第六十七話 邪道流バグ技
アナタはアイドルに『どう、どう』と制止されたことがありますか? ……俺はある。
バグは、話し終わった後、おもむろに一歩横にずれた。
「紹介しよう、十二人目の邪道十三人衆だ」
バグの後ろにいた大男が、俺たちの目の前に現れた。
「まさか……メギード王、アンタまで……」
俺たちの目の前には、真っ黒な鎧を纏った、メギード王の姿が……
「お前、なんてことを……」
「ギガンティックマスター、お前たちがここに来ることは、ナマズエの話で予想していた。だが私が席を外していたのは、彼を十三人衆に迎え入れるためだ」
「そのために、脅しをかけてまで面会を迫っていたのか」
「そうだ、全てはお前と世界を絶望させるため……」
くそっ、メギード王は、俺のせいで……
その後ろには、ヒナタやキャルロッテ、リンにリュオンもいる。
よく見たら、館長、ヴァロン近衛兵団の三人の千騎士まで揃ってる……
「さあ、まだ完全ではないが、お前たちを絶望させる準備は整った……
『ドラゴニックボード』、第二ラウンドと行こうか」
ヒナタ、本当に身も心もバグ化してしまったんだろうか……?
俺はヒナタをアナライズしてみた。
「アナライズ!」
ヒナタの心の声が見える……
(マスター、ああマスター、なんでこんなことに……
私はもう元に戻れないの? このままだと、私マスターと戦うことに……それならいっそ……)
「ヒナタ!」
俺は思わず叫んでしまった。
ヒナタ、バグ化しても、心は以前のままなんだ。
サモンロード、コズミッククイーン、ドラゴニックキングが、俺のところに駆け寄ってきた。
「今キャルロッテの心をアナライズしたら……
(私がドジなせいで、迷惑かけてすみません、サモンロード様)って言ってたんだ」
「私もリンをアナライズしてみたわ……
(体の自由が利かない、オレはもうダメだ、逃げてくれクイーン!)……お願い、リンを助ける方法を教えて!」
「リュオンのやつ、自分よりオレのことを心配してやがった……
(キング、オレのことはいい、自分と他の四天王を優先してくれ、頼む)……畜生、何とかならないのか!」
くそっ、きっと館長やメギード王も同じなんだろう……
バグの野郎、体と能力だけを操ってやがるんだな。
ゆうザイくんが、俺たちの輪の中に入ってきた。
「どうやら全員、中身は元の人格のままのようだな……」
「ああ、なんとかして次も勝利して、あいつらのプログラムを解析したい……頼む」
「オレと窮鼠将に任せておけ」
バグがキングドラゴンに乗っている……やはり『キング』はバグか。
「先ほどの勝負はお前たちの勝ちだ、独自のルールの追加を許可する」
「独自のルール……将棋独自のルールを追加できるってことか?」
チェスにはない将棋独自のルールと言えば、『成り金』や『持ち駒』……どちらも使えば強力な武器になる。
「ネズミ君、どうするんだ?」
「……」
さすがにネズミ君も、ここは考えどころといったところか……
「ギガンティックマスターさん、ここはルール追加を『時間制限』にしようと思います」
「時間制限……? 本当にそれでいいのか?」
「ええ、どうやら彼らは、そんなにチェスや将棋が得意といったわけではなさそうです」
いや、それはネズミ君、アンタが強すぎだからじゃないのか……?
「なので、ここが作戦実行の絶好の機会になるのではないでしょうか?」
「それって、王道十二将が戦っている間に、屠りしものたちでバグを確保するっていう……」
「そうです、時間制限を付けることで、こちらは時間を稼げ、相手を焦らせることができるのではないかと」
なるほど、ネズミ君がチェスと将棋を熟知しているからこそ、できる作戦か。
「わかった、それで行こう」
俺はバグにルールの追加を宣言する。
「ルール追加は『時間制限』だ、お互い考えている間はタイマーを進め、合計で十時間を超えたら敗北とする」
「了承した」
ズズズズ……
ドラゴニックボードの枠外に、お互いの時間がのったタイマーが出現。
俺、ゆうザイくん、ネズミ君、ドラゴニックキングとコズミッククイーン、サモンロード、お互いに頷きあう。
「よし、作戦実行だ!」
「ドラゴニックボード、第二ラウンド、開始だ!」
バグ側の配置
ルークドラゴン「キャルロッテ」 Pドラゴン「戦士」
ナイトドラゴン「メギード」 Pドラゴン「ホーン」
ビショップドラゴン「メルフィス」 Pドラゴン「ウォルフ」
キングドラゴン「バグ」 Pドラゴン「シャルド」
クイーンドラゴン「レイブン」 Pドラゴン「館長」
ビショップドラゴン「ヒナタ」 Pドラゴン「ソウケイ」
ナイトドラゴン「リュオン」 Pドラゴン「戦士」
ルークドラゴン「リン」 Pドラゴン「戦士」
※王道十二将側は先ほどと同じ。
「今回の勝負で我々が勝利すれば、この『世界のカード』を使って、『崩壊属性魔法』を発動させてもらう」
「なんだって⁉」
「お前たちが勝利した場合は、お前たちの望みを、一つ叶えよう」
望みを、一つか……
「ネズミ君……」
「はい……我々の望みは、『十三人衆の返還』か『正義のカード』、どちらにするのかは、勝利したその時考えましょう」
「わかった」
ギルギルの世界の命運を賭けた戦いが、今始まった……
「歩兵竜、7の参です」
「ポーンドラゴン、前へ」
「火の鳥、6の伍へ」
「ナイト、4のhだ」
「お互い、三十秒経過」
自動的に、タイマーから音声が聞こえる。
「歩兵竜、7の玖へ移動してください」
「ビショップ、5のgにて守れ」
「雷虎、8のcへ展開」
「ルークを5のaだ」
さっきとは逆で、バグ側は防御を固めて、出方を伺う布陣。
ネズミ君は攻撃の駒を集中して、責める気満々だ。
牛頭・馬頭VSヒナタ
「馬頭、5のgへ移動、相手のヒナタに攻撃です」
ネズミ君の指示、まずは馬頭将で相手の陣形の一角を攻撃。
「くらえっ! 『バーチカルヒール』!」
馬頭将の、直角に振り下ろすかかと落とし!
ヒナタの前に魔法陣が展開……『炎』『風』『地』
「レイダル・アーソーン・クアイエット・ヴェル・バージュ
力の紋章持ちて 星の中心となり 我と其に偉大なる影響力を示さん……
磁界属性ハイアナグラム、『ホライゾン』!」
「ヒナタが、神の言霊を……」
ヒイイィィン……
バシィッ!
ヒナタの磁界属性魔法が発動、馬頭将のかかと落としが弾かれた!
「ヒヒン⁉ なんと⁉」
「モォー、ならばオレがこのタウラスハンマーで……」
「ホライゾン、反発!」
キイィィン……
牛頭将がハンマーを構え、ヒナタを攻撃しようとしたが、磁界属性魔法のせいで近づけない……
ヒナタの魔力も相当上がっている、バグ化したせいか……?
「ンモォー、いくら腕力があっても、攻撃が届かないんじゃ……」
「牛頭、馬頭、相手は磁力の力を使っています、その磁力を上回る攻撃が必要です、二人レゾナンスで戦ってください」
「わかったモォー」
「了解ヒヒン」
レゾナンス……二人同時攻撃なら、ヒナタの磁界を破ることができるかもしれない……でも、それじゃあヒナタが……
「こいつを使う時が来たヒヒンな……」
馬頭将は、懐から棘の付いた丸いボールを取り出した。
「こいつは『アイアンスパイクボール』……普通の人間では動かすこともできない、棘の付いた『鉄球』だ」
棘の付いた鉄球……? そんなもので一体……?
牛頭将と馬頭将は、ヒナタに向かって、スポーツのサッカーのように、『アイアンスパイクボール』をドリブルしだした!
「行くよ、ゴズくん!」
「うん、メズくん!」
「おい! そのセリフやめろっ! ギリギリだぞっ」
俺は思わず叫んでしまった……
「マスター? どうしたのですか? 落ち着いてください、どう、どう……」
アイカ、俺は馬じゃないぞ……アイカに制止されてしまった……だって、ねぇ?
「くらえっ! 『アイアンボールシュート』!」
ドガァッ!
バシィッ!
「くっ……」
「ゴズくん、パスだ!」
「ナイスセンタリング、メズくん!」
馬頭将が、牛頭将にボールをパス!
「ンモォー、『ハンマーカタパルト』!」
牛頭将が、タウラスハンマーでアイアンスパイクボールを打ち出す!
ドドガァッ!
「くっ、くうう……」
ヒナタ、苦しそうだ……
牛頭将と馬頭将の連続攻撃で、ヒナタの磁界が少し弱まってきたかも……
「よし、今だ! 行くぞっ!」
馬頭将がそう言うと、空高くジャンプ!
牛頭将はタウラスハンマーをその場でブンブン振り回しだした!
「いったい何をするつもりだ……?」
馬頭将はタイミングを合わせ、牛頭将のハンマーに乗った。
牛頭将はそのまま、馬頭将ごと、ハンマーを振り切る!
「行けぇっ、馬頭! 『スカイラブハンマー』!」
バシュウーーーーン!
物凄いスピードで打ち出された馬頭将は、さらに自身の体も回転させた!
「くらえっ! レゾナンスアーツ、『ゴズメズスクリュードライバー』!」
馬頭将は、まるで一本の回転する巨大な槍のように、ヒナタ目掛けて飛んでいく!
「最強の腕力、最強の脚力に加え、回転して貫通力も高めたあの技だと、さすがのヒナタの磁界も破ることができる……?」
ギュルルルル……
「はあぁぁ……」
ヒナタが魔力を集中する……ヒナタの頭上でなにかが揺らめいている、あれは……『オーロラ』⁉
「邪道流バグ技、『地磁気』!」
ヒイイィィン!
「なっ」
バシィーーンッ!
馬頭将は、見えない壁にぶち当たり、弾かれた!
「な、なんだ今のは……見えない、壁?」
見えない壁だって? ヒナタの磁力じゃ、今の技は防げなかったはず……
「磁力……? おいレイブン、ヒナタに一体何をしたんだ?」
「違うな……」
「何?」
「ヒナタの能力は、『能力拡張バグ』だ」
「『能力拡張バグ』……?」
能力拡張バグっていったら、隠し持っている能力を無理やり引き出して、その効果も拡張させてしまうバグ……?
例えば、レベルが足りなくて使えない技を一時的に使えるようにしたり、単体攻撃を全体攻撃に拡張させてしまったりするバグ……
「ヒナタが元々持っていた能力は、『星の加護』……この星が持っている防衛機能『地磁気』を使うことができるのさ。それを引き出し、拡張した」
【地磁気】……
地球が持っている防衛機能で、地球を巨大な電磁石とし、周りに巨大な磁場を発生させ、『太陽風』や『宇宙線』などの有害物質から守る『星の盾』の役割を持つ。
ヒナタの頭上に『オーロラ』が現れたのは、そのためか。
レイブンが、自慢げに話を続ける。
「星の『地磁気』、その機能は四つ、『引力』『斥力』『重力』……そして、普通は使えないが、『反重力』も使える」
「今の『地磁気』は、星の『磁力』を利用した技ってことか⁉」
「そうだ……本来星の地磁気は、そこまで高い磁力ではない……が、星を守る程の盾だ、オレたち人間には相当な力になる」
最強の腕力と、最強の脚力を持つ二人のレゾナンスアーツを防いだんだ、それは言わずもがなだよな……
「へへへ、どんなに高い攻撃力を持っていても、相手に届かないんじゃ意味ないよなぁ!」
「ン、ンモォ……」
「ヒヒン……」
二人とも立ち上がる……まだ諦めてはいない!
「やれ、ヒナタ!」
レイブンが言うと同時に、ヒナタが両手を前に構える!
「邪道流バグ技、『極大引力』!」
グアアァァーーーーッ!
「ひ、引き寄せられるっ⁉」
一気に引き寄せられて、ヒナタに首根っこを捕まれる牛頭将と馬頭将。
「マジか、ヒナタ⁉」
ヒナタのやつ、腕力も相当上がっていやがる!
「邪道流バグ技、『極大斥力』!」
ヒイィィン……バアアァァァンッ!
「うわああぁぁっ!」
ヒナタを中心に、とてつもない『斥力』が、ボード内を駆け巡る!
ドガァッ! ドガァッ! ドガァーーーーッ!
牛頭将と馬頭将は、周りの岩盤を何枚もぶち抜き、ボード外に吹っ飛ばされた!
「ンモォーーーー……」
「ヒヒィーン……」
ドサッドサッ……
「牛頭将と馬頭将が、ボードの外で、ピクリとも動かなくなっちまった……?」
「ボードの外に出ると死亡……先ほどの戦いであのレイブンがそう言っていました……二人は、もう……」
「そ、そんな……」
「まずは、二人……」
猪牙将VSメギード
「くっ、相手の攻撃のターンですね……まずはここをしのぎます、猪牙、7のgへ」
「ブヒッ、まかせろ」
ネズミ君、まずはいったん相手の攻撃をしのぐ作戦か……邪道十三人衆、どんな攻撃を仕掛けてくるのかわからない。
「どんな攻撃を仕掛けてこようが、猪牙のHPを一撃でゼロにすることはできません、白蛇、魔力を集中しておいて下さい」
「わかりました」
最強の前衛二人と、最強の回復役の白蛇将……この連携は、例え俺でも破れる気がしない。
すると後ろの方で、鬼の民のドドムが、見たこともない『キバ』を持って、悔しそうにボード内を見つめている。
「くそっ、拙者も戦いたかった……せっかく鬼の民の村に伝わる最強の『キバ』、『三種の鬼神器』の一つでもある、この『王牙』を持ってきたのに」
鬼の民ドドムの腰には、ボロボロだけど巨大な、異様な妖気を漂わせた『刀』が刺さっている。
っていうか、『三種の鬼神器』……そんなものまであるのか?
「今はまだ待つんだ、まだその時ではない」(小声)
ゆうザイくんが、小声でドドムを制止する。
「攻撃力が半分になるが、一撃で七回攻撃ができるその『王牙』、ギルギルの中でもトップクラスのその武器の力、バグを確保できたら、残りの十三人衆を掌握するときに、その力がきっと必要になる」
一撃で七回攻撃……? そんなすごい武器があるのか?
「ほう、貴様、いいものを持っているな」
レイブン……相変わらず目ざといな、ドドムの『王牙』に気づいたか。
「そういえば、まだお前たちにはオレの能力を見せていなかったな……丁度いい、見せてやろう」
「なに⁉ ここでお前の能力を見せるのか?」
一体何をたくらんでいるんだ、レイブン……?
「はああぁぁ……邪道流バグ技、『強奪』!」
ガッ……!
シーン……
なんだ? 今何かしたのか?
「なっ……拙者の『王牙』が!」
ドドムの腰から、異様な妖気を漂わせていた『刀』が、無くなっている⁉
……と思ったら、レイブンがその『刀』を持っている⁉
「オレ様のバグ技、『強奪』は、どんなものでも、一切の制約なく、相手から強奪することができる技だ」
「どんなものでも、一切の制約なく、だって……?」
一切の制限がないって……どういうことだ?
「ほう、これが伝説の『三種の鬼神器』の一つ、『王牙』か……」
レイブンは、まるで鑑定するかのように、『王牙』を見定める……
「ほらよっ、お前にも見せてやる」
そう言ってレイブンは、『王牙』をメルフィスに投げ渡す。
「もはや伝説となった『三種の鬼神器』の一つ、『王牙』をこの目で見れるとは……」
惚れ惚れした目で見つめた後、メルフィスも『王牙』をレイブンに投げ返す。
「それは拙者の村の秘宝中の秘宝だ、返せっ!」
ドドムがレイブンに詰め寄る、すると……
「いいぜ、返してやるよ、ほらっ」
「えっ?」
レイブンは、本当に『王牙』を放り投げ、ドドムに返してしまった。
「よかった、無事で……」
ドドムは安堵の顔。
「レイブン、いったい何を考えている……?」
「もう必要ないからだ……ほら、見な」
メルフィスの手には、先ほどドドムに返したはずの『王牙』が……
「なっ、なんだと⁉」
ドドムが一番ビックリしている……
自分の手にも『王牙』が、そしてメルフィスの手にも『王牙』が……
「ワタクシの能力は、『複製』……どんなものでも、一切の制約なく、全く同じものを複製することができます」
「そんなバカな⁉ 拙者の『王牙』は、世界に一つしかない伝説の一品ぞ、そんな簡単に……」
レイブンが指をふりながら、ドドムに話す。
「チッチッチ、この世界に存在するものは、全てデータ……数字の羅列でしかない。どんなに凄い伝説級のアイテムであろうと、その数値をコピーさえすれば、同じものができる」
「そ、そんな……我ら鬼の民の、伝説の鍛冶屋が、数百年の修行の末にやっと完成させた伝説の『キバ』なのだぞ……」
ドドムが『王牙』を抱えながらワナワナ震えている……
そりゃそうだ、鍛冶屋たちの血と汗の結晶が、あんな簡単にコピーされてしまったら……
「そして、このメギードが持っている剣……呪われる代わりに、どんな敵にも必ず4444ダメージを与える伝説の剣、『破戒竜の剣』」
「『破戒竜の剣』⁉ ……お前たちが持っていたのか」
ゆうザイくんがビックリしている……あれも伝説級の武器なのか?
「このメギードの能力は『移植』……どんなものでも、持っている能力を『移植』することができるのさ」
「『移植』だって? それはどういう……」
「へへ、メギード、見せてやれ」
そう言って、レイブンは持っていた『王牙』を、メギードに投げて渡した。
「『破戒竜の剣』に、『王牙』の能力を『移植』だ!」
「邪道流バグ技、『移植』!」
ガカァッ!
シュウウゥゥ……
メギード王の左手にあった『王牙』が消え、右手の『破戒竜の剣』が輝いている……
ヒイイィィン……
「完成だ、『破戒竜の剣』に『王牙』の特性を移植した、新しい武器……名付けて『はかオガの剣』ってとこか」
「は、『はかオガの剣』……だって⁉」
「よーし、そのままあのイノシシ野郎に攻撃だ!」
「ブヒ、来るか?」
猪牙将は、身構えて、防御態勢をとる。
メギードは右手の『はかオガの剣』を振り上げ、猪牙将に振り下ろす!
「邪道流バグ技、『オーバーキル七重奏』!」
ザザシュッ! ザザシュッ! ザザシュッ! ザシュ!!
「ガハァッ⁉」
ドバアァァ!
猪牙将は、体中から血を吹き出し、吹き飛ぶように倒れた!
「ま、まさか、「はかオガの剣』って……4444の半分のダメージの攻撃を、一ターンで七連続攻撃できる技……? ってことは、合計15554ダメージってことか⁉」
「バカなっ! この世界で、9999以上のダメージを出せる武器が存在するなんて……」
ゆうザイくんが、持っていたタブレットを落としてしまった、それほどの衝撃……
ドシャアァァ……
猪牙将の巨体が、前のめりに倒れる。
「猪牙将!」
そんな、HP9999、無敵の猪牙将が、やられちまった……
「フフフ……これで三人目だ」
黒羊将VS銀嶺のウォルフ
まずいな、少しずつ押されてきている……
バグが十三人衆に指示を出す。
「ウォルフ、7のhへ移動、黒羊将を攻撃」
ヴァロン帝国の『ヴァロン近衛兵団』の一人、『銀嶺のウォルフ』……
『四天王戦世界大会』の時は棄権していたから、戦ったことはないんだよな……
「ウォルフって、いったいどんな奴なんだ?」
「『公式設定資料集』では、山で赤ちゃんの頃から、狼に育てられた戦士という設定だ」
ゆうザイくんが、タブレットで確認してくれた。
「魔獣並みの体力とスピードに加え、薬草や、アイテムの扱いに長けている」
アイテムの効果を最大限に引き出す事ができる……そんなクラスが存在したゲームもあった。
「武器だけではなく、他の特殊な攻撃方法も多数持っていると考えるのが妥当だろう」
ガシャンッ、ドスンッ!
巨大なシールドを構えた黒羊将が、他の十二将を守るように仁王立ち。
「どんな攻撃を仕掛けてきても無駄だ、オレのこの『アリエスホーンシールド』を破ることは、何人たりともできん」
999Pの防御力と、最強の防御力を誇る『牡羊座のゾディアックビースト』……
黒羊将なら、さっきの『オーバーキル七重奏』も、防げるかもしれない。
「そいつぁどうかな……」
レイブンが、顎を触りながら不敵な笑みを零す。
「どんなに高い防御力を持っていたとしても、『クリティカルヒット』なら、防御力無視で、二倍のダメージを与えられる」
【クリティカルヒット】……確かにそれなら、どんなに高い防御力を持っていても関係ない、でも……
「そう簡単にクリティカルヒットなど出るわけがなかろう、この世界の戦闘であっても、三十回に一回ぐらいの確率だぞ」
そう、このギルギルは、とりわけ『クリティカルヒット』が出ずらい仕様になっている。
「たとえ出たとしても、一回や二回のクリティカルヒットぐらいで、この私が倒れるはずなかろう」
「へへへ、もしそれができちゃうバグがあるとしたら、どうする……?」
「なんだと?」
「おいネズミ野郎、お前の大好きなその『賢者のメガネ』で、ウォルフの持ち物を見てみろよ」
「何……?」
ネズミ君は、訝しげな顔をしながらも、賢者のメガネでウォルフの持ち物を確認してみる。
「『賢者のメガネ』発動!」
パアアァァァ……
銀嶺のウォルフの持ち物
クマの手
リクガメの盾
ティーカップスプーン
カーバンクルの石
ルーンの衣
「装備としては、レア度がそんなに高くないものばかり……これがどうしたというのだ?」
確かに、その気になれば、ほとんどお店とかで購入できるものばかり……
「よく見ろよ、アイテムの頭文字をよ……」
「頭文字……?」
アイテムの頭の文字だけを繋げて読むってこと……?
「ク・リ・ティ・カ・ル……クリティカル、だって……?」
「銀嶺のウォルフ、その能力は『アイテム縦読みバグ』。
あいつは持っているアイテムの頭文字を縦読みしたものを、現実に実行できる能力を持っているのさ」
「なんだそれは⁉ オレ達はそんなプログラミングはしていないぞ⁉」
ゲームデザイナーのゆうザイくんが吠える! 俺もそんなの初めて聞いた……
「だろうな……おそらく末端のデバッガー達が、デバックをやりやすくするために、密かに組んだプログラムだろう。
それを破棄し忘れたってところか……上層部のお前達が気づくはずもない」
「そんな……オレ達ですら知りえないプログラムが存在するなんて……」
八方神ですら知らないプログラムがあるってことか……
ただ、それすらも利用できる邪道十三人衆……そっちの方が脅威だ。
「くれてやれっ! ウォルフ、邪道流バグ技、『100%クリティカルスマッシャー』ッ!!」
黒羊将は、盾を支えている腕に、再度力を込める。
「くっ、我を守れ! 『アリエスホーンシールド』!」
ズガアアァァーーーーッ!
「グハアァッ⁉」
まるで稲妻が落ちたような閃光とともに、通常とは違った衝撃音!
ウォルフの一撃は、『アリエスホーンシールド』を突き抜けて、黒羊将に直接ダメージを与えた!
「まだまだ行くぞっ! 『クリティカルスマッシャー』!」
バシャァーーンッ!
「グフゥッ!」
「『クリティカルスマッシャー』!」
ドオオォォーーン!
「ガハァッ!」
「『クリティカルスマッシャー』!」
ズドシャアァーーッ!
「ゴホォッ!」
全ての攻撃が、全部クリティカルヒットになってる!
「バ、バカ……な……」
ガクッ……ドサァ!
黒い巨体の黒羊将が、巨大な盾とともに前のめりに倒れ、ボードの上には大量の血液が広がっていく。
「ああ、黒羊将が……」
「黒羊っ! ……そんな、黒羊までもがやられてしまうなんて……」
「これで四人目、フハハ……」
狛犬将・雷虎将VSリン
「リン! お願いやめて!」
「……」
コズミッククイーンの叫びが、虚しくこだまする。
リンは、持っていた薔薇の花に息を吹きかけると、周りは薔薇の銀河に包まれた……
「これは元々のリンの技、『ギャラクシアンローズ』か……」
薔薇の銀河の中には、七人のリンの幻影が立っている。
雷虎将が、手の爪を伸ばし、構える。
「くらえっ、『タイガークロー』!」
スカッ!
「ムッ……なるほど、香りによる幻覚の技か」
さすがは王道十二将、一発で見抜くとは……
「ならば……」
雷虎将の前に、巨大な魔法陣が展開……『風』『風』『風』『風』『地』『地』『地』『地』
「クルン・ハウマーネス・ヴァル・ゲーラ・イージ
ベイヴァン・リィンガル・クロスフォーン・アレンザルド
地上に大いなる闇がはびこりし時 裁きの雷を落とす 遥か天空の雷神よ
我とともに怒り 我とともに叫び 我とともに咆哮せよ! 天地召雷 天雷怒涛……
天雷属性オクタグラム、『アークボルト』ォッ!」
ガガガガガガガガガァッ!
幾重もの巨大な雷が、広範囲に渡って降り注ぐ!
七人いたリンの幻影が、雷に打たれて消えた!
……と思ったら、またすぐ現れる。
「ハハハ、幻影を消そうとしたんだろうが残念、外れたな」
「いや、当たっているぜ」
雷虎将が帯電してる⁉ 今の魔法はリンにじゃなくて、自分に当てたものだったのか!
「行くぞ、狛犬、レゾナンスだ!」
「ワン!」
雷虎将のやつ、狛犬将と連携するつもりか?
「やっと来たな……」
ゆうザイくんが、待っていたかのように話し出す。
「あの二人は元々、『琥珀将軍』という異名で名を馳せていた猛者だったのだ。
二人のレゾナンスアーツなら、例え相手が百人いようが、一瞬で全部切り裂いてくれる!」
「『星と光の水鏡』よ、亜空間接続!」
キュイイィィン……
狛犬将、鏡を亜空間と繋げたのか……? いったい何をするつもりなんだ?
「分裂ミラー!」
狛犬将が叫ぶと、『星と光の水鏡』が分裂して、ドンドン増えていく⁉
たくさんの『星と光の水鏡』が、リンを囲むように、空中に浮いている……何これ?
「これが『星と光の水鏡』の、もう一つの能力だ。
複数に分裂して、鏡と鏡を亜空間でつなげることができる」
「ほえ~そんな機能も備わっているのか」
「アドバンスドアーツ、『雷足』!」
バリバリバリバリ!
雷虎将がいきなり雷足を使い、そのまま鏡へ突撃!
ヒュンヒュンヒュン!
雷虎将が、たくさんの『星と光の水鏡』を、物凄いスピードで出たり入ったりしてる⁉
「こ、これは……?」
「どうだ、オレ様はこの鏡の中を縦横無尽に動いている間は、永遠にスピードはこのまま、魔力も消費しないんだぜぇ」
マジか⁉
「さあ、このオレ様と狛犬の連携技、とくと見よ! レゾナンスアーツ、『無限雷足』!」
バババババババババーーッ!
スゲー、雷足したまま、鏡と鏡を猛スピードで駆け巡っている!
あんな猛スピードで周りを駆け巡られたら、対処が追い付かない!
「ハッハー、いくぜぇ、『ライトニングタイガークロー』!」
バシィッ!
バシィッ!
バシィッ!
リンの幻影が、ドンドンやられていく……このまま行けばいずれ本体に……
「あんなのくらったら、リンが……」
リンの幻影が、残り一体になった!
「まずい、あれが本体だ!」
「もらったーーーー! 『ライトニングタイガークロー』!」
バリバリバリバリッ!
「リーーーーーーーーンッ!」
スカッ!
「な、なんだとっ⁉」
ズギャアァァァ!
雷虎将渾身の一撃は不発に終わり、リンの後ろにあった巨大な岩山を粉々に粉砕した。
「そんなバカな⁉ 間違いなく本体はあいつだったはず……なぜ攻撃が当たらない?」
リンは制止したまま、恐ろしく冷たい目でこちらを見ている……
「残念だったな、リンの能力は『当たり判定バグ』……お前が攻撃したのは、データの入っていないただのテクスチャーだ」
レイブンが、雷虎将を指さして笑っている。
「あ、『当たり判定バグ』だって⁉」
『当たり判定』って、格闘系ゲームとかでよく聞く、攻撃が命中する範囲を判定すること、だよな……?
「リンのやつは、自分の『当たり判定』を自由に変えることができる……お前の攻撃じゃ一生リンに攻撃を当てることはできねぇよ」
「くそっ……そんなのどうやって戦えばいいんだ?」
雷虎将が、攻撃手段がなくなって戸惑っている。
「さあ、次はこっちのターンだ!」
ザザザザザ……
リンの『ギャラクシアンローズ』が広がって、雷虎将の足元まで……
「邪道流バグ技、『ネビュラガーデン』!」
ヒュンヒュンヒュン、バシィッ!
「なにぃ⁉」
リンの『ギャラクシアンロース』から、たくさんの薔薇の棘が出てきて、雷虎将を縛り付けている!
「く、くそっ……動け、ない……」
「雷虎っ!」
リンはゆっくりと雷虎将の方へ歩いていき、手のひらで雷虎将の体に触れる。
「リン、やめてーーーー」
コズミッククイーンが叫ぶ……表情一つ変えないリンの目からは、一筋の涙が……
バシッバシッバシィッ!
「ゴバァッ⁉」
雷虎将の体中から、薔薇の棘が飛び出し、薔薇の花が咲き乱れる……
ガクッ……
雷虎将が、力なくうな垂れる。
「雷虎ッ……くっ……」
「これで、五人目だ……」
火の鳥将VSメルフィス
「『能力拡張バグ』だろうが、『当たり判定バグ』だろうが、この八芒星魔術の前では無意味よ。 さあ、私の炎に焼かれるがいい!」
「火の鳥、危険です、ここは慎重に……」
ネズミ君の忠告はスルー、火の鳥将は魔法の詠唱を始める……
火の鳥将の前に、魔法陣が展開……『炎』『炎』『炎』『炎』『炎』『炎』『炎』『炎』
「スーイット・バレンナウ・レッド・ベット・ガラドイット・ジルギス
ルーファル・ローガ・ファイン・ネイン・メラテレス・ボウ
この世のすべての炎を司る 炎の王よ 我にすべてを燃やす 煌炎を与えよ
我と一体となり 我が魔力を糧とし 我と共にあれ 今こそ告げる 我は炎の化身なり……」
「あれは、炎属性オクタグラムの『アークパイロ』! あの広範囲の魔法なら確かに、能力拡張も当たり判定も関係ない!」
「へっ……来たな、おいキャルロッテ、出番だ」
「……」
サモンロードの四天王、キャルロッテが杖を持って、魔力を集中している……?
「パワーソース……『マゼンタスプレッド』!」
パアアァァァ……
なんだ? 十三人衆が、赤く染まっていく……?
「これで終わりだ、炎属性オクタグラム、『アークパイロ』!」
火の鳥将が叫ぶと、巨大火球が敵めがけて落ちていく……
ズッズウウゥゥーーン……
ガガガガガガ……
ドドドドドド……
先ほどと同じく、物凄い熱風が吹き荒れ、岩盤が溶けて蒸発している。
煙が晴れると……無傷の十三人衆の姿が!
「なん……だと?」
驚く火の鳥将……いや、ネズミ君やゆうザイくんも、かなり衝撃を受けている……
もう当たり前かのように、レイブンが説明を始める。
「こいつがキャルロッテの能力……『色バグ』だ」
「『色バグ』?」
「キャルロッテはキャラの色を変えることができる。
キャラの色が変わると、その属性も変えることができるのさ」
「つまり今のは、十三人衆全員を赤色に塗って、炎属性を無効化したってことか?」
「ピンポーン正解! よくできました、ギャーハハハ」
「ふざけやがって……でもあの能力、属性攻撃には絶大だ……」
今の話を聞いていた火の鳥将が、レイブンを睨みつけながら話し出す。
「なるほど、だがそれは、属性の色がはっきりしている場合の話であろう?
属性の色がはっきりしていない魔法であれば、完全に防ぐことはできぬはずだ」
「属性の色がはっきりしていない魔法……?」
火の鳥将の前に、魔法陣が展開……『炎』『炎』『炎』『炎』『水』『水』『水』『水』
「ヴェルヴェット・オンクライン・ラギール・アルファルテス
サマン・キーマイン・ジジィ・ルーデンホーガ
物質を司る原子よ 我が手の中で爆ぜよ
全ての原子よ 崩壊し 励起し 全てを破壊する 大いなる爆裂を……」
炎と水の属性式……爆発属性のオクタグラムか、これならはっきりした色がわからない!
「赤色にして炎のダメージを防いだとしても、水のダメージは受ける……これならどうだ!」
魔力値999ポイントの火の鳥将が、魔力を集中する……なんか火の鳥将の周りだけ、空間が揺れて見える……?
キュウゥゥン……
凄まじいエネルギーが集束している……これはとんでもない爆発が起こるぞ。
「これが人類が放つことのできる、最大最強の魔法だ……受けてみよ、極爆属性オクタグラム、『アークバースト』!!」
「それを待っていました」
なっ、メルフィス?
メルフィスが、何か円盤のようなものを掲げている……あれは?
「先ほど密かに、ワタクシのバグ技で、コピーさせていただきました」
メルフィスの手には『三種の星神器』の一つ、どんな魔法も跳ね返すことができる『星と光の水鏡』が……⁉
「『星と光の水鏡』よ、魔法を跳ね返しなさい」
「なにーーーー⁉」
バキィーーーーンッ!
「『アークバースト』が、跳ね返ったーー⁉」
「ちなみに、跳ね返した魔法を、また跳ね返すことはできません……ゲームでは常識ですよね?」
キュウゥゥン……
「く、くそっ、なんてことだ……みんな、すまぬ……」
火の鳥将を中心に、十二将たちの周りが、閃光で真っ白に……やばいっ!
カアァァッ!
ドガアアアアァァァァッ
バキバキバキバキバキッ
ズズズズズズズン……
「火の鳥将……」
煙が晴れる……ボードには、前衛にいた火の鳥将、狛犬将が、無惨に横たわっている……みんな戦闘不能になっちまった。
さすがの王道十二将も、人類最強の攻撃魔法にはかなわない……
「そんな、人類最強の魔導士、火の鳥将まで……」
「……」
さすがのゆうザイくんも、絶句していて、言葉が出ない。
「六人目と七人目、これで半分だな……」
脱兎将・白蛇将VSリュオン・キャルロッテ
「まだだ、まだあきらめるわけにはいかない!」
ゆうザイくんの檄が飛ぶ!
ネズミ君が、気を取り直して指示を出す。
「大丈夫です、白蛇がいる限り、何度でも回復できます。
脱兎、白蛇の回復の時間を稼ぐために、相手を攪乱して下さい!」
「了解ピョン」
脱兎将は、トーントーンと、その場で小さくジャンプする。
「アドバンスドアーツ、『風足』!」
パパパパパパーーッ!
さすがは機動力最強、物凄いスピードで走り出し、残像が何体も出現した。
「なかなかのスピードだが、それぐらいなら……」
レイブンが魔法の詠唱を始める。
「疾風怒濤 汝風の如く舞い 風の如く斬る その身触れること能わず……風属性アナグラム、『エアリアルエンチャント』!」
自分に風属性のバフをかけた!
パパパパパパーーッ!
は、速い……あいつあんなに速かったのか!
「オレ様は元『羽人』で、しかも暗殺組織の元ヒットマン……さらにバグ化で数倍のスピードを身に着けた。 そこら辺のやつと一緒にするんじゃねぇぞ」
脱兎将が、残像を残しながら、レイブンを見定める。
「フム、ならばこれならどうかな? 王道流奥義、『風神脚』!」
シュンッ!
「脱兎将が……き、消えた⁉」
「どうだい? あまりのスピードで、肉眼で僕を捉えることは不可能ピョン」
空に脱兎将の声がコダマする……
目で追えないほどの超スピード……一体何キロ?
「なるほど、確かにこりゃあ無理だ……」
レイブンが諦めて止まってしまった。
「僕の『ラビットラピット』は、加速すれば加速するほど威力が増す……悪いけど、とどめを刺させてもらうピョン」
おお、やっと十三人衆よりも、優位に戦いを進めることができそうだぞ……
「仕方ないから止まってもらおうか、おい、リュオン」
レイブンが竜の民のリュオンを呼んだ。
「そうか、あいつリュオンの『グラビティフィールド』で、脱兎将の動きを止めるつもりだな」
また脱兎将の声がコダマする。
「無駄だピョン、僕は重力系の魔法も使うことができる……かけた重力と同じ量の浮力をかければ、相殺できるピョン」
おお、ヴァイガンが、リュオンと戦った時の戦法だな。
「フッ……」
レイブンが不気味に笑う……
ヒュイイィィン……
構わずリュオンが集中する。
「邪道流バグ技、『ヘビーグラフィックフィールド』!」
ウウゥゥゥン……
「な、何⁉」
なんだ? 脱兎将の動きが、明らかにおかしく……?
「バカな、浮力の魔法を使っても作用しないピョン……? これは重力の技ではないのか?」
「残念だったな、リュオンが使った『ヘビーグラフィックフィールド』は重力を操る技じゃない。わざとプログラムに負荷をかけて、処理を重くさせたのさ」
「プログラムにわざと負荷をかける技だって⁉」
昔の2Dのゲームではよくあったバグ……プログラムに負荷がかかりすぎて、処理が重くなる現象……
あれを再現する技ってことか。
「く、くそ、これはいったい、どうやれば抜け出せるんだ……?」
「お前じゃどうやってもそれから抜け出せねぇよ」
レイブンが脱兎将の前に立ち、見下す。
「脱兎将って名前なんだ、その機動力は『逃げる』ときに使うべきだったな……あばよ」
「ま、まて!」
「『ドラゴニックブレス』!」
バアアァァ!
「ぎゃああぁぁ……」
リュオンの『ドラゴニックブレス』を受けて、脱兎将は黒焦げに……
バタッ……
「脱兎までも、ですか……」
「大丈夫です、私にお任せください」
そうだ、まだこっちには全回復できる白蛇将がいた……白蛇将の『アークヒーリング』なら……」
「へへへ……」
またレイブンが笑っている……? 白蛇将をフリーにしているなんて、何かあるのか?
「ネフィレスト・ナ・シーン・トゥーン・ナイン・クリシリル・アレンケライド
聖火 聖水 聖王 聖神よ 聖なる地より 癒しの力を高めたまえ
傷つき 倒れしものに救いの手を この世に生きるすべてのものに 生きる力を 回復属性オクタグラム、『アークヒーリング』!」
パアアアァァァ……
「ぎゃあああぁぁっ!」
「ぐおおおぉぉぉっ!」
な、なんだ、どうしたんだ? 突然王道十二将の連中が苦しみだした……?
全快させたはずなのに、なんで……?
俺は王道十二将をアナライズしてみた。
「どういうことだ? 全員HPが『ゼロ』で戦闘不能に……」
「そんな⁉ 全回復する『アークヒーリング』をかけたのに?」
なんだ? いったい何が起こっているんだ……
「とにかく、戦闘不能になってしまった脱兎だけでも蘇生しましょう」
ネズミ君の提案、今はそれしかない。
「わかりました」
白蛇将は魔力を『オフィウクススタッフ』に集中していく……
「レイド・シルエル・レイラルト・カオン・ミール
パールフル・クオン・ガインキール・アナファスア
命司りし 命王ウォルドよ 我に反魂の儀の力 与えたまえ
倒れしものよ、清き魂よ 今一度現世へ 我が祈りを聞き届け給え……
蘇生属性オクタグラム、『リザレクション・ロア』!」
パアアアアアァァァ……
眩い光があたり一帯を包み、天使の羽根が空から舞い落ちてきた。
「がああああぁぁぁ……が、がはぁっ」
ガクッ……パアアァァ……
な、なんだ……蘇生させたはずの脱兎将が、消えていく……
「そんなバカな……脱兎が、消えてしまった……」
「なんだって⁉」
十二将たちは完全に死亡すると、その体は魔粒子に変換され帰化する……なんで脱兎将は死んでしまったんだ?
それを見ていたレイブンが、大笑いしながら話す。
「ギャーハッハッハ、残念残念、一人消滅しちまったなぁ、お前が殺したんだぜ?」
「そんな、私のせいで……?」
白蛇将が、ブルブル震えながら、涙を流す。
「レイブン、お前いったい何をしたんだ?」
「へへへ、教えてほしいか? いいぜ、教えてやるよ。
さっき鳥野郎の魔法を無効化したバグ技、『色バグ』を使って、王道十二将全員を『ゾンビ色』にしたのさ」
「ゾンビ色って……」
「そうだ、動く死体であるゾンビは、回復魔法を受けるとダメージに、蘇生魔法を受けると即死する……RPGではよくある仕様だよなぁ」
「それで脱兎将が……なんてこった」
「そんな、十二将の命を守るこの私が、あろうことか十二将の命を奪うなんて……」
力なく泣き崩れる白蛇将……
レイブンがここぞとばかりに、白蛇将を追い込む。
「お前のその真っ白な手は、血で真っ赤に染まっちまった……
もうお前に回復してもらおうなんて奴は存在しないよ、またミスって殺されたりしちゃかなわんからなぁ、ギャーハハハ」
「う、ううう、うああああ……」
「やめろレイブン!」
白蛇将は、よろよろと立ち上がり、ドラゴニックボードの淵へ歩いていく……
「白蛇将……?」
「私はもうダメです、回復することができないのなら、私の存在価値はありません。脱兎、申し訳ありませんでした、せめて私の命で償いを……」
「ま、まて、白蛇……」
ゆうザイくんの制止も聞かず、白蛇将は自らボードの外へ身投げして、消えた……
パアアァァァ……
「白蛇将ぉーーーー!」
「ギャーハハハ、傑作だなおい、勝手に死んでくれたぜ、ギャーハハハ」
「レイブン、お前……」
「これで九人目か……」
悟空将VSレイブン
「まだだ、まだオレがいるウキ」
悟空将が、三猿を連れて攻め込んで行く。
「気を付けてください悟空、相手の技はまだ底が知れません」
「大丈夫ウキ、この三猿の技が決まれば、相手を無力化できるウキ、今回の戦いは時間を稼ぐ目的もあるのだろ?」
「ハイ、ですが慎重に、相手もアナタの技を警戒しているはずです」
「ほう、来たか……さっきの戦いで『感覚変換』だかって技を使ったサルだな? お前はオレ様から、何を強奪されたい?」
悟空将がレイブンに……本当に大丈夫なのか?
「悟空、アナタの技なら、一対一であれば無敵です」
「まかせるウキ、脱兎、白蛇の仇もオレ達がとるウキ!」
悟空将が、三猿たちを鼓舞する……それに答え、三猿たちもやる気充分だ!
それを見ながら、レイブンも腕を組みながら問う。
「そういえばさっき、面白いことを言っていたな……
『魔獣の気持ちを読み、信頼関係を築き、百二十パーセントの力を引き出す』、とかなんとか……」
「そうだウキ、我らはお互いに『桃園の誓い』を結び、固い絆で繋がれた戦友なのだウキ!」
「『桃園の誓い』? なんだそりゃ?」
「『桃園の誓い』って、確か三国志演義のなかで登場する、義兄弟の契り……だったな」
「そうだ、古代中国の劉備、関羽、張飛が結んだ契り……生死を共にすると誓った、絆の儀だ。
【我ら同年同月同日に生まれることを得ずとも、同年同月同日に死せん事を願わん】
そう言ってお互い誓いを立て、ともに死ぬまで一緒に戦うという約束のことだな」
ゆうザイくん、意外にも歴史好きだったのか……
「へぇ~じゃあもし、その魔獣に裏切られたら、どうするんだ?」
「そんなことはない、絶対に」
「へっ、そうかい……」
レイブンのあの不気味な笑み……絶対に良からぬことを考えているときの顔だ。
「オレが強奪ことができるのは、モノだけじゃねぇ……
生き物でも、概念でも、なんでも強奪ことができる、こんな風になぁ!」
レイブンは構えると、三猿のほうに手を伸ばした!
「邪道流バグ技、『強奪』!」
ガカァッ!
まるで時が止まったかのように、周りは静まり返る……
「なんだ? 何もないウキ……?」
悟空将の三猿たちが、ゆっくりと悟空将のもとを離れ、レイブンのもとへ……
「お、おい、どうしたんだお前たち?」
悟空将の三猿は、そのままレイブンを守るように、レイブンの前へ。
「まさか、お前……」
「へへへ……言ったはずだ、オレ様はなんでも強奪ことができるってなぁ!」
あいつ、悟空将の三猿を強奪しやがったのか⁉
「そんなバカなウキ、オレとあの三猿の絆は、そんな簡単に……」
「見ざる、言わざる、聞かざる、バトルモードだ」
「ウキウキ……ウガアアアァァァ!」
三猿は巨大な猿の魔獣に!
「よせウキ、お前たちオレがわからないのか?」
三猿たちの目は戦闘色で真っ赤に! 完全に理性を失っている。
「ウガガガガーーーーッ!」
三猿たちの攻撃!
バキッ!
思わず悟空将は、三猿たちの攻撃を避け、棍棒を見ざるにヒットさせてしまう。
「しまっ……」
「お~い、三猿との絆はどうしたんだぁ? 死ぬときは一緒にじゃなかったのかよぉ?」
「くっ、今のは、不可抗力ウキで……」
「ギャーハハハ、いいんだよいいんだよ、自分の命が危険なら、反撃するのは当たり前だ、たとえそれが『桃園の誓い』をした仲でもなぁ! ギャーハハハ」
悟空将は、悔しさでその場に座り込む……もう反撃するのを諦めてしまったようだ。
「悟空、立って下さい! そのままではやられてしまう!」
「……」
「悟空将……」
ネズミ君の叫びも虚しく、悟空将は動かない……
「ギャーハッハッハ、『感覚変換』だ!」
ピキィーーーーン!
「ぐわあぁぁーー」
あああ、三猿の技が、悟空将に……
「目の前から三猿の鳴き声が、後ろからは窮鼠の声が……」
悟空将が、耳から聞こえる情報を、言葉にしている、これは……
「ハッハー、どうやら『味覚』と『聴覚』が入れ替わったみたいだな。
どうだ、いつも相手にくらわせていた技を、自分がくらった感想は?」
「う、ううぅ……下から桂馬竜の翼の羽ばたきが……」
悟空将は、話しながら涙を流す……
「ギャーハハハ、この世で信じていいのは自分自身だけだ、それがこの世の摂理なんだよぉ!」
レイブンの野郎……
「じゃあお前にはこの場から退場してもらおう……あばよ」
「ま、まてレイブン!」
「邪道流バグ技、『ライフミューティレーション』!」
ガカァッ!
レイブンがその場でデスサイズを振ると、悟空将の『命』を刈り取った!
「……!」
バタッ……パアアァァァ……
「お前の『命』、強奪させてもらったぜ、ハハハ、ハーハハハ……」
悟空将……
「一時間十二分経過、残り八時間四十八分です」
「これで十人目……残り二人だ」
☆今回の成果
牛頭将 『スカイラブハンマー』
牛頭将・馬頭将 レゾナンスアーツ『ゴズメズスクリュードライバー』
火の鳥将 オクタグラム『アークバースト』
雷虎将 オクタグラム『アークボルト』
雷虎将・狛犬将 『無限雷足』
脱兎将 『風神脚』
白蛇将 『リザレクションロア』




