第六十一話 初期化する者
アナタはアイドルに『シカト』されたことがありますか? ……俺はある。
今までのあらすじ……
『俺』、二十六歳、元時給制契約社員、アイドルオタク兼ゲーオタ。
ゲーム中、現実世界の人とそっくりの人が住む異世界『ギルギル』へ転移した俺。
自分だけの「あいどる・はーと」を作り、女性奴隷を救うことを目標に冒険を始め、
奴隷斡旋をしていたファルセイン王国と戦い、勝利した後、財政立て直しの指南をする。
友人になったドラゴンの「神魔」を助けるため、大陸内海の中央島へ行く手段を捜す。
東の「カイエル国」、西の「サザバード連邦」を冒険し、様々な体験をした俺。
魔族の襲撃をうけたファルセイン国に戻った俺は、
仲間にした執事魔族のメルフィスと共に、魔界へ。
新メンバーを加え、魔界を平定後、今度は暗殺組織のボスと戦闘となり、勝利する。
中央島で紆余曲折ありながらも、神魔を復活させた後、
北の「ヴァロン帝国」で行われた「四天王戦世界大会」に出場し、優勝。
その後、転移者「アクト」が現実世界の兵器を用いて、異世界に戦争を仕掛ける。
「屠りしもの」たちの助力もあり、アクトを倒し、平和を取り戻した。
その後も、残った色んな謎や秘密を明かすため、俺たち「異世界あいどる・はーと」の冒険は続く……
*****
……気がついたら真っ暗な場所。
『異世界あいどる・はーと』のメンバーたちが、俺の周りに、いろんな方向を向いて立っている……
あ~これあれだな、たぶん夢だ。
俺は夢だと理解しながらも、周りにいるメンバーたちに話しかけてみた。
「アイカ……」
振り向くアイカ……でもその顔はいつもの笑顔ではなく、まるで不審者でも見るような顔。
フゥ~とため息を一つつき、その重たそうな口を開く。
「マスター、今までずっと我慢していましたけど、アナタ本当に私たちとこんなふうに付き合えると思っているのですか?」
「えっ」
「私たちは現実の世界ではトップアイドルの、『あいどる・はーと』の分身ですよ?」
「う……」
横にいたナナもこちらを向き、話し出す。
「アイドルの私たちと、一般人のアナタでは、まさに『うさぎとかめ』ほどの開きがありますよぉ~、わかっています?」
「ナナ、それを言うなら『月とスッポン』では……?」
後ろにいたシノも、くるりと反転し、会話に入ってきた。
「私たちは全国で何十万人を沸かせることができるトップアイドル……超有名人でもない限り、私たちには触れるどころか、話をするのもおこがましいというのに」
「そ、そこまで言わなくても……」
気がついたら俺の横に、オウカが立っていた。
「昔のテレビドラマかなんかの見すぎではないのでしょうか? アイドルと恋愛したりする系の……」
「いや、確かにそういうの見たことあるけど……」
遠くの方からアカネとべロスが駆け寄ってきた。
「マスター、高所恐怖症だったとに~?」
「わう~ん?」
「そ、それは今関係ないんじゃ……」
後ろの方から、ユイが知らない男の人と一緒に歩いてきた。
「ユイ、その人は……?」
ユイは俺の話は無視して、その男の人に話しかける。
「新しいマネージャーさん、あの人なんか勘違いしているみたいだから、もうそろそろ……」
その男の人は、コホンと咳ばらいをして、メガネのズレを直しつつ、俺に近づいてきた。
「アナタが彼女たちの今までのマネージャーさんですか? 今までありがとうございました」
「マ、マネージャー?」
「彼女たちはこれから異世界でもアイドルとして活動するために、今後は私がマネージャーとして付き添っていきますので……」
「そんな急に……じゃあ俺はこれから一体どうすれば……」
「アナタはもう自由です、今後はお好きに生活なさって結構ですので、お疲れ様でした」
「ちょ、ちょっとまっ……」
メンバーたちはその男の人と一緒に、俺に背を向けて歩き出す……
「さあ異世界あいどる・はーとのみなさん、みなさんのキャッチコピーは『歌って、踊って、戦えるアイドル』です。これから異世界でバンバン活動していきますよーー」
「はーい!」
俺はメンバーを追いかけて走り出すが、なぜか全く追いつけない。
ドンドン離れていくメンバーたち……
「ま、まってくれー、アカネーっ! シノーっ! オウカーっ! ユイーっ! アイカーーーーっ!!」
「はっ!」
チチチ……
俺は手を伸ばしたままベッドから飛び起きた。日が差し込んでいる窓には、小鳥がとまっている。
「そ、そうだ、夢なんだったっけ……なんてリアルで、嫌すぎる夢……」
「マスター、朝ご飯できましたよぉ、起きてますぅ?」
ナナが俺を起こしに来た。
「あ、ああ」
手を伸ばしたままの俺は汗びっしょり、心臓もまだドキドキしてる。
ギュピーン!
「マスター、まさか……」
「?」
ナナが俺を見てニヤニヤしてる……
「マスター、大丈夫ですよぉ、最近は大人の人でもする人結構いるみたいですから、ドンマイドンマイ」
「お前、何言ってるんだ、俺は……」
「大丈夫です、大丈夫ですよぉ、みんなには内緒にしておきますからプププ……」
「だから違うってーー!」
一階に降りた俺を待っていたのは、みんな笑顔のメンバーと暖かい朝ごはん。
「マスター、おはようございます」
「おはようでっす、マスター」
「おはようございます」
よかった、みんないつも通りだ……
俺はホッと胸をなでおろす。
「お、今日は『焼鮭定食』か、美味そうだな」
「ではみなさん、いただきます」
「いただきまーす」
マフユの料理の腕もグングン上がっていて、最近では凝った和風の料理なんかも出てくるようになった。
……あの時のマフユとアイカの秘密の話は、まだ一度もしてくれていないけど。
メンバー全員で食卓を囲む。
ナナが、アンタッチャブルズたちに、お箸の持ち方を指導している。
「いいですかぁ? 今私たちがいるこのマスターの現実世界では、『お箸』と『すする』ができないと、
美味しい日本の料理のおよそ三分の一が食事できません」
「はい」
「なので私も心を鬼にして、スパルタで『お箸』と『すする』をアナタたちに教えますよぉ」
「お願いします、ナナさん」
おお、おお、涙目で「指がつりそうですぅ……」と言っていたあのナナが、偉そうに……
ギュピーン!
「マスター、今何か言いましたか?」
「いえ、別に……」
「ギャウギャウ」
ナナ達の隣で、子竜の神魔も一緒にご飯を食べる。
手を合わせて『いただきます』をした後、上手にお箸を使って焼鮭を食べている。
まあ、中身は現実世界の人間なので、当然と言えば当然なんだけど……
行儀のいいドラゴンって、なんか違和感があるなぁ。
「そうだ神魔、前から聞きたかったことがあるんだ」
「ギャウ?」
「この『ギルギル』を支えていると言われている『八方神』……
今まで神魔たち『四支神』と、南西の『審判竜』、南東の『色神』には会ったんだけど、他の八方神ってどんな奴らなの?」
「ギャウギャウ、八方神か……」
そう言いつつ、神魔はお箸を置く。
「以前、八方神は現実世界でこの『ギルギル』というゲームを作った、『開発チーム』の八人だということは言ったよな」
「ああ、神魔が『ゲームデザイナー』で、審判竜が『イベントプランナー』、色神は『広報』だと言っていたな」
「そうだ、ちなみに北のヴァロン帝国にいた『神居』は、氷と冬を司る四支神のリーダーで、現実世界での役職は、『プロデューサー兼会社社長』だ」
「か、会社社長……? あのペンギンが……」
「東のカイエル王国にいた『神楽』は、風と春を司り、『嵐神』の異名を持つ神で、現実世界での役職は、『天才ミュージックコンポーザー』、音響監督みたいなもんだな」
「あーだからあのインコ、ヘッドホンをしていたのか……」
「そして西のサザバード連邦にいた『神無』は、大地と秋を司り、『豊穣の女神』と呼ばれている。
現実世界での役職は、『グラフィックデザイナー』、キャラデザから風景、アイテムまで、全ての画像を担当している」
「あのメガネをかけた小さなリスが……凄い奴だったんだな」
「そして残りの八方神だけど」
「ふむふむ」
俺は前のめりになって、聞き耳を立てる。
「北東は『王家の遺跡』に住む『百骨王』、不死族たちの王でもある」
「百骨王、不死族たちの王か……強そうだな」
「ちなみに現実世界での役職は、『チーフプログラマー』だ」
俺は、ガイコツが一生懸命キーボードを打ち込んでいる姿を想像してしまい、少し吹き出してしまった。
「そして北西は『劇薬の洞窟』に住む『毒帝』、その名の通り毒のスペシャリストだ」
「毒のスペシャリストか……できれば戦いたくはないなぁ」
「現実世界での役職は、『ゲームエフェクター』、爆発や煙、紙ふぶきなどの画像を作る専門の担当だ」
「ゲームエフェクター……そんな役職もあるのか」
「以上が八方神、この『ギルギル』を最初に開発した『初期メンバー』だ。
ちなみに会社名は『エイトインフィニット』、八名で、八坪の部屋を借りて開発を始めたのがきっかけだ」
「へぇ~、最初は八坪の部屋から始まったんだ……」
今では全世界で三千万人がプレイする超人気ММОRPG、『GUILTYorNOTGUILTY ONLINE』。
その最初って、そんな感じだったんだな。
「ギガっち、オレは四支神以外の、他の八方神たちも助けてやりたいんだ、協力してほしい」
「モチロンだ、審判竜は俺の友人だし、色神にも世話になった……他の二柱の神にも、話を聞いてみたいしな」
「そうか、ありがとうギャウ」
「でも問題もある……果たして残りの四神たちも、四支神同様に攻略していいんだろうか?」
「確かに、オレたちのように、殺した後確実に転生するかどうかは未確認だ」
「できなかったら最悪だ、俺が全員殺してしまうことになる」
「そうだな……もう少し確認したり、他の方法がないか考察してみた方がよさそうギャウ」
……八方神全員の呪縛を解いたら、みんな喜んでくれるかな?
みんな揃ったら、現実世界の会社『エイトインフィニット』へ乗り込むってのもありかも。
「そうと決まれば明日にでも『審判の塔』に行ってみようか、イベントプランナーのジャッジメントドラゴンなら、なにか解放するヒントになるようなことを知っているかもしれない」
「そうだなギャウ、何かヒントがあるとすれば、アイツに聞くのがいい」
「午前中は用事があってヴァロン帝国に行くから、そのあとオルタナティブドアで、『審判の塔』に一番近い『名もなき村』から行くことにしよう」
「ギャウ? 名もなき村?」
神魔の頭の上に『?』が浮かぶ……
「何だよ神魔、お前ゲームデザイナーのくせに、自分で作った村の名前も忘れたのか?」
「いや、そんな名前の村、オレは作っていない……多分オレがドラゴンになった後に、ドッペルゲンガーのオレが作った村だな」
「そうなんだ……人間のバグって青年とその父親が、亜人種たちと一緒に作った、亜人種と共存する『楽園』なんだ。俺たちも最初のころ、村の発展を手伝ったんだぜ、懐かしいなぁ」
「亜人種の楽園……バグという青年……か……」
「ところで、神魔の現実世界での姿って、どんな奴なの?」
「そりゃあもう、超絶ハンサムの青年で有名だったギャウ」
神魔のこのドヤ顔と鼻息……
「そんなこと言っていいのか? あんまりハードル上げちゃうと、残念なフラグが立っちゃうかもよ~?」
「失礼だなっギャウ! ハンサムなオレの人間の姿を見て、腰ぬかすなよ!」
*****
◇名もなき村・バグside
「うっ……こ、ここは……?」
気が付いたオレは、体の自由が効かないことに気づいた。
どうやら腕を鎖につながれているらしい……
体中に、痛みが走る。
目の前には、見知らぬ男が二人、村人の死体を漁っていた。
「お? どうやら気が付いたみてぇだな」
オレが目を開けたことに気づいた片方の男が、右手の棍棒をポンポン叩きながら、オレに近づいてきた。
視界の右側が赤い……どうやら頭からも血が出ていて、右の眼に流れ込んでいるようだ……
口の中も血の味がする。
「あ……」
ボグッ!
オレが口を開いた瞬間、男は持っていた棍棒でオレを殴った。
「あ、ああ……」
左の頬にとてつもない激痛が走る……たぶん骨にひびが入った、奥歯も数本折れている。
オレは何が何だか分からないと言った顔で、殴った男を見る。
ニヤニヤしながら、その男はまたポンポンと棍棒を叩く。
「何が何だか分からないって顔をしているな? 顔に書いてあるぞ、へっへっへ」
「あ、ううぅぅ……」
グシャァッ!
男の蹴りがオレの股に入る、何かがつぶれた音がした。
「ぎゃあああっ!」
「誰が勝手にしゃべっていいって言った! ああ⁉」
男はオレの髪の毛を掴み、頭を上げさせて、そう叫んだ。
「ペッ!」
男はオレに唾を吐き、もう一人の男の方へ戻る。
「おい、お前が説明してやれ」
棍棒の男は、もう一人の男にそう言って座る。
今度はもう一人の男が、手に持っていたナイフをベロベロと舐めながら、オレの方へ近づいてくる。
「オレたちはよぉ、怪我をした冒険者のフリをしてこの村に入り込んだんだよ」
ああ、確かに数日前、怪我人が訪ねてきて、村で看病していると言っていたな……
「この村の連中は、オレたちが盗賊とも知らずに、手厚く看病してくれてよぉ、おまけに食事まで振舞ってくれたよ」
と、盗賊……この二人、盗賊だったのか?
「お人好しったらないよなぁ、『罪システム』がある、こんな世界なのによう!」
ドスッ!
そう言いながら男は、持っていたナイフをオレの太ももに突き立てる!
「がっ、ぐううぅぅ……」
「お礼に全員、殺してやったよ……いや~傑作だったな、騙されたってわかったときのあの顔!」
「そ、そんな……何も、殺すことは無かったのに……」
「殺すのに夢中になっちまって、オレの罪を擦り付けるのを忘れててよぉ……でも少ししたらお前が帰ってきたから助かったぜ」
「た、助かった……?」
「ああ、お前があの亜人の女の前で泣き崩れて、そのまま意識を失ったから、その隙にお前に『罪』を擦り付けることができたからなぁ」
オレが自分の名前を思い出せないのは、あの男の罪を擦り付けられ、オレが『奴隷位』になってしまったからか……
「お前には感謝しているぜぇ、ギャーハッハッハ」
「そんな……フリージア、父さん、みんな……」
「まったく、あの『ギガンティックマスター』だかって奴が、『奴隷や立場の弱いものを迫害することを禁止する法律』なんてものを作ったからいけないんだ!」
「ギガンティックマスターさんが、法律を……?」
「そんな法律を作っちまったから、オレたち盗賊は『拉致』じゃなくて『殺害』しなくちゃなんなくなったからよぉ」
「ギガンティックマスターさんの、法律のせいで……?」
「この亜人の女、売り飛ばす前に犯そうと思ったら、自害しやがった……結構上玉だったんだがな」
盗賊の足元にはフリージアの死体が……
「フリージア!」
「お? この亜人の女、お前の知り合いか?」
「フリージアはオレの妻だ! 頼む、返してくれ、フリージアを……」
盗賊はフリージアの髪の毛を掴み、ニヤニヤと笑いながら顔を見回し、俺の方に振り返った。
「そうかこの女、お前の嫁だったのか、残念だったな……お腹に子供もいたみたいだぞ、そこのジジィが叫んでいた、『私はどうなっても構わない、その娘だけはどうか助けてくれ』ってな」
フリージアの横には父さんの死体が……
「子供? オレの子供が……」
「でも大丈夫だ、死んでもオレたちがちゃんと売りさばいてやるからよぉ」
死んでも売りさばく? いったい何を言っているんだ……?
「たとえ死んでいても、内臓や髪の毛なんかは、転移者たちの世界で高く買い取ってくれる」
「そうそう、目玉も『カクマク』だかって部分が重要で、高値がつくらしいぜ」
死んだ人間の内臓や目玉を取り出し、転移者の世界で売りさばく……?
盗賊たちは、吐き気がするような酷い話を、笑いながらしている……狂ってる。
「やめてくれっ! 頼むっ……!」
「しかも胎児の死体は、特効薬になるって話だぜ」
「そりゃあいい、いくらになるか楽しみだ、はやく取り出してみよう」
胎児を取り出す? 嘘だろ? そんなこと……
オレは悲しみと恐怖でおかしくなったのか、ポロポロと涙を零す。
「お願いします……やめてください……オレの、妻と子供なんです……お願い……ううぅぅ」
盗賊たちはニヤニヤ笑い、オレの方を見ながら、手に持ったナイフをフリージアのお腹に突き刺す。
ドスッ!
「ああ、あああああ……」
「ギャーハハハ、その顔!」
「その失望と絶望の入り混じった顔、お前最高だよ、アヒャヒャヒャ」
オレは意識を失い、瞼を閉じる……
フリージアを失い、絶望と失望のどん底にいるオレが、なぜこんな目に……?
なぜこんな奴らが存在する? なぜ神は助けてくれない?
なぜフリージアと子供は死ななければならなかった?
この耐え難い痛みはなんだ?
なぜ強い者と弱い者が存在する?
なぜ奪う、なぜ殺す?
正義とは、悪とはなんだ?
なぜこの世界は紛争が絶えない?
なぜ罪システムなんてものが存在する?
オレたちは、支配されるため、奪われるために生まれてきたのか?
なぜこの世界はこんなにも残酷で、無慈悲で、理不尽なのだ?
この世界が、私をこんな目に……?
……
……
私はなぜ生まれた?
私が生まれた理由は何だ?
……
「そうか、この『世界』が悪い……この世界が間違っている……」
ジジ・ジジジジ……
私の体の一部が、点滅している……
「正さねばならない……この世界を……」
ジジジジ・ジジジジ……
ヒイィィィン……
私が目を開いたとき、私の体は発光し、魔力と魔粒子が渦を巻きながら私の体の中に流れ込んでくるのがわかる……
「な、なんだ……お前、いったい何を……」
盗賊たちが後ずさる。
「私は……この世界での『規格外』、この世界を正す者……」
「ただ……? 何を言っているんだ、こいつ?」
盗賊二人は、持っていた武器を構えて、私を攻撃する!
バアアアァァンッ!
「うわあぁっ!」
私の魔力と魔粒子の奔流に当てられて、盗賊二人は跳ね飛ばされる。
盗賊たちの顔は、焦りと恐怖に満ちている……
私は、腕を吊るしていた鎖を力ずくで引きちぎった。
体中の傷ついた箇所が、モザイクのように点滅して、一瞬にして修復される。
そのまま体中全てがモザイクのように点滅したかと思うと、私はまるで『魔王』のようないでたちとなった。
「な、なんだ? お前は、いったい何者なんだ……⁉」
恐怖でガタガタ震えている盗賊たちの問いに、私は答える。
「全て思い出した……私の名は『バグ』……
答えは出た、この世界を閉ざし、この世界を初期化する!」
「あ、あわわわ……やべぇ、に、にげ……」
「停止!」
ピタッ!
私が手をかざすと、盗賊たちは完全に停止した……まるで命のない石像のように。
「お前たちは目障りだ、消えろ」
私の手から、眩い光が照らされたかと思うと、盗賊たちは一瞬で光に飲み込まれて、消えた。
私は盗賊たちが座っていた場所へ歩いて行き、フリージアの死体を抱き上げる。
フリージアの体の傷も、私のモザイクをかけて全て修復した。
「フリージア……」
足元に倒れていた父さんにも触れる……モザイクで傷を修復。
「父さん……」
私はフリージアを抱きかかえながら立ち上がり、穴の開いた天井を見つめる。
「大丈夫、この間違った世界は、私が一度閉じる……みんなでやり直そう、新しい世界で」
その時、扉の向こうに気配を感じる。
「そこにいるのは誰だ?」
壊れかけた扉の奥から現れたのは……黒いフードを被った老人……?
「フフフフ……お前が覚醒するのを待っていた」
「貴様は何者だ?」
私はフリージアを降ろし、手を構える。
「我の名は『ドクターナマズエ』……世界最高の天才錬金術師だ」
そう言って黒いフードをから頭を出す……老人と呼ぶにはまだ少し早い、色黒の五十代くらいの男……
「ナマズエ……聞いたことがある」
「またの名を『毒帝』……この世界を支える八方神の一柱だ」
「何……? 八方神……?」
私は構えていた手を降ろす。
「八方神は呪縛のため動けないはず、どうやってここまで来た?」
「フッ、我は世界最高の錬金術師だ……こんな呪縛を解くことなど容易いことだ」
「……」
どうやら嘘偽りではないようだ、幻術の類でもない……
「私の覚醒を待っていたとは、どういうことだ?」
「モチロン、我が望みを叶えるため」
男は話しながら、両手を広げ、武器は持っていないということをアピールしつつ、少しずつ私に近づく。
「バグ、お前はこの世界に『存在しない者』……
お前には、この世界を自分の望む姿にすることができる力がある」
「私の……力……」
「その力で、この世界を我の『理想郷』にするのだ」
「……」
「お前に協力させてくれ、必ず我の力が必要になる」
私は少し考える……
「……好きにしろ」
ナマズエは私の目の前まで歩いてきて、ニヤリと微笑み、右手を差し出し握手を求めてきた。
私はそれを無視し、後ろを振り向く。
「我らの望みを阻むものたちがいる」
突然ナマズエが叫び出す。
私は動きを止め、少しだけ振り向き、ナマズエを見る。
「奴らを倒すため、手駒を増やそう……当たりはつけてある、我に任せておくがいい」
私はまたフリージアを抱きかかえ、建物の外へ出る。
外は日が暮れて薄暗くなっていた……
まだ焦げた匂いがあたりに充満し、死体を貪ろうと獣たちがあちこちから顔を出している。
ナマズエも後ろからついてきた。
「さあ、新たな争乱の始まりだ! この世界に、絶望と希望を!!」
☆今回の成果
俺 八方神の詳細を聞く
バグ 世界を自分の望む姿にできる力




