第六十八話 オーバーフロー
アナタはアイドルと一緒に『説得』したことがありますか?……俺はある。
「これで十人目……残り二人だ」
ボードの上で立っているのは、龍極将と窮鼠将の二人だけ……
「最強ゆえに、一度敗れるとその脆さは通常の比ではない、最強を自負しているがゆえにな」
確かにそうだ、自分たちが負けるなんて、微塵も想定していないだろうからな。
「先ほどのお前たちの提案を、今度はこっちが提案してやろう……降参し、投降することをおすすめしよう」
くっ、バグの言う通り、たった二人じゃ、もう勝ち目は……
ドガァッ!
こちらの陣営に攻め込んでいた、相手のポーンドラゴンが吹き飛んだ!
「まだだ、まだ私がいる」
「龍極将!」
全ステータス最高値、世界最強の男、龍極将……王道十二将にはまだ彼がいる!
龍極将VSウォルフ
龍極将が、相手の陣営に攻め込んでいく。
「龍極、王道十二将も、私たち二人だけとなってしまいました、戦況的には最悪です」
龍極将は、窮鼠将を守りながらも、前進を緩めない。
「世界最強の男である、私が生存している限り負けはない。
このまま最短で、敵の『キング』を取りに行くぞ!」
「はい!」
龍極将はそのまままっすぐ、『キング』であるバグの方へ……
「そう簡単にここを通すわけにはいかぬ!」
ポーンドラゴンに乗った戦士たちが、行く手を阻む!
ウォリアーの前に魔法陣が展開……『炎』『炎』『水』『水』
「ジルベール・オー・ノートス
炎竜よ 水竜よ 相反し 反発し 収束し 融合せよ 破壊の力よ 我が敵をこの世から消し去れ
大爆発属性クアトログラム、『エクスプロードロア』!」
マジか、このウォリアー、クアトログラム使えるのか!?
「『対魔力結界』展開」
キュウゥゥン……
「お前の魔力は吸収させてもらった」
スゲー、速い上に、結界もデカい!
「小手先の技では、私を倒すことはできんぞ」
クアトログラムが小手先って……あいつ本当に人間なのか?
「王道流奥義、『アルティメットVブレイク』!」
ズドガシャアァーーーッ!
Vの字に斬られて吹き飛ぶウォリアーの後ろに誰かいる……あれは、『銀嶺のウォルフ』!
銀嶺のウォルフが、龍極将の前に立ちはだかる。
「ウォルフ、やれ!」
レイブンの檄が飛ぶ、ウォルフの後ろにはバグがいる!
「先ほどと同じ攻撃が予想されます、確認させてください、『賢者のメガネ』!」
ネズミ君の『賢者のメガネ』が発動。
銀嶺のウォルフの持ち物
クマの手
リクガメの盾
ティーカップスプーン
カーバンクルの石
ルーンの衣
「ウォルフのアイテムは先ほどと同じ……すべての攻撃が『クリティカルヒット』になります」
「いくぞ、邪道流バグ技、『100%クリティカルスマッシャー』!」
バシャアァァーーンッ!
先ほどと同じ、まるで稲妻が落ちたような閃光とともに、凄まじい衝撃音!
「うおおぉぉーー、王道流奥義、『アルティメットXクロス』!」
ズドオォォーーンッ!
これまた凄まじい攻撃
「オラの『クリティカルヒット』の攻撃を、弾き返された!」
ウォルフもびっくりしている……
ってか、防御力無視で二倍のダメージを出せる『クリティカルヒット』を、必殺技だけで弾き返したのか!?
規格外にもほどがあるぞ!
「あんな攻撃をまともに食らったら……」
ゴソゴソ……
ウォルフのやつ、なんかアイテムをいじっている……?
「さあどうした、私の攻撃はこんなものではないぞ、アドバンスドアーツ、『竜巻旋風斬り』!」
アイカの『風纏い・旋風斬り』の、数倍の風を纏った、竜巻みたいな攻撃!
ズシャアァァーーッ!
バキーーーーンッ!
「なっ、なに?」
マジか、龍極将の攻撃が効かない!?
「くっくっく……オラのアイテムを見てみるがいい」
ネズミ君が、『賢者のメガネ』で、ウォルフのアイテムを確認する……
ピキーーーン!
銀嶺のウォルフの持ち物
ぶるーメタルソード
つきの衣
リクガメの盾
むじなの尻尾
こりあんだー
うんだめしの棒
「なんだこれは?先ほどと違う、まさか……」
縦読みしてみる……
「ぶ・つ・り・む・こ・う……『物理無効』か!?」
「ハーハッハッハ、残念だったな、もうオラにはお前の攻撃は効かない!」
マジか?アイテムを入れ替えて、縦読みするだけでいろんな効果が……
こんなのもう無敵じゃん?
「物理が効かないのなら、魔法で攻撃するまで!」
龍極将の前に巨大な魔法陣が展開……『地』『地』『地』『地』『地』『地』『地』『地』
「クーレーン・ヴァイパード・レイク・シーハース
ブーン・ガガルド・エイト・シーカー・ファスター
地神ロックスよ 大地の大いなる怒りを 我が眼前に
我に地母竜の加護を この大地に 悠久なる生命の息吹を!
地属性オクタグラム、『アークシェイク』!」
ズドガガガガガガガガガガガガ!!
物凄い地鳴りの後に、まるで海面のように地面が波打ったと思ったら、亀裂から凄まじい衝撃波が迸る!
「うおおおぉぉ!?」
ウォルフは、衝撃波に当てられた後、巨大な地面の亀裂の中へ……
空中を飛び、地震を回避していたレイブンが、切り立った岩の上に立ち、見下ろす。
「なるほどな、ただの脳筋バカだと思っていたが、魔法もここまでの威力とは……」
「言ったはずだ、私はあらゆる面で最強……それが『世界最強の男』というものだ」
「はああぁぁ……」
この声は……?
バガアァァーーン!
ウォルフがいたところの岩山が、急にはじけ飛んだ!
マジか……中からウォルフが出てきた!
「危なかった、アイテムを変更していなければ、間違いなくやられていた……」
「あの魔法を回避したというのか……まさか」
ピキーーーーン!
ネズミ君が『賢者のメガネ』で、ウォルフのアイテムを見た。
銀嶺のウォルフの持ち物
まりょくの杖
ほむらの衣
うるとらシールド
むじなの尻尾
こりあんだー
うんだめしの棒
縦読みしてみる……
「ま・ほ・う・む・こ・う……やはり、『魔法無効』か」
今度は魔法無効か、ここまで万能な能力とは……
「っていうか、詠唱を唱えている間に変更したのか……敵ながらあっぱれだな」
ヴァロン近衛兵団時代は、さぞ優秀な千騎士だっただろうに……
「フフフ、どうだ、『物理無効』と『魔法無効』……もうオラを倒す手段は残っていないぞ!」
ウォルフは、持っている武器を龍極将に向けて、吠える。
「それはどうかな……?」
龍極将の目は益々輝き、まったく諦める素振りはない。
「力ではダメ、術でもダメ、ならば……」
そう言いつつ、龍極将は異様な構えをとる。
周りの風が、まるで竜巻のように龍極将の足元に集まっていく……
「『龍眼』覚醒!はあああぁぁぁ……」
ガカァッ!
龍極将が、『龍眼』を覚醒させた……とんでもない気力だ!
バアアアアア……
物凄い風圧が、ボード全体を揺らす。
「くうぅぅ……い、いったい何をするつもりだ……?」
「極限まで高めた気力の刃に、風の力を纏わせ、超高速で振りぬくことで、物理でもない、魔法でもない、凄まじい衝撃を与えることができる……
いくぞっ、王道流奥義、『アルティメットZスラッシュ』!」
ガカァッ!
ガガガガガガガガガガガガ!
とてつもない衝撃音と爆発……
充満していた煙が晴れる……
「ウォルフ!」
Zの字に斬られ、ボードに横たわるウォルフ……
「やった、邪道十三人衆の一人、『銀嶺のウォルフ』を倒した!」
「フム、なかなかの強敵であった、その名、我が記憶に刻んでおこう……」
龍極将、倒した相手にも敬意を払うとは……
「まさか、ウォルフがやられちまうとは……とんでもねぇやつだな」
さすがのレイブンも、龍極将のその実力を、認めざるを得ないようだ。
龍極将VSバグ
銀嶺のウォルフを倒し、次のターンで歩を進める龍極将……あと一歩でバグの前へ。
「マズイな……バグ様の防御が間に合わない」
レイブンやメルフィスが援護に向かうが、攻めに駒を集中していたため、二人とも届かない。
「構わん、龍極将の相手は、私がしよう」
「バグ様!?」
マジか……でも今は作戦実行中だ、これは、チャンスなのか?
龍極将が、バグの眼前に立つ。
「貴様を倒せば、この戦争は終結だ……覚悟してもらおう」
龍極将が、異様な構えを見せる……
「『龍眼』覚醒!はあああぁぁぁ……」
ガカァッ!
バアアアアア……
物凄い風圧が、ボード全体を揺らす……が、バグは微動だにしていない。
「お前に、素晴らしいプレゼントをしてやろう」
「素晴らしいプレゼントだと?」
今まさに攻撃をしようとしていた龍極将に、バグがなんか話しかけている!?
「龍極将、バグのやつ何かするつもりだぞ!離れろ!」
「フッ、構わん、どんな攻撃であろうと受け止め、次のターンでとどめを刺す……こい!」
くっ、さすがは戦闘狂……こんな状況でも、戦いを楽しんでいるのか?
「その心意気やよし……では受け取るがいい、邪道流バグ技、『EXPギフテッド』!」
ガカァッ!
一瞬、閃光が走る……しかし何も無い、攻撃の類ではない……?
「なんだ?ただの脅しか……?」
龍極将の体には、なんの変化もなさそうだけど……
「そうではない、お前に『経験値を1』だけプレゼントした、フフフ……」
「?……どういうことだ?私はすでにレベルをカンストしている、これ以上の経験値は私には入らない」
「通常はそうだな……だが私のこの技は、カンストしているレベルにも、無理やり経験値を入れることができる技だ」
「はっ!」
「マスター、どうしたのですか?」
俺は気づいてしまった……バグの思惑に、龍極将の弱点に……
「まさか……『オーバーフロー』か……?」
「『オーバーフロー』……?」
『算術オーバーフロー』……
コンピュータなどの数値データが、可能な値の上限を超えて発生するエラーのこと。『桁あふれ』ともいう。
カウンターストップした値に、さらに数値を加えることで、桁あふれを起こし、数値が最初の状態に戻ってしまうことを指す。
「バグは、龍極将に無理やり『経験値』を与えることで、『桁あふれ』を起こさせ、レベルを戻してしまったんだ」
「そんな、じゃあ今の龍極将さんは……」
俺は、龍極将をアナライズしてみた。
「龍極将」「男性」「レベル1」「基本属性 水 地」
「HP10」「MP1」「腕力1」「脚力1」「防御力1」「機動力1」
「魔力1」「癒力1」「運1」「視力1.0」……
「やっぱり……レベルがオーバーフローして、『1』になっている……」
「何を言っている?どういうことだ?」
龍極将は、わけがわからないという顔をしている……
「龍極将、あんたレベルが『1』になっちまっているんだ……そのままじゃ敵の通常攻撃を食らっただけでもやられてしまう!」
「なんだと!?そんなことが……」
なんの防御もせず、バグが龍極将の目の前まで歩いてきた。
「フフフ、どうだ?『世界最強の男』から、『世界最弱の男』になった気分は?」
「そんな……バカな……」
龍極将は、ワナワナしながら、自分の手を凝視する。
「そんな、そんなはずはない、私は、世界最強の男だ!この世界の誰よりも強い!」
マズイ、あの感じ、あのままだと一撃で……
「危険だ、引け、龍極将!」
「いやだ!私は最強、私がこの世界を救うのだ!」
今まで最強と言われていた男だ、自分が最弱だなんて認めたくはないだろう、でも……
「くらえっ!王道流奥義……」
「よせっ!」
龍極将は、俺の忠告を無視し、奥義を放つ!
「『アルティメットVブレイク』!!」
ガカァッ!
ボキボキボキッ!
「ぎゃあああああ!」
な、なんだ、今の音……?
カランカラーーン……
龍極将は、持っていた武器を落としてしまった。
「フハハハ、技の威力に耐え切れず、両腕が骨折したようだな」
マジか、自分の必殺技で……?
「自分の必殺技も使えないなんて、まさに『世界最弱の男』よ……
今ので貴様のHPは『1』に……なんとも脆い、なんとも情けない男だな」
「くっ、くそっ、くそっ、私は最強だ、私は誰にも負けない!」
龍極将は、骨折した両腕はそのままで、震えながら立ち上がる。
「よいか、真の最強のものは、自分のことを最強とは言わない……恥を知れ」
そう言ってバグは、龍極将に向けて、手をかざす……
「やめろっ!」
カアアッ!
バグの手から、光の球が現れて、ドンドン巨大化、龍極将に迫ってくる!
「逃げろ龍極将!」
「私は、最強……私は、最強……私は……」
ドンドン巨大化した光の球は、そのまま龍極将を飲み込み、消えていった……
光が消えた後には、ボロボロになった龍極将の体が横たわる……
「くっ、龍極将……」
窮鼠将VSバグ
世界最強の男と言われていた龍極将がやられてしまった……邪道十三人衆の実力、ハンパじゃない。
その時、龍極将を飲み込んだ光の球が消えていく隙に、小さな影がバグの死角に潜り込んだ!
「バグよ、アナタの死角に潜り込みました、これでチェックメイトです」
ネズミ君が……いつのまに!?
「貴様、龍極将を盾に使ったのか?」
完全に死角に潜り込まれ、さすがのバグも反応できていない。
「日本の『十二支』の話にも載っています、十二支の一つ、『子年』のネズミは、牛の背中に乗って神様の門まで行き、開門と同時に牛から降りて一番になったそうです。
しかも一番の強敵の『ネコ』には、約束の日を一日遅らせて伝えていたそうです……
ネズミはね、ずるいんですよ……勝利するためならば、どんなことでも利用します!」
マジかネズミ君……でも今はそんなこと言っている場合じゃない!
「これで終わらせます、『天秤座のゾディアックビースト』、タイムスロウ!」
キュウゥゥゥン……
ピタッ
「や、やった、バグを、停止させた……?」
ネズミ君は、一つ、安堵の息をつくと、続けて話す。
「バグさん、アナタの周りの限定空間の時間を千分の一にしました……これで我々の勝利です」
スゲー、ネズミ君、あのバグに勝っちゃった。
「フフフ……それはどうかな?」
「なんですって、それはどういう……?」
バグは、いつも通り動き出す……マントを翻し、手のひらを開いたり閉じたりしている……
「そんな、バカな……確かにタイムスロウをかけたはず……どうして動けるのですか?」
「簡単なことだ、私が千倍速く動けばいい」
「は?……な、何を言って……そんなことできるわけが……?」
「できるさ……
ゲームというのは『フレーム』で動いている、
その『フレーム』の数を減らすだけで、キャラのスピードは上がっていくのだからな」
『ゲームのフレーム』……
ゲームのキャラクターの動きは、フレームを何枚も合わせて表現する。
フレームが増えれば、ゆっくりだが滑らかな動きに、フレームを減らせば、動きは速く。
※通常ゲームのフレームは30~60フレーム。
人の認識限界は240/1秒と言われている。
「私は今、自分の動きの間のフレームを、998枚抜いて動いている……
つまりこれは、『千倍速く動いている』ということになるのだ」
「そんな、タイムスロウが効かないなんて……では一体どうすれば……」
ネズミ君……『天秤座のゾディアックビースト』が通用しないなんて、夢にも思わなかっただろう……
「『窮鼠猫を噛む』という……追い詰められたネズミは、大敵である猫にも嚙みつくというが、どうだ、やってみるか?」
「くっ……」
その時、インカムから、ドラゴニックキングと、サモンロードの声が聞こえてきた。
「今オレ達はバグのすぐ後ろに到着した」
「これから奇襲をかける、もう少しだけバグの気を引いていてくれ」
「まてバグ!俺の話を聞いてくれ!」
ネズミ君がピンチということもあり、俺は思わず叫んでしまった。
「俺が、この世界の創造主である、ギルギルの開発者たちに、お前の理想をできるだけ叶えるように進言する。
そうしたら、わざわざ今のこの世界を壊したり、新しく世界を構築する必要はない」
バグは黙って聞いている……
隣にいたアイカも、必死にバグを説得する!
「そうです、それに死んでしまったフリージアさんや村長さんたちも、バグさんの力があれば復活させることができますよね?
一かけらの細胞が残っていれば、全身を復活させることができると、ドクターナマズエが言っていました」
「……」
バグは目を瞑って、動かない。
これは作戦じゃない、本当に俺たちが思っていたことだ。
「頼むバグ、これ以上俺たちが争うなんてこと……」
バグが、ゆっくりと口を開く。
「却下だ……」
「どうして!?」
「最初にこの世界を作った者たちが、そう簡単に今の世界を変えるとは思えない。
私の理想を、できるだけ叶えるというのも確証はない、最初は私を抹消しようとしていたのだろ?
しかもそいつらは、今のこの状態を作り上げた張本人たちなのだからな……」
「バグ、でも……」
「新しい世界は、私自身の、この手で作る、それに意味がある。
私が新しい世界の創造主、『神』になるのだ」
『神』になる、だって……?あいつがそんなこと言うわけ……
「お前、本当にバグなのか?俺の知っているバグは、そんなことは絶対に言わない……」
「話は終わりだ、窮鼠将を倒し、この勝負は我々の勝利だ」
「よし、行くぞ……3・2・1・GO!」
ドラゴニックキングとサモンロードが、バグに襲い掛かろうとしたその時……
「そうはいかんよ」
空に声がコダマする……
「世界に災いもたらす王よ その目に闇を その手に血を その心臓に災厄を
ホール・ハルスト・ガッダ・イン・ビドー
チービル・シャル・レスト・アノン
災厄属性ペンタグラム、『カラミティゾーン』!」
ゾゾゾゾゾ……
「こ、この声は、ナマズエ!?」
「うわああぁぁっ!」
ドラゴニックキングとサモンロードが、『猛毒』と『緊縛』状態になっちまった!
透明だったナマズエが、姿を現す。
「フフフ……どうかな、我の透明化は?有用であろう?」
「ナマズエ……どこにもいないと思ったら、ずっとドラゴニックキングとサモンロード達の後をつけていたのか」
「フッ、厳密に言うと、お前たちが自分たちの陣地で、この作戦を話し合っているところから、我はずっとそばにいて聞いていたよ」
「なんだと!?じゃあ始めから俺たちがバグを狙っていたってことも……」
「当然わかっていたよ、その上で泳がせていた」
くそっ、こいつ……
その時、ネズミ君に動きが……まだ諦めていない!
「まだです、まだ私には奥の手が……」
ネズミ君が、懐から何かスイッチのようなものを取り出した……?
「私の体には、自爆用の『爆弾』が仕込まれています……
この近距離で爆発させれば、アナタも無事では済まないでしょう」
「じ、自爆だって!?ちょっと待てネズミ君!」
「みなさん、後のことは頼みます!」
カチッ
ドガアアアァァン!!
ドドドドドドド……
ガラガラガラ……
クアトログラム『エクスプロードロア』の数倍はあろうかという、凄まじい爆発……
ボロボロになったネズミ君が立っている……
「ネズミ君……」
「バグは……見当たらない、ですね……吹き飛んだのでしょうか……?」
ネズミ君は、息も絶え絶え……
「残念だったな」
空から声が聞こえる……
空に、元千騎士の『空魔のソウケイ』とバグが、浮かんでいる。
「私の能力は、『領域外移動バグ』……
「『領域外移動』……?なんだそれは?」
「『領域外移動』とは、領域の範囲外の空間に移動できる能力のこと。
通常では行くことができない領域も、私は自由に行くことができる」
「領域外に移動したことで、ネズミ君の爆発を回避したってのか……?」
「ここは元々今お前たちがいる場所とは、違う領域……ここでは、貴様の爆発も領域外だ」
「くっ……」
ネズミ君は、がっくりうな垂れる。
「む、無念、です……」
ガクッ……
「ネズミ君ーーーッ!」
☆今回の成果
龍極将 『アルティメットXクロス』『アルティメットZスラッシュ』




