が、恐る恐るこちらに振り向く……

「ま、まさかその本は……

 不死族の世界で、最も悪名高き最悪アイテム、『ネクロノミコン』ゾイ⁉」

 百骨王は、ビックリしすぎてアゴの骨が外れそうになってる。

 

「ミキ、ネクロノミコンを使って百骨王を操ってみてくれ、まずは『エクスメタモルフォーゼ』だギャウ」

「わかりました……百骨王さん、『エクスメタモルフォーゼ』!」

「ゾ、ゾイ⁉ 体が勝手に……」

 

 パアアアァァァ……

 百骨王は、ちっちゃなスケルトンから、しわくちゃのおばあちゃんに変身した!

「や、やめとくれ~、あんな奴に勝てるわけないゾイーー!」

 進軍してくるメギード王に、こちらは百骨王で迎え撃つ!

 

 

「邪道流バグ技、『パラディンブレイク・拡張エクステンション』!」

 ズガガガガガガァァーーーー!

 目の前に来る前に、遠距離攻撃『パラディンブレイク・拡張エクステンション』が来た!

 

「ミキ、百骨王『がしゃどくろモード』だっ!」

「はい、百骨王さん、『がしゃどくろモード』!」

 ブワワワ……ガシャンガシャン!

 百骨王は、巨大な骨の化け物に変化した!

 

 スカッスカッ!

「なにっ⁉」

 メギード王の『パラディンブレイク・拡張エクステンション』は、骨の隙間を通過していき、百骨王はノーダメージだ。

 

「よっしゃ!」

「あ、危なかったゾイ……でも、近くまで来て直接攻撃されたら、骨ごと斬られてしまうゾイ!」

 

 メギード王はズンズン進軍してきて、百骨王の目の前に!

「ひょえーーーーだゾイ!」

 

 メギード王は呼吸法を使い、腕をパンプアップさせて、上段に剣を構える。

「邪道流バグ技、『オーバーキル七重奏クインテッド』!」

 

 オレはミキに指示を出す!

「ミキ、『肋骨の盾』だっ!」

「はい、百骨王さん、『肋骨の盾』!」

 ガシャンガシャンッ!

 百骨王の肋骨が集まり、巨大な盾になった!

 

 ズガガガガガガーーーーッ!

 凄まじい威力で、百骨王の『肋骨の盾』を切り裂いていく!

「そんな、百骨王さん!」

「大丈夫だミキ、百骨王の骨は無限に再生できる、肋骨の盾も内側から無限に増強できるギャウ!」

 メギード王の攻撃で肋骨の盾は破壊されていくが、内側から無限に増強されるので、本体にダメージはない!

 

 ズザザザザーーーーッ

 さすがのメギード王も、相性が悪いと判断してか、後ろに下がった!

 

「そいつを待っていたギャウ、ミキ、『しゃれこうべホームラン』だっ!」

「はい、百骨王さん、『しゃれこうべホームラン』ですっ!」

「な、なにぃ、ちょっと待てゾイ⁉」

 百骨王は、自分のしゃれこうべを外して、片手で持つ。

 そしてもう片方の手で、巨大な骨でできたバットを取り出す。

 

「これは……非常にまずいゾイーーーー!」

 百骨王は、しゃれこうべをポンっと上に投げると、巨大な骨のバットで見事なスイングをみせる!

 カキーーーーンッ!

「ゾーーーーーーイッ!」

 

 ドガァッ!

「なにぃ⁉」

 超高速で飛んでいった、百骨王のしゃれこうべは、見事メギード王に命中!

 

「今だ! ミキ、百骨王『リッチーモード』だギャウ!」

「はい、百骨王さん、『リッチーモード』!」

 ブワワワワ……

 メギード王に命中したしゃれこうべは、ミキの掛け声により、不死族の大魔導士『リッチー』へ変化した!

 

「そのままアドバンスドアーツ、『死神の抱擁』だギャウ!」

「百骨王さん、『死神の抱擁』!」

 フォッフォッフォッ……

 どこからともなく現れた死神が、メギード王を包み込む……

「うぐあああぁぁぁ……」

 

「呪いの力で動けなくした、これでメギード王も戦闘不能だろうギャウ」

「百骨王さん、凄いです」

「む……ま、まあなゾイ、これぐらいラクショーだゾイ」

 自分の体に、飛んでったしゃれこうべをはめながら、ドヤ顔の百骨王。

 

「よく言うぜ、オレとミキがいなかったら、変身すらする気がなかったくせにギャウ……」

「そんなことはないゾイ、お前のことを試してわざと動かないふりをしていたんだゾイ」

「ふざけんなっ、全部オレの指示だったじゃねーかギャウ!」

「わざと指示させて、戦闘の組み立て方を勉強させてやったんだゾイ、そんなこともわからないなんて、まだまだだなーゾイ」

「このくそババァめ……」

 オレは怒り心頭だ。

 

「お前、怒りっぽいゾイ、カルシウムが足りてないゾイ」

 

「骨だけのアンタが言うなギャウ!」

 

 

 エスタ&レイザ&オウカVSメルフィス

 

「私の新しい力で、あのメルフィスさんを攻撃してみます!」

 クラーケンのクラちゃんと『転魂獣魔装ビーストフュージョン』した人魚のアオイが、メルフィスを攻撃!

 

 アオイの前に巨大な魔法陣が展開……『水』『水』『水』『水』『水』『水』

「キルア・キーン・アスクド・フォルス・メイキル

 パナ・ルスア・ディード・クルンセイン・シャンネイト

 蒼く 清く どこまでも深い 大いなる水の星よ

 眼前の我の敵を 葬り給え

 魂を洗い 穢れを落とし この世界の礎となれ

 水属性ヘキサグラム 『アクエリアスフォール』!」

 ゴゴゴゴゴゴゴ……

 十メートルはあろうかという巨大な『水の星』が、メルフィスの頭上に現れた!

 

 

「フッ、無駄ですよ……『星と光の水鏡』よ、魔法を跳ね返しなさい!」

 バキィーーーーンッ!

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ……

 アオイの作った巨大な『水の星』が、そのままアオイに跳ね返る!

「そんなっ⁉」

「まずいギャウ、アオイーーーーッ!」

 

 神楽の前に魔法陣が展開……『風』『風』『風』『風』『風』『風』

「アナルトス・バッファー・シューエル・トリノ・エルダー

 ギザルシュ・パイン・サザノーム

 大気を統べる空の竜よ 暴風となり 全てを切り裂け

 白き風纏いし 大いなる風神よ 邪気を祓い 人を守りし壁となれ 相反するものよ 天神オーバーンの御心のままに集え

 風属性ヘキサグラム 『テンペストクロス』!」

 ガガガガガガガガガガガーーッ

 ズズズズズズズズズズズ……

 

 おお、間一髪、神楽の『テンペストクロス』が魔法を相殺した……

 

「神楽さん、ありがとうございます」

 笑顔で親指を立てる神楽……あいついつの間に『エクスメタモルフォーゼ』使っていたんだ?

 

 

「くっ、全ての魔法を跳ね返せるってんなら、オレ達じゃ歯が立たねぇ……」

「悔しいけど、アタイもだ……」

 闇の民のレイザと魔女のエスタが、今のアオイとメルフィスの攻防を見て、うな垂れている。

 

 

 その時、『異世界あいどる・はーと』メンバーのオウカが、オレの近くにきて耳元で話す。

「神魔さま、アナタは転移者なので『アナライズ』が使えますよね?

 私の考えていることを、彼女らに伝えて下さいませんか」

「ギャウ? お前、光の民のオウカか?」

 

 エルフのオウカが、いつの間にか二重人格の『光の民のオウカ』になっている……

「……? あれ、今私何か言いました?」

 っと思ったら、元に戻ってる?

 

 とにかく、オレは言われた通りにオウカをアナライズしてみる。

(あのメルフィスというものに、魔法を使うことは可能です)

 これは……意識はエルフのままで、心の中だけ光の民として会話しているのか? 随分器用なやつだな。

 

 オレはそのまま、オウカやレイザ、エスタにその内容を話す。

「なんだって? それはいったいどうやってやるんだ?」

「あの『星と光の水鏡』は、たとえオクタグラムであっても跳ね返すことができるんだぞ?」

 

(相手に魔法を当てるだけが攻撃魔法ではありません、当てない魔法もいくつか存在します)

「攻撃を、当てない魔法……?」

(その一つが『重力魔法』です……『重力魔法』なら、相手の近くで発動することで、ダメージを与えることができます)

 

「『重力魔法』……? 確かにそれなら、敵を事象の彼方に飛ばすことも、抵抗している間動きを抑えることもできる……」

「なるほど……」

 この二人はどちらも重力魔法を使える……これならいけるかもしれない。

 

(ですがあのメルフィスという男は、魔族であるがゆえ元から強く、バグ化してさらに強力になっています。生半可な魔法では、彼を倒すことはできません)

「じゃ、どうすれば……」

 

(あなた方二人が協力して、最大級の『重力魔法』を作ることができれば、あるいは……)

「オレ達二人で、最大級の『重力魔法』を……?」

 

(おそらくこの手段で彼を倒せるとしたら、二人の力を併せるしかありません、お願いできますか?)

 レイザとエスタ、お互いに顔を見合わせる……

「やるよ、それであいつを倒せるんならな」

「当然、アタイもだ」

「私も同じ意見です」

 レイザとエスタとオウカ、三人とも覚悟が決まっている顔だ。

 

(では、あのメルフィスの近くに、お二人の最大重力魔法を!)

「わかった、いくぞ!」

 二人とも魔力を集中する!

 ヒイイィィィ……

 

 

「セイ・タルス・クエト・ジータ・アースクレート・ヴァイアロン

 重轟場属性ペンタグラム、『ヘクト・グラビトン』!」

 ズガガガガガッ!

 雷を伴った重力球が、メルフィスの近くで発動する!

 

 レイザの前に魔法陣が展開……『地』『地』『地』『闇』『闇』『闇』

「セイ・タルス・クエト・ジータ・アースクレート・ヴァイアロン・ゼスタ

 無限の宇宙より 重力の塊を召喚せよ 我が敵を粉砕せよ 汝が敵を圧し潰せ

 我に 世界を更地にする力を!

 重力球属性ヘキサグラム、『グラビトンクラスター』!」

 ズドドドドドドォォッ!

 いくつもの巨大な重力球が、空より降り注ぐ!

 

「これは……重力属性の魔法ですか、考えましたね」

 メルフィスの野郎、まだ全然余裕だ。

 

「く、くそっ、これでもまだ足りないのか……」

「でも、これ以上は魔力が……」

 エスタとレイザは、なんとか重力球に魔力を注ぎ続けて、維持している……

 

 オレはまたオウカをアナライズした。

(まだです、まだ諦めるのは早い……)

「しかし、これ以上は、もう……」

「オレも、もう、限界だ……」

 さすがにこれ以上は無理が……

 

(エルフの私、アナタの力が必要です)

「わ、私の? 私は重力魔法は使えませんよ?」

(アナタの魔力を、二人に注ぐのです!)

「私の魔力を……?」

 

(光と闇は表裏一体……光の力が強くなれば、闇もまた濃くなる。

 アナタの力で、二人の魔力を極限まで上げるのです)

「なんだかよくわかりませんが、やってみます」

 オウカは目を閉じ、魔力を集中……

 

「はああぁぁぁ……」

 ヒイイイィィ……

 オウカの体全体が光り、エスタとレイザの二人に、魔力が送られているのが見える。

 

「こ、これは……?」

「オレ達の魔力が、急激に上がっていく……?」

 ズズズズズズズズズズズ……

 二人の重力球が、ドンドン大きく、強力になっていくのがわかる!

 

「む、くっ……これは……?」

 さすがのメルフィスも、何かに掴まっていないと体ごと吸い込まれそうになっている……

 

(私の光の力も加えます、行きますよ、はあああぁぁぁ……)

 ヒイイイイィィィ……

 さらにオウカの体は光り輝き、もの凄い魔力の奔流が起こる!

 

「うああぁぁ、こ、これは……⁉」

「もの凄い魔力が、オレ達の魔力を後押ししている……っ⁉」

 ズズズズズズズズズズズ……

 ゴゴゴアアアァァァ!

 

「二人の重力球が、渦を巻いて、さらに巨大に、ギャウーーッ」

 全員、何かに掴まらなければ飛ばされてしまうほどの、凄まじい重力魔法……これは……

 

「コラボ魔法、『疑似ブラックホール』!!」

 

 ガガガガガガーーーーーーッ!

 極限まで巨大化した重力球は、「宇宙の次元の穴」ブラックホールとなり、周りの物を破壊しながら全てを飲み込んでいく!

「おいおいおい、これはオレ達もヤバいんじゃないのかギャワワワワーーーーッ!」

 

 【ブラックホール】……

 とてつもない重力をもち、光さえ飲み込む、宇宙の巨大な暗黒天体。

 地球から十六万光年の距離にある大マゼラン雲内の二つのブラックホールは、いずれも太陽の十倍以上の質量を持つのに対して、直径はたった五十キロメートルしかないという。

 

 ガガガガガガガガガーーーーッ!

「……ッ、しまった!」

 何とか耐えていたメルフィスだったが、飛んできた瓦礫がぶつかり、瓦礫ごとブラックホールへ!

 

「ワタクシとしたことが……不覚でした」

 そう言いながら、ブラックホールに飲み込まれていくメルフィス……

 シュンッ!

 

 バキバキバキバキーーーーッ!

「おいおいおい、メルフィスを倒したのはいいけど、このままじゃオレ達も……ギャウーーーーッ!」

 ブラックホールは、おさまるどころかますます巨大化し、周りの物を飲み込む!

「くっ、オレ達はもう、魔力を切っているのに……」

「このままだと、私たちどころか、この世界まで飲み込まれてしまう……」

 

 オレはオウカに掴まり、飛ばされそうにながらも、オウカをアナライズ!

(発生した疑似ブラックホールは、対極の力で中和するしかありません)

「対極の力で中和……?」

「つまり、今の逆をすればいいってこと?」

「オウカ、お前の光の力で中和するんだギャウ!」

「わ、わかりました!」

 

 レイザとエスタがオウカを支え、オウカは目を閉じ、魔力を集中……

「光の私が手助けしてくれている今なら、きっといける……」

 オウカの前に魔法陣が展開……『光』『光』『光』『光』『光』『光』

「ジャイン・ニード・アンブル・クエイド・リズィーク・カカ・アンバー・リイン・キーン・メイク

 光の神と その眷属に申し上げる この世の闇を照らすは 神の御光による 聖なる輝き 闇を打ち祓い 邪悪を滅せよ 全ては光のために……

 光属性ヘキサグラム 『グレイテストグリッター』!」

 

 ズズズズ……バアアアアーーーーーーッ!

 地面に無数の光が収束、巨大な光の柱が屹立した!

「くっ、くうぅぅ……」

「ま、まだだ、まだ足りないギャウ!」

 

「さっきと逆……今度はオレ達がオウカに魔力を送るんだ!」

「わかった!」

 レイザとエスタの二人が、オウカに魔力を送る……

「はあああぁぁぁ!」

 巨大な光の柱が、さらに超巨大に!

 

「コラボ魔法、『疑似ホワイトホール』!!」

 

 ヒイイイィィィン……

 ドドドドドドドドーーーーッ

 オウカが作ったホワイトホールが、ブラックホールに重なり、お互いに中和していく……

 

 ズアアアァァァ……

 キュイィィィン……キュンッ!

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「や、やった、中和成功だ……」

「よ、よかった……」

「もう少しで、バグさんより先に私たちがこの世界を崩壊してしまうところでした……」

「冗談でも笑えない……」

 

 オレはアナライズしながら、光のオウカに話しかける。

「おい光のオウカ、こういう危険な術を使うときは、先に一声かけておいてくれギャウ」

(そうでしたか……でもまあ、レイザとエスタ、オウカの三人ならやってくれると信じていましたし、神魔さまや他の八方神の方もいらっしゃったので、大丈夫かなっと……エヘ)

「……」

 

 オレはまた、ゆうザイくんのカメラに向かって、神居に話しかけた。

「神居、ギガっちが戻ったら、『リスクマネジメント』について教えてやってくれギャウ」

「『障害予防対策』か、確かに今の『異世界あいどる・はーと』には足りないのかもしれんな……」

 

 

 審判竜VSソウケイ

 

 ジャッジメントドラゴンの前に魔法陣が展開……『炎』『風』『光』『光』『闇』

「光よ 幻よ 虚像よ 変化を求めしものに 偶像のベールを纏わせたまえ

 この世は目に見えぬものにこそ価値があることを知らしめよ

 クォック・メトロ―ト・ジンギアス・ファーリン・エスタメイト・ダン・マッキアート

 超擬態属性ペンタグラム、『エクスメタモルフォーゼ』!」

 

 パアアァァ……

 黒いカラスの足元の魔法陣が輝き、カラスを人間の女性に変えていく……

「うむ、久しぶりの人間の姿……悪くないのぉ」

 ボンキュッボン、ナイスバディの女性のジャッジメントドラゴン、オレも久しぶりに見た。

 

「おぬしが『領域外移動バグ』を使うソウケイってやつかい?」

「……そうだ」

「おまけに幻術と大気を操る術も使うそうじゃないか、まさに才能の塊、それ故に惜しいね……」

 ジャッジメントドラゴンが、ソウケイと対峙している……

 

「さて、どんな罪を持っているのやら……」

 ジャッジメントドラゴンがアナライズしている……

「ほう……『王殺し』の罪を持っているね、そして戦争のときも、同胞を大勢殺している」

「……」

 

 

 その時、奥の茂みから人影が……

 ガササッ

「ほう、ここが世界の命運を分ける戦いの場か……」

「ギャウ⁉ ア、アンタは……?」

 その人影は、ヴァロン帝国の皇帝だった!

 

「おい、ここは今戦いの真っ最中だ、危険だギャウ! アンタ皇帝なんだから、城で安全に待機していろよ!」

「どうせこの戦いで負ければ、どこにいても我々は全滅するのだろう? ならどこにいても同じだ」

「いや、そうギャウけど……」

 

 何なんだこの皇帝、命知らずにもほどがある……

 何か目的があってここに来たのか?

 

「ソウケイ、やはりバグ化してしまっていたのか……他の二人もそうだったのだな?」

「……」

 ソウケイの顔が、みるみる恐ろしい形相に変わっていく……?

「ヴァロン皇帝……いや、オウコ、よくぞ私の前に現れてくれた……」

「ソウケイ、それは余がつけた名だったな……バッコ兄者」

 えっ⁉ ソウケイって、ヴァロン皇帝の兄貴……?

 

「王位継承の儀から今まで、この私に生き恥をかかせおって……お前に復讐する日を、私は待ち望んでいた!」

「そうか、そのためにワザとバグに捕まり、自ら『バグ化』したというわけか……」

「そうだ! 一度奴隷位まで落ちた私は、お前の命令に逆らうことができなかったからな……

 だがバグ化した今は違う! この戦いが終わったら、真っ先にお前を殺してやる、待っていろ!」

 

「なんと愚かな、そのためにこの世界を危険に巻き込むとは……」

 ヴァロン皇帝の顔は、悲しみに染まっている……身内があんな風になってしまったんだ、当然か。

 

 ずっと静観していたジャッジメントドラゴンが、静かに口を開く。

「何かいろいろ因縁めいたものがあるようじゃのぉ……よいのかヴァロン皇帝、あやつを倒しても……?」

「構わぬ、世界の平和のためだ」

 

「フッ、やれるものならやってみろ!

 例え最強の『魔界のタロットカード』と言われていたジャッジメントドラゴンであっても、この『領域外移動バグ』の前ではなす術はない!」

 スウゥゥ……

 そう言いながら、ソウケイは領域外へ。

 

「フム、確かにこの状態では、なす術がない……」

「そうであろう、だがこちらからは一方的に攻撃が可能だ……恐怖に震えながら、死を待つがいい、ハーハハハ!」

「なーんてな」

「なに?」

 

 ジャッジメントドラゴンは、俯きながら不敵な笑みを浮かべる。

「現実世界の裁判所にはの、事件の被疑者や被告人が逃亡する可能性があるとき、身柄を拘束する処分、つまり『被告人拘留』という処置を施すことができるのじゃ」

「『ひこくにんこうりゅう』……なんだそれは?」

 

「つまり、おぬしはすでにワシの手のひらの上にいるということじゃ……アドバンスドアーツ、『三年殺し』!」

 ジャキィーーンッ!

「ぐあああっ⁉」

 スウゥゥ……

 ジャッジメントドラゴンの『三年殺し』に捕らえられたソウケイが、姿を現した。

 

「そんなバカなっ? 私は『領域外』にいたのだぞ! なんで貴様の攻撃が……」

「さっきおぬしをアナライズしたときに、同時に『罪の楔』を打ち込ませてもらった」

「『罪の楔』だと……?」

 

「罪を犯したものを逃がさぬように、この『罪の楔』を打ち込んだものは、例え異次元の果てであろうと、現実世界であろうと、ワシの攻撃が通るようになる」

「そんな……」

「もうワシからは逃れられん、覚悟するのじゃな……」

「く、くそっ、くそぉ!」

 

 一部始終を見ていたオレが、審判竜に尋ねる。

「なーにが『なーんてな』だ、審判竜のくせに嘘ついていいのかよギャウ?」

「ワシだって元は普通の人間じゃ、冗談っぽいウソぐらいついてもいいじゃろう?」

 

 

 ヴァロン皇帝が、ゆっくりとソウケイに近づく。

 「なにか言い残すことはあるか?」

「……」

 ソウケイは、悔しさからなのか、まるで悪魔のような形相で、ヴァロン皇帝を睨みつける……

 

「この、オレの『模倣品』が……地獄へ堕ちろ!」

 

 そう吐き捨て、諦めたのか、目を閉じ下を向くソウケイ。

「……」

 

 ヴァロン皇帝は、目を閉じ、昔を回顧しているようだ……

 オレは悪いと思いながらも、ヴァロン皇帝をアナライズした。

 

 

「オウコ、お前はいつもオレの後ろでオレの真似ばかりして心配だ……

 しょうがないからオレが皇帝になったら、オレの側近にしてやるよ」

「本当? ありがとうバッコ兄者、兄者ならきっと立派な皇帝になれるよ、ボクの自慢の兄者だからね」

 

「兄者……父上を手にかけるなんて、なんてことを……」

「違う! オレは騙されたんだ、大臣たちにそそのかされて……」

 

「兄者、ボクに敗れた弟たちは、みな自害した。残っているのはボクと兄者だけだ」

「殺せ、王位継承戦に敗れた者は死刑あるのみ……」

 

「それだけの才能を失くすのはあまりに惜しい……

 これは命令だ、バッコは死んだこととし、名をソウケイと改め、余の側近として努めよ」

 

(ボク達は世界でたった二人の血を分けた兄弟、どんな形であれ、兄者には生きていてほしかった……)

 

 

「審判竜、やってくれ」

 

「よいのだな?」

 頷くヴァロン皇帝……

 「では判決を言い渡す、罪人ソウケイは『有罪』、よってその魂は千年間、転生することを禁ずる!」

 カーーーーンッ!

 『ガベル』と呼ばれる、裁判長が使う小槌が鳴る。

 

「刑執行……アドバンスドアーツ、『千年牢獄プリズンオブミレニアム』!」

 キュウゥゥゥン……

 ソウケイの周りに、いくつもの巨大な魔法陣が現れ、ソウケイを眩い光が包み込む……

 シュウゥゥゥン……

 そのまま光は細くなっていき、最後は一本の線になり、消えた。

 シュンッ!

 

「……」

 ヴァロン皇帝は、静かに空を見上げる。

 

「『王とは、常に孤独なもの』、わかっていたはずなのにな……」

 

 

 *****

 

 〇どこかのダンジョン 俺side

 

 ドラゴニックキングがモンスターを倒すと、全員のレベルが上がった音がした。

 パラパラっパラ~♪

「よーし、チュートリアルはこんなとこだろ」

 

 俺たちは四人集まり、今後について話す。

「オレ達は自分の四天王の内、二人連れていくことができるみたいだ……

 ギガンティックマスター、お前、ドラゴニックボードの戦闘用にメンバー全員置いていっちまってよかったのか?」

 

「ああ、俺は一人で大丈夫、いろいろ試したいこともあってさ」

「ソロだとレベル上がりづらいよ、途中までパーティ組もうか?」

「サモンロード、大丈夫、心配いらないよ」

 

 ドラゴニックキングが、アイテムの整理をしながらみんなに質問する。

「お前たちはみんな、どこで修業するつもりなんだ?」

 

 最初にサモンロードが答える。

「僕はカイエルの『カイエル騎士団修練場』へ行くつもりだよ。

 そこで百騎士試験、千騎士試験、そして新しく創設された万騎士・百万騎士試験を受けようと思っている」

 

「なんだお前、騎士にでもなるつもりなのか?」

「違うよ、百騎士試験の『百人組手』は、騎士たちと百人連続で戦闘するイベントなんだ。効率よくかなりのレベルアップが見込めるはずだよ」

「なるほど」

 

 次にコズミッククイーンが答える。

「私はサザバードの百八の島の一つ、『忘れられし島』へ行く予定よ。

 この星の先住民、『星の民』が作った『星の塔』を攻略するわ」

「そこの最上階には、かなりのレアアイテムがあると聞いているよ」

 

「あなたはどうするの、ドラゴニックキング?」

 

「オレは、ヴァロンの北にある『ハイガイン山脈』で、伝説の『ゴールデンフェニックス』ってやつを倒すぜ。前は攻略する直前に『四天王戦世界大会』が始まっちまって、結局行けずじまいだったからな」

「『ゴールデンフェニックス』って言ったらレベル二百オーバーだよ? マジェスティックドラゴン並みの難易度じゃないか」

「それぐらいの方が、やりがいがあるってもんよ」

 

「ギガンティックマスター、あなたはどうするの?」

「俺はファルセイン最南端にある、『セントイルマの聖王墓』に挑戦する」

「『セントイルマの聖王墓』……⁉ って確か、地下百階ある超難解ダンジョンじゃない?」

 

「前にもメンバーと挑戦したことがあったんだけど、五十階辺りで罠にかかって、入り口に戻されちゃったんだよ。丁度いいから、そこの百階を目指して行こうと思う」

 

「たった三日で、百階はさすがに無理でしょう……?」

「敵はほとんどゾンビ系で、俺の炎系魔法と相性が良かったんだよ……まあ、やれるだけやってみるさ」

 

 全員準備が整い、出発することに。

「よし、じゃあとりあえず明日の同じ時間に、ここで状況報告な」

「うん」

「この修業には、この世界の命運がかかっている、気合入れていこうぜ」

「おおー!」

 

 

 俺は鼻息も荒く、この興奮を味わっていた。

「これだよ! RPGの醍醐味はやっぱりレベリング!

 レベルを上げて、作戦を考えて、強敵に挑んで勝つのって、熱いよなー!」

 どっかで聞いたことがあるようなセリフ……

 

 俺は、まるで初心に戻ったかのように、一人ワクワクしていた……

 

 

 ☆今回の成果

  八方神 超擬態属性ペンタグラム『エクスメタモルフォーゼ』

  色神  アドバンスドアーツ『ハニートラップ』

      誘惑属性ヘキサグラム『テンプテーション』

  百骨王 『がしゃどくろモード』『肋骨の盾』

      『リッチーモード』『死神の抱擁』

  レイザ&エスタ   コラボ魔法『疑似ブラックホール』

  オウカ&光のオウカ コラボ魔法『疑似ホワイトホール』

  ジャッジメントドラゴン 『罪の楔』

              アドバンスドアーツ『千年牢獄プリズンオブミレニアム


※次回は3/29 17:00に投降予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ