第七十一話 本の秘密 霧の秘密
アナタは『アイドルの名前を必死に叫んだ』ことがありますか? ……俺はある。
リュオンVSシノ
「使うわ、私の命……マスターのために!」
ヒイイィィィ……
「ファイナリティアーツ!」
「なっ、シノ、今『ファイナリティアーツ』って言ったのか⁉」
「『アマノイワト・零』!」
ガカァッ!
シノの前にあった『アマノイワト』は、光る粒子となって弾け、シノの体に吸い込まれていく……
「なんだ? アマノイワトが消えてしまった……これじゃシノは自分を守れない……」
シノはその場にたたずみ、全く動かない……
でも、なんだ? ……シノの体が、うっすら発光しているような……
ガシャンッ!
リュオンが剣を構えて、シノへ近づく。
(くそっ、体がいうことをきかない……頼む、逃げてくれ……)
リュオンは、振り上げた剣をシノめがけて振り下ろす!
「『アルティメットXクロス』!」
「シノっ、逃げろッ!」
ガシィッ!
「なっ……」
「ウソ、だろ……」
シノがリュオンの剣を、片手で受け止めている……
通常攻撃でも、城一つ破壊するほどの威力なのに……?
シノはそのまま、ゆっくりと自分の掌底をリュオンの腹にあてた。
ズドオォッ!
「ゴホォッ!」
ものすごい勢いでリュオンが吹き飛ばされる!
ズドガァッ!
「ガハァッ!」
シノが掌底をあてた場所は、鎧が砕け、腹が手の形にへこんでいる……
「バ、バカな……今のこの私が、ここまでのダメージを……?」
一番驚いているのは、リュオン本人かもしれない。
「『龍眼』覚醒!」
リュオンが『龍眼』を覚醒させて、シノの体の気力の流れを見る……
「な、なんだこれは? とんでもない量の気力が……暴走している?
あの量の気力が暴走したら、生身の体で耐えられるわけないはず……」
俺はシノをアナライズした。
「名前シノ」「女性」「レベル99」「基本属性 地・水」
「HPA908」「MPBB36」「腕力C81」「脚力BBA」「防御力B99」「機動力8AC」「魔力57A」「癒力C5C」「運50」「視力CBA」……
「何だこのステータスの数値は……バグっている、のか……?」
「うおおおぉぉーーーーっ!」
リュオンが体勢を立て直し、シノに向かって突撃してきた!
ドガガガガガガァッ!
リュオンの目にもとまらぬ連続攻撃を、素手ですべて捌くシノ。
「凄い……」
その場にいた誰もが、息をのむほどの激しい攻防……
ドンッ! ドゴッ!
「ゴフゥッ!」
激しい打ち合いの中、シノの攻撃がヒット!
「ぬううぅぅんっ!」
リュオンが気力を高めている……大技が来る!
「はああぁぁ!『アルティメットVブレイク』ーーーッ!!」
シノも拳を構えて、渾身の右ストレートを放つ!
「はあああああーーーーっ!」
ドッガアアアーーーーッ!
「な、なん……っ⁉」
吹き飛んだのはリュオンのほう!
「グハァァッ!」
リュオンの『アルティメットVブレイク』を跳ね除け、鎧をコナゴナにして、あの巨体を吹き飛ばすほどの威力……
シノ、お前いったいどうしちまったんだ⁉
ズダーーンッ!
リュオンはそのまま床に叩きつけられ、立とうとするが立てない。
「そんなバカな……世界最強のステータスを持つ男だぞ、あんな小娘一人に……?」
さすがのレイブンも、あっけに取られている。
その時、急にシノが膝から落ち、前のめりに倒れた……
ガクッ……ドサァッ
「シノ! 大丈夫か、シノ!」
俺はシノに駆け寄り、腕にシノを抱える……
なんだこれは……? 最低最悪な感触……シノの体から、生気がドンドン抜けていくのがわかる、このままじゃ……
「シノ? どうなっているんだこれは? しっかりしろ、おい⁉」
シノはうっすらと目を開け、青白い顔と唇で、俺に語りかける……
「私の、ファイナリティアーツ、『アマノイワト・零』は……アマノイワトの力を自分の体に吸収し、一時的にステータスの数値を、爆発的に上げることができる技です……
ですが、そのあまりの負荷に体が耐え切れず、内側から壊死していきます……」
「なんだって⁉ なんでそんな無茶な技を……?」
確かにシノをアナライズすると、HPがドンドン減っていっている……
「『エクスヒーリング』!」
俺はシノに回復魔法をかけた。
「なんだこれは? 全回復しても、またHPがドンドン減っていく……?」
「この技を使ったら最後、死ぬまでHPが減り続けます……おそらく私はもう助からないでしょう……」
シノは、今にも消え入りそうな声で、俺に話しかける。
「やめろ、そんなこと言うな……お前は絶対に死なせない、俺が必ず助ける、だから……」
俺はその後も、シノに回復魔法をかけ続ける。
「『エクスヒーリング』!」
「『エクスヒーリング』!」
「『エクスヒーリング』ーーーーッ!」
ダメだ、シノのHPの減少が止まらない……
シノの閉じそうな目から、一筋の涙が零れる。
シノは右手をゆっくりと俺の頬にあてる……
「ああ、お願いですマスター……マスターのことが大好きな、シノという女がいたことを、忘れないで……記憶の、片隅でいいから……それで、私は……」
俺はシノの手を握り叫ぶ。
「シノ! 死ぬなッ! シノーーーーッ!」
オウカが、俺とシノのそばに駆けつけてきてくれた。
「マスター、シノさんの回復は私に任せて下さい……マスターは戦闘に集中を!」
「でも……」
回復魔法が途切れたら、シノは死んでしまう……戦闘が長引けば、それだけ負担も大きくなる。
「頼む、オウカ……絶対にシノを死なせないでくれ」
「わかりました」
メギードVSイオナ
マキをかばい、やられてしまったミソラ……
マキも、そのミソラを抱えて動くことができない。
マキたちを守るように、メギードとの間に、イオナが立つ。
「シノさん、アナタの覚悟、目に焼き付けました……
私だって、負けていられない!」
覚悟を決めたイオナの目……メギードをけん制する。
「メギードさん、あなたにはもう誰も傷つけさせはしません、あなたは私が止めます!」
(頼む、たとえ死んでもかまわない……オレを止めてくれ!)
「はあああぁぁぁ……」
イオナは目をつぶり、集中して、魔力を高める。
イオナの右手の炎は、赤色から黄色、白色へ変化する……
ゴンッ!
イオナの右手は、白色から青い炎へ……
「『青炎剣』!」
アイカが、イオナの青い炎の右手を見て話す……
「イオナの右手の炎が青色に……初めて見る色です」
「【青炎】……
『色温度』の表によれば、炎の温度は赤→黄色→白と高くなっていき、さらに温度が上がると次は青色になるという。青い炎の色温度は、約一万度だ……」
「い、一万度⁉」
「あんなに温度を上げたら、イオナの腕のほうがもたない……」
「そんな、ではすぐにやめさせないと」
「でも、今までの攻撃ではメギードを止めることはできない……メンバー回復班、技の発動後、すぐに全回復できるよう待機だ」
「わかりました」
「『赤炎剣』!」
するとイオナは、左手に赤い炎を宿す……
両手の炎を胸の前で合わせると、美しい紫色の炎が噴き出した。
ゴオオオォォォ……
「赤と青、二つの炎を混ぜ合わせて、紫の炎を作った……?」
「いや、これはそんな単純なものじゃない……
『青い炎』の温度は約一万度、それをあの赤い炎で、温度を増幅させているんだ!」
「えっ、それじゃあ今のイオナの両手の温度はいったい……」
「紫の色温度は、人間が肉眼で見ることができる温度では最大の温度だ……」
(※それ以上の温度になると、ガンマ線や紫外線に変わり、人の目では認識できなくなる)
「イオナ、よせ! それ以上温度を上げると、お前の腕がもたないっ!」
「うおおおーーっ!」
メギードが、自分の『エクスカリバー』をイオナに向かって投げる!
ジュンッ!
「なっ……」
エクスカリバーは、一瞬にして蒸発した!
「マジかっ⁉ メギードのエクスカリバーは、『レアアダマンタイト製』だぞ⁉」
「ならばっ……」
気力を高めたメギードが、あの必殺技を繰り出す!
「邪道流バグ技、『オーバーキル七重奏ーーッ』!」
ガカァッーーーー!
ガキィーンッ!
イオナも紫の炎の腕で、技を受ける!
ジュワアアァァ……
「な、なんだとっ!」
メギードの『はかオガの剣』が……蒸発していく……?
「無駄です……私のこの『紫の炎』の、瞬間焦点温度は約一億度……」
「い、一億度……⁉」
「たとえ最強金属『オリハルコン』といえど、無傷ではすみません!」
イオナが両手を頭の上で合わせると、紫の炎が、より大きく、より威力を増す!
「ファイナリティアーツ、『極烈火・紫炎双斬』!!」
ズガアアアァァーーーーッ!
「うおおおぉぉーーーーっ!」
イオナの一撃は、鎧を切り裂き、メギードの巨体を遠くまで吹き飛ばした!
ズドンッ!
「ぐはぁっ!」
「凄い……あのメギード王を、一撃で……」
メギードの鎧の切り口は、ドロドロに溶解していて、一部は蒸発していた……
「一億度の斬撃……本来なら消し炭一つ残さずメギードの体を燃やし尽くしたはずだが、イオナが温度を調節したから助かったんだな……」
ドサッ……
イオナも、前のめりでその場に倒れた。
「イオナーっ⁉」
俺はイオナを腕に抱える。
「うっ……」
イオナの腕は、真っ黒に焦げて、今にも崩れ落ちそうになっている……
「くそっ、イオナの腕もドンドン壊死していく……このままじゃ体の方まで……」
「マスター、私に構わず、戦闘を続けて下さい……私の分まで……」
「イオナ、お前までこんな無茶な技を……
どうしてお前たちは……お前たちが命をかける必要なんてないのに……」
俺は、自分の無力さが情けなくて、半泣き状態……
「マスター、回復は私にやらせてください」
「アキラ……すまない、頼む……」
リンVSアオイ
「クラーケンを『強奪』できなかったのは残念だったが、そのアオイって女の切り札は無くなっちまったなぁ、さあどうする?」
「レイブン、てめぇ……」
「リン、その人魚にとどめを刺してやれ」
リンが、ゆっくりとアオイの方へ歩き出す。
「『ネビュラガーデン』!」
ビュルビュルビュルッ……
無数のいばらが、アオイを縛り上げる。
「ぐううぅぅ……」
「へへへ……あとはリンがそいつに触れれば終わりだ。
さあ、体中からいばらを噴き出して、死ね!」
「アオイーーーーッ!」
その時、クラちゃんの死体が急に光りだしたと思ったら、光の粒子となって空中へ……
パアアアァァァ……
「こ、これは……?」
その光の粒子は、そのままアオイの体の中へ吸い込まれていく……
ザザザザザァァ……
どこからともなく、アオイの周りに水の竜巻が現れ、アオイをすっぽり包み込んだ。
「な、なんだ……一体何が起こっているんだ……?」
パアアァァーーッ!
水の竜巻がはれると、アオイの背中から水でできた触手のようなものが……
それに……アオイの胸のところに、なにかエンブレムのようなものが描かれている……?
「あれは⁉」
シノを回復しながら、オウカが声を上げる。
「アオイが、『転魂獣魔装』を⁉」
「『転魂獣魔装』?」
俺も初めて聞いた、なんだそれは……?
「死んだ魔獣の魂が、空中の魔粒子と結合し、術者と融合することができる技です。
伝説のビーストテイマーが、一度だけ成功したと言われている究極の秘儀で、魔獣と真に意思を疎通させた者だけが辿り着ける境地と聞きます」
「そんな秘儀があるのか……」
アオイの胸の紋章、確かにクラーケンのような形をしている。
「魔獣と術者、命をかけてお互いを守りたいと願う気持ちがないと、発動しないと言われています」
「アオイとクラちゃん、ちゃんと心が通じ合っていたんだな……
アオイの纏っている『水のオーラ』も、以前とは比べ物にならないほど強力になっている」
「単純に、クラちゃんの力や能力が、アオイに上乗せされたということと同じになります」
一人だけど二人分の強さ……今のアオイの力はハンパじゃないぞ!
少し離れた場所で、レイブンがアオイを睨む。
「まだリンの能力が破られたわけじゃねぇ……力を自慢したいなら、勝負に勝ってからにするんだな」
「言われるまでもない、アオイ、やってやれ!」
「一緒に戦おう、クラちゃん……行くよ!」
アオイは、背中から生えた『水の触手』を、自由自在に操る!
「『テンタクルスショック』!」
ドガッドガッドガッドガッドガッ!
水でできた巨大な触手で、リンの分身を攻撃!
一度に全部の分身を消し去った!
一人だけ残っているけど、あれは本当に本体なのか……?
「アオイ、あれが本体だとは限らないぞ!」
「はい、わかっています、任せて下さい」
アオイはその場にとどまると、目を閉じ、集中する……
「アドバンスドアーツ、『凪』……」
ザアアアァァァ……
「これは……カイエルの海でクラちゃんと戦った時に使った、海と一体になる技か……?」
地上にいながら海の音が聞こえる……
アオイの魔力がドンドン上がっていくのがわかる!
アオイの前に巨大な魔法陣が展開……『水』『水』『水』『水』『水』『水』
「キルア・キーン・アスクド・フォルス・メイキル
パナ・ルスア・ディード・クルンセイン・シャンネイト
蒼く 清く どこまでも深い 大いなる水の星よ
眼前の我の敵を 葬り給え
魂を洗い 穢れを落とし この世界の礎となれ
水属性ヘキサグラム 『アクエリアスフォール』!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
十メートルはあろうかという巨大な『水の星』が、リンの頭上に現れた!
「オクタグラムでさえ跳ね返した、オレ達邪道十三人衆に、今更ヘキサグラムなど……」
レイブンは、高みの見物……
アオイが手を掲げると、その『水の星』はリンめがけて落ちてきた!
ドドドドドドドォーーーッ
リンの周りは、『水の星』に包まれた……
「ガボッ……ゴボボッ……!」
「ん……あれは⁉」
リンの本体と思われし体の奥の方に、小さなリンが、呼吸できなくて苦しんでいる?
「まさか、これは敵を倒すための魔法じゃなくて、相手を窒息させるための……⁉」
「なんだとっ⁉」
レイブンが焦っている。
「そうか、七人の分身以外に、小さな分身を作り、そこに『当たり判定』をつけていたのか。
どうりで攻撃が当たらなかったわけだ……
『分身は七人』っていう、『固定観念』を利用した策だったんだな」
「チッ、バレちゃしかたねぇ……」
ザザザザァァ……
『アクエリアスフォール』が引いていく。
溺れて意識のないリンに、コズミッククイーンが駆け寄る。
「リン、リン! しっかりして、リン!」
コズミッククイーンが、リンに人工呼吸を施している……
「これでリンは戦闘不能だな、アオイの勝利だ!」
クラちゃんがやられたときはどうなるかと思ったけど、クラちゃんのおかげでアオイは無事だった。
死んでもアオイを守るなんて、スゲーなクラちゃん。
アオイは、胸のクラーケンの紋章に手を当てながら小声でつぶやく……
「ありがとう、クラちゃん……」
ホーンVSカルラ
海鳴のホーンと、モンスター化した三猿たちが、ゆっくりとカルラに近づく……
カルラ……くそっ、どうしたらいいんだ……?
「マスター、今カルラは『視覚』と『聴覚』を入れ替えられているんですよね?」
アラクネのユイが、俺の近くに来て質問してきた。
「そうだ、歌うことはできるが、耳が使えないから『超域絶対音感』は使えない……このままじゃ、一切抵抗できないままやられてしまう」
「では『音階』がわかれば、歌うことはできるんですね?」
「えっ……? でも、カルラにそれを伝える手段が……」
「伝える手段ならあります、あの子ならきっとわかるはず……」
ユイは構えると、指の先から無数の糸を出して操りだした。
「アドバンスドアーツ、『ストリンガークリエイション』!」
シュルシュルシュル……
ユイの指から放たれた無数の糸は、集まり、結合して、形になっていく……
ユイの周りには、糸でできた弦楽器の『ヴァイオリン』、『ヴィオラ』、『チェロ』、『コントラバス』の四つが出来上がった。
「楽器……? そうか、俺たちでカルラに『楽譜』を作ってやるってことか」
直接の攻撃ではないから、これならカルラへのサポートができるはず……
「よし、なら管楽器は俺が……」
俺の前に魔法陣が展開……『炎』『風』『光』『闇』
「カイン ガロン ヅア ベルデルタ
我に物質の分解・構築の力を与えよ 理路整然 万物の理のもと 物質を作る力を 練金属性クアトログラム、『アルケミー』!」
バキバキバキバキ……
俺は周りの土や物質から、管楽器の『フルート』、『オーボエ』、『クラリネット』、『ファゴット』、『ホルン』、『トランペット』、『トロンボーン』、『チューバ』を錬成した。
「では打楽器は私に任せて下さい! ……変身!」
ブワワワワワ……
スライムのヒフミは、打楽器の『ティンパニ』に変身した。
「みんな、カルラを援護するために力を貸してくれ!」
「はい!」
それぞれ、ユイ、ナナ、マフユ、ヒビキ、アイカ、カオル、モモ、クレア、フウカ、俺、ノノ、エマ、フタバが、作り出した楽器で演奏を始める。
ジャンジャンジャンッ♪
ピーピルルル……♪
プップーープーー♪
ポンポロロロン♪
「コラボアーツ、『聖韻のオーケストラ』!」
頼む、伝わってくれ……
俺はカルラをアナライズ!
(こ、これは……?
赤い線が、左から右へ揺れながら動いている……?
まさかこれは、ユイのバイオリンの音?
こっちは青い線が滑らかに波打っているように動いている……これはアイカさんの『フルート』ね)
「いいぞ、伝わっている……」
(そうか、これは『楽譜』……
みんなが私のために演奏してくれているんだわ。
見える、『音』が……私の見えない目には、『音』がはっきり見える……)
カルラの目には、きっといろんな色の『音』が、みんな規則正しく、『楽譜』のように見えているはずだ。
(だったら、私がこの『楽譜』に合わせて歌を乗せれば、きっと相手への攻撃になる……)
「アー、アアーー……」
「カルラがチューニングしている……よし、このままクライマックスだ!」
俺たちの演奏も激しさを増す!
海鳴のホーンと、三猿たちの動きが止まった……
ゴゴゴゴゴゴゴ……
「な、なんだこれは? ボードが……大地が……振動している……?」
俺は演奏しながら、ホーンに叫ぶ!
「音は振動を生み、ときに振動は巨大な破壊を生む……
高周波も低周波も、自在に操ることのできるカルラなら、お前の周りの物体に干渉して攻撃することができる! いけっ、カルラ!」
「コラボアーツ、『ニジイロのうた』!
アーーーーアアー、ラーラー、ハアアァァァァァーーーーーーッ!」
ガガガガガガガガガガァァーーッ!
「うおおおぉぉー⁉
周りのボードや岩山が崩れて……うわあああぁぁぁーーーっ⁉」
「ウキウキーー! ウキャアアァァーーッ⁉」
ドドドドドドドドォォーーー……
ホーンと三猿たちは、ボードや岩山の下敷きになって動けない。
『ニジイロのうた』で、ホーンたちの周りの物体に『共鳴』して崩し、ホーンたちの装備にも同時に『共振』もしてダメージを与えたんだ……
しばらく動くことはできないはずだ。
「やった、カルラの勝ちだ!」
メンバーたちがカルラに駆け寄る。
「カルラ、大丈夫?」
俺がアナライズで、みんなにカルラの気持ちを伝える。
(みんなありがとう、もうだめかと思ったけど、みんなのおかげでなんとか勝てた)
俺は勝手に、カルラの気持ちを代弁してみた。
「カルラはずっと、自分の気持ちをみんなに話せずにいた。
今回のこの『聖韻のオーケストラ』で、カルラもみんなと心を一つにできたと思う……
カルラも、俺やメンバーのこと、もっと頼りにしてくれていいんだよ」
周りのメンバーたちも、みんな笑顔で頷く。
カルラは、照れくさそうに、少し顔を赤らめて……
「……是……」
ネクロマンサーVSミキ
「ヒヒヒ……こういうこともあろうかと、死体を取っておいて正解だったな……
さあ、この死体たちを相手に、お前はどこまで戦えるかな……ヒーヒヒヒヒ」
「そんな……お父さん、お母さん!」
マジか……あれが本当にミキの両親の死体なら、ミキが相手をするのは荷が重すぎる……
「ミキ下がれ、そいつの相手は他のやつに任せろ!」
「ヒヒヒ……そうはいかん。
『真説邪導書リ・ネクロノミコン』、931ページ、死神の章……アドバンスドアーツ、『死神の抱擁』!」
フォッフォッフォッ……
どこからともなく現れた死神が、ミキを包み込む……
「あうぅぅ……」
「ミキーッ⁉」
動けないのか……? あれは昔レイブンが使った『呪縛属性魔法』みたいに、相手を呪いで動けなくする技か。
くそっ、こんなことならサザバードの呪術長からもらった『式紙』を、全員に持たせておくべきだった……
ガシャン、ガシャン……
死体となり、意識がない王道十二将と、ミキの両親が、ゆっくりとミキに近づく……
「ヒーヒヒヒ……
『ネクロノミコン』に封印されたせいで、お前が本を読むたびに、そのダメージは私が受け続けるハメになった……
忌々しい……積年の恨みも込めて、お前の体に転生したら、永遠の苦しみと悪夢を与え続けてやる、アーヒャヒャヒャ」
そうか、ミキが本を読んでもノーダメージだったのは、こいつが肩代わりしていたからだったのか……
「さあ亡者どもよ、魂を食らいつくせ!」
「いやあああぁぁぁぁ」
「その魂の抜け殻は、私が有効活用してやる、安心するがいい……イヒヒヒヒ……」
くそっ……なんとかしてミキを助ける方法はないのか……? 誰か、誰でもいい、ミキを助けてくれ!
俺はミキをアナライズ!
(ああ、ごめんなさい、お父さん、お母さん、おばあちゃん、マスター……
私は、やっぱり幸せにはなれなかった……運命には逆らえない、私はやっぱり、『災いの民』なんだわ……)
その時、ミキの持っていた『魔導書』が光りだす……
パアアァァァ……
「運命は、逆らったり抗ったりするものじゃない……
運命とは、自分で選択し、自分の足で歩き、切り開いていくものだよ……」
(これは……いつもお父さんが言っていた口ぐせ……なぜ今頃聞こえて……?)
「ネクロノミコンが一つとなり、自由になったのはあのネクロマンサーだけじゃない……私たちもだよ」
パアアァァ……
「なっ……お、お父さん、お母さん⁉」
ミキの前に、光り輝く男女が立っている……?
「会いたかったよ、ミキ。
私たちはね、お前に転生しようとしていたネクロマンサーを封印するため、自分たちも魂の存在となり、ネクロマンサーと一緒にネクロノミコンに自ら封印されていたんだ」
「自らを封印……? 私のために……?」
「そうだ……私はお前のネクロノミコンに、お母さんはもう一つのネクロノミコンに封印され、内側からネクロマンサーを抑えていたんだ」
「お父さんとお母さんの魂が……?
だから、何度捨てても私の元に戻ってきたのね……」
光り輝く男女は、うな垂れていたミキに寄り添う……
「あの私たちの死体は、ただの魂の器だ……遠慮することはない、お前の力で浄化しておくれ」
「でも、私にそんな力が……?」
「お前は、お前が思っているよりずっと強い……ギガンティックマスターさんに出会ってからね。
お前は一人じゃない、私たちもついている……それに、もう一人増えたよ」
光り輝く男女の後ろに、もう一人、光り輝く老人が……
「お、おばあちゃん……?」
「これからは、ずっと一緒だよ、ミキ」
「さあ、私たちの力をその『魔導書』に……
その力で、悪しき者たちを、この世界から浄化してくれ」
パアアァァァ……
三つの光り輝く男女は、ミキの持つ『魔導書』に吸い込まれていった。
するとその本が激しく光り、一回り大きな、光り輝く『黄金の本』に変わった!
「こ、これは……?」
(この本は『新約神聖書・黙示録』……
私たち三人の力を集結した、この世でたった一冊の、お前専用の『魔導書』だ。
さあ、私たち家族の絆の力を、あいつに見せてやろう)
「……うん!」
一部始終を見ていたネクロマンサーが、邪悪な顔がさらに邪悪に、体中を震わせてミキを睨みつける。
「ブックス……私をネクロノミコンに封印した、忌々しき男……
今こそ、その魂の入った本ごとズタズタに切り裂いてくれる! 最愛の娘と一緒になぁ!」
ネクロマンサーの、咆哮にも似た、檄が飛ぶ!
「亡者ども、あの本を切り裂き、あの娘に生まれてきたことを後悔するほどの苦しみを与えよ!」
「ウオオオォォォン……」
王道十二将やミキの両親の死体たちが、ミキに向かって突進してきた!
「ミキーーッ!」
「大丈夫です、『新約神聖書・黙示録』、一ページ目、第一章、第一行……『ディスペルアンデット』!」
パアアアアアアアァァァァァァ……
ドラゴニックボード全てが発光しているかのような、眩しい光が天に向かって屹立する。
「な、なんだとっ⁉ 私のアンデットたちが……すべて昇天していく……⁉」
ネクロマンサーが驚いている……
光の中、死体たちの体はボロボロに崩れていき、中から、安らかな顔をした魂たちが、天へ向かって昇天していく。
魂たちの口が、何かパクパク動いている、まるで『ありがとう』と言っているみたいだ……
「くそっ、くそっ……」
ネクロマンサーが悔しがっている……
「さあ、あとはアナタだけです、観念してください」
ミキがネクロマンサーに近づく。
「観念……? 観念だと……貴様のような小娘が、この私を見下すでないわあああああっ!」
激昂したネクロマンサーが、『真説邪導書・リネクロノミコン』のページを、ものすごい速さで捲っている!
「『真説邪導書・リネクロノミコン』、最終章、最終奥義……『死神と地獄の……』」
それよりも先に、ミキの本が輝きだす!
「『新約神聖書・黙示録』奥義……『アポカリプス・ロウ』!」
バアアアアアァァァーーーーッ!
ミキの本が光り輝いたかと思ったら、本の中から黄金の鎖が飛び出し、ネクロマンサーに巻きつく!
「うおおぉぉ⁉ なんだ、これは⁉」
ミキの本から、光り輝く三人の男女が現れた。
「その鎖は私たち三人の力が込められた『聖なる鎖』……もうお前ではその鎖を断ち切ることはできん」
「なんだと……くそっ」
「『再封印』!」
ジャララララ……
黄金の鎖に引きずられ、ネクロマンサーは『ネクロノミコン』の中へ……
「うおおぉ⁉ またこの中に⁉ い、嫌だぁーーーーっ!」
光り輝く男性は、ミキに優しく話しかける。
「ミキ、また『ネクロノミコン』を使う必要がきたら、使いなさい。
本の民の『反動』は、今後もあのネクロマンサーが受けてくれる」
「なんだって⁉ やめろっ、不死身といえど『痛み』や『苦しみ』は感じるんだ、やめてくれぇーーーー」
パタンッ……
ネクロマンサーを飲み込んだネクロノミコンは、本を閉じ、そのまま地面に落ちた。
それを拾うミキ。
ミキの手には、『真説邪導書リネクロノミコン』と、『新約神聖書・黙示録』の二冊が……
「その二冊はミキ、お前のものだ。
これからもこの二冊の本を使って、ギガンティックマスターさんと、未来を生きていきなさい。
私たち三人は、いつでもお前のそばにいて、お前の幸せを祈っているよ」
「お父さん……ありがとう……」
その光り輝く男性は、俺のほうへ歩いてきて、話し出す。
「ギガンティックマスターさん、ミキを救ってくれてありがとう、礼を言うのが遅くなってすまない」
「い、いや……アナタは本の中にいたんだし……」
「娘のミキのことはアナタに預けます、今後も娘のことをよろしくお願いします」
「ああ」
ミキの父親は、俺の耳元で、小声で囁く……
「私はミキの将来が心配で、わざと嫌われるように仕向けたが、今となってはギガンティックマスターさん、アナタがうらやましい」(小声)
「ええ⁉」
「あんなにミキに好かれて……正直嫉妬すら覚える」(小声)
「いやいやいやいや……」
「私たち三人は、本に封印され今後もミキを守っていくが、それには『監視』も含まれているということもお忘れなく」(小声)
「は、はぁ……」
「では娘のこと、よろしく頼みます、ギガンティックマスターさん」
シュウゥゥン……
三人は本の中へ戻っていった……
「ありがとう、お父さん、お母さん、おばあちゃん……」
ミキは二冊の本を胸に抱く。
俺は……なんか複雑だ……
ソウケイVSアカネ
「こっちの技や術がまったく通用しない……
この人バグ化していなかったとしても、相当強いとよ、まるで勝てる気がしない……」
ソウケイが空中に浮かびながら、不敵な笑みを浮かべる……
「さあ、幻術で悪夢にうなされながら死ぬか、それとも大気の魔法で体をズタズタにされて死ぬか……好きな方を選ぶがいい」
「どっちも嫌とよ!」
ソウケイの前に魔法陣が展開……『風』『風』『風』『地』
「プール・フォン・メイジア・エイジス
砂漠の女王 砂の竜に乗り舞い上がる 恒河沙を超え
かの者を縛る楔となれ 磁気嵐属性クアトログラム『ジオマグネフォース』!」
ザザザザザザァァ……
「なっ⁉ あれは砂漠の民秘伝の『磁気嵐属性魔法』……それまで使えるのか⁉」
「くっ……体の自由が、効かないとよ……」
「くぅぅーん……」
「シャァァ……」
アカネもべロスもヒュドラも、磁気嵐のせいで動きが封じ込まれている!
ソウケイは、ゆっくりとアカネの近くへ降りてきた。
「フッ……まああっけなくはあるが、このようなザコにあまり時間を取られるのもな……
安心しろ、そのペットもお前も、同時に風の魔法で喉を掻き切ってやろう」
「アカネ、逃げろーーーーっ!」
ソウケイが風の魔法を発動……
真空の刃が、アカネとべロスとヒュドラの喉元に向かって飛ぶ!
「アカネーーーーッ!」
「くっ……」
バキィーーーーンッ!
「なに⁉ 何だ今のは⁉」
ソウケイの真空の刃が、別の真空の刃にはじかれた!
アカネたちは無事だ!
シュウゥゥゥン……
「ふう、やっと出られたとよ」
な、なんだなんだなんだ⁉
アカネとソウケイの間の空間に、穴があいて、そこから子供の手が伸びてる……?
その手は、空間の穴をこじ開けて、アカネとソウケイの間に出てきた。
十歳くらいの、女の子……?
「お、お姉ちゃん⁉」
アカネが、ビックリした顔でそう叫ぶ。
「アカネちゃん、危なかったとねー。
私、タイミングばっちりだったとよ?」
アカネと同じ博多弁……でも年齢合わなくね?
「アズサお姉ちゃん……
十年前に、私とかくれんぼしてた途中で行方不明になってたとに……いったい今までどこにいたとよ?」
「いや~私もよくわからんとよ、気が付いたら霧の中で、違う空間に迷い込んでいたみたいとよ」
俺は思わず、アカネとそのお姉ちゃんに話しかけていた。
「かくれんぼの途中で、霧の中、違う空間に……?
ひょっとして、前に霧の民が話していた、『霧の魔獣』の神隠しにあったのか?」
「あ~、たぶん違うとよ、だってその『霧の魔獣』って、私のこととよ」
「え~~?」
俺は、そのアカネのお姉ちゃんをアナライズした。
「アズサ」「女性」「レベル120」「基本属性 水 風 光 闇」
「HP200」「MP170」「腕力80」「脚力80」「防御力70」「機動力85」「魔力100」「癒力75」「運90」「視力1.5」
技:ハイドアンドシーク
技:ミストディストーション
「ぶっ……」
思わず噴き出しちゃった……
ステータス自体は大したことないけど、基本属性が四つなんて、初めて見た……
もしかして……と思い、お姉ちゃんのアズサの顔をよく見てみたら……
やっぱり! 目の色が四つに分かれている、『ダイクロイックアイ』だ。
【ダイクロイックアイ】……
片方ずつ色が違うオッドアイ(虹彩異色症)は、現実世界の人間でも、一万人に一人くらいの割合で存在するが、両目に四つの色が混在するダイクロイックアイは、さらに数が少ないと言われる。
ヒトよりもネコやイヌに多く、先天性、遺伝性のものがほとんど。
後天的には病気であることが多く、放射線などによる虹彩の損傷などが原因だったりする。
オッドアイズたちは、二つの基本属性を持ち、一般人よりも戦闘能力が高かったが、ダイクロイックアイの人は基本属性が四つ……一体どんな能力を持っているんだ?
「というか、今までどこにいて、今はどうやって出てきたんだ?」
「『霧の時空』に迷い込んで、出られなくなっていたとよ」
「『霧の時空』?」
「私が勝手につけた名前とよ、どうやら時空が違うみたいで、抜け出すのに苦労したとよ」
こことは違う時空に迷い込み、違う時空からこちらの時空に抜け出てきた……?
どうやら『時空を操る能力』っぽいな……
「霧の時空で最初にいたところに、小さな『穴』があいていて、覗くとこちらの時空の様子が見えたとよ。
だからギガンティックマスターさんのことも知っているし、アカネちゃんがピンチになったときも助けることができたとよ」
「暗殺組織幹部の、闇のビーストテイマー・ハイエナとアカネが戦った時、不思議な力でアカネを助けてくれていたのは、君だったのか」
アカネはいつも誰かに守られている印象があったけど……なるほど、謎は解けた。
「小さな『穴』は、私が成長するにつれ、少しずつ大きくなっていったとよ。
だからアカネちゃんがピンチになったとき、思い切って『穴』をこじ開けたら、うまく抜け出すことができたとよ」
フム……少しずつ大きくなったというよりは、アズサが成長して、自分の力をうまく使いこなせるようになったから抜け出せたように、俺は感じた。
たぶん、『霧の時空』を発生させたのも、アズサが元々持っていた能力だったんじゃないかな……?
自分の巨大な能力を制御できずにいたって感じだ……
アカネが不思議そうに、アズサを見て話し出す。
「でもお姉ちゃん、なんで子供の姿と? 私たち双子なんだから、お姉ちゃんも私と同じで二十歳過ぎているはずとよ」
アカネとアズサって双子だったんだ⁉ だったら確かにあの子供の姿は明らかにおかしい……
「それが、『霧の時空』のなかでは、まだ一年くらいしかたっていないとよ」
「一年⁉ 十年前に失踪したのに、一年しかたってないの?」
「しかも、『霧の時空』のなかでは、おなかも減らないし、睡眠も必要なかったと」
その割には、アカネの『アフォガード』を盗み食いしてたと思うけど……
どうやらこちらの時空とは、時間の流れが違うみたいだ。
「この私を無視して、随分と話が盛り上がっているな……いい度胸だ」
うわっ、ソウケイのことすっかり忘れてた……
「丁度いい、特別にお前も入れて、二人がかりでかかってくるがいい……一人では話にならん」
「いいや、あなたの相手は、私一人で十分とよ」
「なんだと……」
え~、せっかく二人でもいいって言ってるのに……
「見くびられたものだな……こんなに見くびられたのは、ヴァロン帝国戴冠式の時以来だ」
「さっきまでの戦いも、『穴』を覗いて見ていたとよ、『かくれんぼ』が好きみたいとね……なら私が、『かくれんぼの極意』を教えてあげるとよ」
「『かくれんぼの極意』?」
「かくれんぼの極意その一、『環境に適応すること』。
周りの物や、自分の能力を利用して、見つかりにくくするとよ……こんなふうに」
アズサは、目の前にあった『穴』に手を突っ込み、そのまま中に入って、姿を消してしまった!
「さっき話していた、『霧の時空』の中に入ったのか……
なるほど、すでに完全に扱えるようになっているようだな、ならば私も……」
そう言って、ソウケイもすうっと姿が消えていく……『領域外移動バグ』か……?
しーーーーーん……
二人とも姿が消え、ボードの上は沈黙が続く……
と思ったら、空にアズサの声が響く。
「かくれんぼの極意その二、『音をたてないこと』。
どんなにうまく隠れても、音を立ててしまえば、こちらの位置がばれてしまうとよ」
「フッ、そんなことはわかっておるわ」
くそっ、アナライズしても、領域外だとさすがにポップアップコマンドは出ないみたいだ……
俺でもソウケイがどこにいるのかわからない。
「プール・フォン・メイジア・エイジス
砂漠の女王 砂の竜に乗り舞い上がる 恒河沙を超え
かの者を縛る楔となれ 磁気嵐属性クアトログラム『ジオマグネフォース』!」
ザザザザザザァァ……
ソウケイの野郎、見えないことをいいことに、アカネに向けて『磁気嵐属性魔法』を!
「アカネ、危ないっ!」
『穴』から出てきたアズサが、アカネの代わりに『磁気嵐属性魔法』を受けてしまった!
「うぐぅっ……!」
「お姉ちゃん!」
「ハハハハ、バカめ、自ら出てきて代わりに受けるとは、何たる愚かな行為か……これでいつでもお前にとどめを刺すことができる」
「くっ……かくれんぼの極意その三、『見つかるかもしれないというドキドキ感を楽しむこと』……」
「ハッ、何を言っておる、お前はもうすでに私に見つかっておるではないか……これで終わりだ」
ソウケイがアズサの後ろから現れて、構えた剣でアズサを突き刺した!
ズバァッ!
「アズサーーーーッ!」
「お姉ちゃーーーーんっ!」
シュンッ!
背中から刺されたはずのアズサは、一瞬で消えてしまった……
「なん、だと⁉ これは、『ファントムシフト』⁉」
また空に、アズサの声が響く。
「かくれんぼの極意その四、『虚を突く』。
勝った……と思わせたその時こそが、逆転のチャンスとよ」
「バカな、私の『サーチ』には何も引っかからなかったぞ……」
「私にも、『サーチ』に引っかからない『ファントムシフト』を作ることができるとよ」
「なんっ……」
あのソウケイが絶句しちゃった……
「それに、勘違いしているみたいとよ? ……鬼はアナタじゃなくて、私とよ」
「貴様……」
「フフフ、みーつけたっと」
ソウケイの後ろから、アズサが出てきた!
ブワワワワワ……
「なんだこれは……? 霧……?」
ソウケイの体の周りに、白い霧が立ち込めている……
「その霧は、『霧の時空』と同じもの……
私は、この『霧の時空』を自由に操ることができるとよ」
「な、なんだ? 動けん!」
「さあ、このアナタに纏わりついた『霧の時空』を、空間ごとひねったらどうなるとよ……?」
「な、何っ⁉ や、やめろっ!」
アズサは、両手を目の前に出し、まるで雑巾を絞るかのようなしぐさを見せる。
「アドバンスドアーツ、『ミストディストーション』!」
バキバキバキバキバキ!
「ぎゃあああああ!」
体をひねられたソウケイは、その場で倒れる。
ドサァッ……
『霧の時空』で捕えたものを、空間ごとひねる技……暗殺組織のボス、コンドルが使った『次元刃』と同じで、防御不可能技っぽい。
「スゲー……これ、死んじゃったんじゃ……?」
「死んでいないとよ、霧を使った幻覚も混ぜておいたとよ、みんなオーバーだなぁ」
怖えー……子供ゆえの残虐性ってやつだな、恐ろしい……
でも、空魔のソウケイを倒した!
「アズサ、お前スゲーな!」
「お姉ちゃん、すごいとよ!」
「フフフ、まあね、もっと褒めていいとよ」
あ、この調子に乗ってる感じ、アカネそっくりだ……
するとアズサが、また空間に『穴』をあけた。
「みんな、もう安全そうだから、出てきてもいいとよ」
アズサがそう言うと、『穴』の中から数名の人間や動物たちが、ゾロゾロと出てきた。
「な、なんだ?」
「彼らは私と同じように、『霧の時空』に落っこちた人たちとよ、みんないたから独りぼっちで寂しいこともなかったとよ」
あー、そういえば霧の民が言ってたな、『霧の魔獣』のせいで、神隠しや物が無くなる事件が起こってたって。みんなその犠牲者か……
アズサは、自分の両手でアカネの手を握る。
「私の能力は、全部アカネちゃんにあげるとよ」
「えっ、そんなことができるとよ?」
「私の能力を使えばできるとよ」
アズサが目を閉じると、両手が少し光った。
「うん、これでオーケー」
「これで、お姉ちゃんの能力が、私に……?」
俺はアズサに質問してみる。
「アズサ、お前はこの後どうするんだ?」
「私は、自分の両親に自分が無事だったことを伝えに行くとよ。
あと、一緒に落ちた人たちも、元の場所に返してあげるとよ」
「だったら、俺のオルタナティブドアで……」
「大丈夫、『空間転移系』の能力だけは残しておいたから、地道に、ゆっくりまわって行くとよ」
そう言って、アズサはみんなを連れて旅立っていった……
アカネの双子の姉、アズサ……台風のような女の子だったな……
☆今回の成果
シノ ファイナリティアーツ『アマノイワト・零』
イオナ ファイナリティアーツ『極烈火・紫炎双斬』
アオイ 『転魂獣魔装』
ヘキサグラム『アクエリアスフォール』
ユイその他 コラボアーツ『聖韻のオーケストラ』
カルラ コラボアーツ『ニジイロのうた』
ミキ 『真説邪導書リネクロノミコン』『新約神聖書・黙示録』を手に入れた
アズサ アドバンスドアーツ『ミストディストーション』
※次回は2/19 15:00投降予定です。




