第六十六話 ドラゴニックボード
アナタはアイドルに『苦笑い』したことがありますか? ……俺はある。
レイブンとメルフィスの後ろには、魔界の魔角族皇子シャルドの姿が……
「シャルド皇子!」
「……」
無表情のシャルド……ミコトの声にも全く反応しない。
「レイブンとメルフィスは話せるのに、なんで他のやつらは話せないんだ……?」
俺が呟くと、レイブンが反応した。
「お前に恨みを持っているオレたちは、バグ様に、意識も発言も、自由にしてもらっている」
「……」
メルフィスは、手を後ろで組み、無言のまま……
「レイブン、お前が俺に恨みを持っているというのはわかる……
でもメルフィス、お前は俺をかばって死んでしまったくらいだったのに、いったいどうしてお前まで……」
「フゥ……」
メルフィスは一つ、深いため息をついたあと、静かに話し出す。
「ギガンティックマスター、ワタクシはアナタにはガッカリしているのです」
「メルフィス……」
「魔界を平和にしてほしくてアナタを助けたのに、とんだ骨折り損でしたね」
メルフィスは、やれやれといった感じで俺を蔑んだ目で見下す。
「言ったはずです、今の魔界を変えるには、『正しき心』と『圧倒的な力』が必要だと。アナタのその圧倒的な力で、魔界を強制的に秩序ある世界にしてほしかったのに……」
周りのメンバー達が、メルフィスに反論しようとしたが、俺がそれを止めた。
「あれでは、ワタクシが生きていた時と、ほとんど何も変わっていません。もう一度言います、アナタにはガッカリだ」
「そんなことは……」
「ですが、バグ様は違う。
バグ様はこの腐れ切った世界を一度破壊してから、全く新しい、理想通りの世界を作って下さる……やはり、一度腐った果実は、二度と元に戻ることはないのです」
「くっ……」
「へっ、まあそういうわけだ」
そう言いながら、レイブンは巨大なデスサイズを構える。
「せっかく会えたんだ、オレ達と少し遊んでくれよ」
「ギガっち、バグはいないが、邪道十三人衆を捕縛できるチャンスだ、作戦通りいこう」(小声)
「わ、わかった」(小声)
ゆうザイくんが、前に出て叫ぶ。
「遊ぶのは構わん、だが相手をするのは我々の切り札、『王道十二将』だ」
「ほう、出すのか、ここで……いいぜ」
「ギガっち、悪いがお前たちの出番はないかもしれない、いくぞ、『王道十二将』召喚!」
パアアアァァァ……
ゆうザイくんの後ろの魔法陣から、十二人の王道十二将が出現した。
「おおお? なんだなんだこいつら……?」
「とんでもない数値……いったい何者なの?」
そうか、ドラゴニックキングとコズミッククイーンの二人は初めてか。
「こいつらなんで得意な属性が二つついているんだ?」
「彼らは全員、以前は『災いの民』と呼ばれていた『オッドアイ』だ」
「『オッドアイ』⁉ 十二将全員が⁉」
「そうだ、さらなるパワーアップのため、オレがそう設定した」
なんてこった……うちのメンバーの『オッドアイズ』と同じ『オッドアイ』。
ずっと『災いの民』なんて呼ばれて迫害されてきたけど、その実力は折り紙付きだ。
「出たな、王道十二将……
丁度いい、オレ様たちとゲームしようぜ、『ドラゴニックボード』で遊んでくれよ」
「『ドラゴニックボード』?」
その単語に、ゆうザイくんが反応した。
「お前たち、ドラゴニックボードの存在までも知っているのか?」
「へへへ、当然だろ? バグ様には、この世界の元開発者メンバー、ナマズエが協力しているんだからな」
確かに、ナマズエなら、神魔たちが知っていることは、当然知っているとみていいだろう。
「あれはギルギルのストーリークエストの、次の第三章で登場する予定のサブイベントだ。
今の段階では、攻略どころか情報すら開示していない……さてはギルギルのアーカイブを盗み見たな?」
「へへへ、さあ、どうかな?」
「おいゆうザイくん、ドラゴニックボードって何なんだ?」
俺も初めて聞くイベントだ。
「『ドラゴニックボード』とは、
『チェスと将棋で戦ったら、どちらの方が強いのか』をコンセプトにしたミニゲームのコンテンツで、チェスと将棋の駒に似せたドラゴンに乗って、チェスと将棋のルールで戦うシミュレーションゲームなんだ」
「シミュレーションゲーム?」
アイカの頭に、「?」が浮かぶ。
【シミュレーションゲーム】……
元々は戦争を題材としたボードゲームで、現実世界の戦時中にも、『机上作戦演習』として活用されていた。
一般的には、マス目の入ったボードの上を、ターン制で交互に攻撃する。
ロールプレイングゲームより、さらにより実践に近いゲームとなる。
「チェスや将棋は、もっとも古いシミュレーションゲームと言われているんだ」
ゆうザイくんが、タブレットのようなものを取り出して説明しだした。
「それを模したゲームで戦うと、普通とはどう違うのですか?」
「ロールプレイングゲームのように、ターン制で、素早いもの順に攻撃していくのではなく、マス目の地形も考慮して、相手との距離や、移動なども加味した、高度な戦術・戦略が必要となるゲームなんだ」
「私、そういうの苦手かもです……」
アイカは早々にリタイアか……
「場合によっては、一人で複数の攻撃を受けることになったり、配置によっては周りを囲まれ、一切逃げられなくなることもある」
「普通に戦うより、相当危険ですね」
「基本的には相手の『キング』もしくは『王将』を倒した方が勝利となる」
「そうなんですね? じゃあ相手のキングに向かって、一直線に移動して一発で倒せば、被害もなく終了できますね」
俺はアイカの肩をポンと叩き、苦笑い。
「?」
そんな簡単にいけば、苦労しないんだけどなぁ……
「オレたち『邪道十三人衆』がチェスのドラゴン、お前たち『王道十二将』は将棋のドラゴンに乗れ」
「くっ、勝手に話を進めるな、なんでお前が仕切っているんだよ」
「まてギガっち、時間を稼げるのはこっちも好都合だ。
しかも向こうの三人の邪道十三人衆を捕獲できれば、この後の展開が俄然有利になる」(小声)
「でも、万が一やられちゃったら、こっちの戦力ダウンになるぜ? いいのか?」(小声)
「いや、それはない」(小声)
スゲー自信だな……
「オレ様たちに勝てたら、お前たちに、なんでも好きなことを一つ教えてやろう」
「なにっ?」
「面白い、その言葉、二言はないな?」
ムムム……そうなると少し話は変わってくる。こんなチャンスはもうないかも……
「駒の数が足りないが、オレ達はNPCを召喚して、補充することができる、お前たちはどうするつもりだ?」
ゆうザイくんが、ゲーム仕様の心配をしている。
「フッ……心配はいらん。
ここはギルギル第一章のラスボス、『毒帝ナマズエ』の『劇薬の洞窟』……
この沼地には、討伐しに来た、たくさんの冒険者や騎士たちの死体が沈んでいるんだ。さあ出てこい、現世を彷徨う亡霊ども!」
ザザザザザァァ……
毒の沼地から現れたのは、かっこいい鎧を着た男と、その四天王……
毒のせいなのか、顔や体が半分以上腐れ落ちていて、よくわからない。
ゆうザイくんが、ビックリした顔で、そのパーティメンバーを見る……
「まさか……この五人、「ライバルパーティ』か?」
「『ライバル』……? ライバルって、このギルギルを始めたときに初めて出会う、五人組のNPCのこと?」
「そうだ、あの鎧、間違いない、
勇者とその四天王、重騎士とマスターシーフ、マスターモンク、ハイプリーストの四人だ」
【ライバルパーティ】……
このギルギルを始めたときに、いきなり話しかけてきて、その後もいろんなイベントで関わることになるNPC。
最初のバトルチュートリアルの相手だったり、最後にはボスの毒帝戦で、共闘したりもした。
一応魔王を倒す自称『勇者』という設定で、プレイヤーと一緒にレベルアップもする。
「この『劇薬の洞窟』でナマズエと戦って敗れ、そのまま毒の沼地に放置されていたのか……?」
「そうだ、そしてそのままバグ様が『バグ化』させた。ゲーム内での設定より、数倍強くなっているぜ」
……ライバルパーティといえば、最終的にはプレイヤーキャラと、さほど変わらないレベルまで成長するはず。
結構、いやかなり強敵なんじゃないのか?
他にも、毒の沼地から鎧を着たたくさんの戦士風の男たちが、ドラゴンに乗り、配置につく。
「こいつらもこの毒の沼地で、命を落としたやつらだ。
オレ様とメルフィス、魔界皇子のシャルドとこのライバルパーティが、お前たちの相手だ」
レイブンが右手を挙げ、毒の沼地に向かって叫ぶ。
「いでよ、『ドラゴニックボード』!」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
毒の沼地の中から、巨大なマス目の入ったボードがせり上がってきた……
ドラゴンに乗ったレイブンたちと、王道十二将たちは、配置につく。
「いいか、ルールは簡単だ。
①相手のキングか王将を倒せば勝利
②戦闘中の者が、ボードの外に吹っ飛ばされると死亡
③戦闘中の駒以外の者が攻撃したり、かばったりすることはできない。
ただ装備を渡したりバフをかけたりなどのサポートは可能。
(一ターン待てば、近くにいる味方とレゾナンスアーツは可能)
④最初は独自のルールはなし、ゲーム終了後、勝った方が次のゲームで独自のルールを追加できる
独自のルールってのは、チェスや将棋独自のルールのことだ。
チェスなら『キャスリング』『プロモーション』『アンパサン』など、
将棋なら『成り金』や『持ち駒』などだ、時間制限も今回はなしだ」
そんなに難しいルールではない……ただ、場外に吹っ飛ばされると死亡っていうのは厄介かも。
「そっちが勝ったら、約束通りお前たちの知りたいことを教えてやる。
こっちが勝ったら、ギガンティックマスターの身柄を引き渡してもらおう」
「そんな! そんなの不公平です!」
アイカが割って入る!
「嫌ならやめてもいいんだぜ……」
「アイカ、俺は大丈夫だ、心配しなくていい」
「でも……」
ゆうザイくんも割って入ってきた。
「大丈夫だアイカ、オレ達は絶対に負けない、保証する」
「話は終わったか? じゃあ配置につけ」
レイブン側の配置
ルークドラゴン「重騎士」 Pドラゴン「戦士」
ナイトドラゴン「Мシーフ」 Pドラゴン「戦士」
ビショップドラゴン「勇者」 Pドラゴン「戦士」
キングドラゴン「レイブン」 Pドラゴン「戦士」
クイーンドラゴン「メルフィス」 Pドラゴン「戦士」
ビショップドラゴン「シャルド」 Pドラゴン「戦士」
ナイトドラゴン「Hプリースト」 Pドラゴン「戦士」
ルークドラゴン「Мモンク」 Pドラゴン「戦士」
王道十二将側の配置
歩兵竜「NPC」 香車竜「馬頭将」
歩兵竜「NPC」飛車竜「龍極将」 桂馬竜「悟空将」
歩兵竜「NPC」 銀将竜「狛犬将」
歩兵竜「NPC」 金将竜「猪牙将」
歩兵竜「脱兎将」 王将竜「窮鼠将」
歩兵竜「NPC」 金将竜「黒羊将」
歩兵竜「NPC」 銀将竜「白蛇将」
歩兵竜「NPC」角行竜「火の鳥将」桂馬竜「雷虎将」
歩兵竜「NPC」 香車竜「牛頭将」
「よしいくぜ! バトルスタートだ!」
キングドラゴンに乗ったレイブンが、指示を出す。
「よーし、ポーンドラゴン、前へ進め!」
王将竜に乗った窮鼠将が、NPCに指示を出す。
「歩兵竜、7の六へ」
始まっちまった……この戦い、いったいどうなっちまうんだろう。
「ってか、あのネズミ君が『王将』なのか?
悪いけど、以前アナライズしたとき、あのネズミ君だけステータスが大したことなかったけど……」
「それは問題ない、彼は王道十二将で一番の『知将』だからな」
「王道十二将いちの知将?」
「彼には戦闘能力だけでは測れない、知略がある、大丈夫だ」
「雷虎、7の七へ」
「ナイト、6のcだ」
「歩兵竜、2の六へ移動です」
「ポーン、4のdに進め」
「黒羊、5の八へ」
「マスターモンク、4のaだ」
ネズミ君とレイブンの指示で、駒たちは進軍していく。
どうやらネズミ君は、まず防御を固めて、相手の出方を伺う作戦のようだ。
反対にレイブンのほうは、全員で一点突破を目論んでいるらしい……攻撃手段を集中している。
「猪牙、黒羊、前へ」
「防御はあの二人だけ? たった二人で大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、王道十二将の最強の盾のあの二人なら、敵のどんな攻撃も通用しない。万が一のため、後ろに最強の回復役の白蛇将も控えている」
あの真っ白な衣を纏った女性……白蛇将って確か、八芒星魔術の『アークヒーリング』を使えるキャラか。
「ハハハ、まずは小手調べだ、全員であのイノシシとヒツジ野郎をぶっ倒せ!」
うおお、あの二人に、勇者、マスターモンク、重騎士にほかの戦士たちも攻撃してきた!
ライバルパーティは全員、レベル百五十を超えてるんだぞ、ヤバいんじゃないのか?
「剛腕薪割り斬!」
「パイロアックス!」
「烈剣剛剣大斬剣!」
ズバババッ!
「ハッハー、どうだイノシシ野郎め!」
「フム、そんな攻撃ではオレのHPの百分の一も削れていないぞ」
「なにっ⁉」
猪牙将は微動だにせず、攻撃された箇所をポンポンと払った。
「スゲーな、傷一つついてないぞ」
「猪牙将は、全魔獣の中で一番高いHPを持つ、『プラチナムオーク』をベースとして作った、最強のオークだ。
このギルギルの世界では、一撃で9999ダメージを超える武器は存在しないから、物理上彼を一撃で倒すことは不可能だ」
「奥義、『錬気 宝竜百裂掌打』! アタタタタターー!」
「奥義、『螺旋槍破・密集連突』!」
「フッ……アサルトモード、『アリエスホーンシールド』!」
ガキィーーーンッ!
ガラガラバラバラ……
スゲェ、敵の武器が砕けちゃった!
あのヒツジ顔の十二将が持ってる盾、あれは『牡羊座のゾディアックビースト』か……?
「私の『アリエスホーンシールド』は、このギルギル内で最強の防御力を誇る……たとえ伝説級の武器で攻撃したとしても、私にダメージを与えることはできん」
「マジか……相手の攻撃、まあまあの威力だったはずだぞ……」
ゆうザイくんは、当然といった顔で今の戦いを分析している。
「ああ、おまけに王道十二将たちは全員、『オリハルコンの鎧』を標準装備している……あの二人には、ただダメージを与えることですら、容易なことではない」
「『オリハルコンの鎧』だって⁉」
ひとかけら見つけるだけでも一苦労なのに、全員に鎧装備って……
「くそっ、なら魔法で攻撃だ、シャルド、勇者、いけっ!」
レイブンのやつ、さすがに焦ってきたな……
シャルドの前に魔法陣が展開……『水』『水』『地』『地』『闇』『闇』
「パラル・エル・ドゥーン・ゲイズ・ハリアルサイド・ズー・ヴァール
深く 深く 深淵の底で眠るものよ 今こそ目覚めの時
その御手で掴みし者を 永遠の事象の彼方へ……」
ネズミ君が、詠唱している間に指示を出す。
「狛犬、お願いします」
「あいよ!」
狛犬将は、シャルドの前に立つと、首から下げていた大きな『鏡』を構えた。
あの鏡ひょっとして……
「深淵属性 六芒星魔術、『デプスゾーン』!」
「『星と光の水鏡』よ、魔法を跳ね返せ!」
バキィーーーンッ!
「シャルドの魔法を、跳ね返したーー⁉」
ドガアァァァーーー!!
スドドドドド……
「うん、ワンダフル!」
「スゲー、シャルドの最強の六芒星魔術だったのに……
あれはまさしく、俺がイチヒコからもらった『星と命の勾玉』と同じ『三種の星神器』の一つ、『星と光の水鏡』……
ギルギル内全ての魔法を跳ね返すことができる効果を持つ、星の神の力を宿した、伝説級のマジックアイテムじゃないか」
「そう、狛犬将にはその『星と光の水鏡』を持たせてある……彼に魔法で攻撃をするのは、まさに自殺行為に等しい」
「スゲェ……『三種の星神器』まで持っているのか……」
シャルド吹っ飛んじゃったけど、まさか場外に落ちてないよな……
「あの勇者ってやつをやればいいんだなぁ?」
虎顔の『雷虎将』が、凄いスピードで駆けながら、空中に『対打撃結界』を張っている。
「アドバンスドアーツ、『雷足』!」
バリバリバリバリッ!
「くらえっ! 『タイガークロー』!」
ザシュッ!
速いっ……アイカよりも素早い動きで攻撃、勇者が『対斬撃結界』を張っていなかったら、一撃で決まっていた!
「くっそ、今度はこっちの番だ、お返ししてやれ、行け勇者!」
勇者が詠唱を唱えている、これは……
勇者の前に、巨大な魔法陣が展開……『風』『風』『風』『地』『地』『地』
「バーブーレン・ニーダ・エス・ガダル・ガーダン・オーデ
キリル・デスト・ベアンナルイル
闇夜を切り裂く雷光よ 暗黒の大地に立ち上る稲光よ
この地上に 万の雷よ降り注げ 霹靂不動 悪鬼滅殺……
万雷属性ヘキサグラム、『テラボルト』!」
「『テラボルト』⁉ あの勇者、ヘキサグラムを使えるのか⁉」
ズガガガガガガガガガァ!
天より、幾重もの雷が降り注ぐ!
「あああ……雷虎将が」
なぜか十二将のメンバーは微動だにしない……
煙の中で、雷虎将が放電しながら立っている⁉
「へへへ……オレ様は『帯電体質』でな、オレ様に雷属性の魔法は、魔力供給に等しいんだぜぇ」
なっ……あいつ雷の民ライゴウと同じで、雷の力を魔力に転換できるのか⁉
「この状態のときのみ使える、オレ様の最高の技を見せてやるぜぇ……王道流奥義、『ライトニングタイガークロー』!」
バリバリバリバリバリバリッ!!
スゲェ、雷を纏いながらの虎の爪攻撃!
バリーンッ バリーンッ!
メルフィスや勇者が張った『対斬撃結界』を、軽々と切り裂いていく!
「そんな薄皮一枚じゃ、オレ様の攻撃は止められないぜぇ!」
真っ赤な炎の羽根を持つ、鳥顔の『火の鳥将』が、一気に間合いを詰めてきた!
「魔法で攻撃されたから、こちらも魔法でお返ししよう、いいよな? 窮鼠」
「まあいいでしょう、許可します」
火の鳥将は、ドラゴンの上に立ちながら、魔力を集中させる。
火の鳥将の前に、魔法陣が展開……『炎』『炎』『炎』『炎』『炎』『炎』『炎』『炎』
「嘘だろっ⁉ 属性が八つ……『八芒星魔術』か⁉」
「スーイット・バレンナウ・レッド・ベット・ガラドイット・ジルギス
ルーファル・ローガ・ファイン・ネイン・メラテレス・ボウ
この世のすべての炎を司る 炎の王よ 我にすべてを燃やす 煌炎を与えよ
我と一体となり 我が魔力を糧とし 我と共にあれ 今こそ告げる 我は炎の化身なり……
炎属性オクタグラム、『アークパイロ』!」
火の鳥将の上には、俺のヘキサゴンフレアをも上回る大きさの巨大火球が浮かんでいる!
ゴゴゴゴゴゴゴ……
ゆっくりと、その巨大火球は敵の方へ落ちていく……
「うわああー、逃げろー」
逃げるって言ったって、あんなのどこに逃げたって……
ズッズウウゥゥーーン……
ガガガガガガ……
ドドドドドド……
周りは物凄い熱風が吹き荒れ、岩盤が溶けて蒸発している……⁉
「物凄い熱量だ……俺のヘキサゴンフレアも遥かに凌駕している」
「炎系の最強魔法であるこの『アークパイロ』の中心焦点温度は、ゆうに五万度を超える」
「ご、五万度っ⁉」
そりゃ岩盤も溶けて蒸発するわな……
【八芒星魔術】……
人類が使うことのできる最上位の魔法と言われている。
『アーク』が頭につく魔法は、既存の魔法の超強化版といったところ。
「こんな魔法を連発されたら、城どころか、本当に島ごと消し飛ばせるかもしれない……」
「あんな魔法を受けたら、いくらシャルドさんやメルフィスさんでも、ひとたまりもないんじゃ……」
アイカの言う通りだ。
煙が晴れると、中に光が見える……
「マジか、メルフィスと勇者とハイプリーストの三人で、超巨大な『対魔力結界』を何枚も張って、なんとか防いでいる!」
「くっ……今の結界で、三人ともほとんどの魔力を使い切ってしまいました、恐るべき魔法です」
メルフィスたち、どうやらダメージも受けているようだ。
とりあえず無事でよかったけど、あんな魔法もう耐えきれないよな……
奥の方から、ドラゴンに乗ったシャルドも戻ってきた。
よかった、とりあえず無事だったんだな……
あいつに何かあったら、魔界の魔角族王に申し開きできない。
「さて、ではそろそろこちらからもキングを狙いに行きましょうか……牛頭、馬頭、前へ」
「待ってたぜモォー」
「足がなるぜ、ヒヒーン!」
牛頭将と馬頭将が、敵のウォリアー達を、ポーンドラゴンごと吹き飛ばしながら前進してるー?
通常攻撃でこの威力、さすが腕力・脚力最強コンビ!
「重騎士、『金剛亀盾』で防御だ!」
マジかあいつ、サモンロードの四天王、ガンドルフと同じ盾を……
敵の重騎士は、巨大な『金剛亀盾』を、自分の前に立てる。
ガシンッガシンッ!
自分どころか、後ろのウォリアー達もすっぽり覆うほどの巨大さだ!
「ンモォーーー! アサルトモード、『タウラスハンマー』!!」
牛頭将の両手に、金色の巨大なハンマーが!
アサルトモードってことは、あれも『ゾディアックビースト』か!
「あれは『牡牛座のゾディアックビースト』、『タウラスハンマー』。
ギルギル内最強の攻撃力を誇り、牛頭将の腕力も合わされば、通常攻撃で城も落とせる」
おいおい、さすがにそれはやりすぎじゃないのか……?
「モーくらえっ! アドバンスドアーツ、『烈震衝』!」
ドガアーーーンッ! ビキビキビキビキ!
「うわああっ!」
牛頭将のアドバンスドアーツで、さすがの『金剛亀盾』もコナゴナに砕け、そのまま地面にも巨大なクレーターを作り、全員その穴に落ちていった。
「スゲェな……これは城を落とせるってのもわかる……」
穴の底で、まだ重騎士とウォリアー達が動いている。
「とどめはボクに任せといて、ヒヒン!」
馬頭将が、物凄いスピードで重騎士たちに襲い掛かる!
パカラッパカラッパカラッ!
「はああー、『バーチカルヒール』!」
超高度から直角に振り下ろされた、『かかと落とし』だ!
ドギャッ!
「ぐはぁっ!」
「アーンド、アドバンスドアーツ、『メズ・ギャロップ』!」
ドガガガガガガッ!
「ギャアーーー!」
うちのメンバーのモモの技、『モモ・ギャロップ』と同じで、回転しながらの連続後ろ回し蹴り!
残ったウォリアー達も、全員吹っ飛ばした!
「スゲェ……」
俺、さっきから『スゲェ』しか言ってないかも……
「牛頭、馬頭、いったん下がりましょう。
脱兎、敵を攪乱してください、その間に白蛇、猪牙と黒羊を回復です」
「了解モォー」
「了解ヒヒン」
「了解ピョン」
「お任せください」
「あのネズミ君スゲェな……王道十二将一の知将ってのも頷ける」
これまでの動きを見て、俺は普通に感心してしまった。
「窮鼠将は、将棋なら五百手先を読むことが可能だ。
以前も将棋コンピューターと対戦したが、彼が負けたところは見たことがない」
腕を組みながら、ゆうザイくんが、戦いを俯瞰してみている。
「そんなに凄いのか……
でも以前アナライズしたときは視力が『10・0』だったけど、なんであんなでっかいメガネをつけているんだ?」
「それはすぐにわかる」
「アドバンスドアーツ、『風足』!」
パパパパパパパーーーッ!
脱兎将が、風を纏いながら、凄まじいスピードで敵を攪乱する!
「は、速すぎて、目が追い付かない!」
「シミュレーションゲームなので、マス目を超えることはできませんが、自分と敵の周りを動いて、攪乱することはできます」
ネズミ君、冷静だなぁ……
その隙に白蛇将が、猪牙将と黒羊将を回復している。
「ネフィレスト・ナ・シーン・トゥーン・ナイン・クリシリル・アレンケライド
聖火 聖水 聖王 聖神よ 聖なる地より 癒しの力を高めたまえ
傷つき 倒れしものに救いの手を この世に生きるすべてのものに 生きる力を
回復属性オクタグラム、『アークヒーリング』!」
パアアアァァァ……
スゲェ、王道十二将全員を、一気に全回復しちまった!
「例えHPが残り1であっても、私が全回復してみせます」
白蛇将を見たオウカが、唖然としながら話す。
「凄い……あんな魔法があったら、もう無敵じゃないですか」
地上最強の回復魔法、『アークヒーリング』……
人間が使う回復魔法の中で、最上位の魔法だ。
パーティメンバーであれば、どんなに離れていても、たとえHPが1であっても、全員全回復する。
あまりにも凄すぎて、対人戦では、公式が使用禁止にするほど。
「白蛇将の持っている杖は、『蛇使い座のゾディアックビースト』、オフィウクススタッフだ」
ゆうザイくんの説明……確かに、杖には白い二匹の蛇の意匠が施されている。
「蛇使い座? それも『ゾディアックビースト』なのか?
ゾディアックビーストって、黄道十二星座の十二体だけじゃなかったの?」
「隠しアイテムとして作った超レアアイテムだ。そう簡単には手に入らない、幻のアイテムにするつもりだった」
このゆうザイくん、意外に性格悪いなぁ……
「あの杖を装備するだけで、最大МPが上がり、癒力も上がる……
しかも二時間以内に死亡した者を、一度だけ蘇生させることができる『リザレクション・ロア』を使うことができる」
「蘇生⁉ 死んでも生き返ることができるのか!」
「そんな魔法、聞いたことありません!」
オウカがちょっと怒ってる……? あー、いやうらやましいのか?
「くらえっ! 王道流奥義、『ラビットラピット』!」
おお! たくさんの残像の中から、一人だけ本体が敵のマスターシーフに襲い掛かってる!
「脱兎、待ってください!」
「えっ?」
キキーーッ!
「そのマスターシーフは『暗器』を持っています、攻撃すれば、カウンターで状態異常を付与されていたでしょう」
「暗器?」
「くっ、くそっ……なぜバレた?」
『暗器』……攻撃を受けた際に、確実に相手にカウンターと状態異常を付与できるレアアイテムだ。
ってか、ネズミ君、あのマスターシーフが暗器を持っているって、なんでわかったんだ?
「あのメガネは『賢者のメガネ』……
あのメガネで見ると、相手の装備や持っているアイテムを覗き見ることができるんだ」
相手のアイテムを覗き見るって……昔の麻雀ゲームとかではよくあったけどな。
「それであのマスターシーフが持っていた暗器を見抜いたのか」
「くそっ、反則ギリギリだが仕方ない、シャルド、やれっ!」
レイブンのやつ、何かたくらんでいるな?
「アドバンスドアーツ、『影足』!」
「なっ、『影足』だって⁉ まさか一気に王将のネズミ君を狙って⁉」
シャルドは自分の影に潜り、亜空間を繋げてネズミ君の影から飛び出した!
「くらえっ、『トリプルマーダー』!」
「危ない、ネズミ君!」
「心配ありません」
ネズミ君は、まるで分っていたかのように、懐から天秤の形をしたアイテムを取り出す。
「『天秤座のゾディアックビースト』……タイムスロウ!」
キュゥーン……ピタッ!
「アナタの周りの限定空間の時間を千分の一にしました……思考速度はそのままだから、話したり、考えたりはできるはずです」
「あ、あれは、ゆうザイくんが持っていた、戦闘の時間を操作できる『天秤座のゾディアックビースト」!」
「オレがもっていたものを、窮鼠将に貸し与えた」
そんなの持っていたら、そりゃ無敵だ……
ゆうザイくんが、余裕顔で見ているのも頷ける。
「そろそろ我の出番もほしいウキ」
猿顔の十二将、確か悟空将って言ってたやつ……
「悟空将……いいでしょう、そのまま2の五へ移動、敵のハイプリーストを攻撃です」
悟空将……手には長い棍棒を持った、まさに『西遊記』に出てくる『孫悟空』にそっくりだ。
肩や足元に、三匹の子猿がいるのはいったい……?
「彼は悟空将、このギルギル最強のビーストテイマーだ」
「ビーストテイマー……?」
ビーストテイマーって、うちのメンバーのアカネや、暗殺組織の闇のビーストテイマー、ハイエナのように、魔獣を操って戦うクラスか?
じゃあ、あの三匹の子猿が魔獣ってこと? そんなに強そうには見えないけど……
それぞれ目や耳、口を手で押さえている、なんかこの猿、見覚えがあるような、ないような……?
あ、わかった、日光東照宮の『見ざる言わざる聞かざる』だ!
その三猿が、悟空将を守るように、前に出てきた。
「魔獣の気持ちを読み、信頼関係を築き、百二十パーセントの力を引き出している、我が魔獣の力を見せてやるウキ」
「あの人、私と同じことを言っているとよ……
魔獣たちも、あの人のことを完全に信頼しているみたいとよ」
アカネが感心している……そうなのか? 確かにハイエナのやつの時みたいな、仕方なく従っている感みたいなのはないけど……
「今更そんな小さい猿ごときで、ウォリアーに守られし、このハイプリーストを倒せるとでも?」
「フッ……こいつらを甘く見ていると、酷い目にあうウキ」
悟空将が集中しだした……子猿たちに魔力を送っているのか?
「お前たち、バトルモードウキ!」
ウキウキ……ウガアァァァ!
子猿たちが、でっかい大猿の魔獣になっちゃった!
「攻撃が来るぞ! ウォリアー、ハイプリーストを守れ!」
ウォリアー達は、ハイプリーストを守るような配置につく。
「無駄ウキ、王道流奥義、『感覚変換』!」
ピキーーーーンッ!
「あ、あああ、右に敵の悟空将が……下にはビショップドラゴンが……」
ハイプリーストは、まるで呪文のように、周りに見えるのものを喋っている……
「なっ……いったいどうしちまったんだ⁉」
「そいつの視覚と味覚を交換した、今見えているものは言葉に、目には話した言葉が見えているはずウキ」
「なにっ⁉」
あの猿たちに対応した箇所の感覚を、交換できる技ってこと? そんなのあり……?
「くそっ、目が見えなくて、魔法も唱えることができないハイプリーストなんて、全く役に立ちやしない! どけっ!」
ハイプリーストは、レイブンに吹き飛ばされ、ボードの外へ放り出されてしまった。
「さあ、そろそろ終局のようですね……龍極将、アナタの出番です、前へ」
出たな……全ステータス最高値、自他ともに認めるこの世界最強の男、龍極将。
「残りの戦力全てで、あいつを攻撃だ! 行けー!」
「うおぉぉー!」
レイブンの号令で、残っていた勇者一行やウォリアーたちが、一斉に龍極将に襲い掛かる!
「龍極将のやつ、あの位置だと、まるでわざと敵に囲まれにいったみたいだ」
「みたい、じゃなくて、その通りだよ……あいつは戦いが大好きな戦闘狂、バトルマニアだからな」
「バトルマニアって……」
「亜人の最強種、『竜の民』をベースに作った、世界最強のデバッガーだ。『強い敵と戦うのが生きがい』だと、常日頃話していたよ」
「私の相手はバグと邪道十三人衆のみ、貴様らは邪魔だ……ヌウンッ!」
ドガガガガガガァァーー!
龍極将は、持っていた武器を振り回すと、周りのウォリアー達は、全員乗っていたポーンドラゴン事吹き飛んだ!
「あれで通常攻撃⁉」
龍極将は、群がるウォリアーたちをものともせず、どんどんキングのレイブン目掛けて進軍していく。
「バグ化したものは二度と元には戻らないらしい……ならばせめて、オレの手であの世へ送ってやろう」
「はああぁぁ……」
なんて気力だ……鬼の民ドドムや、俺の憑依属性魔法のときの宮本武蔵の気力を遥かに上回るデカさ……
「龍極将の眼は、『三種の竜神器』の一つ、『龍眼』になっている」
「『龍眼』……? 三種の竜神器って、そんなものまであるのか⁉」
「『龍眼』は、自分や相手の気力や魔力の流れが見え、それをある程度操ることも可能だ。
龍眼覚醒状態の龍極将が、気力を高めるだけで、周りのザコモンスターは消し飛んでしまう」
「『多重対斬撃結界』展開!」
マスターモンク、マスターシーフと勇者が、レイブンの前に立ち塞がり、防御を固める!
「おおおおお! 王道流奥義、『アルティメットVブレイク』!!」
ガガァッ!
ズガガガガガガーーーッ!
Vの字に斬られた勇者たちが、大爆発とともにボード外へ吹き飛んでいく!
その先にあった『毒の沼地』と、『劇薬の洞窟』まで、大地がえぐれて、粉々に吹っ飛んでる⁉
「なんていう威力……メギードの『パラディンブレイク』や、ガーマインの『百獣咆哮覇』をも超える破壊力……
こいつが本気になったら、神の大樹、『ユグドラシル』も切り倒せるかもしれない……」
「そこまで……ですか……?」
さすがのアイカも、驚きを隠せない。
ボードには、レイブンとメルフィス、シャルドの三人だけが残る。
「チェックメイト……だな」
「残りは、お前たち邪道十三人衆の三人だけのようですね……どうですか? 降参し、投降することをおすすめします」
「フ、フフフフフ……」
不敵な笑みを零すレイブン……
「チッ……なるほどな、大した戦闘力だ。
少しお前たちを舐めていたことも認めよう……
さて、じゃあオレ様も、少しだけ実力を見せてやるとするか」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
ゴクリ……あいつ、バグ化して、いったいどんな技を身につけたんだ……?
「へへへへへ……いくぜぇ」
龍極将や、他の王道十二将たちも身構える。
「そこまでだ、レイブン」
レイブンたちの後ろから、聞き覚えのある声が……
「お前……バグか⁉」
バグが、他の十三人衆を引き連れて、レイブンの後ろから現れた。
「バグ様……」
バグを前に、跪く三人……
「私はお前に、ここまでの攻撃を許可した覚えはない……少々やりすぎだ」
「申し訳ありません、ギガンティックマスターを前に、少々興奮してしまったようです」
「そうだな、その気持ちはよくわかる、もういい下がれ」
「はっ」
完全な服従関係……あのレイブンを完全に従わせているのか。
「私の部下であるレイブンが失礼したな……今回の戦いは、我々の負けということでいい」
戦いは終了したってことか? なら……
「聞きたいことがあるのだろう? 一つだけ何でも話してやろう」
マジか……そりゃ願ってもない。
俺が聞きたいことは一つだけ、ヒナタたちをもとに戻す方法だ。
「待って下さいギガンティックマスター」
「ん? ネズミ君、どうしたんだ?」
「ひょっとして、バグ化した仲間たちを元に戻す方法を聞き出そうとしていますか?」
「そうだ、俺が今一番聞きたいのはそれだからな」
「それは危険です」
「えっ、なんで?」
ネズミ君は口に手を置いて、何か熟考しているようだ……
「バグは最初に会ったとき、『バグ化した人間をもとに戻す方法はない』と言っていました」
「言ってた……」
「となると、本当に戻す方法がない可能性と、バグがその方法を知らない可能性があります」
「確かに……」
「『バグ化した人間をもとに戻す方法を教えてくれ』と質問して、『その方法はない』と答えられたら、それで終わりです」
「それは……困る」
「それに、バグ化した人間を元に戻す以前に、この世界を改竄されてしまっては意味がありません」
「……」
ネズミ君が言っていることはわかる、わかるけど……
「焦る気持ちはわかりますが、仲間たちを元に戻す方法は、もう一度勝負して勝利すればいいですし、それがダメでもプログラムを解析さえすれば、戻る可能性があります」
「じゃあ今聞くのは、『どうやってこの世界を改竄するのか?』ってことか?」
「そうです」
んー、まあ一つしか聞けないんだったら、しょうがないか……
「ここは私に質問させてください、お願いします」
「ネズミ君が……? わかった」
ネズミ君は、一人バグの前へ歩いて行った。
「質問させてもらいます」
「……いいだろう、ただし一つだけだ」
「……世界を改竄するのを防ぐ方法を教えて下さい」
「えっ? 『世界を改竄するのを防ぐ方法』……?
『どうやって世界を改竄するのか』を聞くんじゃないの?」
「いや、あれでいい」
ゆうザイくんが、俺の隣でバグとネズミ君のやり取りを見ていた。
「『世界を改竄するのを防ぐ方法』を聞き出せば、必然的に『世界を改竄する方法』も話すことになる……この質問なら、一つで二つのことを聞き出すことができる」
マジか、ネズミ君スゲー。
「しかも、バグがこの世界をただ改竄するだけなら、もうすでにしているはずだ。そうしないのは、おそらくギガっち、お前を絶望させていないからだ」
「そう言っていた、俺とこの世界を、絶望で満たしてから改竄すると……」
「だとすれば、『この世界を改竄するのを防ぐ方法』があるはずだ……本当にないのなら、我々はただ逃げることしかできないのだから」
なるほど、俺を絶望させるために、ほんのちょっとの希望という『余地』は残してあるはず、ということか……
「……フッ、どうやらなかなかの策士がいるようだな」
おお、あのバグも感心させるとは、やるなネズミ君。
「約束だ、いいだろう話してやる……」
バグは懐に手を入れると、一枚のカードを取り出した。
「そのカードは……⁉」
「このカードは魔界のタロットカードの一枚、『世界』のカード」
「『世界のカード』……バグが持っていたのか」
「このカードの能力は、人間には絶対に唱えることができない神の魔術……『神言霊魔術』を、一度だけ唱えることができる」
「『神言霊魔術』……だって……?」
【神言霊魔術】……
八芒星魔術のさらに上位の魔術で、天界の神々のみが唱えることができる、最高位の魔法。
天変地異や、時間や時空を操る魔法なども存在するらしく、人間で使用したものはいない。伝説の魔導書に、その名称だけが記載されている。
「『神言霊魔術』って、本当に存在してたのか⁉」
ゆうザイくんが、目を瞑り、持っていたタブレットをしまう。
「……ある。
しかしそれは、このギルギルのストーリー最終章で使用する予定だった。
地上でそんな魔法を唱えたら、いったいどうなるのか……」
ストーリー最終章か……ヒエログラムどころか、オクタグラムも使えない俺たちにとっては、まだまだ先の話だな。
「さすがに私も、この世界を一度にすべて改竄することはできない……まずは一度破壊する必要がある」
そう……なのか? 破壊したあとに、改竄した新しい世界を作るってことか……
「私が、このカードで唱える魔法はただ一つ、『崩壊属性魔法・ドゥームズデイ』!」
「『崩壊属性魔法』だと⁉ その魔法だけは、唱えさせるわけにはいかん!」
珍しく、ゆうザイくんが取り乱している。
「『崩壊属性魔法・ドゥームズデイ』……相当ヤバい魔法なのか?」
「やばいなんてもんじゃない、唱えたら最後、たった七時間でこの世界は崩壊する!」
「七時間で⁉」
「『崩壊属性魔法・ドゥームズデイ』を唱えると、この世界は、端から少しずつ崩壊していき、七時間後には中央島すら崩壊して、このギルギルは完全に崩壊する」
「なんでそんな魔法作ったんだよ?」
「ギルギル最終章は、天界と魔界での話になる予定だっから、地上で使うことは想定していなかったんだ」
「『崩壊属性魔法・ドゥームズデイ』を止めることができるのは、この最後の魔界のタロットカード『正義のカード』のみ」
「『正義のカード』……?」
バグは、懐からもう一枚、カードを取り出した。
「『正義のカード』の能力は、正義の行いをする者に力を貸すこと」
「正義の行いに、力を貸す能力……?」
「ドゥームズデイを止めることも、正義のカードで崩壊を止めるとしても、どちらにしてもこの私に勝たなければならない」
「これが、世界の改竄を防ぐ方法……か」
☆今回の成果
黒羊将 『アリエスホーンシールド』
狛犬将 三種の星神器『星と光の水鏡』
雷虎将 『タイガークロー』『ライトニングタイガークロー』
火の鳥将 炎属性オクタグラム『アークパイロ』
牛頭将 『タウラスハンマー』
馬頭将 『バーチカルヒール』『メズ・ギャロップ』
白蛇将 回復属性オクタグラム「アークヒーリング」
窮鼠将 『賢者のメガネ』『ライブラのゾディアックビースト』
脱兎将 『ラビットラピット』
悟空将 『感覚変換』
龍極将 『龍眼』『アルティメットVブレイク』
俺 『世界の改竄を防ぐ方法』




