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異世界で「あいどる・はーと」作りました。  作者: みっど
第十六章 バグ編
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第六十四話 透明VS透明

 

 アナタはアイドルに『秘密を打ち明けられた』ことがありますか? ……俺はある。


「今まで秘密にしていて申し訳ありませんでしたマスター、私がなぜナマズエに固執していたのか、お話します」

「トーコ……」

 『ここであったが百年目』って感じの、真剣な顔だ……


「世界最高の錬金術師ナマズエ、『ケイちゃん』を返してください!」

「『ケイちゃん』……?」

 ナマズエは首を傾げている……


「私がまだ奴隷だったころ、同じ牢屋の中で、他に数人の奴隷たちと一緒に過ごしていました。その中の一人で、『ケイちゃん』という子と、私は友達になりました」

「奴隷時代の友達……」

「ケイちゃんは罪システムで奴隷位になったわけではなく、人さらいに誘拐されてきたため、名前がありました。

 歳や境遇が似ていたということもあり、私たちはすぐに仲良くなり、『親友』と呼べるような仲になりました」

 親友……絶望しかない奴隷生活の中で、分かり合える人がいるのは、お互い本当に励みになったはずだ。


「しかし二人を斬り裂く事件が起こります、原因はそこにいる世界最高の錬金術師ナマズエ……」

 トーコはナマズエを睨むように見つめる……

「ナマズエは、自分の『透明になる』研究の実験に使うため、奴隷を集めていました」

「透明になる実験? なぜそんなことを……?」


 ナマズエが、自分の記憶を思い返すように回顧している……

「透明になる研究をしていたことは確かだ、だが実験に使った奴隷の名前など、いちいち覚えてはおらぬわ」

「くっ……」

 悔しがるトーコ。

「ナマズエは奴隷たちを並べ、実験に使うための品定めをしていました……

 その時、一番最初に指名されたのは私でした」

「トーコが……?」


「私は恐怖に震え、足がすくみ、その場で倒れ込みました……

 気が付くと、ナマズエも、ケイちゃんもいなかったのです」

「それって……」

「はい、ケイちゃんがアドバンスドアーツ『模写』を使って私そっくりに化け、身代わりになってくれたんです」

「マジか……」

 トーコは服の裾をギュっと掴み、涙をこらえているようにみえる。


「その後、マスターに救われた私は、必死にケイちゃんを捜しましたが、見つかりませんでした」

 確かにトーコは、朝出掛けては、夜まで戻らない事が何度もあった……

 あれはケイちゃんを捜し回っていたんだな。


「捜索の際中、別の錬金術師たちから、ナマズエが透明の実験に成功したという話を聞き、きっとケイちゃんは透明人間になってしまったんだと憶測しました」

「透明人間……」

「私が自分を透明にするのにこだわっていたのは、透明になればケイちゃんの姿が見えるのではないかと思ったからです」

「なるほど……透明人間同士なら、お互いを認識できると考えたんだな」


「でも錬金術の知識を得れば得るほど、それは敵わないことだと悟りました。

 たとえ自分が透明になっても、透明になった人間の姿を見ることはできないようなのです」

 そうなのか……?

「当然だ、そんなことぐらいで認識できるようになるのなら、透明になる意味がない」

 ナマズエが、当たり前だと言わんばかりにトーコに話す。



「なので私は、透明になることでナマズエの『研究日誌』を盗み見ようと考えました。それでケイちゃんを見つける手がかりがあればと……」

「それで透明になる薬を、一生懸命開発していたのか」

「はい……申し訳ありませんでしたマスター、できればマスターやメンバーたちを巻き込みたくなかったんです」

「それで今まで秘密に……バカだな、俺たちは仲間だぞ、仲間の友達は俺たちにとっても大事な友達だ!」

 俺の言葉にアイカとメンバー達は共感し、みんな頷いている。

「……ありがとうございます、マスター」


 ナマズエが、思い出したかのように、右手の人差し指を立てる。

「フッ……ケイか、少し思い出した。

 確かに透明になる研究の実験に、数人の奴隷を購入し、使ったことがある。

 実験が成功したのはたった一人だけ、その名前が確か『ケイ』……」

「やっぱり!」

 トーコの瞳に希望の光が宿る。



「実験に成功し透明にはなったが、元に戻す方法が見つからず、そのまま放置した。完全に透明化したので、物質に干渉することもできなくなり、本人も絶望して諦めたであろうな……

 今も独りで、どこかを彷徨っているのだろう」


「そんなことはありません! 必ず私がケイちゃんを元に戻してあげます」

「好きにするがいい、我には関係ない」

「そのために、アナタの透明人間の研究結果を教えてもらいます」

「断る……と言ったら?」

「モチロン、力ずくでも!」

「ほう、できるのか、お前ごときが?」


 トーコは持参したカバンの蓋を開けて、薬品の入った瓶を取り出した。

「完成した私の『透明薬バージョン3』でアナタを倒し、透明人間の研究結果を教えてもらいます!」

「面白い、やってみろ」

 ナマズエは余裕の構えだ。


 トーコは自分に透明薬をかける。

 バシャー!

 スウウゥゥ……

 おお⁉ 消えてる、トーコの体が完全に消えてる! 服も、骨も、しっかり透明になってる!

「スゲーなトーコ、完全に透明になれたじゃないか」


「改良に改良を重ね、つい最近やっと完成しました!」

 完全に透明になったトーコ、みんなトーコがどこにいるのかわからないみたいだ。

 俺は辛うじて、アナライズのポップアップコマンドのおかげで、トーコの位置はわかる。



「ダメだな……」

「えっ?」

 ナマズエが首を振りながら、呆れた顔をしている。

「影も残っているし、気配も体温も消せていない、我に言わせれば、そんなものは透明とは言わぬ」

 ずいぶんな言われようだな……バージョン1とバージョン2から見たら、格段にレベルアップしているのに。


「本当の『透明』というものを見せてやろう……」

 トーコを見下しながら、妖しい動きをみせるナマズエ……

「アドバンスドアーツ、『インビジブルエフェクト』!」

 ザアアァァ……

 ナマズエが……消えた⁉


「フフフ……どうだ、これが本当の『透明』というものだ」

 空に響くナマズエの声……どこから喋っているのか全然わからない!

「そ、そんな……こんなことが……?」

 トーコも驚いている……それだけ凄いってことか?


「これが『天才』と『凡人』の差よ」

「くっ……」

 マジか……体温と気配どころか、俺のアナライズまでも全く反応しない……完璧な『透明』だ。

「今のこの状態なら、お前たちの後ろに忍び込んで、一瞬で喉を掻っ切ることも可能だぞフフフ……」

 確かに、この状態で攻撃されたら、全く抵抗できない……


「あいつ、何か薬品を使った様子もないし、魔法や幻術の類でもなさそうだ」

 俺は周りを警戒しながら、トーコに尋ねる。

「私にもわかりません……一体どうやってこんな完璧な透明に?」



「グエン・メル・ドス・ゲイリル

 我 大気より毒素を生成し 敵を侵すものなり

 毒弾属性ハイアナグラム、『トキシックレイ』!」

 空に魔法を詠唱する声が響く。

 ドンッドンッドン!

「危ないっ!」

 俺たちの後ろから、たくさんの毒の弾が飛んできた!

「キャーー!」


「くっ……後ろか!

 衝撃よ 波となり 破壊となれ

 カイ・ル・ランクルス・ヴォーレイズ・ガンナ・イプシオン

 超衝撃波属性クアトログラム、『ヘクト・インパルス』!」

 シュバババババ!

 俺は扇状の衝撃波の魔法を唱えたが、何にも当たらず、奥の建物を斬り裂いた。


「いない……魔法を放った後すぐに移動されたら、もうどこにいるかわからない……こんな奴に攻撃を当てることなんてできるのか……?」


 また空からナマズエの声が響く……

「どうだ、この『見えない恐怖』は……これこそが我の実験の成果。

 透明になればどんな場所も入り放題、戦闘においてもこの強さ……

 しかも逃げ出せば絶対に捕まることは無い」

 確か現実世界での役職が『ゲームエフェクター』って言ってたな……

 透明になるなんて発想、俺には思いつかない。


「今回はただの様子見、お前たちと戦う予定ではなかったが、今後も付きまとわれてはやっかいだ……その女錬金術師だけは殺しておくか」

「何?」

 くそっ……声も気配も、魔力の流れさえも、全くわからない、このままじゃ本当にトーコが……

「トーコ下がれ、崖を背にして、少しでも攻撃範囲を絞るんだ!」

「わかりました」


 トーコが崖に向かって歩き出したその時ーー

「大気中の毒素よ 我前に収束せよ

 その力持ちて 混ざり 濃縮し 我が敵に永劫の苦しみを

 ロブロス・ウンクラミル・テーダ・ノーラ・アンバスターナ……」

 空にナマズエの声が響く……

「ヤバいっ!」


「毒収束属性 五芒星魔術ペンタグラム、『トキシックノヴァ』!」

 カァッ!

 大気中から毒素を収束し、光線のように放つ毒収束魔法!


 マズい! トーコは全く見えていない!

「トーコーーッ!」

「しまっ……!」

 グラッ……ズズゥーーーーンッ!

「⁉」

 後ろの崖の上から、巨大な岩がひとりでにトーコの前に落ちてきた⁉


 バシャーーーーンッ!

 毒収束魔法は巨岩に当たり四散した。

「た、助かった……?」

「危ねぇ……間一髪だった」


「チッ、運のいいやつめ……まあいい、こうなったら全員まとめて行動不能にしてやろう」

 また空にナマズエの声が響く……


「毒よ吹き上がれ 闇に落ちたるものに祝福を 欺瞞に満ちた世界を毒紫に染めろ ワット・アライア・マークス・キーン・グレゴリオ・ファティマート・スーテイル・ガーガイン

 毒沼属性 五芒星魔術ペンタグラム 『ベノムゾーン』!」


 来た! 魔界の時の毒爪魔族が使った、広範囲系毒属性魔法……

 俺の前に魔法陣が展開……『炎』『炎』『風』『風』『光』

「光と幻想 音と幻惑 真実より目を逸らし その者を二度と抜け出せぬ月の微睡みの中へ落とせ

 オーノス・タリア・ブラキオ・アルタ・シーメイズ・オルトラノ・フレンベル・ケイジ

 幻術属性 五芒星魔術ペンタグラム 『ギガイリュージョン』!」


 ザザザザザザアアアァァァ……

 パアアアァァァ……


「ムッ……我のペンタブラムを打ち消したのか……?」

 毒沼属性魔法を打ち消す幻術属性の魔法……ギリギリ間に合ったぜ。

「『毒帝』ってワードを聞いていたからな、この魔法を使ってくるだろうとヤマを張っていたのさ」

「危なかった、マスターが何とかしなかったら、全員やられていたかも……」

 メンバーたちも周りを警戒している……

 ゆうザイくんと王道十二将たちは、バグと邪道十三人衆を警戒して、微動だにしていない……



「フム……予想した通り、やはりお前が一番危険な存在だギガンティックマスター。我としては、お前を真っ先に始末したいのだがな……」

 へっ、八方神の一柱にそんなことを言ってもらえるなんて、光栄だな。


「それはダメだ……私の目的はこの世界の『初期化』だが、その前にやらねばならないことがある」

 ずっと黙って見ていたバグが、話し出した。

「それは、この世界と、ギガンティックマスター、お前を絶望で満たすこと……」

「世界と俺を、絶望で満たす……?」

 「私がこんな目に遭い、この力を手にできたのは、少なからずお前の存在が影響している」

 俺がこの世界に転移してきて、バグに会ったから、こうなったと……?

「私をこのような存在にしたお前と世界には、まず絶望を味わってもらう」

「俺と世界に絶望を……? 一体何をするつもりだ!」


「お前と世界を絶望で満たした後、この世界は私の手で『初期化』する……

 ギガンティックマスター、お前は絶望と失望の中で、死ぬもよし、生きるもよし、好きにするがいい。それで私の望みは完成する」

「何を言っているんだバグ! 俺のことが憎いなら、俺だけを狙えば済むことだろ⁉」

「勘違いするな……これは『憎しみ』や『復讐』の類ではない、世界を初期化するための『儀式』なのだ」

「儀式、だって……?」

「この悪しき世界を初期化し、新たな世界を構築するために必要な『プロセス』……と言ったところか」

 くっ……今のバグには、何を言っても届かない気がする……


「そんなことはさせないぞバグ! 俺が必ず止めてみせる!」

「それでいい、それもまた必要な『プロセス』だ」

 もうバグを説得して止めることはできないのか……? もう戦うしか手段は残っていないのか……?


「フム、少し興が削がれたようだな……

 女錬金術師、トーコと言ったか? そのような未熟な技では、我の研究成果を見ることなど夢のまた夢だ。

 今回は特別に見逃してやる、帰ってもう一度修行のやり直しでもするのだな」

 ナマズエの声が響く……畜生、どこで喋っているんだ?

「くっ……」

 悔しがるトーコ。


「ナマズエよ、私たちの今回の目的は全面戦争ではない」

「そうであったな、今回の目的はあくまでも十一番目の邪道十三人衆の確保」

「何?」

 今の俺たちの中から、十一人目を確保するつもりなのか?

「そんなことは、絶対にさせない!」

 俺たちは装備を構え、攻撃に備える。


「フッ、攻撃に備え、構える必要はない」

 バグが、右手をこちらに向けて構える……

「邪道流バグ技、『停止フリーズ』!」

 ピキーーーーン!

「なっ……」

 メンバーや王道十二将、邪道十三人衆たちも、静止画のようにまったく動かなくなってしまった。

「この技は……動きを抑えるとか麻痺とかってレベルじゃない、プログラムに干渉して、完全に相手を停止させる技……?」


「この技を食らっても動くことができるのは、私と転移者のみだ」

 バグが歩きながらそう語る。

 ということは、今動けるのは俺とサモンロード、神魔とゆうザイくんだけか……


「バグさん、覚悟ッ!」

 バキーーンッ!

 えっ? アイカがバグに攻撃を⁉

「何? お前は……まあいい、予定にはなかったが、お前も……」

 そう言いながら、バグはアイカの腕に触れる……

「しまった!」

「アイカーーーー」


「……!」

「くっ!」

 アイカがバグの手を振り払い、俺たちの方まで戻ってきた。

「大丈夫か、アイカ?」

「はい、特に何かされたようには感じませんでしたが……」


 バグは自分の手を見つめ、そして俺たちの方を見る……

「なるほど、そういうことか……」

「……?」


「マスター!」

「アイカ! マフユ! お前たち動けるんだな⁉」

「はい、でも他のメンバーは全員……」

 えっ……? ということは? どういうこと……?


 いや、今はそれよりも、バグとナマズエの方が優先だ!

「俺たちが動くことができれば十分だ、お前たちの好きにはさせないぞッ!」

「では、残りは我が動きを止めてやろう……」

 この声は、ナマズエか!


「世界に災いもたらす王よ その目に闇を その手に血を その心臓に災厄を

 ホール・ハルスト・ガッダ・イン・ビドー

 チービル・シャル・レスト・アノン

 災厄属性ペンタグラム、『カラミティゾーン』!」

 ゾゾゾゾゾ……


「そ、その魔法は……!」

 これは、レイザが以前使った、状態異常を付与できる災厄属性の魔法……

 さすがにこれは対応できない!

「お前たちには『猛毒』と『緊縛』の状態異常を付与してやろう」

 ビキビキビキ……

「うわあぁぁっ!」

 俺たちは『猛毒』と『緊縛』の状態異常で、動けない上にダメージが……

「く、くそっ……」


 シュインッ

 ナマズエが姿を現した。

「よくやったナマズエ」

 そう言って、ゆっくりとメンバー達の方に歩いていくバグ……

 バグは、ヒナタの前で止まった。

「『邪道十三人衆』、十一人目は……お前だ、『ヒナタ』」

「なんだと⁉」


 バグの手がヒナタに伸びる……

「やめろーーーー!」


 バキバキバキバキ……

 バグがヒナタに触れると、ヒナタが黒く、おぞましい服装に変わった……

「ヒナターーーーーーッ!」

「フフフ、これでヒナタは私の『邪道十三人衆』の一員となった……二度とお前の元には戻らぬだろう」

「ふざけるなバグっ! お前……」


「いいぞ、私の目的は、お前とこの世界を『絶望』で満たすこと……この後もさらに、お前と世界に『絶望』を与えてやろう」

 くそっ! 俺の体、動けっ、動けっ!


「では、さらばだギガンティックマスター」

 バグとナマズエは、巨大な転移魔法陣を展開して、邪道十三人衆とヒナタ共々転移準備に入る。


「待て、バグッ! 行くな! ヒナターッ、ヒナターーーーッ!」

 キュウゥゥーーーン……シュン


 ☆今回の成果

  トーコ 『透明薬バージョン3』完成

  俺 幻術属性ペンタグラム『ギガイリュージョン』習得


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