第六十九話 ドゥームズデイ
アナタはアイドルの腕を『つかみ損ねた』ことがありますか?……俺はある。
ゆうザイくんが、がっくり膝を落として、うな垂れている……
「ゆうザイくん……」
バサッバサッ
空から神魔が降りてきて、俺の肩に止まった。
「無理もない、王道十二将がまさか全滅するとは、夢にも思わなかっただろう……きっとこのために全身全霊をかけて作っていたはずだ」
上空から、バグと『空魔のソウケイ』が、ゆっくりと地上へ降りてきた。
ソウケイは、その場でバグの前で跪く。
「余計なことをして申し訳ありませんでした、バグ様」
「構わん……」
バグは、言葉少なにそう言うと、ボードを一人で降りていく。
俺は残っているソウケイに話しかける。
「『領域外移動バグ』……
ゲーム動画の配信とかで、ときどき見ることがある、到底行くことができない場所に行けたり、まだ未完成の土地へ侵入することができる、バグを使った技……
お前はそれを扱うことができるんだな?」
「そうだ、元々ゲームの世界では、建物の中と外では完全に領域が違う、『場所を移動して、そのように見せているだけ』だ……
私はお前たちがいる領域を逸脱し、動くことが可能である」
……だとすれば、俺たちが攻撃しているときは、ずっと領域の外にいればダメージを受けることはなく、逆に自分が攻撃するときだけ領域内に入れば、ほぼ一方的に攻撃することができる……
こいつは、さっきのリンの『当たり判定バグ』と同様、世界の常識を打ち破るバグだ。
こんなの一体どうやって対応したらいいんだ……?
「ギャウギャウ」
神魔が、うな垂れているゆうザイくんの所に行き、落ちていたタブレットを拾ってきた。
「神魔、この『空魔のソウケイ』ってやつも、『銀嶺のウォルフ』ってやつと一緒で、『ヴァロン近衛兵団』の一人なんだ、情報を教えてくれ」
「わかったギャウ」
ゆうザイくんに変わって、神魔がタブレットを使って確認してくれている。
「『空魔のソウケイ』……
『公式設定資料集』では、幻術や大気系の術を使うクアトログラマーとなっている」
「魔導士系か……」
確かに、物凄く高レベルそうな、豪華なローブを羽織っている。
「お前も、レイブンたちみたいに、ちゃんと自分の意思があるみたいだな……」
「そうだ、私も『恨み』を抱いている一人……貴様たちに、ではないがな」
俺たち以外のやつに『恨み』を持っている……?一体誰に?
横に、黒い肌の大男が並ぶ……『海鳴のホーン』ってやつだ。
体の周りに、何か青いものがいくつも浮いているような……
「こいつも『ヴァロン近衛兵団』の一人だな」
神魔が、タブレットをスクロールして、『海鳴のホーン』を検索する。
「『海鳴のホーン』……
『公式設定資料集』では、水や音の技を得意とする千騎士らしい。
ユグドラシルにいる『蒼鱗竜』と同じ技も使えるみたいだぞ」
「マジで!?……ということは、あの浮かんでいるのは水の精霊『クリオーネ』か?」
だとすると水の分身なんかも作れるはず、厄介だな……
『ヴァロン近衛兵団』の二人が、バグの壁となり、立ち塞がる。
「今回のゲームの勝敗は決した、おとなしくしていてもらおうか」
その時、ドラゴニックキングが、ナマズエの『カラミティゾーン』を、気合で破った!
「うおおおおーーーっ!」
バチィーーーーンッ!
「おお、『ドラゴニックスキン』で防御していたんだな!」
今のドラゴニックキングなら、バグのすぐ近く、周りの防御も間に合わない!
「バグ、覚悟しろっ!」
ドラゴニックキングの前に魔法陣が展開……『炎』『水』『風』『地』『闇』『闇』
「地獄の底に眠る 闇の神よ 我に最凶 最悪の 闇の竜の力与えよ
その憎悪 その慟哭 その怨嗟を 全て吐き出せ 全ては破壊のために……」
ドラゴニックキングがヘキサグラムの『ファフニール』を、これなら……!?
その時、『海鳴のホーン』が、その場にいながら手をかざす。
「邪道流バグ技、『音バグ』!」
キイィィーーーン……
「なっ……◎△$♪×¥●&%#?!」
な、なんだ?ドラゴニックキングが、わけわからないことを言いだして、魔法が発動しなかった!?
「ギャーハハハ、残念だったな、『海鳴のホーン』の能力は『音バグ』。
魔法を唱えるときの詠唱は、全て『ノイズ』に変換されるぜぇ」
「『音バグ』だって!?」
くっ……じゃあもう魔法は使えないってことか。
「〇!※□……」
ドラゴニックキングが手刀を構えている、『ドラゴニックファング』か?……あいつまだ諦めていない!
「おっと、そうはいかん、『ポイズンブレス』!」
バアアアアーーーーッ!
ナマズエの『ポイズンブレス』!?ドラゴニックキングが毒状態になっちまった!
「ぐああああ……」
「我の『カラミティゾーン』を破るとは大したものだ、その『ドラゴニックスキン』、なかなかに有用そうだな。
我の『実験体リスト』に、その名を入れておいてやろう、フフフ……」
くそっ、ナマズエの野郎……
ボードの端から、レイブンとシャルドが歩いてきた。
「『海鳴のホーン』が調整すれば、そっちは唱えられないが、こっちは唱えることができる……
紹介しよう、こちらの魔法のスペシャリスト、『シャルド』だ」
「シャルド様!」
ミコトが叫ぶが、シャルドは反応しない……
俺はシャルドの心を読んでみる。
「アナライズ!」
(ミコト、ギガンティックマスター、助けてくれ……
こんな能力で攻撃したら、お前たちどころか、この世界も、魔界も、全て破壊しつくしてしまう……)
「なんだって……?シャルド、お前の能力はいったい……」
「マスター、シャルド様は何と?」
俺が言う前に、レイブンが説明しだした。
「シャルドの能力も、ヒナタと同じ『能力拡張バグ』……
シャルドの能力は、ヘキサグラムまでのすべての魔法と、『フィフスキャスト』の使用」
「『フィフスキャスト』だって!?」
『フィフスキャスト』っていったら、五つの魔法を同時詠唱することができるってことか!?
あの『邪尾族王』の『フォースキャスト』すら超える同時詠唱……そんなのもう反則だ!
「さあ、お前の能力を見せてやれシャルド、まずはあのドラゴニックキングからだ!」
シャルドの前に、五つの巨大な魔法陣が展開……『炎』『地』『闇』『闇』
『水』『地』『地』『地』
『風』『風』『風』『地』『地』『地』
『地』『地』『地』『闇』『闇』『闇』
『水』『水』『地』『地』『闇』『闇』……
「プライグ・シーメイン・ガラルド
地下深く眠る地獄の業火 罪深き獣共に地獄の烙印を押せ……」
「ギアトール アギトール
力の円錐 魔の六角錐 地のことわりに反するものに罰を その切っ先で我が敵を刺し貫け」
「バーブーレン・ニーダ・エス・ガダル・ガーダン・オーデ
キリル・デスト・ベアンナルイル
闇夜を切り裂く雷光よ 暗黒の大地に立ち上る稲光よ
この地上に 万の雷よ降り注げ 霹靂不動 悪鬼滅殺……」
「セイ・タルス・クエト・ジータ・アースクレート・ヴァイアロン・ゼスタ
無限の宇宙より 重力の塊を召喚せよ 我が敵を粉砕せよ 汝が敵を圧し潰せ
我に 世界を更地にする力を!」
「パラル・エル・ドゥーン・ゲイズ・ハリアルサイド・ズー・ヴァール
深く 深く 深淵の底で眠るものよ 今こそ目覚めの時
その御手で掴みし者を 永遠の事象の彼方へ……」
な、なんだこれは!?五つの詠唱が同時に聞こえる……?
こんなことが本当に可能なのか?
ドラゴニックキングは毒状態で、まだ立つこともままならない!
さすがのナマズエも、ドラゴニックキングから離れる。
「まずいっ!ドラゴニックキング、早くその場から離れるんだっ!」
「くっ、くそ……」
「獄炎属性 クアトログラム、『エグゾダス』!」
「尖塔属性 クアトログラム、『オベリスク』!」
「万雷属性 ヘキサグラム、『テラボルト』!」
「重力球属性 ヘキサグラム、『グラビトンクラスター』!」
「深淵属性 ヘキサグラム、『デプスゾーン』!」
シャルドの周りの五つの魔法が、一斉にドラゴニックキングに襲い掛かる!
「うおおおおおーーー!」
「ドラゴニックキングーーー!」
ズガアアアアアア
ドバアアアアアア
ガガガガガガガガ
バキバキバキバキ
ズドドドドドドド……
凄まじい衝撃と、凄まじい轟音……
煙が晴れる……キングは、無事だ!
「ぐふっ、ゴホ、ゴホ……さすがに、キツイぜ……」
毒状態だったけど、全魔力を使用した『多重対魔力結界』と、『ドラゴニックスキン』で、何とか耐えたのか……
ドラゴニックキングの左右に、三体の巨大な影が……
「あれは、フェンリルとタイタン……それにクイーンオブシャドーも!?」
フェンリル、タイタン、クイーンオブシャドー、それぞれ『対魔力結界』と『タイタニックウォール』を張って、ドラゴニックキングを守ってくれていたのか!
「サモンロード!」
「フフ……僕はまだ動けないけど、召喚魔法だけは間に合ってよかったよ……」
「すまねぇサモンロード、借りができちまったな」
サモンロードのやつ、自分はまだ『カラミティゾーン』のせいで動けないのに……
まてよ、サモンロードが召喚魔法を唱えることができたってことは、相手が詠唱中なら、こちらも詠唱できるってことか……?
「よくぞあの魔法に耐えたな……と言いたいところだが、まだこちらのターンは終了していない」
「何っ?」
「あれだけの魔法を発動したのに、まだうてるというのか!?」
とてつもない量の魔法を放ったはずのシャルドが、もう魔力を集中している……
「シャルドのもう一つの能力、それは魔界の『魔脈』にいるときと同じように、魔力が枯渇しない能力」
「なんだって!?」
魔界の『魔脈』と一緒ってことは、ほぼ無限に魔法を唱え放題ってことに……
「さあシャルド、とどめを刺してやれ」
シャルドの前に、五つの巨大な魔法陣が展開……『闇』『闇』『闇』『闇』
『風』『地』『光』『闇』『闇』
『水』『水』『地』『地』『地』
『地』『地』『地』『闇』『闇』
『水』『水』『地』『地』『闇』『闇』……
「スーレイ・アブトゥル・ラーズ・クルス
漆黒よ 暗黒よ 暗闇よ 常闇よ すべての闇よ 波のように荒れ狂え……」
「圧力 圧迫 圧縮 見えざる力携えし者よ その手で千を一に 万を零にせよ
リーヌ・ファン・ライスト・プリクティーレ・ターンマクス……」
「天届く塔 その頂上で天を仰ぐもの 神の罰を受けてなお 天に挑戦するものに 賞賛と賛美を
レコン・アーク・ドレイスラ・カーライン・ソレルド・エーマ……」
「氷よ輝き舞え 氷竜よ敵を包め 氷神よ罪人に永遠の罰獄を
ブレーベン・ドドレス・アクレイン・マージ
ガイ・イン・トゥーザ・ファラン・ライン・ゲート……」
「パラル・エル・ドゥーン・ゲイズ・ハリアルサイド・ズー・ヴァール
深く 深く 深淵の底で眠るものよ 今こそ目覚めの時
その御手で掴みし者を 永遠の事象の彼方へ……」
「マジか!?さすがにこれは、もう……」
「くそ……魔力が……」
さっきの『対魔力結界』で、ドラゴニックキングはほとんど魔力を使い切っちまった……
召喚した三体も、すでに限界に近い……
「待ってろ、今俺が行く!」
「来るな!お前が来てももう間に合わねえ!」
「で、でも……」
くそぅ、手をこまねいて見ているだけしかできないのか!?
「マスター、私なら間に合います!」
「リンカ!?」
リンカがいつの間にか俺の横に……
「まてっ、リンカ……」
俺は嫌な予感がして、リンカを止めようと腕をつかもうとしたが……
俺の手は空を掴む。
「アドバンスドアーツ、『うつせみ』!」
シュインッ!
言ったと同時に、リンカはドラゴニックキングのいた位置へ。
ドラゴニックキングは、俺の横に瞬間移動した。
「こ、これは……?」
「闇属性 クアトログラム、『ダークネスオーシャン』!」
「圧縮属性 ペンタグラム、『ギガ・コンプレス』!」
「巨塔属性 ペンタグラム、『バベル』!」
「氷獄属性 ペンタグラム、『コキュートス』!」
「深淵属性 ヘキサグラム、『デプスゾーン』!」
「リンカーーー!」
ドドドドドドドド
ギガガガガガガガ
ズガガガガガガガ
バキバキバキバキ
ズドドドドドドド……
凄まじい衝撃と、凄まじい轟音……
煙が晴れる……リンカがいない?
「マスター、私はここです」
リンカは、さらに奥にいたサモンロードの所にいた。
『うつせみ』からの『影足』……暗殺組織のボス、コンドルと戦った時のコンボか。
「もう、焦らせないでくれよ、リンカ」
俺は、ほっと胸をなでおろす……
「リンカ、だと……」
レイブンが、聞き覚えのある名だと言わんばかりに、リンカの方を睨みつける……
「お前、暗殺組織に潜入していた女だな?
丁度いい、あの暗殺組織は、お前のせいで壊滅したと言っても過言ではない……借りを返させてもらおうか」
レイブンがデスサイズを構えながら、ボードを降り、リンカへ近づく。
シュインッ
リンカも両手にダガーを構える。
シャキンッ
「まずは、その素早い『脚』を止めるために、『視覚』から奪ってやろうか、へへへ……」
何?リンカの『視覚』を奪うだって!?
「リンカその場を離れろ!やつの技の射程距離は、そんなに広くないはずだ!」
「わかりました」
リンカが『影足』を使おうとした、その時……
リンカの後ろには、カラミティゾーンで『束縛』されているサモンロードが……
俺はリンカをアナライズした。
(このまま私が避けたら、レイブンの技をサモンロードさんが受けてしまうことに……)
リンカが振り返り、レイブンの顔を見ると……笑っている、計算通りってわけか!?
「くっ……避けるわけには、いかない……」
「マズイ、リンカが……」
「邪道流バグ技『強奪』、貴様の『視覚』を奪う!」
レイブンの容赦のない攻撃!
「リンカーーー!」
「キャアーーーーッ!」
後ろにサモンロードがいたため、避けることができず、リンカはレイブンの技をまともに食らってしまった!
「リンカさん、まさか、僕がいたせいで……?」
サモンロードは、『カラミティゾーン』に囚われながらも、リンカを助けようともがく……
「うああぁぁ、目、目が……何も、見えない……」
リンカ、視覚を奪われちまったのか?なんてことだ、レイブンの野郎……
「お前、なんてことを……」
あのサモンロードが怒っている、初めて見た……
「どうだ……完全に『視覚』を奪ってやった、もうチョコマカ逃げ回ることもできまい」
レイブンは、リンカにとどめを刺すため、少しずつリンカの方に歩を進める……
「さあ、とどめだ……」
「くっ……」
「やめろーーっ!」
ボードの反対側にいる俺たちじゃ、間に合わない!
「邪道流バグ技、『ライフミューティレーション』!」
シャキィーーーーンッ!
その時、リンカをかばうように、一人の男の影が……
「ぐふっ!」
「お前……ハーミット!?」
「ハー、ミット……さん?」
リンカを救ったのは、アリソンこと、元百騎士のハーミットだった。
リンカは、見えない目で、必死にハーミットを探す……
「ハーミットさん、ハーミットさん、どこですか?」
「リンカ様……ご無事で、よかった……」
「ハーミットさん、私をかばうなんて、なんてことを……今助けます」
「いいのです、私は、アナタの手を握ることすら、おこがましい……」
リンカから少し離れたところで、倒れたまま動かないハーミット……見ただけで今にも命が尽きそうだとわかる。
「私は、罰を受けなければなりません……
今まで、リンカ様のような、たくさんの人たちを奴隷にして、不幸にしてきました。こうなるのは、当然の報いなのです」
「ハーミット……」
「ハーミットさん……」
「ですが、最後に、あなたのために死ねてよかった……最後の最後で、神様が私の望みを叶えてくれました……」
「ハーミットさん、しっかりして、ハーミットさん!」
「リンカ、様……どうか……ご武運、を……」
バタッ……
「ハーミット!」
「ハーミットさん!」
ハーミットは、リンカをかばい、リンカのそばで息絶えた……
「ハーミットさん、そんな……ハーミットさーーーんっ!」
空にリンカの悲痛な叫びがコダマする……
「ハーミット、最後の最後で、カッコつけやがって、あの野郎……」
悲しんでいる暇はない、ハーミットの死を無駄にするわけにはいかない!
「邪道十三人衆……お前、なんてことを……うおおおぉぉ……!」
バチィッ!
サモンロードが、自力で『束縛』と『猛毒』を解いた。
「フェンリル召喚!」
「ガオオオオオオ!」
真っ白で巨大な雪狼、フェンリルを召喚した!
「覚悟しろっ!フェンリル、『雪狼咆哮……」
「へっ……」
レイブンの前に、人影が……
「なっ……まてっ、フェンリルッ!」
キキーーーッ!
レイブンの前には、サモンロードの元四天王、キャルロッテが、レイブンを守るように立ちはだかる……
「くっ……キャルロッテ……」
「ギャーハハハ、このキャルロッテごと、オレ様に攻撃することができるのかよ?」
キャルロッテをアナライズ!
(お願いですサモンロード様、私に構わず戦ってください!)
「この……外道め……」
当然サモンロードは攻撃できず……レイブンの野郎、これも計算ずくってわけか……?
「そろそろ、ボード外での騒ぎはお開きにしてもらおうか」
バグが、どこからともなく出現した玉座に座りながら、話し出す。
「ふざけるな、こっちは王道十二将が全滅して、仲間も一人死んでいるんだぞ!」
俺が叫ぶ。
「フッ……それはそもそも、そちらがゲームのルールを破り、私の暗殺もしくは拉致を計画し、失敗した末路……自業自得だ」
うっ……それを言われると、ミもフタもない。
「ゲームに勝利した、我々の契約の履行をさせてもらうか……」
「ま、待て!」
バグ、『崩壊属性魔法』を唱えるつもりか……
「お待ちくださいバグ様」
レイブンが、俺とバグの会話に割り込む。
「やつらに面白いものを見せてやりましょう」
「面白いもの……?」
すると、どこからともなく、ヒナタが馬頭将の体を引きずりながら、リュオンのところまで運んできた。同じ方向からリンも、牛頭将の体を引きずりながら持ってきた。
「二人とも、いったい何をしているんだ……?」
違う方向から、メギード王が、猪牙将と黒羊将の体を、担いで持ってきた。
メルフィスも火の鳥将と脱兎将の体を担いでいる。
最後にレイブンが、龍極将の体を持ってきて、リュオンの足元に置いた。
「レイブン、いったい何を企んでいる……?」
「へへへ、今面白いモンを見せてやるよ……
よし、メギード、牛頭将と馬頭将から、リュオンに『移植』だ!」
「な、なんだとっ!?」
パアアアァァァ……
メギードが、馬頭将と牛頭将に剣で触れると、馬頭将と牛頭将の体から、何か数字の書かれた光る玉が出てきた。
それをそのまま『竜の民リュオン』に向ける……
その『数字の入った光る玉』は、リュオンの体の中に吸い込まれていった。
ドクンッ……
「なんだ?いったい何をしているんだ……?」
メギードは、そのまま猪牙将と黒羊将の体からも、数字の入った光る玉を取り出し、リュオンに注入。
ドクンッ……
火の鳥将と脱兎将からも、光の球を取り出し、リュオンに注入した。
ドクンッ……
「最後に、龍極将の『龍眼』を移植!」
パアアアァァァ……
竜の民リュオンの体が、一回り大きくなり、体の色や、文様が変化している……?
その時、リュオンの潰されていた右目が、少しずつ開いていく……
開いたリュオンの右目には、『三種の竜神器』の一つ、龍極将の持っていた『龍眼』が……
「どうだ、新しい『世界最強の男』の、完成だ!」
俺はリュオンをアナライズしてみた!
「リュオン」「男性」「レベル999」「基本属性 水 地」
「HP9999」「MP5500」「腕力999」「脚力999」「防御力999」「機動力999」「魔力999」「癒力450」「運400」「視力10.0」
三種の竜神器:『龍眼』
「マジか……王道十二将の最強ステータスを、リュオンに『移植』したってのか……そんなことが可能なのかよ!?」
もう、わけがわからな過ぎて、笑うしかないドラゴニックキング……
「リュオン……」
「キング……」
喉をつぶされて、しゃべることができなかったリュオンが、初めて声を出した。
「フッ……お前の声はそんな声だったんだな……
できるなら、こういう状況ではないときに、お前の声を聴いてみたかった……」
ドラゴニックキングが、少し悲しそうに、リュオンに語りかけている。
「なにが『面白いもんをみせる』だよ、これっぽっちも面白くなんかない!」
ステータス的には、今のリュオンはあの龍極将とほとんど変わらない……
あの龍極将が敵に回ったも同然だ……こんなの、さすがに……
「少しだけ、絶望に近づけたようだな……では改めて、契約の履行をさせてもらう」
バグが玉座から立ち上がり、魔力を集中しだした!
「契約通り、『崩壊属性魔法』を発動させてもらう」
バグの前に、今まで見たことがないほどの、巨大な『積層型立体魔法陣』が展開する……『炎』『炎』『水』『水』『風』『風』『地』『地』『光』『闇』
「シャン・クオンル・フェディチー・アムルダーク・レイ・フォレント
シック・アンメイクルインド・スダーツ・アウェイスト
ギリ・ギル・ガラン・オーフレイン・ゴゴ・ベイシールド
おお 大いなる天空の頂 神天界に座する神々 天神界の天界竜ハイロンよ
おお 深淵なる闇の最下層 魔獄界を支えし神々 魔黒界の魔界竜コンロンよ
この地上の 不浄なるものどもを淘汰し 新たなる世界を築くための 礎を作らん
我が手に破壊を 我が目に事象を 我が心臓に輪廻を 我が心に慈愛を
我に 世界を崩壊し 無から有を作る力 与えん……」
なんて長い詠唱だ、初めて聞いた、これが『神言霊魔術』……
「崩壊属性神言霊魔術……『ドゥームズデイ』」
キイイィィーーーーン……
「うわあぁっ!?」
「なんだ、この音!?」
一瞬、高音が空に響いたと思ったら、急に静かになった……
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
物凄い地鳴りが、ボードを、周りの地面を震わせる。
「始まってしまったのか?世界の崩壊が……?」
「そうだ、あと七時間で、この世界は『崩壊』する……
防ぐためには、この世界が崩壊しきる前に、私を倒し、この『正義のカード』を手に入れるしかない」
「バグ……お前、本当にやっちまったんだな……」
「さあ、私の相手は、お前がしてくれるのだろう……?
第三ラウンドの、開始だ」
☆今回の成果
神魔 ゆうザイくんの『タブレット』入手




