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異世界で「あいどる・はーと」作りました。  作者: みっど
第十七章 第二次異世界大戦 前編
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第六十五話 株式会社エイトインフィニット

 

 アナタはアイドルに『てんどん』と言われたことがありますか? ……俺はある。


 名もなき村での争乱のあと、バグとナマズエが消えてから五分ほどして、猛毒と緊縛の状態異常は解けた。

 その後俺たちはゆうザイくんと話をした。

「俺のせいでこんなことに……すまなかったゆうザイくん」

「こういう事態になってしまった以上、作戦を立て直す必要がありそうだな」

 ゆうザイくん、冷静だな……きっとこういう事態も想定していたんだろうな。


 それに比べて、俺の情けないこと……

「必ずヒナタを取り戻して、元に戻して見せる!」

 俺は気合いを入れ直す、今回ばかりは、絶対にあきらめるわけにはいかない。



「どうやらバグ・ナマズエの邪道十三人衆と、全面戦争の様相を呈してきた……

 現実世界のオレ達の会社に来てほしい、屠りしものたちにも参加してもらい、そこで作戦会議をしようと思う」

「俺たちが、現実世界の神魔たちの会社に……?」

「申し訳ないが、一応現実世界のオリジナルの四支神の方々は待機していてほしい、万が一元に戻ってしまうと、今までの計画が水の泡になるのでな」

「ギャウギャウ、まあ仕方ないか」

 神魔も一応納得したようだ。



 帰宅後、俺たちとサモンロードは、ドラゴニックキングやコズミッククイーンにも事の顛末を話した。

「なんですって⁉ リンが……」

「リュオン……」

 二人とも愕然としていた。

 そりゃそうだ、俺だってショックで暫く放心状態だった。

「必ずみんなをもとに戻す方法を見つける、協力してくれ」

「わかったわ……」

「ああ」


 トーコは自宅の自室に籠ってしまっている……

 無理もない、あれだけ差を見せつけられて、親友の手掛かりすら見つけられなかったのだから。

 今はそっとしておこう……


 *****


 次の日、俺とメンバーたち、他の屠りしものの三人も、一緒に神魔たちの会社を訪問することに。

 電車を乗り継ぎ、都内の一等地にあるビル……『株式会社エイトインフィニット』だ。


「でけぇ……このビル全部が、株式会社エイトインフィニットなのか……」

 俺たちは全員ビルを見上げ、ため息をつく。


 【株式会社エイトインフィニット】……

 今や全世界で三千万人がプレイする大規模MMORPG『GUILTYorNOTGUILTY ONLINE』を開発したゲーム会社。

 総資産10億 年商は20億 たった五年で日本でも有数のゲーム会社に成長した。

 ちなみに、キャッチコピーは『1×8=無限』

 八人で、八坪の部屋からスタートしたのが由来らしい。



 ビルの入り口に行くと、ピンクの髪の毛をした、小さな女の子が、俺たちを迎えてくれた。

「ようこそ『株式会社エイトインフィニット』へ、私は広報担当の『色神』と申します」

「し、色神⁉ キミが⁉」

 どう見てもスーツを着た小学生の女の子にしか見えない……この子があのお色気たっぷりの八方神、『色神』?

「どうやらアナタはギルギル内での私と会っているようですね? ということはアナタがギガンティックマスターさんですか?」

「そ、そうです、俺がギガンティックマスターです……」


 どうやら会社内はこの色神が案内してくれるようだ、話もちゃんと通っているようだし。


 俺たちは色神に案内され、一階のロビーへ。

 広くて開放的なロビーの真ん中に、高身長のナイスバディのお姉さんが立っている……

「待っておったぞ、ギガンティックマスター」

「……? アナタは……?」

「何を言っている、ワシじゃ、『審判竜ジャッジメントドラゴン』じゃ」

「はあ⁉」

 う、嘘でしょ? ジャッジメントドラゴンって、ヨボヨボのおじいちゃんだとばかり……


 ギュピーン!

 ジャッジメントドラゴンの目が光る。

「ははーん、さてはおヌシ、ワシのこの喋り方で、ワシのことをおじいちゃんかなんかかと思ったのじゃろう?」

 俺は物凄い勢いで、首を縦に振る。

「ハハハ、残念じゃったのう、ワシはこの喋り方のせいで、チャットをするとすぐにじいさんと間違われたりしたわ。

 まあ、子供のころからずっとこの喋り方じゃったし、今更変える気も無いがな。

 でもよかったのぉ、ワシと友人ということは、うまくすればワシとあんなことやこんなこともできるかもしれんぞ」

「あ、あんなことやこんなことって……」

 全くの予想外……ジャッジメントドラゴンが、こんなボンキュッボンの豪快なお姉さんだったなんて。


「ちょっと審判竜、私の仕事の邪魔、しないでくれる?」

 色神が、ジャッジメントドラゴンを、物凄い目で睨みつけながら割り込む。

「ああ、悪い悪い、話に聞いていたものだから、つい嬉しくてのぉ……」

 プイっと横を向く色神……

「……ったく、デカい乳を揺らして、無自覚に男を誘惑しやがって……」(小声)

 なんかギルギルの中でも、似たようなことを言っていたような……

 どうやらあんまりジャッジメントドラゴンのことを好きではない様子。


 そのまま話を通してある受付をスルーして、俺たちはエレベーターへ乗り込む。

 外が見えるエレベーターは、景色バッチリ、高所恐怖症だったころの俺なら乗れなかったかもしれないな……

 そのまま最上階の、応接室へ。


 ガチャ……

 応接室の中には、五人の男女が俺たちを待っていた。

 一番手前に、高身長のハンサムな青年が、俺に握手を求めて手を出している。

「ようこそオレたちの会社『エイトインフィニット』へ、ギガンティックマスター……いや、ここはひとつオレも『ギガっち』と呼ばせてもらおうかな」

「えっ……ま、まさか……神魔?」

「そう、オレが神魔のドッペルゲンガーで、ゆうザイくんの中の人だよ」

 驚いた……神魔の奴、本当にハンサム青年だったのか……

 これは嘘であってほしかった……ちくしょう(泣)


 俺たちは神魔と握手を交わし、他の開発者たちも紹介してもらった。

「こいつが『神楽』、ギルギルの『ミュージックコンポーザー』をやってもらっている」

「よろしく」

「よ、よろしく……」

 見た目高校生っぽいけど、凄いクールだな……


「彼は高校生ながら天才的な作曲技術を持っていて、うちの社長が引き抜いてきたんだ」

 へぇー、あの見た目でそんなに凄い高校生なのか……

 ギルギルの中では、可愛い緑色のインコなんだけどなぁ。


「そしてこっちが……」

 神魔が目線をやった先には、大きな棚の陰に隠れた女性がこっちを見てる。

「あわわわわ……」

 シュッ!

 隠れちゃった。

「彼女が『神無』、ギルギルの『グラフィックデザイナー』だよ」

 物凄く大きなメガネをかけているその女性は、見ただけで相当な人見知りだと理解できる……

「ずっとBLとかの同人誌を書いていたんだけど、その才能を見越したうちの社長が、これまた引き抜いてきたんだ」

「BLって……ひょっとして『ボーイズラブ』のことか……?」


「ひょひょひょ、神魔よ、早うアチシの紹介もしてくれゾイ」

 横にいたしわくちゃのおばあちゃんが、神魔の服の裾を引っ張って、催促している……語尾が『ゾイ』になるらしい。

「はいはい、こちらは『百骨王』、御年七十五歳の現役『チーフプログラマー』だよ」

「百骨王⁉ このしわくちゃのおばあさんが⁉」

「誰がしわくちゃだゾイ!」


「このおばあさんは実は社長の実母でね、元々この会社はこのおばあさんの会社から始まったんだ」

 えっ……ということは、このしわくちゃばあさんが、この会社の前社長……?

「まあ、前はただの『ケーキ屋』だったんだゾイ」

「ケーキ屋……?」

「アチシは、ケーキ屋をやりながら、趣味で大好きなゲームを昔のパソコンで自作して遊んでいたんだゾイ」

「そんな昔から……凄い趣味だな」

「昔のパソコンは、ブラウン管のモニターだったからとにかく重くて、ゲームも『フロッピーディスク』数十枚に保存していたんだゾイ」

「ブラウン管にフロッピーディスク、懐かしすぎる……」

「そのうち今の開発チームの八人が、アチシのゲームをやりに集まり出して、今の会社になったってわけだゾイ」

 大分『はしょった』ような気がするけど……なるほど、始まりはそこってわけだな。


「ギルギルの開発を機に、社長の座を『神居』に譲ったんだけど、ゲーム好きが講じてそのまま『チーフプログラマー』をやってもらっているのさ」

 そう言いながら神魔は、一番奥にあるデスクの方へ歩いて行き、後ろを向いて座っている大柄な男性の横に立った。

「そして彼が、この『エイトインフィニット』の現社長であり、ギルギルの『ゲームプロデューサー』も兼任している、オレ達のリーダー、『神居』だよ」

 後ろを向いて座っていたその大柄な男性は、くるりと振り向くと、おもむろに立ち上がる……

 二メートルはありそうな、スーツを着た巨体……デカい。


「ようこそ『エイトインフィニット』へ、屠りしものとそのメンバーたち」

 まるで格闘家かと思うような風貌……子供が見たら泣き出しちゃうんじゃないのか?

 俺たちの後ろ側にいた『色神』と『審判竜』も、五人の中に並んだ。

「この七人と、あと『ゲームエフェクターの毒帝』を加えた八人が、ギルギルを支えている『八方神』のドッペルゲンガー……」

 俺たちの前に勢ぞろいした七人……それぞれに個性あふれるメンバー。

 あのギルギルを作った『創造主』とも呼べる存在……もう威厳や荘厳さすら感じる。



「よし、俺は、ここでどうしてもやっておかなければならないことがある……」

「マスター?」

 俺は心配そうな顔をしているアイカをよそに、一人緊張した面持ちで、ゆっくり神居の方へ歩いて行く。


「ま、まさかマスター、また挨拶代わりに、ガツンと一発かましてやる的な……?」

「まさか、コズミッククイーンさんの時じゃあるまいし……」

 コツ、コツ、コツ……

 俺の緊張が、みんなにも伝わっているようだ。

 俺は神居の真ん前に立った。

「ゴクリ……」


 俺と神居、同時に懐に手を入れる。

「アドバンスドアーツ……」

「フッ、アドバンスドアーツ……」

「そ、そんなマスター、本気で⁉」

「お、おい……」


「『名刺交換』ッ!!」


 俺は懐から自分の『名刺』を取り出し、神居に渡す。

 神居も懐から『名刺』を取り出し、俺に渡す。

 周りのメンバーやキングたちはなぜかズッコケている。


「『株式会社異世界あいどる・はーと』のギガンティックマスターといいます、よろしくお願いします」

「うむ、『株式会社エイトインフィニット』の代表取締役社長、神居だ、よろしく」

 俺と神居はお互いに名刺を交換し、挨拶を交わした。


「ふぅ~緊張したぜ……

 俺は正社員の期間が短くて、名刺は持っていたけど使ったことがなかったんだ、ここで使うことができてよかったぜ」

 ズッコケていたアイカが、なぜかあきれ顔で訪ねてきた。

「そ、そうだったんですね……

 これが現実世界のお笑いの方がよくやる『てんどん』というものなのでしょうか……?

 というか、『株式会社異世界あいどる・はーと』って……?」


「あ~、実は『イチヒコ』の提案で、架空の会社を作っておいたんだ」

「架空の会社……ですか?」

「ああ、俺たちは今までも現実世界の一般企業と、異世界で契約や交渉なんかをしたことがあるだろ?」

「そうですね、石油プラント工場や、最近ではヴァロン城の建設なども」


「異世界と現実世界との会社同士の契約時に、たとえ架空でも会社があると、話がスムーズに進むんだ。

 ……って、イチヒコが言ってた」

「そうなんですか……色々複雑なシステムが、現実世界の会社にはあるのですね」


 ドラゴニックキングが、なぜか少し怒り気味に俺に話す。

「というかお前は紛らわしいんだよ、なんなんだ『アドバンスドアーツ』とか言いやがって」

「いやあ、何となくそういう雰囲気だったから……神居も一応乗ってくれたし」

「……」

 目を逸らす神居……ひょとして照れてるのか?


「アイカさん、マフユさん、久しぶりだね」

 神魔がアイカとマフユに声をかけている……?

「二人は現実世界のアイカさんとマフユさんのドッペルゲンガーみたいだから、わからないかもしれないけれど、昔二人にはお世話になったんだよ」

「神魔、二人と知り合いだったのか?」

「仕事上でちょっとね、実は昔現実世界の二人には、この『ギルギル』のアンバサダーをやってもらっていたんだ」

「アンバサダー?」


「宣伝大使ってやつだな、CМ出演やネットで実際にプレイしてもらったりして、このゲームの宣伝をしてもらった過去があるんだ」

「あー、そのCМなら俺も見たことがある、それで俺もこの『ギルギル』ってゲームを知ったんだ」

「四年前、このギルギルを大々的に売り込むために、人気絶頂の『あいどる・はーと』から、アイカさんとマフユさんにプレイしてもらったんだよ」

「四年も前に……? じゃあ現実世界のアイカやマフユも、俺よりももっと前からこのギルギルをプレイしていたのか……」


「そうだったんですね、初めて知りました」

「……」

 マフユが真剣な顔つきで、俺たちから視線を外したのを俺は見逃さなかった……


「これで開発者七人……あとは『毒帝』ナマズエのドッペルゲンガーか」

「今回のこともあり、ナマズエのドッペルゲンガーは、暫くの間監禁させてもらっている。会議を始める前に、まずは話を聞きに行こうか」

「頼む、ナマズエは八方神でありながら、呪縛を解いて自由に動き回っていた。どうやって解いたのか聞き出したい」


 俺たちはナマズエのドッペルゲンガーが監禁されている部屋へ。

 ガチャ……


 部屋の奥で、五十歳くらいの男性が、椅子に座ってこちらを見ている。

「ようこそ屠りし者たち……我がナマズエのドッペルゲンガーだ」

「……」

 まるで全てお見通しだったかのような言い方だ、いや多分そうなのだろう。


「アンタに聞きたいことがいくつかある」

「そうであろうな、可能な限り話そう……我は既にお前たちに観念しているからな」

 流暢にそう話すナマズエは、一切うろたえたり、焦ったりする素振りは見せず、落ち着いた雰囲気のままだ。

「まるでこうなるのがわかっていたかのような反応だな……」

「そうだ、わかっていた……ナマズエの本体もな。可能な限り秘密を話すというのも、彼の指示だ」


 気に入らないな……こっちの心を全て読まれているようだ。

「まず、ナマズエ本体の『目的』を知りたい、あいつはギルギルで一体何をしようとしているんだ?」

「さすがにそれは我でもわからない。

 ただ、『自分の望みを叶えるための世界を作る』ことと、『人間の進化』が最終目的だと言っていた」

「『人間の進化』だって?」

 人間の進化っていったい……そのために自分の望みを叶える世界を作るってことなのか……?


 後ろにいた神魔が、前に出てきて話し出す。

「ナマズエはギルギルを作り始めたころからずっと一緒にいたが、

 いつも何を考えているのかよく分からないやつだった……まさか人間の進化なんて、そんなことを考えていたとはな」


 神居も後ろから話し出す。

「ゲームエフェクトの腕は確かだったからな、そんなに深く交流することもなかったし、考えていたことまではわからない」

 まあそうだよな、アナライズできるわけでもないし。


「ナマズエが何をしようとしているのかは、本人に会って聞き出すとしよう。もう一つ聞きたいことがある」

「なんだ?」

「ナマズエはギルギルの中で、八方神の毒帝だったのに、自由に動くことができていた……

 八方神はみんな、呪縛のためその位置から大きくは動けないはず、一体どうやって呪縛を解いたんだ?」


「……順を追って説明した方がいいだろう。

 五年前、ギルギルの製作途中で、現実世界の製作者八名がギルギルに召喚されたことは知っているな?」

「ああ、みんなそのまま異世界を冒険していたら、自分のドッペルゲンガーに会ってしまい、モンスター化してしまったっていう……」

「ナマズエも同じで、冒険中に我と出会ってしまい、モンスター化したようだ。

 ドッペルゲンガーは、本体と出会うと、その者の記憶をそのまま継承することができ、現実世界でその本体の代わりを遂行しようとするのだ」

 なるほど、妹がドッペルゲンガーと会ってしまった時も、そのドッペルゲンガーが妹の職場でいつものように働いていたのは、そういうことか。


「我と同じく、製作者の八人のドッペルゲンガーは、そのまま現実世界へ行き、ギルギルを完成させ、世に出した」

「それが今の状態ってわけか」

「そう、そのあと我はアバターを使い、『劇薬の洞窟』へ行ってみた」

「『劇薬の洞窟』! 毒帝ナマズエがいた洞窟だな?」

「洞窟に入り、毒帝ナマズエに対面した時、彼は開口一番、こう言った……『待っていた』と」

「『待っていた』……? そのアバターが自分のドッペルゲンガーだってことも、アンタがその洞窟に来るってことも、全部わかっていたってことか?」

「そうだ、彼は全てを理解した上で、我が来るのを待っていたのだ」


 ゴクリ……

 なんて奴だ、あの心理学をかじったヴァイガンの時に感じた戦慄と、同じものを感じる……

 物事の先の先を読む、先見の明……こういうやつは相当手強いぞ。


「そのあと続けて彼はこう言った、『例のモノを完成させ、我の前に持ってくるのだ』と」

「『例のモノ』?」

「例のモノとは、お前たちもよく知っているあの装置……そう、『擬人化システム』のことだ」

「『擬人化システム』⁉」

「現実世界で作ることは不可能だが、ゲームの世界であるギルギルならば、それは可能だ。

 現実世界に戻った我は、急いで『擬人化システム』をプログラミングして、完成させた」


 シ~ン……

 部屋は静まり返り、少しだけ沈黙が続く。

「ここまで話せば、何となくわかったであろう……」

「なるほどな、その手があったか……」

「ギガンティックマスター、君はわかったのかい?」

 サモンロードたちが、俺の顔を覗き込む。


「ああ、ナマズエは多分『擬人化システム』で、自分の擬人化した姿を作ったんだ」

「自分の擬人化した姿を……?」

「そうだ、自分の擬人化した姿を作るのなら、自分で作るのが一番効率がいい……一番詳細なイメージを持っているのは本人だからな」

 そう言いながら、ナマズエは自分の後ろにあったパソコンの前に座り、説明を続ける。


「このパソコンの中に、『擬人化システム』が入っている。

 ギルギルの中の装置と、イメージする人物を繋ぎ、イメージする単語を、ここに入力するのだ」

「フムフム、災害獣のときは、この中に『地震』『火災』などの単語を入力したってことか」

「そうだ、あとは出来上がった体に、転魂術で自分の魂を入れれば完成だ」

 こんなことを思いつくなんて……ナマズエ、アイツは本当に天才かもしれない。


 後ろで聞いていた神魔が、パソコンを操作しながら話す。

「なるほど、これでナマズエが呪縛を解いた方法はわかった……これはそのまま、他の八方神たちにも使えそうだな」

 ナマズエのドッペルゲンガーもそれに応える。

「問題はない。ナマズエの本体も、そう言っていた」

 これもナマズエの想定内かよ……ますます不気味だな。


 俺たちはナマズエのドッペルゲンガーが監禁されている部屋から出た。

「ナマズエのドッペルゲンガーよ、用事は済んだがこのまま解放というわけにはいかない。

 またギルギルへ行き、ナマズエ本体に協力されると厄介なのでな」

「承知している」

 ギイィ~……バタンッ


「ふぅ~、収穫はあったな、ナマズエ本体のざっくりした目的と、呪縛の解除方法を聞き出せた」

「まあね、全部ナマズエの想定内というのが気に入らないけど……」

 これで審判竜と色神、あと百骨王の呪縛は解除できるだろう……

「いったん休憩にしないか? 喉も乾いたし、小腹も空いた」

「そうだな、ではみんなで二階の食堂へ移動しよう」

 俺たちは全員で、ビルの二階にある食堂へ。


「ひ、広い……」

 ワンフロア全部が社員食堂になっていて、とにかく広い、しかも全部タダ⁉

「ここの社員は、全員日本人というわけではないから、いろんな国の料理なんかも食べることができるようになっている」

「へへっ、見てくれよ、試験的に作った、ギルギルの料理もあるんだぜ」

 神魔が見せたメニューには、懐かしい料理が……

「あー、『サザバードの親子丼』と、『サザバードオムライス』がある⁉」

「マスター、こっちには『ワイバーンの骨付き肉』もあります!」

 おいおい、スゲェな……ワクワクしてきたぞ。


「この食堂のお勧めは『スイーツ』だゾイ、アチシは元ケーキ屋だからね、スイーツにはうるさいんだゾイ」

 そういえばそんなことを言っていたな、この会社の前身はケーキ屋だったって……

 メニューには凄い数のスイーツが……ケーキから綿菓子、一流店のシュークリームやマカロンまである!

「キャーー、おいしそう!」

 女性陣の黄色い声が飛び交う……

 社員のテンションを上げるため、こういうところに力を入れるのも、会社として大事なのかも。


 神居がデカいトレーにいっぱいのスイーツを乗せて、俺たちの横に座った。

「やはりスイーツはアイスクリームに限る……

 だがここのお勧めは『パフェ』だ、なにせ名前の由来は『パーフェクト』からきている、スイーツの最高峰だからな」

「は、はあ……」

 ここに来たとたん、凄いしゃべり出したな……


「おいギガっち、一緒にぜんざい食べようぜ、女子のみんなにはワッフルとアップルパイを頼んでおいたぞ」

「わーありがとうございますー」

 神魔と神居……まさかの『スイーツ男子』だったのか。


「おい神魔、勝手に注文をするのはやめろ、まずは女性の好みを聞いてからだな……」

「ああ? うるさいな、女子は『焼き菓子』が好きだって、昔から決まっているんだよ!」

「そんなはずはない、プリンやかき氷が好きな女性も多い、見た目猫舌そうな女性もいるではないか」

「はあ? プリンやかき氷なんてものはな、小学生の子供の食べ物なんだよ! 大人のアイドルがそんなもん食うか!」

「何だと、それは聞き捨てならんな……」

「ああ、やんのか?」

 ゴゴゴゴゴゴ……


「お、おい、あれ、止めなくていいのかよ?」

 俺は一人でオロオロ……

 他のメンバー、神楽はガン無視だし、神無は食器棚に隠れて震えているし……


 審判竜と色神が呆れ気味で話し出す。

「放っておきな、いつものことじゃよ」

「そうそう、あの二人、性格も好みも全くの正反対、よくあれで同じゲームとか作れているのかホント不思議」


「大体お前は人の話を聞かなすぎる、仕事の時も、自分の理想ばかり語らず、まずは他の意見も聞かなければ、建設的な話し合いはできないぞ」

「それはお互い様だろ? アンタみたいに現実的な話ばかりしていたら、ただのクソゲーになっちまう、ゲームってのはな、オレたちの夢と理想を入れてナンボだろうが!」

 なんか話が脱線して、さらにエスカレートしてるー⁉

 二人はゼロ距離で睨み合い、まさに一触即発!

 その時!


「フフフ……二人ともまだまだとよ」

「なに?」

「なんだと?」

「アカネ? お前いつの間に……」

 神魔と神居の間に、いつの間にかアカネが座ってる……


「温製スイーツと冷製スイーツ、どちらもおいしく、素晴らしいものではあるとよ……でも」

「でも……?」

「両方合わせると、さらに素晴らしいものができるとよ、この『アフォガード』のように!」

「ア、アフォガードだって⁉」

「なんだ、それは?」


 アカネのテーブルの前には、ガラスの器に入ったバニラアイスと、横に淹れたばかりのエスプレッソコーヒーが。

「こ、これは……」

 アカネは、バニラアイスが入っている容器に、おもむろにエスプレッソコーヒーをかける。

 辺り一面に、バニラの甘いにおいと、エスプレッソのほろ苦いにおいが充満する……

「これが、アフォガード……?」

 アカネは、そのアフォガードを一口、パクリッ

「ん~、バニラアイスの甘さと、エスプレッソのほろ苦さとコクが見事に合わさって、ぜつみょ~~なバランスとよ」

「ど、どれ……」

 神魔と神居も、一口パクリッ

「これは……」

「うむ……甘さの中にコクがあり、熱いコーヒーなのに冷たい食感、何とも不思議な、うまい……」

「他にも、カルツォーネとかアイスコルネットとか焼き氷なんてものもあるとよ」

「そんなに?」


「わかったと?

 温製も冷製も、それぞれいいところがあり、二つ合わされば、もっとおいしいものができる……まそういうこととよ」

 なんか偉そうに、評論家みたいなこと言ってるけど……?


「……」

「なるほどな……確かに、今のこの会社の好景気は、神居のその『現実的なプロデュース』の功績であることは間違いない。いくら夢や理想を語っても、売れなきゃ意味がないからな」

「神魔には『ゲームデザイナー』としてのいいところがあり、私には『プロデューサー』としてのいいところがある。それをお互いトコトン突き詰めたからこそ、ギルギルという素晴らしいゲームができた。これは、私とお前だからできたことだ」

 なんか二人とも勝手に納得して、勝手にいい感じになってきてる……


「アカネよ、初心に戻れた気がする、ありがとう」

「お前、スゲェな」

「なあに、またいつでも相談にのるよと、わっはっは」

 ……確実に調子に乗っているな。


 シュウゥゥ……

 食堂の中が、突然真っ白に……あれ、これって……

「アカネ、この霧、お前か?」

「違うとよ、私は出していないとよ」


「クスクスクス……わあ、おいしそう」

 なんか女の子の声が聞こえる……?

「パクッ……ん~おーいしー! 頬っぺたが落ちるとよ~」

 えっ? アカネと同じ、博多弁?


 スウゥゥ……

「あ……霧が晴れてきた」

「あー! 私のアフォガードが無くなっているとよーー⁉」

「えー、いったい誰が……」

 今のはひょっとして、霧の民が言っていた『霧の魔獣』……?

 なぜこんなところに……ってか、ここは現実世界なのに……?


「うえーん、楽しみにとっておいたやつだったとに~」



 その後俺たちは会議室に入り、今後の作戦を立てることに。

 白を基調とした、清潔感のある広い会議室、各個人用にタブレット端末も準備されている。

「今後の『対バグ戦』における、新たな作戦を立てたいと思う」


 神居が仕切り、会議が始まった。

「まずは現在の現状からだな……神魔が『王道十二将』を召喚した時点で、勝負は決したと思っていたが、まさか相手に『邪道十三人衆』などという切り札が存在したとは、正直想定外だった」

「あんた達も、あの状況は見ていたんだな」

「ああ、『ゆうザイくん』には、いつでもバグを発見できるようカメラが仕込まれている。我々もあのときの状況はリアルタイムで把握済みだ」


 俺は素朴な疑問が浮かんだ。

「ちょっと待ってくれ、異世界と現実世界では通信機能は繋がらないはず……どうやってリアルタイムで動画を見ることができたんだ?」

「それは、ちょっとした『裏技』を使ったのだ」

「『裏技』……?」


「我々のオルタナティブドアを通じて、『有線』で繋いでいた」

「『有線』で? オルタナティブドアは開けっ放しでってこと?」

「そうだ、世界が違う異世界と現実世界では、『無線』での通信機能は使えないが、『有線』で直接物理的に繋げば通信は可能だ」

 まさに『裏技』……それは盲点だったかも。


「相手にはあのナマズエもいるんだ、オレ達の行動を予測していたとしても不思議じゃない」

「確かに……だが一人では限界があるだろう、この短時間で我々の『王道十二将』を超えるほどの戦力を有したとは考えづらい」

 手元のタブレット端末には、『王道十二将』と、『邪道十三人衆』の戦力データが、表になって表示されている。


 俺も、俺なりの意見を言ってみる。

「だからこそ、今いる俺たちが育てたキャラを利用したんじゃないだろうか……? 一からキャラを作るのではなく、元の能力にバグの力を付与すればいいのだから」

「なるほど……」

「あのナマズエのことだ、『王道十二将』のことも予測し、それに対抗するためのメンバーを選別しているのかもしれない」

「その可能性は高いな……」


 その後も、いろんな人の意見が飛び交ったが、答えは出ない……とにかく情報も少なすぎる。



「戦力についてはこのぐらいでいいだろう、ラチがあかないからな。続いて、今後の作戦行動についてだが……」

 神魔が手を挙げる。

「オレたちの最終目的は『バグ』と『ナマズエ』の完全無力化だ。

 なら、オレたちの最大戦力『王道十二将』で、全面戦争するのが一番手っ取り早い」

「まってくれ、『邪道十三人衆』は俺たちの身内がほとんどなんだ、全面戦争なんてことになったら……」

 腕を組んで、目をつぶっている神居が、つぶやく。

「確実に、死人は出るだろうな……」


 バンッ!

 コズミッククイーンが、机を叩き、叫ぶ。

「もし私たちの四天王に何かあったら、アナタ達絶対に許さないわよ、わかってる?」

 サモンロードとドラゴニックキングが、コズミッククイーンをなだめるが、多分気持ちは一緒だ。


「じゃあどうすりゃあいいんだよ?」

 神魔の言うこともわかる、このままじゃ……

「……」


 ずっと静かにしていた神楽が、ヘッドホンを外して話し始めた。

「さっき神魔が言っていた通り、ボクたちの最終目的は『バグ』と『ナマズエ』の完全無力化だ。なら作戦は、そこに重点を置いたほうがいい」

 頷きながら聞いていた神居が、話を続ける。

「神楽の言う通りだ、『バグ』と『ナマズエ』の無力化が最優先、邪道十三人衆はその間だけ動きを封じてくれればいい」

「まあ、そのくらいなら王道十二将でもいけるだろう」


「問題は『バグ』と『ナマズエ』を誰が無力化するのかと、どうやっておびき出すか、だ」

「『邪道十三人衆』を『王道十二将』が抑えてくれるのなら、バグとナマズエはオレ達屠りしものが倒す」

 ドラゴニックキングが叫ぶ。


 俺は、みんなの様子をうかがった後、手を挙げて静かに立ち上がった。

「俺の考えを聞いてくれ」

「ギガっち……言ってくれ」

「俺を囮に使ってほしい」

「囮……? ギガっちを?」


「バグのあの感じからすると、バグが俺のことを狙ってくるのは明らかだ。

 俺がギルギル内で行動することにより、バグとナマズエをおびき寄せることができるはずだ」

 横で聞いていたサモンロードも賛同する。

「そうだね、確かにそれが一番効率が良さそうだ」


 神居がみんなの意見をまとめる。

「バグを倒せば、邪道十三人衆は元に戻る可能性はある。

 どうしようもなければ倒してしまうしかないが、できるなら可能な限り生かして捕えたい」

「そうだな、本人なら元に戻す方法を知っているかもしれない」


「たとえそうではなくても、我々の力でプログラムを解析して、元に戻す方法を見つけられるかもしれん」

 可能性は低そうだが、もうそれに賭けるしかないかもな……


「そのための作戦の手順はこうだ」

  ①ギガンティックマスターを囮にしてバグとナマズエをおびき寄せる。

  ②王道十二将を召喚して、邪道十三人衆を抑える。

  ③その隙に、ギガンティックマスターと屠りしものたちでバグを倒す。


「ギガンティックマスター、お前は普段通りにギルギルを行動してくれ、そうすれば必ず向こうの方から出てくるだろう」

「わかった」

「アバターであるゆうザイくんを使って、神魔にもギガンティックマスターに同行してもらう」

「任せておいてくれっ」

「王道十二将には、できる限り邪道十三人衆は誰も殺さないように命じておく、屠りし者たちはその隙にバグに近づき、バグを倒してほしい」

「……」

「ギガンティックマスター、お前があのバグに思い入れがあるのはわかっている、しかしこのままでは今のギルギルは完全に消滅してしまうだろう」

「ああ、俺たちはオルタナティブドアで現実世界に非難することができるが、ギルギルすべての生物を助けることはできない」

「そのためにはバグを何とかしなくてはならない、頼んだぞ」

「でも俺たちだけでバグを倒すことができるのかどうか……」


 作戦は決まったんだ、あとは俺が覚悟を決めて、実行するだけ……

 俺は自分の頬をバシンッと叩き、気合を入れる。

「よし、作戦実行だ」


 *****


 その後俺たちは、オルタナティブドアでギルギルへ。

 神魔たちの本体とも合流した。

「ギャウ、どうだった、ギガっち」

「ああ、現実世界の『株式会社エイトインフィニット』、素晴らしい会社だったよ」

「そうか……本当はオレたちがそうする予定だったんだがな」

 残念そうにする神魔……本来なら自分たちの夢の会社だったんだからな。


「それはそうと、現実世界のオレ様はどうだった? 言った通りハンサム青年だっただろ?」

「ヒュ~ヒュ~……」

 俺は鳴らない口笛を吹きながら、聞こえないふりをしてその場を去った……

「おい! ギガっち! 待てよ、おいコラ……」



 そのまま全員で審判竜ジャッジメントドラゴンのいる『審判の塔』へ。

「……ギガンティックマスターか、ずいぶん大勢で来たの」

 あれ、ジャッジメントドラゴン、なんか元気ないけど……

「おヌシが全然来ないから、ワシは拗ねておるのじゃ……」

 何だ拗ねていたのか、めんどくさいドラゴンだな……めんどくさいドラゴン、略して『めんドラ』だ。

 というか、この『めんドラ』が、あの超絶グラマーのお姉さんだとは……


「すまんすまん、悪かったよジャッジメントドラゴン、でも朗報だ、お前の呪縛解けそうだぞ」

「なんじゃと、それはまことか?」

 秒で機嫌が直ったな……チョロいな、チョロいドラゴン、『チョロドラ』だ。


 俺たちは、ナマズエが自分の呪縛を解いた方法を使い、ジャッジメントドラゴンの呪縛を解いてみる。

「ナマズエが作った『擬人化システム』が入っている、このノートパソコンを持ってきた」

 このノートパソコンとジャッジメントドラゴンを繋げて、入力画面に『審判竜ジャッジメントドラゴン』と入力する。

「よし、実行!」

 パアアアァァァ……

 まぶしい光に包まれたジャッジメントドラゴン、その横に、現実世界で見たナイスバディのお姉さんの体が出現した。


「よし成功だ、ジャッジメントドラゴン動くなよ、今俺が『転魂術』でお前の魂をこの体に移す」

「おヌシ、いつの間に『転魂術』を会得したのじゃ?」

「『転魂術』発動!」

 パアアァァァ……

 ジャッジメントドラゴンから出てきた魂の光の球は、ゆっくりと人間の体に吸い込まれていく……


「ど、どうだ……?」

「う、う~ん……」

「やった、人間の体の方が動いた、成功だ!」


 ガクッ……

 ジャッジメントドラゴンが膝をついた。

「どうしたジャッジメントドラゴン?」

「ダメじゃな……」

「えっ」

「この体、魔力の消費量が多すぎる……この状態のままだと、持って数分じゃ」

 さすがは神の体、俺たちとは作りが違うってことか……


「でも、ナマズエはそのままだったし、神魔たちも普通に行動できているよ?」

「ナマズエはわからんが、神魔たちは人間の姿ではなくチビ魔獣の姿……おそらくその姿なら魔力の消費量も少ないのじゃろう」

「そ、そうなんだ」

「というわけで、ワシもチビ魔獣の姿になることにする」

「チビ魔獣に?」


 ジャッジメントドラゴンは魔法陣を展開し、詠唱を唱える。

「ガレン・ギャラ・ギャラガ・シーリーン・エル・フラテラス

 彼のものの心影に映る 虚像を現実に 偶像を纏いしその体に 鏡像を表せ

 擬態属性ハイアナグラム、『メタモルフォーゼ』!」

 パアアァァァ……

 『メタモルフォーゼ』……以前アオイやモモに俺がかけた擬態属性の魔法だ。


「カァ~、成功じゃ」

 ジャッジメントドラゴンは、ちっちゃくて真っ黒なカラスに変身した。

「ジャッジメントドラゴンのチビ魔獣バージョンは、『カラス』か」

 現実世界の裁判官は、いつも黒い服を着ている。

「黒は何色にも染まらない色」……人を平等かつ公平に裁かなければいけない裁判官の心構えを現した服の色。

 審判竜が真っ黒なカラスに変身したというのも頷ける。



 俺たちはそのまま不夜城の『色神の祠』で、『色神』の呪縛も解いた。

「おお、やるねぇ、いい仕事するじゃんギガンティックマスター」

 色神は小さな女の子の姿になってから、メタモルフォーゼでピンク色した『フラミンゴ』に変身した。

「色神は『フラミンゴ』か……」

「お礼に今度、この世のものとは思えないほどの快楽を体験させてあげるよ、フフフ」

 そうは言っても中身があの小学生チックな女の子じゃなぁ……



 次は北東にある『王家の遺跡』へ。

 最奥部には、巨大な骨のモンスターが俺たちを待っていた。

「初めまして、不死族たちの王『百骨王』。

 俺はギガンティックマスター、アンタをもとの姿に戻しに来た」

「ほう、アンタが最近噂のギガンティックマスターかゾイ?」

 ……現実世界のドッペルゲンガーと一緒で、語尾は『ゾイ』になるんだな。


「『擬人化システム』、実行っ!」

 パアアァァァ……

 百骨王も、しわくちゃのおばあさんから、そのまま小さな魔物『スケルトン』に変身。

「百骨王は『スケルトン』か……芸が無くなってきたな、元のしわくちゃのおばあさんのほうがよかったんじゃないのか?」

「誰がしわくちゃだゾイ!」

 ……異世界でも現実でも、突っ込み方は変わらないんだな。



 それから俺たちは大陸の北西にある『劇薬の洞窟』へ、『毒帝』ナマズエのいた祠だ。


 広い毒沼の中心に、ぽっかり口を開けたように、洞窟の入り口がある。

「何があるかわからない、みんな気を付けて」

 俺たちは一塊になり、洞窟内へ入った。


 罠やモンスターなどは無く、すんなりと最奥部へ到達できた。


 最奥部には、毒帝の元の身体と思われる、紫色した巨大なナマズのような体が、横たわっていた。

「これが毒帝の本体か……死んでいるの、か?」

 ゆうザイくんが答える。

「いや、死んでいるわけではない、魂が抜けた器としてこのまま置物のようにあるだけだ」

「他の魂や、魔粒子が流れ込んだりしないのか?」

「なぜか我々八方神の器は、ほかの魂や魔粒子が流れ込んだりはしない。

 その代わりかどうかはわからないが、オレ達と目が合った時も、魂がドッペルゲンガー側に来ることもなかった」

「ふむ……とにかく八方神は特別扱いなんだな」


 もし俺がファルセインではなく、大陸の西側、サザバードに最初に降り立っていたら、まっさきにこの劇薬の洞窟を攻略しに行っていただろう……

 果たして、戦ったら勝てたのかな?


 洞窟最奥部の周りには、色んな研究道具や実験道具などが、所狭しと並んでいた。

 ここでもいろいろな研究をしていたのだろう。


「これは……」

 俺は日誌のようなものを見つけ、それを読んでみた。

「やっぱりな、中央島や魔界にも、研究のために行っていたようだ。

 夜の民ヨヨが会った老人というのも、多分偶然その場に居たナマズエのことだろう」

「相当下準備を重ねていたようですね……」

 敵ながら、アイカも感心してしまっている。


「この日誌は持ち帰って、神居達のドッペルゲンガーに調べてもらおう」

 他にもいろいろ調べたが、有用なものは見つからなかった。


 そして俺たちが劇薬の洞窟を出たその時――


「やはりここに来たか、ナマズエの言った通りだな」

 俺たちの前には、黒い羽根を持った亜人と、尻尾と角が生えた魔族の影が……

「お前は、レイブンとメルフィス⁉」


 まさかここでこいつらと遭遇するとは……

 これは幸運か? それとも不運なのか……?



 ☆今回の成果

  俺 株式会社エイトインフィニットの開発陣概要

  俺 八方神の呪縛解放方法

  俺 ナマズエの日誌らしきもの


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